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グランプリ・静岡2018(レガシー)

戦略記事

デッキテク:市川 ユウキの「グリクシス・デルバー」

Hiroshi Okubo

(この記事はグランプリ本戦1日目に取材したものです)

 プロツアー予選がグランプリのサイドイベントとして開催されるようになって早1年と10か月弱。今回は日本で初めて開催されるダブルグランプリということもあって、本戦前日の11月29日(木)からレガシーフォーマットにてプロツアーの権利をかけた戦いが繰り広げられた。

 グランプリ本戦に向けた前哨戦として非常にハイレベルな大会となったこのプロツアー予選。そこで惜しくも優勝を逃してしまったものの、準優勝に輝いたのが市川ユウキの「プロツアー参戦記」でもお馴染み、日本を代表するトッププロの一人である市川 ユウキ(MO)である。

 今でこそプロツアー・チームシリーズ「武蔵」の一員として活躍中の市川だが、その名がマジック界で広く知られるようになったのは意外にも「日本レガシー選手権2013」や「Eternal Festival Tokyo 2013」など、レガシーフォーマットでの活躍がきっかけだった。プロマジックとレガシーは一見関連性が薄く見えるが、しかし彼のキャリアを語るうえでレガシーは非常に重要なファクターを占める。

 そんな市川が選択したデッキは「グリクシス・デルバー」だった。聞けば「2年前から使っている」とのことだが、そんな「グリクシス・デルバー」のキーカードだった《死儀礼のシャーマン》(ならびに《ギタクシア派の調査》)が禁止されたのは今年の7月のこと。ともすれば、現在のデッキリストには当然変化があるだろう。果たして市川は今大会に向けてどのようなリストを持ち込んだのか? そして、プロプレイヤーでありレガシー巧者として知られる市川が見る今のレガシー環境とはどのようなものなのか? さっそく話を伺った。

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死儀礼のシャーマン》なき「グリクシス・デルバー」

――今年の7月には《死儀礼のシャーマン》と《ギタクシア派の調査》が禁止されました。特に《死儀礼のシャーマン》は「グリクシス・デルバー」にとって必須のカードと呼んでも過言ではなかったと思いますが、これによって市川さんのリストにはどのような変化がありましたか?

市川「まず変わった部分を話す前に変わっていないところから話すと、《秘密を掘り下げる者》と《グルマグのアンコウ》が4枚ずつというところは同じです。《ギタクシア派の調査》が入っている『グリクシス・デルバー』もあったようですが、僕は個人的にあのカードがあまり好きじゃなかったので入れていませんでした。なので、その点も変化がありません」

市川「しかし、おっしゃる通り《死儀礼のシャーマン》についてはもちろん僕も4枚使用していたので変更しています。変更先の候補は《若き紅蓮術士》と《真の名の宿敵》、《瞬唱の魔道士》、《苦花》あたりで、MOや一人回しをして調整していきました」

――なるほど。そういった調整の際には他のデッキリストを参考にされることもあったのでしょうか?

市川「デッキリスト自体はいっぱい見ましたね。それに加えてずっと『グリクシス・デルバー』を使っているプレイヤーの話を聞いたり。そこで『なんで土地19枚なの?』とか『このカードってそういう理由で採用されてるんだ』みたいな情報を集めて、あとは試行回数を増やしていきました」

どのように調整するのか?

――では、他のリストや他人のアドバイスをもとにデッキを組んだりリストをチューニングするというよりは、それらを参考にしながらあくまで自分を主体にデッキを調整していくような感じでしょうか?

