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マジックフェスト・千葉2019

戦略記事

1stドラフト:コジマ ヨシフミの緑黒「大食のハイドラ」!

森安 元希
プレイヤー紹介

 グランプリ・千葉2019、1日目を終えて9-0(全勝)という成績を残したのはちょうど8人。その中にはプロツアー・サンデー経験者の鹿島彰浩もいる。

 2日目1stドラフトの「1番卓」はもちろん、この8人によって形成されることとなった。

 今回「ピック譜」を記録するのは、その中でもOWM%(オポネント・マッチ・ウィン・パーセンテージ)を最も高く保ち、2日目開始地点で暫定1位であるプレイヤー、コジマ ヨシフミのものだ。

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 コジマは東京を中心に活動する競技プレイヤーであり、日ごろからマジックをプレイする動画配信なども積極的に行っていて多方面に広い交友関係を持っているようだ。

 その中の1つ、「ドラキチ」というコミュニティではドラフトを中心に「リミテッドを遊びたおす」という目的で集まる集団だ。コミュニティでは今回このグランプリに向けての練習にも時間を費やしていて、コジマも練習にあたっては意欲的かつ積極的な参加をしていた。

 さらに1日目の試合を終えた後もドラフトにかけて練習・検討を続けてきたようで、その熱意は並々ならぬものがある。その熱い想いを込めて、コジマは手元の15枚を扇に開いた。

1パック目
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 1-1の《幽体の船乗り》から最強色・青への参入!……というわけにはいかなかったようだ。

 緑に空いた気配を察したコジマは緑単気味のピックを続ける。目立つところでは《狼乗りの鞍》を2枚獲得した。

 素のサイズは《節くれ背のサイ》などと比べると一段落ちるが、装備品の強さとして盤面でのサイズ戦のバランスをコントロールしやすくなるカードだ。

 攻撃時に機能する能力を持っており、できればサイズの良い2~3マナ域と合わせて使いたいが

そこの帯域は1パック目終了地点で薄く、「これから確保する」という様子だ。

 2色目も《苦しめる吸引》《血に染まった祭壇》《腐れ蔦の再生》から黒への目星をつけている感が強いが、もちろん1-1で確保できている《幽体の船乗り》もあり「緑多色」あるいは路線変更して「青緑」という形もあるだろうか。


2パック目
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 緑デッキのキーカード、《枝葉族のドルイド》と《楽園の贈り物》が取れた。

 1パック目と合わせてある程度軽いところ・重いところの確保にも重点を置きつつ、完成を目指す。

 より多色化を推し進める《睡蓮の原野》も手番的に無理のないところでピックでき、引き続き「緑黒」を軸にピックを進めると「緑多色」系のデッキになりそうだ。

 2-5は《超克》といった緑のキラー・カードに恵まれた手順であったが、環境最強の除去である《殺害》はその評価に比肩した。緑をベースにするという観点から、除去の不足という陥りやすい不備を避けるため、コジマは《殺害》をここで優先した。

3パック目
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 色の合う《大食のハイドラ》ピックという快調なスタートを切っての3パック目ドラフトとなった。

 合計で《狼乗りの鞍》3枚、《苦しめる吸引》3枚。

 途中懸念材料であった3マナの薄さも《はびこる精霊》《ケンタウルスの狩猟者》合計4枚でカバーできた。

 3パックのピックを終え、コジマは構築に移る。結果的には緑黒2色にまとめあげた。

 構築を終えたコジマに、今回ドラフトに向けての方針などがあったかを聞いた。そしてコジマは驚くべき戦法を選んでいたのだ。

コジマ「今回は友人とも相談し、青白決め打ち!……でした(笑)」

 たしかにコジマの1-1の《幽体の船乗り》には強い「青」参入への意欲を感じた。しかし結果として出来上がったデッキは、2色「外れ」の「緑黒」だ。

コジマ「《雲族の予見者》は全く見なくて、《北方の精霊》も3パック目まで来ませんでしたね」

 多くのプレイヤーたちも「トップコモン」として認識する「青」の飛行クリーチャー2種は、コジマの目の前をほとんど通らなかった。事前に「青白(フライヤー)」というデッキタイプを決め打ちしていても、その色のカードが「来ない」からにはやりようがなかった。

 「白」側は飛行クリーチャーもいくらか目の前を通るには通ったが、序盤に察した「緑の空き」により魅力を感じたコジマは予定を変えて、「緑黒」としてこのドラフトを渡り切った。

