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マジックフェスト・千葉2019
「英雄譚」:松本 友樹~世界屈指のリミテッダー~
マジック・プロリーグ(MPL)が発足したことにより、従来のプロ・ポイントを基礎としたプロ・プレイヤーズクラブはいったん、終わりを告げることになる。
プロ・ポイントを手に入れることができる最後のミシックチャンピオンシップとなったミシックチャンピオンシップ・ロンドン2019で12勝4敗という好成績を収め、松本友樹は自身初のゴールドレベル・プロの座を手に入れた。
松本はミシックチャンピオンシップやグランプリといったハイレベルな競技シーンの最前線において、抜群の勝率を誇っている。
71.9%。
松本のグランプリとミシックチャンピオンシップにおけるリミテッドの通算勝率である。勝率65%を超えれば圧倒的と言われるマジックにおいて、この勝率はずば抜けている数値と言っていいだろう。
そんな世界屈指のリミテッダーは、どのようにしてゴールドレベルまでたどり着いてきたのだろうか――
松本友樹とマジックの出会い
松本がマジックを始めたのは『ミラディンの傷跡』のころだった。当時から大学生だった松本は友人たちに誘われ『基本セット2011』のブースタードラフトに触れたのがきっかけだという。すぐにマジックを「楽しい!」と思うようになった松本は、すぐに自らカードを集めデッキを構築するようになる。
「ドラフトでマジックに触れたのはそうなんですけど、最初は構築ばっかりやっていましたね。ギミックのあるデッキが好きで、《大建築家》や《ボーラスの工作員、テゼレット》、《滞留者ヴェンセール》を使ったデッキを作って楽しんでいましたね」
上述の通り、今ではリミテッドでの高い勝率を誇る松本は構築を楽しむプレイヤーとしてマジックを始めた。当時の気持ちを今でも忘れておらず、「メタゲームは考慮しますけど、今でも『自分で作ったデッキを使いたい欲』はすごく高いです」と語る。
そうしてマジックの楽しさにのめり込んでいった松本は徐々に競技シーンへと進出していく。
「もともと、トーナメントに対するハードルは低くて、『当然出るもの』みたいなニュアンスがあって、『大きい大会は全部出たい!』と考えていました。当時はプロツアーのことはまだ全然考えていなかったですけど」
松本はマジックに触れる以前からトレーディングカードゲームを嗜んでいたため、トーナメントへ出場することにためらいはなかった。マジックを始めてから1年も経たないうちにグランプリへ初出場すると、2度目の出場となったグランプリ・名古屋2012では13勝3敗という好成績を残す。
その後もプレイヤーとして頭角を現していった松本は、グランプリ・静岡2015では決勝ラウンド進出を果たし、強豪として認知されるようになっていった。
『環境理解』で手に入れた世界屈指の安定感
そして、松本がその名を知らしめることになったのが、現段階でも日本史上最高の参加人数を集めたグランプリ・千葉2015だ。
3,662人という空前の参加者数となったこのイベントで、松本は決勝戦で世界選手権2011王者の彌永淳也を倒し、グランプリチャンピオンに輝いた。
その後のプロツアー『マジック・オリジン』ではプロツアー初出場にして、世界の強豪を相手に2度のブースタードラフトで全勝を挙げ、「チェイン」(プロツアー/ミシックチャンピオンシップで好成績を残し、翌大会の出場権利を得ること)を達成した。
「大きな大会に出始めた頃から、幸運にも菊名合宿(強豪プレイヤーの中村肇が新セット主催直後に開催していたドラフト合宿)にお世話になっていて、グランプリ・千葉2015の時も発売からすごく練習していました。当時はリミテッドの腕はまだまだだったと思うんですけど、練習を沢山したことによる『環境理解度』は会場内でも上位にいたと思います」
松本の言葉を借りれば、「環境理解」とは膨大な練習により得た自分なりの環境における戦術といったところだろうか。「環境理解によって『その環境』で勝っているだけ」とのことだが、彼はこれまで15度のプロツアーとミシックチャンピオンシップに出場しながら、初日を突破できなかったのは、なんとわずかに2回。世界最高峰の戦いが繰り広げられ、MPLプレイヤーですら初日落ちをすることがあるハイレベルなトーナメントにあって、抜群の安定感を誇るプレイヤーである。
もっと上手くなりたい
グランプリ優勝後、BIG MAGICとスポンサー契約を結び、名実ともにプロプレイヤーとして活動を始める。そのことでプロとしての責任感がより増したという松本は、記事の執筆や配信を現在に至るまで積極的に行っている。
「メッセージ性、というよりはテーマを重要視しています。例えば『自分が強いと思っているデッキを見てもらいたいな』とか『リミテッドの環境について』といったものですね」
松本のスタンスは一貫しているように見える。彼が伝えようとしているのは「その環境」における自身の思考だ。成績を鑑みれば、松本がマジック全般のスキルにおいて高いものを持っていないとは全く思えないが、彼自身は、自身のその点においては不満があるということなのだろう。
だから今、前述の通りプロ・プレイヤーズクラブ終了直前に初のゴールドレベル・プロまで上り詰めた松本に「これからどうなりたいか」と尋ねると、その答えはシンプルだった。
「僕は自分のスキルを上げて勝つことが一番だと思っているので、そこを意識しています。今はドラフトなどで勝ってはいても、『その環境で』勝てているだけだと思っています。そうではなくて、もっとドラフトやマジックに普遍的なスキルを磨いていくことを一番の目標にしています」
現段階で、来年度におけるミシックチャンピオンシップのスケジュールや仕組みは公開されていない。現在のシステムから変更がない場合、松本は予選やグランプリに積極的に参加しようと考えているようだ。
そうして、トーナメントを重ね、環境の変化を重ね、松本が「環境理解」でなく「マジックの普遍的な能力」で勝てるようになったと自身で実感した時、彼はどのような活躍を見せているのだろうか。
その姿が、今から楽しみで仕方がない。
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