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マジックフェスト・千葉2019
石村 信太朗のシールドデッキ入門:「ミッドレンジ」を意識しよう!
石村 信太朗。通称、rizer(ライザ)。石村がグランプリ・横浜2003で使った《波停機》(=Stabilizer/スタビライザー)からそのハンドルネームがついたというエピソードがあるように、プレイ歴16年を超えるベテラン・プレイヤーだ。
プロツアー・パリ2011では8位入賞(プロツアー・サンデー)も記録し、昨年のMagic Online プロツアー予選(MOPTQ)ではモダン・フォーマットで「赤単ゴブリン」を使い、突破している。
全般のフォーマットで記録を残す石村だが、何より彼を象徴するフォーマットがある。それが今回のグランプリ・千葉2019でも採用されている「シールドデッキ」だ。
石村は過去、シールドデッキで開催されたMOPTQを複数回突破しており、国内屈指、いやマジック界屈指の「シールド・マスター」として高い知名度を誇っている。
その石村に今回、「シールドデッキとは一体どういったフォーマットなのか」を聞いた。特にMTGアリーナなどに伴いプレイヤーが増えているこのタイミングで、そうした「新規プレイヤーたちに向けて」のところを中心にした話となった。
石村はグランプリ本戦で2Bye(不戦勝)からの第3回戦を快勝し、インタビューに応じてくれた。
シールドデッキは「ミッドレンジ(中速)」を意識して組むと良いと語る石村。
「ミッドレンジ」へのイメージとして、特に前期スタンダード構築における「ゴルガリ・ミッドレンジ」のように、
- 序盤を耐え(例:《野茂み歩き》や《喪心》)
- 中盤でアドバンテージを取りつつ攻められるクリーチャーを用意し(例:《翡翠光のレインジャー》)
- 後半で勝ち筋となる6マナ以降の大型カード(例:《秘宝探究者、ヴラスカ》)を採用する
という形を推奨する。
現代マジックは「クリーチャー」が強く、それに一番噛み合う戦略は「ミッドレンジ」であり、シールドデッキも構築(スタンダード)もゲーム展開の根は同じだと言う表現だ。
もちろん与えられたカードプール次第では、特定のタイミングで使えるカードが少なく組み切れないこともあり、「アグロ(高速)」や「コントロール(低速)」にシフトすることもあるが、やはり第一には「ミッドレンジ」を意識することがベストなようだ。
そして話は「サイドボーディング」に移る。先日から日本語版が提供されたMTGアリーナではBO3(1マッチ・2本先取制)のシールドデッキはまだ実施されておらず、MTGアリーナをメインに楽しむプレイヤーたちはまだ「シールドデッキのサイドボーディング」というアクションに触れられる機会が限られている。
MTGアリーナでマジックを始め、テーブルトップ・マジックのイベントであるグランプリにも注目している新しい世代のプレイヤーたちに、「シールドデッキのマッチ」そして「シールドデッキのサイドボーディング」をどういった視点で行うかを聞いた。
「メインデッキと同じで、サイドボーディングも全体的には構築戦をイメージしてください」という言葉から、石村は解説を始めた。
石村はシールドデッキと構築に対してかなり近しいイメージを持っており、「シールドと構築、どちらからマジックを始めても、どちらにも適用できることが多いんです」と話した。
相手が使う特定のキーカードに対して、クリティカルに機能するカードを入れる。例えば対処の難しい大型の飛行クリーチャーが多ければ《垂直落下》のようなカードをとる。例えば《ゴブリンの鎖回し》のようなカードを見れば、《ラノワールのエルフ》は減らす。
1つずつの行為を見ていけば当然のことだが、限られた時間の中、しっかりと「ケース」を検討できてないプレイヤーがいるのも事実だ。
相手の形に合わせて自らのデッキも必然、形を変えるものであり、「正解に思えるメインデッキ」は必ずしも「正解に思えるサイドボーディング後のデッキ」ではない。
また石村はサイドボーディングにおいて「色変え」も頻繁に行い、1マッチ・3ゲームの戦いを「(6パック)84枚の総力戦」という広い視野でとらえている。
