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ミシックチャンピオンシップ・ロンドン2019
ミシックチャンピオンシップ・ロンドン2019 初日メタゲームブレイクダウン
2019年4月26日
ルイス・サルヴァット/Luis Salvattoが《洞察のランタン》の光で勝利への道を照らしたプロツアー『イクサランの相克』から1年あまり。モダンのメタゲームはその間に、何度も進化を遂げてきた。「マジック25周年記念プロツアー」では「クラーク族の鉄工所」デッキが勢力を増し脚光を浴びたが、ウィザーズ・オブ・ザ・コーストは今年の1月にその名を冠する《クラーク族の鉄工所》を禁止し、同名のデッキは事実上消滅した。
その後は「鱗親和」や「唸りプリズン」のような新たなデッキが台頭する一方で、勢いを失うデッキも現れた。さらにこの週末には「ロンドン・マリガン」が試験導入されるため、デッキ選択は困難を極めている。常に地盤が動くモダン環境で、ここロンドンへ集ったプレイヤーたちは最終的にどのような判断を下したのか?
アーキタイプ | 使用者数 | 使用率 |
---|---|---|
トロン | 75 | 14.6% |
イゼット・フェニックス | 62 | 12.0% |
人間 | 53 | 10.3% |
白青コントロール | 38 | 7.4% |
ドレッジ | 32 | 6.2% |
グリクシス・「死の影」 | 30 | 5.8% |
鱗親和 | 25 | 4.9% |
エルドラージ系 | 25 | 4.9% |
アミュレット・タイタン | 21 | 4.1% |
The Rock | 17 | 3.3% |
エスパー・コントロール | 16 | 3.1% |
バーン | 14 | 2.7% |
唸りプリズン | 14 | 2.7% |
赤緑ヴァラクート | 10 | 1.9% |
親和 | 8 | 1.6% |
感染 | 8 | 1.6% |
むかつき | 8 | 1.6% |
ボーグルズ | 5 | 1% |
ジャンド | 5 | 1% |
その他 | 49 | 9.5% |
2018年1月にスペイン・ビルバオにて開催されたプロツアー『イクサランの相克』では、使用率10%を占めるデッキが存在しなかった。その中で最も人気を集めたのは、使用率9.3%の「人間」デッキだ。このデッキは「マジック25周年記念プロツアー」のモダン部門でも引き続き使用者を集め、会場の16.36%を占めた。
さて、今大会ミシックチャンピオンシップ・ロンドン2019では、3つのデッキが使用率10%超えを果たしている。「トロン」、「イゼット・フェニックス」、そしていまだ人気が衰えない「人間」だ。「トロン」はプロツアー『イクサランの相克』でも使用率6.9%で4番目に人気のデッキだったが、「イゼット・フェニックス」は当時はまだデッキとして成立していなかった。その名を冠する《弧光のフェニックス》が登場したのは『ラヴニカのギルド』でのことだ。
今週末、「トロン」は75人の使用者数を集め、会場の14.6%を占めた。長年にわたりモダンの一流デッキとして人気を博してきたこのデッキは、常にメタゲームの変化に晒されてきた。今大会における「トロン」人気の急上昇は、ロンドン・マリガンの導入と少なからぬ関連があると考えられるだろう。強力ながらも安定性に悩まされるデッキこそ、この新たなマリガン・ルールの恩恵を最大限に受けられると、ミシックチャンピオンシップ・ロンドン2019の参加者たちの多くがそう信じているのだ。
「イゼット・フェニックス」は、『ラヴニカのギルド』で《弧光のフェニックス》が登場して数か月で頭角を現し、以来モダンで人気のデッキになった。直近のモダン・グランプリでも、平均して15%前後の2日目使用率を記録している。このデッキは人気を集めているだけでなく、結果も残している。トップ8入賞を逃すことは少なく、ときにはトップ8に4人も送り出す活躍を見せているのだ。軽量のドロー呪文や火力呪文を擁する「青赤」のデッキはたびたびモダンで人気を博す色の組み合わせだが、それでも「イゼット・フェニックス」の大躍進は印象的な出来事だと言えるだろう。
《帆凧の掠め盗り》と《手付かずの領土》の登場で一気に使用者を増大させた「人間」デッキは、プロツアー『イクサランの相克』と「マジック25周年プロツアー」のモダン部門で最大勢力を築き上げた。それから数か月にわたり人気を維持したこのデッキだが、急進する「イゼット・フェニックス」の勢いに押されつつある。とはいえ「人間」がいまだ人気デッキであることは間違いなく、プロツアー『イクサランの相克』の頃よりさらに勢力を増しているのも事実だ。上記のメタゲーム一覧で使用率第3位に留まったのは、このデッキの人気が衰えたというよりは、「トロン」と「イゼット・フェニックス」の勢力拡大が著しいことを示していると考えられる。
「白青コントロール」もまだまだ健在だ。というより、このデッキは常にメタゲームに存在している。「白青コントロール」の動きはまさに「白青コントロール」であり、このデッキの動きが好きな人は使うし嫌いな人は使わないという特徴がある。私自身もコントロールの大ファンなのだが、その愛ゆえにこの記事を完全に乗っ取って、カードを引くことやクリーチャーを除去することの楽しさを延々と語るようなものにならなかったのは、皆さんにとっては幸運と言うほかない。
