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EVENT COVERAGE
グランプリ・京都2017
準決勝:Jon Finkel(アメリカ) vs. William Jensen(アメリカ)
By Yohei Tomizawa
お金じゃ買えない価値がある。
世の中にそんなことがどれほどあろうか。
趣味嗜好なんて千差万別、共通の興味があっても必ずしも受け入れられるとは限らない。
たとえそうだったとしても、世界中の多くのマジックファンへ、そしてまだマジックを知らぬ未来のマジックファンへ伝えたい。
「マジックの試合には、野球やサッカーといったプロスポーツと同じように、お金を払ってでも見たい感動に溢れた試合が数多くある。」
これからお送りする試合は、特に価値がある。
お金じゃ買えない価値がある。その言葉通りに。
ジョン・フィンケルは、ヒーローだ。
プロツアートップ8が16回、うち優勝3回と、文句なしのトッププレイヤーであり、生ける伝説である。
ただ過去の成績が優れているからだけではない。多くのプレイヤーが、彼の「フィンケルトロン」と呼ばれた緻密なプレイに、スマートな振る舞いに、老いてなお残る色気に、魅了されないはずがない。
端的に言おう。フィンケルとは、かっこいい男の象徴なのだ。
他方、ウィリアム・ジェンセンも、プロツアートップ8が5回、うち優勝1回と、十分すぎる成績を残しており、今なおプロマジックのトップシーンを走っている。
現在も、特にチーム戦において素晴らしい成績を残しているジェンセンだが、勝ち続けていることだけで評価されているのか。なぜジェンセンが魅力的なのか。
それは一種の萌え要素に他ならない。
ペンを右耳に挟みながら、真剣にマジックをプレイする。そして時折笑う。渋く笑う。こんなチャーミングな姿があろうか。
マジックに秀でている両者の試合だから、価値があるわけではない。
マジックに対する姿勢が、立ち振る舞いが、一人の人間として魅力的だから、この試合に価値があるのだ。
だから彼らをはじめ多くの人がプレイする、マジック自体に価値が生まれるのだ。
ゲーム1
緑多色デッキであるフィンケルは、《森》《不屈の砂漠》《楽園の贈り物》《川ヤツガシラ》《縞カワヘビ》《大いなるサンドワーム》《最後の報賞》とバランスよくカードの揃った手札をキープ。
ジェンセンは3ターン目、フィンケルは2ターン目をサイクリングに費やし、フィンケルが最初のクリーチャーとして《ロナスの重鎮》を召喚する。
ジェンセンは、色マナ供給とジャンプアップを一度に実現する《オアシスの祭儀師》を召喚し、次のターンへの布石とする。
だがフィンケルは、《ロナスの重鎮》を督励して攻撃し、第2メイン・フェイズに《活力のカルトーシュ》をエンチャントすることで、《オアシスの祭儀師》を一方的に除去することに成功する。
再び展開。ジェンセンは《よろけ腐り獣》《採石場の運び屋》、フィンケルは《川ヤツガシラ》と《抑え難い渇き》をそれぞれ唱える。
ノーガードの殴り合いにより、ライフはフィンケルが15、ジェンセンが13と、フィンケルが優位に立っていたが、ジェンセンが《毒の責め苦》で《ロナスの重鎮》を除去すると、《よろけ腐り獣》の4点ダメージが重くのしかかる。
クロックアップのため召喚した《エイヴンの修練者》も《オベリスクの蜘蛛》に止められてしまい、フィンケルは思ったようにダメージレースを展開できない。
ならば守勢に回るべしと《シェフェトのオオトカゲ》を召喚するが、《超常的耐久力》で一方的に討ち取られてしまう。《猛り狂うカバ》こそ《最後の報賞》したが、フィンケルのライフは5。
しかしジェンセンの大型クリーチャーがいなくなったことが幸いし、ここからスーパー《川ヤツガシラ》タイムがスタートする。
メイン起動を3ターン繰り返すと、あっという間に10マナの供給体制ができ、毎ターン4点ライフを得てカードを2枚ドローという一方的なエンジンが完成。
マナフラッド気味のジェンセンはターンを返すのみだが、狙いは別にある。そう、毎ターンの過剰ドローにより、フィンケルのライブラリーは7枚、枯渇寸前なのだ。
残りライブラリーを2枚としたターン、置いたのはこのゲーム初めての《平地》。
そして唱えられたのは、
1ターンで28点のライフを削る手段はなく、ジェンセンは投了。
フィンケル 1-0 ジェンセン
ゲーム2
フィンケルの初手は、《森》3枚、《島》《不屈の砂漠》《希望守り》《空からの導き手》。
ジェンセンがキャストした《オベリスクの蜘蛛》が空ににらみを利かすが、フィンケルは《希望守り》、《ロナスの重鎮》、《空からの導き手》、《エイヴンの葦原忍び》と連続召喚し、除去呪文1枚で一気にゲームを決めうる戦線を作り上げる。
だが、まさかではあるが、都合よくクリーチャーが並んだことが、フィンケルにとって最悪な結末を引き起こす。
ジェンセンがこれら2枚のパーマネントと2枚のサイクリングカードを組み合わせると、あ~ら不思議。
フィンケル側のクリーチャーが全滅し、昆虫・トークンが8体生成される。
先ほどまでの真剣な顔が嘘のように、フィンケルは笑いながら土地をたたんだ。
フィンケル 1-1 ジェンセン
ゲーム3
フィンケルは、《森》《不屈の砂漠》《しなやかな打撃者》《最後の報賞》《ロナスの重鎮》《抑え難い渇き》《シェフェトのオオトカゲ》という、マナベースに不安はあるが強力カードの多い手札をキープ。
《ロナスの重鎮》と《立て直しのケンラ》の交換を経て、フィンケルはゲーム1の決め手となった《川ヤツガシラ》を召喚する。
ジェンセンは、ゲーム2の決め手となった《スカラベの巣》を貼ると、《華麗な苦悶》《毒の責め苦》を効果的に使用し、トークンを生み出しながら、フィンケルのリソースを削り始める。
特にアドバンテージの塊である《川ヤツガシラ》を《毒の責め苦》で除去できたことは大きく、フィンケルはクリーチャーを引けないことと相まって、毎ターン4体の昆虫・トークンからダメージを受け続けてしまう。
フィンケルも壁となるクリーチャーを召喚しようとするが、《採石場の運び屋》、《イフニルの魔神》と対処を迫られ、除去呪文に費やしたことでクリーチャーを召喚するマナが不足し、気がつけば残りライフは4。
《大いなるサンドワーム》、《縞カワヘビ》といったファッティで防御網を構築するが、数の暴力によりすり抜けた昆虫・トークンへ《超常的耐久力》がキャストされると、フィンケルは右手を差し出したのだった。
フィンケル 1-2 ジェンセン
もし、言葉だけで伝わらないとすれば、動画など映像で見てほしい。
もし、映像だけで伝わらないとすれば、遊んでみてほしい。
もし、遊んでみて伝わらないとすれば、勇気を出してカードショップへ足を運んでほしい。
そこではきっと、お金じゃ買えない、素晴らしい価値のある出会いがあるから。
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