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グランプリ・神戸2017

観戦記事

第13回戦:瀧村 和幸(東京) vs. Kelvin Chew(シンガポール)

By 矢吹 哲也

 第12回戦を終えてもなお全勝を維持する者がいる一方で、予選ラウンド残り3回戦のこの段階で「崖」――つまりトップ8入賞を目指す上でひとつも落とせないところで戦いを続ける者もいる。世界的に見ても参加人数の多い日本のグランプリでは、3敗以上を喫してしまうとトップ8入賞への道はほぼ断たれてしまうのだ。

 そして瀧村 和幸とケルヴィン・チュウ/Kelvin Chew、実績も名声も十分に持つこの両者もまた、一歩踏み誤れば脱落する危ういところで戦っていた。ここ第13回戦のフィーチャーマッチにて、互いが互いの前に乗り越えるべき壁となり立ちはだかる。


長丁場の終盤で迎える強敵。疲れている暇もない。

瀧村 和幸(ドレッジ)vs. ケルヴィン・チュウ(Knightfall)

 瀧村は初手を端から一瞥すると、小さく頷きマリガンを宣言。続く6枚の手札にも肩をすくめると、もう一度「マリガン」と声を上げた。ここに来ての不運に苦しい表情を見せるが、「できることをやるのみ」と5枚の手札に向き直り、ゲームを始める。

 1ターン目、瀧村は《傲慢な新生子》を繰り出すと、チュウも1ターン目から《極楽鳥》。だが瀧村は2ターン目に《傲慢な新生子》を生け贄に捧げ《ゴルガリの凶漢》を捨ててカードを引いたものの、土地を引き込めない。

 その間にチュウは《献身のドルイド》、《薄暮見の徴募兵》と展開を続け、最後に《聖遺の騎士》も盤面に加わった。

 いまだ土地1枚で止まる瀧村は何もできずターンを返す。チュウは「変身」した《爪の群れの咆哮者》を含め全軍で攻撃し、《ガヴォニーの居住区》で打点を跳ね上げた。ターンを迎えた瀧村は最後のドローも土地でないことを確認すると「Next game」とカードを片付けるのだった。


思うように動けない瀧村に対し、コンボによる勝利より素早くビートダウンによる勝利を収めたチュウ。

 第2ゲーム、気を取り直して今度は7枚でキープした瀧村。チュウが1ターン目《貴族の教主》でスタートを切ると、そのターンの終了時に《暗黒破》を差し向ける。

 そして迎えたターン、瀧村の「発掘」が爆発した。《安堵の再会》で《壌土からの生命》と《臭い草のインプ》を捨てると、続くドローをすべて「発掘」に変換。大量のカードを墓地へ落とす。《ナルコメーバ》1体が戦場に現れ、続けて土地を置くと2体の《恐血鬼》の「上陸」が誘発してそれらも戦場へ飛び出した。

 手札に回収した《暗黒破》でチュウの《極楽鳥》を除去し、瀧村はチュウに5点のダメージを与える。チュウは《薄暮見の徴募兵》を繰り出すと、続けて《聖遺の騎士》を盤面へ。瀧村はさらに「発掘」を進め、2体目の《ナルコメーバ》を戦線に加えた。これにより《秘蔵の縫合体》の能力も誘発し、瀧村の軍勢は圧倒的なものになる。

 瀧村はチュウに体勢を立て直す隙を与えず、大量の墓地を燃料に《燃焼》のフラッシュバックを放ち守りを一掃。今度はチュウが「Next game」と声をかけることになった。


瀧村の「発掘」が爆発する。

 最終ゲーム、チュウは「1ターン目マナ・クリーチャー」のスタートは逃したものの、2ターン目に《献身のドルイド》を展開。瀧村は1ターン目に《傲慢な新生子》を繰り出し、《ゴルガリの凶漢》を捨ててドロー。続けて《稲妻の斧》で《秘蔵の縫合体》を捨てつつ《献身のドルイド》を対処する。

 返しのターンにチュウは《漁る軟泥》を繰り出し、瀧村の「発掘」を阻んだ。瀧村は《壌土からの生命》で土地を回収するが、「発掘」の種は《漁る軟泥》で追放される。《貴族の教主》の「賛美」も加わり4点のクロックが刻まれると、瀧村に残された時間は多くなくなった。

 瀧村は残る4枚の手札すべてを捨てて墓地の《燃焼》を《漁る軟泥》へ放った。チュウは対応して《臭い草のインプ》を追放したものの、これで墓地へ触る手段を失う。瀧村は「発掘」を行い《暗黒破》を回収。《貴族の教主》へ差し向けた。

 しかしチュウが《集合した中隊》を放つと、そこには2体の《聖遺の騎士》の姿が!

 強烈な攻撃を受けた瀧村は一気に追い詰められた。続くターンの「発掘」に望みを託す彼だが、ライフを残す手段は見出だせず、右手を差し出したのだった。

瀧村 1-2 チュウ

 「なんか彼(チュウ)とやると毎回どっちかが事故るんですよね......」と、瀧村は苦い顔を見せた。「プロツアーで当たったときは彼が土地引かなくて、この前の静岡でもそうだったかな。今度は僕の番か......」

 マジックではどんなプレイヤーにも手札や引きの「事故」はつきもので、重要な場面でそれが起こってしまうことも多々ある。しかし逆に、そのランダム性ゆえにドラマが生まれることもあるのだ。

 「まあ、『これもマジック』ってやつですね」と、瀧村はやや寂しそうにフィーチャーマッチエリアを後にするのだった。

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RESULTS

対戦結果 順位
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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