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グランプリ・東京2016

戦略記事

スタンダード環境を読み解く手掛かり:渡辺雄也の場合

By Sugiki, Takafumi

※この記事はグランプリ本戦2日目開始前に取材を行いました。

 「ナべ」、この通称でマジックプレイヤーの間で親しまれるTeam Cygames所属プロ渡辺雄也が、世界最強のマジックプレイヤーの一角を占めることは誰も異論が無いところであろう。最近は、Team Cygamesの動画コンテンツでそのプレイング技術などを惜しみなく披露してくれている。そんな渡辺は、このグランプリ・東京2016でも初日を見事全勝で折り返し、貫禄を見せつけた。

 『イニストラードを覆う影』の発売により、ストーリー・フレイバーだけでなく、スタンダード環境も謎が深まるばかり。プロツアー『イニストラードを覆う影』では、トップ8が全員違うタイプのデッキを選ぶという珍しい事態となり、その後2週間が経過した今も支配的なデッキに関しては明確な統一見解は出ていない。

 このような混迷を極める現在のスタンダード環境への渡辺の見解、そしてどのようなアプローチを行い、使用デッキを選択したかを伺ってみた。

――環境の軸として存在し、対戦を念頭に置かなければいけないデッキは何でしょうか?

渡辺:正直な話、軸となるデッキは無いですね。この環境はモダンに似ていて、何に当たってもおかしくないと思います。

deck_watanabe3.jpg

――なぜ、このようにスタンダード環境が混迷を極めているのでしょうか?

渡辺:プロツアーのトップ8が全てバラバラのデッキタイプで、明確な結果が出なかったということが理由だと思います。

――ではそれらをもとにした今回のデッキ選択は何でしょうか?

渡辺:前提として、強いデッキ3原則というものが自分の中でありまして。

 それは、

  1. マリガンに強いこと
  2. ぶんまわりがあること
  3. 長期戦に強いこと

 の3つです。それを満たすデッキとして、今回は「バント人間カンパニー」をオリジナルで構築しました。

 白緑トークンもこの3原則を満たすデッキかとは思いますが、プロツアー、グランプリでの隆盛を経て、今回のグランプリは白緑攻略クエストになっていて。メタられる側には回りたくはないなと思って、選択しませんでした。

――なるほど。しかし、バント人間とはあまり聞いたことのないデッキですが、どのようなデッキでしょうか?

渡辺:バントカンパニーと白単人間をミックスしたようなデッキですね。発想自体は普通のバントカンパニーです。《ヴリンの神童、ジェイス》が攻めにも守りにも中途半端な感があり、どうしても好きになれませんでした。一方、《集合した中隊》からめくれる《サリアの副官》は盤面に与える影響が多大で非常に魅力的なものです。

渡辺 雄也
グランプリ・東京2016 / スタンダード[MO] [ARENA]
3 《
5 《平地
1 《
3 《梢の眺望
4 《要塞化した村
3 《大草原の川
1 《港町
1 《ヤヴィマヤの沿岸
4 《進化する未開地

-土地(25)-

4 《スレイベンの検査官
4 《ラムホルトの平和主義者
4 《サリアの副官
3 《薄暮見の徴募兵
3 《白蘭の騎士
4 《反射魔道士
3 《不屈の追跡者

-クリーチャー(25)-
4 《ドロモカの命令
4 《集合した中隊
2 《オジュタイの命令

-呪文(10)-
2 《棲み家の防御者
1 《ランタンの斥候
1 《不屈の追跡者
2 《死者を冒涜するもの
1 《優雅な鷺、シガルダ
3 《グリフの加護
3 《否認
2 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン

-サイドボード(15)-
deck_watanabe2.jpg

――このデッキは使いやすいものなのでしょうか?

渡辺:残念ながら、一見ですぐに使えるというものではありません。それは、土地を出す順番の難しさに起因しています。《白蘭の騎士》が白マナを2つ要求することもあり、特に《進化する未開地》をプレイするタイミングが難しかったりというのが挙げられます。

 また《集合した中隊》をプレイするタイミングが、自分のメインフェイズ、戦闘フェイズ、相手の戦闘フェイズ、終了フェイズと多岐にわたります。《集合した中隊》でのめくれ方のパターンと、それらの盤面に与える影響によるリスク・リターンも検討しながら、最適なプレイタイミングを見つけなければいけません。

 デッキレシピ自体は、瀧村くん(瀧村和幸、プロツアー『戦乱のゼンディカー』優勝)にもシェアしたりしましたが、プレイが難しいということで、今回のグランプリでは自分だけが使用しています。

――できれば当たりたくないデッキは何でしょうか?

渡辺:環境のどのデッキにも五分以上では戦えると考えています。が、あえて挙げるとすれば、当たりたくないデッキはグリクシス・コントロールです。その理由は、《ゲトの裏切り者、カリタス》の枚数が一番多いデッキだからです。《ゲトの裏切り者、カリタス》を除去できるカードが、サイズの大きいクリーチャーを盤面に用意している前提での《ドロモカの命令》4枚と、《オジュタイの命令》2枚のみであるためです。

――ありがとうございました。最後に、トークンの新バージョンが出ていると聞きました。ご紹介をお願いできますでしょうか?

渡辺:今年初めまで所属していたチームミントと現在所属しているTeam Cygamesのコラボトークンです。Team Cygamesのメンバー4人のそれぞれの特徴を捉えた素晴らしいイラストですので、みなさんに積極的にお配りしています。大会会場で持ち歩いていますので、気軽にお声がけいただければ、お渡しさせていただきます。

deck_watanabe1.jpg

 渡辺は、この混迷を極める『イニストラードを覆う影』のスタンダード環境に対し、人間に寄せた《集合した中隊》という独自のアプローチで解明の「手掛かり」を見つけ、それは現在のところ正解に近づいているようだ。

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RESULTS

対戦結果 順位
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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