コジマ「欲しかった《シルバーバックの巫師》は全く見てないので、そこを持ってる同型と当たると粉砕されそうです」

 「トップコモン」として《雲族の予見者》に対抗するのが《シルバーバックの巫師》だ。パワフルなサイズとカード・アドバンテージを両立させているこの緑のコモン・クリーチャーは、相手を倒すのに足る「圧」を持つカードだ。

 基本的には「緑」のシグナルとして機能しやすいカードで、コジマもそこを持たないことで嘆いていたが、それはコジマのデッキの緑部分の弱さを意味するものではない。

 複数枚採用できている《はびこる精霊》と《狼乗りの鞍》はそもそもアンコモンであり、《大食のハイドラ》《覚醒根の精霊》というレア2枚で、《吠える巨人》も「レアクラスと評されるパワーの高いアンコモンだ。

 高レアリティで構成された緑のアタッカーたちを黒の呪文でフォローしていく。特に3枚採用できている《苦しめる吸引》は、構成的にも噛み合いの多いカードだ。蜘蛛2種(《網投げ蜘蛛》《マンモスグモ》)を取れるタイミングのなかったコジマにとっては貴重な「飛行クリーチャー対策」としての役割も持ち、のちにライフ支払いの項目がネックになりがちな《血に染まった祭壇》の起動にもつなげやすくする。

 《腐れ蔦の再生》とあわせて《血に染まった祭壇》の継続的な起動は目途が立ちやすいようであり、「そこまで」をしっかりと凌ぐ構成にもなっている。

コジマ「芋っぽいというかモッサリしたところが不安で、0-3(全敗)あるかなと思ってます」

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 もともと「青白決め打ち」という気持ちでドラフトをはじめたコジマにとって、この「緑黒」ドラフトは決して満足の行くものではなかっただろう。

 しかし「決め打ち」という言葉を使った自身の気持ちに対しても冷静に立ち向かい、コジマは思いに反してまでもベストと思うカードを取り続けたのだ。

 それは単に「決め打ちを実行する」ことよりも明らかに難しいはずだ。不安と悔恨をないまぜに、コジマが溜息をつくと近くで構築の様子を見ていたプレイヤーが彼に声をかけた。

「でも、《大食のハイドラ》あるんでしょ。それで1勝もぎとろうよ」

 『基本セット2020』ドラフトにおいて、間違いなく最上位に名を連ねるボム・レアの1枚を指さし、八十岡 翔太はコジマに支援の声をかけた。元々配信や日々のドラフトなどを通じてコジマと八十岡は交流もあり、八十岡の一言は友にかけるものとして温かいものであった。

コジマ「3パック目で自分で剥きました! がんばります!」

 八十岡の声かけに、強くうなずくコジマ。

 コジマは3-1という手番で《大食のハイドラ》をピックできたことを「運が良かった」というような表現をするが、もし仮にそこまでを「青白」ピックで強行していた場合、このカードは(ピックするかしないかに関わらず)使うことは難しかっただろう。

 コジマ自身がそこまでで選んだ選択の結果であり、完成したデッキなのだ。さらにコジマは「勝てないかも」と自信なく口にしつつも、決して勝つことを諦めているわけではない。

 仮組みしたデッキの一人回しを続け、第10回戦開始までの残り短い時間を大切にデッキへの理解をさらに深めていった。

デッキリスト
コジマ ヨシフミ
グランプリ・千葉2019 2日目1stドラフト / 『基本セット2020』ブースタードラフト (2019年8月4日)[MO] [ARENA]
9 《
8 《

-土地(17)-

1 《枝葉族のドルイド
1 《ヤロクの沼潜み
2 《ケンタウルスの狩猟者
2 《はびこる精霊
1 《土覆いのシャーマン
1 《大食のハイドラ
1 《茂み壊し
1 《復讐に燃えた戦長
1 《覚醒根の精霊
1 《吠える巨人

-クリーチャー(12)-
1 《楽園の贈り物
1 《殺害
1 《魂回収
3 《苦しめる吸引
3 《狼乗りの鞍
1 《腐れ蔦の再生
1 《血に染まった祭壇

-呪文(11)-
1 《陰鬱な僻地
1 《睡蓮の原野
1 《磨かれたやせ地
1 《骨の粉砕
1 《幽体の船乗り
1 《送還
1 《霊気の疾風
1 《塩水生まれの殺し屋
1 《緑林の歩哨
1 《成長周期
1 《名高い武器職人
1 《大隊の歩兵
1 《混迷
1 《隠された手、ケシス
1 《精神腐敗
1 《秘本綴じのリッチ
1 《深海艦隊の殺し屋
1 《ケルドの略奪者
1 《陰惨な鞭使い
1 《狼族の絆
2 《星霜の学者

-サイドボード(22)-
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RESULTS

対戦結果 順位
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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