市川「ええ。たとえば今回使用しているデッキでは《思考掃き》が4枚入っているんです。元々ずっと《思考掃き》3枚のリストを回していたんですが、これはそもそも他のリストだと《定業》の枠だったりして。そういった部分は自分の手に馴染むというか、納得いく形に調整していますね」

――《思考掃き》を使用されているのはどういった理由からでしょうか?」

市川「《グルマグのアンコウ》が好きなので(笑)。それに、たとえば《思案》や《渦まく知識》でトップに置いた不要牌を墓地に落としたり、白青奇跡がトップに《終末》を積んでいそうなときに対戦相手を対象に取って墓地に落とすといったギミックもあって、個人的に気に入ってるんです。それに《定業》はソーサリーだけど《思考掃き》はインスタントです。この違いはクロック・パーミッションでは非常に大きいですから」

――たしかに言われてみると《思考掃き》にしかできない仕事もたくさんありますね。ところで今、クロック・パーミッションという語が出ましたが、市川さんといえば「カナディアン・スレッショルド」を愛用されていたイメージも強いです。今大会で「カナディアン・スレッショルド」を使用することは検討しましたか?

市川「もちろん回しましたよ、《ボーマットの急使》が入っているリストとかね。それこそ『グリクシス・デルバー』や『カナディアン・スレッショルド』以外にもいろいろとデッキは試したんですが、どれもしっくりこなくて。レガシーは慣れも重要なフォーマットなので、結局このリストに落ち着いたという感じです」

現在のレガシー環境は……?

――やはりプロといえども使い慣れたデッキを一朝一夕で鞍替えできるわけではないんですね。最後になりますが、現在のレガシー環境についてどのような印象を持たれていますか?

市川「1ターン目の《死儀礼のシャーマン》を除去できないとそのままマウント取られる、みたいなゲームも頻発していたので、それがなくなった分、1マナ除去の価値は若干下がりましたね。急いでクリーチャーを除去する必要がなくなりましたから。使っていた僕が言うのもなんですが、《死儀礼のシャーマン》というカードは強すぎてつまらなかったですよ」

――現在の環境は文句なし、と

市川「ですね。《師範の占い独楽》に続いて《ギタクシア派の調査》も《死儀礼のシャーマン》も順当なところが禁止されていって、強すぎるデッキがなくなったので環境としてはすごくいい感じだと思います」

――ありがとうございます。この後もがんばってください!

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 激動の禁止改定から半年弱の月日が経過した今、レガシー環境は市川いわく「強すぎるデッキがなくなった」多様性のあるものになっている。何しろ、環境で最も多いと言われる「グリクシス・デルバー」にさえ固定の形が定まっておらず、市川が《思考掃き》を4枚搭載しているように、調整の余地が多く残されているのだ。

 フォーマットの特性を掴み、メタゲームを俯瞰し、デッキリストを精査し、試行回数を増やす。そして、そのいずれかだけを闇雲に行うのではなく、いずれも十分に行う。勝利のために経るべき過程は多いが、それを積み重ねてきたことが今の市川を形作り、そして、集大成としてこのリストが生まれたのだろう。

市川 ユウキ - 「グリクシス・デルバー」
グランプリ・静岡2018(レガシー) (2018年11月30日~12月1日)[MO] [ARENA]
3 《Underground Sea
3 《Volcanic Island
2 《汚染された三角州
2 《沸騰する小湖
2 《霧深い雨林
2 《溢れかえる岸辺
4 《不毛の大地
-土地(18)-

4 《秘密を掘り下げる者
2 《若き紅蓮術士
2 《真の名の宿敵
4 《グルマグのアンコウ
-クリーチャー(12)-
4 《渦まく知識
4 《思案
4 《思考掃き
4 《稲妻
2 《思考囲い
2 《呪文貫き
1 《呪文嵌め
4 《目くらまし
1 《削剥
4 《意志の力
-呪文(30)-
1 《イゼットの静電術師
2 《紅蓮破
2 《外科的摘出
1 《水流破
1 《真髄の針
2 《苦花
2 《悪魔の布告
1 《削剥
1 《仕組まれた爆薬
1 《最後の望み、リリアナ
1 《
-サイドボード(15)-
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RESULTS

対戦結果 順位
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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