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グランプリ・静岡2018(スタンダード)

観戦記事

準決勝:中島 篤史(神奈川) vs. 嶋崎 椋太(福井)

伊藤 敦

嶋崎「なんだか、学校のときのテストみたいですよね」

 対戦相手のデッキリストをジャッジから受け取った嶋崎は、そう形容した。

 実際、トップ8などでリストが公開となる対戦での「限られた確認時間の中で必要な情報だけを覚え、それを対戦に反映する」という工程が試験のようだというのは、確かに言いえて妙かもしれない。

中島「土地が24枚……ですよねー、僕も23枚教が許せないんですよー」

 一方そんな嶋崎のリストを見た中島は、同じアーキタイプを、しかも自分と近い構築思想で回していることが見て取れたからか、どことなく嬉しそうだ。

 ゴルガリ・ミッドレンジ同型戦。スタンダードにおける最高のミッドレンジは、近年の環境の例に漏れずメタゲームのトップに君臨し、トップ8のうちの半数を占める結果となった。そしてそのまた半数が勝ち上がり、ここ準決勝で激突したのである。

中島「《真夜中の死神》、メインサイド合わせて4枚でゴルガリ同型殺す気満々ですね……」

嶋崎「そうそう、殺したいところなんだけど、このリストはすごいなー。《最古再誕》、最近は抜きがちだったけど、サイドに3枚も……」

中島「《最古再誕》強い、めっちゃ強い、入れよー! みたいな感じです(笑)」

 どうやらリストを見ているうちに、互いにゴルガリをかなり「やり込んだ」ことが通じ合ったのだろう、我が家のゴルガリ自慢のようなものが始まってしまった。

 とはいえ同じデッキタイプを使っている者同士だと、同じような課題にぶつかったり乗り越えたりした経験が共有できるため、話が弾んでしまうのも仕方ないことと言える。

中島「うん、メインはなるようにしかならないな……いやー、いいデッキです」

嶋崎「そちらもいいデッキです。この《最古再誕》3枚で悩まされてますもん……」

 なんかもう褒め合ってるし。ゴルガリ団こわい。

嶋崎「《ラノワールのエルフ》スタートだけはやめてくださいね……」

中島「頼む初手ラノエル~!」

 やがて確認時間が終わり、二人はゲーム開始に備えてデッキをシャッフルする。

 神奈川と福井という、普段は全く違う場所で生活をしている二人が、しかし同じデッキタイプを選択し、何よりこのグランプリという大舞台の準決勝における初対面で意気投合できるというのは、マジックがもたらした奇縁と呼ぶほかないだろう。

 それでも。同じゴルガリとはいえ、中島と嶋崎のデッキとではメインで5枚、サイドで6枚という決して少なくない違いがあり、それはそのままゴルガリというデッキや環境そのもの、あるいは各デッキとのマッチアップに対する、二人の考え方の違いを如実に表している。

 この11枚の差が、はたして勝負にいかなる影響を与えるのか。

 グランプリ・静岡2018、準決勝。最も過酷なミラーマッチが、始まった。

 
中島 篤史 vs. 嶋崎 椋太
 
ゲーム1

 先手の中島は《森林の墓地》→《愚蒙の記念像》と緩やかなスタート。対して《野茂み歩き》を送り出す嶋崎だが、続くターンに《マーフォークの枝渡り》を出そうとしたところで中島の《喪心》が《野茂み歩き》を屠る。さらに続けて中島は《真夜中の死神》を着地させる。

 これに触ることができない嶋崎は、ひとまず2点アタックから《翡翠光のレインジャー》。公開されたトップは《野茂み歩き》で、これを落とすと2枚目も《野茂み歩き》。苦笑しつつ落とす嶋崎。一方、中島は《破滅を囁くもの》を出すが、これには嶋崎の《ヴラスカの侮辱》が飛ぶ。そのまま《翡翠光のレインジャー》と《真夜中の死神》が相打ちになるが、盤面が再び《マーフォークの枝渡り》だけとなったところで中島は《ビビアン・リード》を降臨させ、[+1]能力で《貪欲なチュパカブラ》を手に入れてリードを広げる。

 だがこれに対し、嶋崎は返すターンに同型戦における切り札となる殺戮の暴君》をプレイ!

 メインデッキではこれに対処する手段がほとんどない中島は、ひとまず《ビビアン・リード》の[+1]能力で《翡翠光のレインジャー》を手に入れてプレイするのだが、「探検」は2枚とも土地。さらに2体目の《翡翠光のレインジャー》を送り出すも、今度は土地と《ビビアン・リード》がめくれ、合わせてパワーが6に届かないという大誤算。守勢に回ることが確定した以上、中島はこのめくれた《ビビアン・リード》を拾うわけにいかず、やむなく墓地に落とす。

 無事にターンが返ってきた嶋崎は《真夜中の死神》を出して《マーフォークの枝渡り》と《殺戮の暴君》の攻撃で《ビビアン・リード》を落とすと、さらに《探求者の従者》をも盤面に追加する。

 このままでは《殺戮の暴君》が止まらない中島は《マーフォークの枝渡り》を追加するが、この「探検」も土地で「土地しかめくれないなー……」とひとりごちる。ひとまず《真夜中の死神》は《貪欲なチュパカブラ》で倒し、これ以上のリードは許さない。

 返す嶋崎は《貪欲なチュパカブラ》で《翡翠光のレインジャー》を倒しつつ、《殺戮の暴君》のみでアタック。

中島「ハンドが2枚?」

 この場面で、嶋崎の土地は4マナ立っている。だが中島は除去を抱えられていたら仕方ないと意を決し、これを《翡翠光のレインジャー》《マーフォークの枝渡り》《貪欲なチュパカブラ》で勇気の3体ブロック!

