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グランプリ・静岡2017春
第11回戦:瀧村 和幸(東京) vs. 井川 良彦(東京)
By 矢吹 哲也
「横にいると頼もしいことこの上ないんだけど、前に座って欲しくないなあ」
と、井川 良彦はチーム戦グランプリで何度もチームを組み、グランプリ・北京2015ではともにトップ4入賞を果たした仲間に言った。
ここでは倒すべき対戦相手となった目の前に座るプレイヤーは、瀧村 和幸。プロツアー王者にしてプラチナ・レベル・プロの彼は今大会、「情で選んだ」という「黒緑エルドラージ」を手にここまで9勝1敗の好成績を上げている。
その瀧村が「機体マスター」と評する井川の使用デッキは、無論「マルドゥ機体」だ。「いやいや今回運が良い」と謙遜する井川だが、こちらもここまで9勝1敗。運だけではなし得ない。
瀧村 vs 井川。プロ・プレイヤー同士のハイレベルな戦いが繰り広げられる。 |
ゲーム展開
「じゃあさ、BMのダイスと晴れる屋のダイス1個ずつ振ろう?」
勝負はダイス・ロールから始まった。自身の所属チームに願いをかけた井川の出目は......
BMダイス:6+晴れる屋ダイス:2
「おい!しっかりしろよ!」(ダイスの結果も負け)
閑話休題。
ゲームが始まると、先手の瀧村の2ターン目《歩行バリスタ》に対して井川も《キランの真意号》で対抗。瀧村は《地下墓地の選別者》を繰り出し戦線を横に広げると、井川は《致命的な一押し》で《歩行バリスタ》を退場させた。
続けて《経験豊富な操縦者》を繰り出し「搭乗」させた井川は、ファースト・ヒットから5点のダメージを与えた。しかし瀧村も負けてはいない。エルドラージ・末裔・トークンから生み出されたマナを使って4ターン目に《現実を砕くもの》を送り出し、こちらも5点の反撃で応じる。
ハード・パンチを交換する両者の戦いは、しかし井川の方へ有利に動いた。瀧村が2枚目の《地下墓地の選別者》を唱えたところで、井川は《無許可の分解》を《現実を砕くもの》へ撃ち込みこれを除去。瀧村は2点で反撃後こちらも《キランの真意号》を設置したものの、井川は《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を戦線へ追加しプレッシャーをかけ続ける。
土地をすべて立たせてターンを渡した瀧村に対し、井川は《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》をクリーチャー化し、《経験豊富な操縦者》を乗せた《キランの真意号》とともに攻撃。強烈な攻撃を前に苦笑いの瀧村は生き残るすべを求めて少考したものの、やがて「ダメだね」とカードを片付けた。
驚異的な攻撃力で瞬く間にゲームを奪う井川。 |
第2ゲームに向けてシャッフルを終えた両者だが、ここでデッキチェックが入り、一時休戦。両者は第1ゲームの感想戦を始める。《地下墓地の選別者》の占術、お互いの除去の有無、唱えるタイミング......やがて両者の考察は2ターン目まで遡り、瀧村が《歩行バリスタ》を繰り出さなければ勝っていた(かも)という結論に至った。
「あれ出さないことある?」と愕然とする瀧村に、井川も「いや、2、3、4ターン目とスムーズな動きが確実なのに出さないの気持ち悪いでしょ」と同意する。経験も実績も豊富な両者だが、またここでひとつ、マジックの奥深さを味わうことになったようだ。
第2ゲーム、マリガンを喫した井川は2ターン目《経験豊富な操縦者》でスタート。瀧村は2ターン目《屑鉄場のたかり屋》、3ターン目《地下墓地の選別者》と快調に展開を進め、《屑鉄場のたかり屋》は《グレムリン解放》を受けたものの、その後も《オラン=リーフの廃墟》で強化した《作り変えるもの》を2枚続けて展開し攻勢を握る。
防戦の井川は《致命的な一押し》で《作り変えるもの》を1体除去したものの、続く《現実を砕くもの》を《苦渋の破棄》で対処すると手札が枯れた。
《経験豊富な操縦者》と相討ちになった《作り変えるもの》は《巻きつき蛇》へ変わり、瀧村はさらに《屑鉄場のたかり屋》を追加した。井川は《反逆の先導者、チャンドラ》で《巻きつき蛇》を除去したものの、しかしこの時点で残りライフは6点。瀧村は《屑鉄場のたかり屋》を墓地から戻し、井川の戦場に唯一残るブロッカーを《闇の掌握》で退場させると、井川のライフを削り切った。
瀧村の反撃で試合はイーブンに。 |
「待望の先手でございます!」と、ゲームを落とした井川がニヤリと笑みを浮かべた。瀧村は「うるさいっ!冷えろ!」と悪態を吐いたが、「でもこの3ゲーム目が面白いんだよね」と続けた。
「ヒリヒリする」と応じる井川。両者はマジックの、競技の妙味を存分に楽しんでいる。
初手を見た両者は互いにキープを宣言すると、井川が1ターン目《スレイベンの検査官》で口火を切った。
続く2ターン目、3ターン目と脅威を追加できなかった井川だが、瀧村の繰り出した《不屈の追跡者》を《停滞の罠》で除去し、続く《難題の予見者》に対応して《大天使アヴァシン》を展開。《難題の予見者》によって2枚あった《無許可の分解》を1枚失ったものの、もう1枚で《難題の予見者》を除去。瀧村は《巻きつき蛇》から《歩行バリスタ》を唱えたが、井川はそれに対応して《苦渋の破棄》を放ち、盤面の主導権を握らせない。
地上を固めながら《大天使アヴァシン》での攻撃を続ける井川。瀧村は自身の《作り変えるもの》へ《致命的な一押し》を唱えて土地を伸ばすと、6マナに到達したところで《害悪の機械巨人》!
これで窮地は脱した瀧村だが、ライフ差は7対14と予断を許さない状況だ。《経験豊富な操縦者》を盤面に加えた井川は、地上をしっかり固め航空戦力の到来を待つ。
一方、激しい消耗戦に瀧村の手札も減り、この状況を打破するすべが見つからない。ついに《キランの真意号》を引き込んだ井川に対し、瀧村は《害悪の機械巨人》で攻撃に出た。2体の《経験豊富な操縦者》を乗せた《キランの真意号》は6/6となり、《スレイベンの検査官》とダブルブロックでこれを防いだ。
《キランの真意号》による攻撃で瀧村の残りライフは3。
最後のドローを確認すると、瀧村は右手を差し出した。
瀧村 1-2 井川
「裏目を引くことが多く、難しい試合でした。悪い方向に噛み合ってしまいましたね」と、瀧村は試合後に語る。「最終ゲームも、相手が除去ハンドなら《不屈の追跡者》からプレイすべきではなかったし、基本的に土地は5枚まで並ぶことを想定しているこのデッキで6枚目を引くために、手掛かりも温存するべきでした」
そして最後に、彼は「うん、勝てる試合だった」とはっきり言い切った。
マジックでは不運を不運と割り切ることも大切だとされるが、強者は決して単に「結果論」で片付けない。
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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