「マジック25周年記念プロツアー」での使用率がわずか1.2%だった「ドレッジ」は、プロツアー『イクサランの相克』で3.7%に勢力を広げ、そしてミシックチャンピオンシップ・ロンドン2019では6.2%で第5位の人気デッキになった。このデッキもまた、ロンドン・マリガンの恩恵を大いに受けると多くのプレイヤーが予想している。適切なカードさえあれば、初期手札の枚数は少なくとも十分に機能するのだ。
モダンの怪物として環境で存在感を放っていた「グリクシス・『死の影』」は、「人間」デッキと「虚ろな者」デッキの登場によって一時期その人気に影を差していたが、この週末で復活を遂げている。手札破壊と打ち消しによる妨害と1~2回の攻撃で対戦相手を倒すクリーチャーのコンビネーションは、再びモダンの人気上位に登りつめたのだ。一方、「マジック25周年記念プロツアー」で使用率7.8%を誇った「虚ろな者」は、今大会での使用者はただ1人まで落ち込んだ。
プロツアー『イクサランの相克』では使用率8%を記録したかつての人気デッキ「親和」だが、今大会では「使用者数8人」まで勢力を縮小することになった。それと密接に関連しているのが、《オパールのモックス》や《電結の荒廃者》といった「親和」デッキのパーツに+1/+1カウンターのシナジーを組み合わせてさらに爆発力を高めた「鱗親和」の台頭だ。2018年のグランプリでトップ8に1つか2つ名を残したところから始まったこのデッキは、今やおよそ5%の使用率を記録し、第7位の人気デッキとなるまでに成長したのだ。
他にも、25人のプレイヤーが《エルドラージの寺院》を用いて《難題の予見者》や《現実を砕くもの》の力を引き出すことを選んだ。「エルドラージ系」デッキには、自身が影響を受けることなくモダンの強力な1マナ呪文を食い止めるために、共通して《虚空の杯》が採用されている。詳しい内訳は、完全に無色のものが7人、白単色のものが6人、赤単色のものが5人、「エルドラージ&タックス」が4人、赤緑のものが2人、「エルドラージ・トロン」が1人となっている。
《花盛りの夏》が禁止されて以来、環境の中心からは外れていた「アミュレット・タイタン」だが、ここに来て着実に勢力を盛り返してきている。《精力の護符》に加えて《シミックの成長室》のような初代ラヴニカの土地を用いて《原始のタイタン》の力を引き出すこのデッキは、《花盛りの夏》の禁止によって一気にメタゲームから弾き出されたものの、「まだやれる」と信じる熱心なプレイヤーは残っていたのだ。また「ドレッジ」と同様に、「アミュレット・タイタン」もロンドン・マリガンの恩恵を大きく受ける可能性がある。
プロツアー『イクサランの相克』で1.9%の使用率だった「ランタン・コントロール」は、その大会で優勝を果たしたことで人気の絶頂を迎えた。しかしその後人気は下り坂となり、「マジック25周年記念プロツアー」のモダン部門ではこのデッキを選択したプレイヤーはいなかった。「ランタン・コントロール」の場所を奪ったのが、最新の「唸りプリズン」だ。「唸りプリズン」も決して大人気のデッキとは言えないが、上り調子であることは確かだろう。モダンの第一線にあり続ける「バーン」デッキと同数のプレイヤーが「唸りプリズン」を持ち込んだという事実は、この最新デッキの活躍を示すものとして印象的だ。
「ジャンド」もまた、常に環境に存在している。このデッキの動きもまさに「ジャンド」であり、「好きな人は使うし嫌いな人は使わない」。
なお、「その他」のカテゴリーには以下のようなデッキが混在している。
- バント・スピリット:3人
- 「献身のドルイド」カンパニー:3人
- ストーム:3人
- 「純鋼の聖騎士」コンボ:2人
- 緑白タックス:2人
- イゼット・キキジキ:2人
- ランタン・コントロール:2人
- マーフォーク:2人
- オルゾフ・ミッドレンジ:2人
- 青赤ウィザード:2人
- ヴァニファール進化:2人
- 8-Rack:1人
- アブザン:1人
- アブザン・カンパニー:1人
- 黒赤プリズン:1人
- ビッグ・ナヤZoo:1人
- ブリッジヴァイン:1人
- 雷電バランス:1人
- エルフ:1人
- エスパー・「死の影」:1人
- 虚ろな者:1人
- 虚ろなフェニックス:1人
- ジェスカイ・コントロール:1人
- ジェスカイ・キキジキ:1人
- ジェスカイ・テンポ:1人
- ジャンド・「死の影」:1人
- 死せる生:1人
- マルドゥ・パイロマンサー:1人
- 赤単果敢:1人
- パイロ・プリズン:1人
- ソウル・シスターズ:1人
- 青黒フェアリー:1人
- 青黒ミル:1人
- 青黒「死の影」:1人
- 白青スピリット:1人
集計・アーキタイプ分類作業は、フランク・カーステン/Frank Karstenが行った。この場をお借りして、彼に感謝を述べたい。明日は2日目に進出したデッキに注目しよう。そしてもちろん、大会の模様は twitch.tv/magic にて生放送でお届けしているので、熱戦を見逃すな!
(Tr. Tetsuya Yabuki)
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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