嶋崎「……はい、おっけーです」

 どうにか《殺戮の暴君》を相打ちにとることに成功する。

 とはいえ嶋崎は《愚蒙の記念像》を起動できる状態でターンを返しており、このままでは早晩同じ状況に追い込まれる。なんとか解答を探したい中島は《探求者の従者》をプレイ、するとトップには《殺戮の暴君》が!トップに残し、さらに《採取+最終》で《貪欲なチュパカブラ》と《真夜中の死神》を回収してリソース差をさらに広げにいく。

 
嶋崎 椋太

 嶋崎がエンド前に回収した《殺戮の暴君》を出すと、中島も《殺戮の暴君》。だが嶋崎はここで《採取+最終》で自分の《殺戮の暴君》を強化しつつの全体-4/-4で中島の《真夜中の死神》を誘発させてライフを攻め立て、攻撃と合わせて中島を残りライフ5点まで追い詰めることに成功する。

 だがその代償として、嶋崎の手札はもはやほとんど尽きている。中島は《翡翠光のレインジャー》《ラノワールのエルフ》と並べてターンを返す。もし嶋崎が2枚目の《採取+最終》を引いたら、中島の《殺戮の暴君》がチャンプブロックになってほぼ勝負が決まる。

 嶋崎のドロー。だがそれは《翡翠光のレインジャー》で、土地と《ゴルガリの女王、ヴラスカ》がめくれ、これをそのまま上に残す。さらに《マーフォークの枝渡り》を出してゴー。そして中島が《貪欲なチュパカブラ》と《ラノワールのエルフ》を並べてターンを返すと、《ゴルガリの女王、ヴラスカ》の[+1]能力で土地を生け贄に捧げて《採取+最終》を探しにいく。

 中島は《ゴルガリの女王、ヴラスカ》を《ヴラスカの侮辱》で処理。嶋崎は《マーフォークの枝渡り》を出すが、 《採取+最終》は見つからない。《真夜中の死神》を引き当ててドローに変えようと《マーフォークの枝渡り》と《翡翠光のレインジャー》でアタックするが、この《真夜中の死神》も《ヴラスカの侮辱》され、ドローは不発に終わる。

 《野茂み歩き》を引き当てた中島が《翡翠光のレインジャー》でライフを引き上げようとするが、これには嶋崎の《ヴラスカの侮辱》が飛び、ライフゲインを許さない。続く中島の《ゴルガリの女王、ヴラスカ》もやはり[+1]能力を使っただけで《ヴラスカの侮辱》され、継続的なドローソースとして定着しない。ここまでくると、どちらが先にダイレクトに決定打を引き込むかの勝負になっている。

 すでに嶋崎は14枚、中島は15枚もの土地を置いている。そこからさらにお互いドロー→セット→ゴーでターンが回り、さすがに苦笑いを隠せない。

 
中島 篤史

 だがここで、先に中島が切り札にたどり着く。6マナをタップしようとする仕草で嶋崎の口から「うわ」という声が漏れる。そう、《秘宝探究者、ヴラスカ》!

嶋崎「うわー!」

 3枚の《ヴラスカの侮辱》はすべて打ちきっている。続くターン、当然のごとく忠誠度が10に達し、このままようやく決着かと思われた。

 そのとき。

 嶋崎がギリギリのタイミングでたどり着いたのは、2枚目の《採取+最終》!

中島「マジかー」

 だが、度重なる《ヴラスカの侮辱》のおかげで中島のライフはもはや安全圏まで回復していた。やむなく《秘宝探究者、ヴラスカ》の忠誠度を7つ減らした嶋崎だが、中島は《愚蒙の記念像》を起動すると《翡翠光のレインジャー》を回収してさらにライブラリーを掘り進める。

 めくれたのは《ラノワールのエルフ》、そして《破滅を囁くもの》。さらにこれをノータイムで両方落とす。……そう、両方。この状況でを6/6飛行・トランプルを墓地に送るからには、中島には明確に引きたいカードがある。だが、一体何を探しているというのか?

 その謎が、ついに明らかになった。《採取+最終》で再び《翡翠光のレインジャー》を回収して出した中島が、すでに残り10枚前後という薄さになったライブラリーから公開したのは……探知の塔》!