そしてメインデッキの構成にあたっても、先入観にとらわれてはいけない。石村はこれまで頻繁に「41~43枚」のように構築最少枚数である「40枚」以上のデッキを多く組み、そして確実に戦果を挙げてきている。
「遅いターンに1枚だけ欲しいカードがあるときに、構成によってはデッキの総数を増やすことがありますね」
引くターンが遅ければ遅いほど「機能するパワー」が大きくなるカードがある。例えば、並べたクリーチャーの総数に威力が依存する全体強化(例:《超克》)だ。
スタンダードでも、この「遅いターンに1枚だけ欲しいカード」という類は確かにある。コントロール・デッキにおけるフィニッシャー(例:《変遷の龍、クロミウム》)などだ。
さらにスタンダードとリミテッドの違いとして、デッキ枚数の差は外して語れない。「60枚と40枚」というライブラリー構築枚数は1.5倍も異なり、リミテッドで「遅いターンに1枚だけ欲しいカード」があったとして、それはスタンダードにおける1枚だけ欲しいカードの1.5倍も「来やすい」。だからほんの少し来るスピード(確率)を落として、より相応しいターンに引き込めるようにライブラリー枚数を増やして調整するのだという。
「早いターンに欲しいカードがあるときには、40枚で組むべきですね」
そのキーカードを「いつ」「引くのが最も勝ちにつながるのか。そこを意識するとデッキの枚数も決まってくるようだ。
《超克》のようなカードがあるからといって、そもそものクリーチャー展開を阻害するのでは本末転倒で、必ずしもオーバーサイズのデッキになるわけではない。
この「カードを引く」という観点において、ゲーム開始時の先手・後手の決定権も影響は大きい。石村はこの『基本セット2020』リミテッド環境を「先8:後2(先手8割、後手2割)」の環境だと評した。
「先手で強いカードが多い環境です。後手を選ぶのは重いカードが多いときや、大型のレアがあるとき。あと除去が強いときと、多色(3色以上)デッキのときですね」
先手の強さはハッキリと口にしながらも、この「後手2割」という意識が大切だと語り、過去に「先9:後1(先手9割、後手1割)」と評した『テーロス』環境よりも「後手デッキ」の存在感はあるようだ。
一般論として過去には「シールドは後手を取るのがセオリー」(カードパワーが低くなりがちで、カード1枚差が大きく響くため)と呼ばれた時代もあったようだが、「シールドはミニマムなスタンダード」という見方の通り、先手を取ることでゲーム序盤中盤の主導権を握るテンポ的なアドバンテージは、今や構築に欠かせない要素となっている。
こうした柔軟かつ多角的な視点を石村はどうやって培ってきたのか。「1人だけで練習するのは、難しいところもあります」と前置きし、シールドデッキの上達には友人と一緒に練習を行うのがベストだとした。
「お勧めの練習方法は、1つのプールを友人と一緒に検討することです」
実戦形式として各々がデッキを組んで対戦を行うより、1つの「6パック分のプール」を一緒に検討し、意見を交わしながらデッキを組むことが、理解力を高めるには良い方法だと語る。
さらに石村はもう1つの方法として、「プレリリース・イベントへの参加」にも言及した。新セット発売直前のプレリリース・イベントは手ぶらかつ前提知識が不要でも楽しめる「カジュアル」なイベントとして人気がある。
この「プレリリースだけに参加するプレイヤー」も多く、そうしたプレイヤーはマジック歴も長いことがあり、「一種のシールド・プロ」のようなプレイヤーがいる。
彼らはいろいろな技術や考え方を持っている。そうしたプレイヤーたちと交友関係を広げられることは、例えばMTGアリーナからマジックを始めテーブルトップ・マジックを始めてみようとするプレイヤーにとっては「友人作り」と「上達」につながり、「楽しい」イベントになりそう、と話してくれた。
石村が示す「シールドデッキ」論。まだまだその淵(ふち)は深いが、今回は「入門編」としてその基本をあらためて言葉にしてまとめてもらった。多くのプレイヤーにシールドデッキを楽しんでほしい、上手くなってほしいという気持ちの伝わるインタビューであった。
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