嶋崎「あー、それか!」

中島「やっとだー。ずっと探してたんですよ……」

 《探知の塔》セット、起動、《貪欲なチュパカブラ》。11/10まで育てた《殺戮の暴君》が落ちる。そして中島のもとには《秘宝探究者、ヴラスカ》が。

 《殺戮の暴君》で殴りきるゲームプランにすべてのリソースを注いだ嶋崎に、もはや抗う術はない。超ロングゲームを制したのは、中島だった。

中島 1-0 嶋崎

 

嶋崎「なるほど、こういうときに《暗殺者の戦利品》が欲しいですね……」

 サイドボーディングをしながら嶋崎がつぶやく。中島のレシピと嶋崎のレシピとの最も大きな違いは、探知の塔》の採用の有無。これにより、同型戦をイージーに決めるための《殺戮の暴君》が、中島に対しては通用しないのだ。

 こちらが1ゲームを終える間、もう片方の準決勝はすでにマッチまで終わってしまっていた。それほど長く際どいゲームだった……だがその果てに嶋崎は、構造上の不利を悟る結果となってしまった。

 それでも。すでに会場に残っているプレイヤーもまばらになってきた時間帯にもかかわらず、嶋崎の友人たちは嶋崎の勇姿を固唾をのんで見守ってくれているのだ。

 彼らの応援に応えるために。そして何より、自分自身のために。嶋崎はサイドボーディングを終え、2ゲーム目へと踏み出す。

 
ゲーム2

 7枚のオープンハンドはお互いマリガンで、こういった部分でもどういうわけか息が合っている。

中島「土地1ラノエははたしてやり得なのかどうか……」

嶋崎「微妙ですよね……」

 そんなことを言っていると、嶋崎の方が《ラノワールのエルフ》スタートに成功。だが続くターンは1点アタックからの《探求者の従者》で、いまいちマナ加速の恩恵を受けきれない。

 中島は《マーフォークの枝渡り》を出すが、これは《探求者の従者》と相打ちとなる。嶋崎は《マーフォークの枝渡り》を出すもめくれたのは土地で、続く中島の3ターン目と嶋崎の4ターン目はお互いセットのみでアクションがない。

 ならばと中島は《ゴルガリの女王、ヴラスカ》をプレイし、[-3]能力で嶋崎の《ラノワールのエルフ》を落とす。前のターンに5マナでアクションがなかった以上、《殺戮の暴君》を抱えている可能性が高いとの判断か。これに対して嶋崎はターンエンドに早くも《愚蒙の記念像》を起動し、《探求者の従者》を回収すると、《真夜中の死神》を出してターンを返す。

 だが中島は《貪欲なチュパカブラ》でこれを除去。嶋崎も《探求者の従者》から《真夜中の死神》を送り出すが、返すターンに中島は一足先に《殺戮の暴君》を着地させる。

 ここで《真夜中の死神》でカードは引けている嶋崎だが、《殺戮の暴君》への解答がない。するとこれを見た中島が送り出したのは、さらに2体目の《殺戮の暴君》! これにはさすがの嶋崎からも苦笑が漏れる。

 そしてついに。

 《野茂み歩き》2体と《ラノワールのエルフ》をブロッカーとして並べたはいいものの、残りライフ10点で自身の《真夜中の死神》が枷となってうまくブロックができなくなった嶋崎は、あえなくそのまま殴りきられてしまったのだった。

中島 2-0 嶋崎

 

嶋崎「《打ち壊すブロントドン》、サイドから入れました?」

中島「入れましたよ。《不滅の太陽》出されたら即死なんで」

嶋崎「ですよね。なので、入れませんでした(笑)」

 ゲームが終わっても、2人のゴルガリトークは終わらない。熱戦がよほど楽しかったのだろう、負けたにもかかわらず嶋崎の表情は晴れやかだった。

 それでも、どんな時間にも終わりは来る。ジャッジが中島をそろそろ決勝戦の席に座るようにと促すと、嶋崎はそのタイミングで名残惜しそうにしつつもその場を去ろうとした。

 そのとき私は嶋崎のパーソナリティをもう少し知りたかったので、少しだけ話を聞く時間をいただくことにした。そして嶋崎がマジックを始めたのが『タルキール覇王譚』のあたりであり、グランプリに参加するのはまだ2回目だと言うので、素直に「それはすごいですね」と返した。

 すると驚くべきことに、その話を聞いていた中島も、グランプリへの参加はまだ2回目だというのだ。

嶋崎「同じ2回目で、どっちもゴルガリ……本当に気が合いますねー」

 中島も嶋崎も。このマジックがつないだ奇縁を、グランプリトップ8という最高の思い出を語るたびに思い出すことだろう。ゴルガリへの愛で通じ合った、準決勝の好敵手のことを。

 そして嶋崎は、これが学生時代の教室での出来事だったならすぐにでも友達になれたであろう中島を、友人に対してするのと同じように。

 激励して、決勝戦へと送り出す。

嶋崎「あー……楽しかった。勝ってくださいよー!」

中島「勝ちますよ!」

 そして中島は、一足先に勝利を決めて待っていた夏目との決勝戦に赴いてゆく。

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RESULTS

対戦結果 順位
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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