読み物
準々決勝: 大森 健一朗(兵庫) vs. 猪野 健太郎(京都)
by Keita Mori
大森:赤緑白ナヤ
猪野:《》型《》コンボ
ともに23歳。ふたりの関西勢がグランプリ神戸の準々決勝で戦うこととなった。猪野にこそプロツアー・京都17位入賞という経歴があるが、双方ともトーナメントシーンにおいてはこれからが期待される競技者、つまりは新鋭ととらえて良い存在だ。果たして彼らのいずれかが栄光の頂点まで駆け上がれるのか、第一関門となる準々決勝戦の時間無制限三本勝負である。
京都府在住の大学生である猪野は「サイドボードから《》を採用しやすい形を模索した」と語るデザインの《》型《》だ。いま現在のエクステンデッドのメタゲームにおける二大勢力の片割れを駆り、堂々のプレイオフ初進出である。
一方の大森は兵庫・大阪を本拠とする若手で、こちらも大舞台のシングルエリミネーションは初進出である。読者各位にとって特筆すべき事前情報としては、大森が「殿堂者」藤田 剛史のもとで薫陶を受けているということが挙げられるだろうか。そう、ただの新鋭ではなく、由緒正しき藤田塾の門下生なのだ。
試合前のひととき、大森の師匠でもある藤田に、彼のナヤデッキについて尋ねてみることにした。藤田いわく、《》《》《》といったカードを採用することを彼が奨め、今のデザインになったという。特に《》の採用によっていくつかのマッチの相性は劇的に改善したそうだ。
「もっとも」と藤田は続ける。ナヤはゲームを決するスピードが速いわけでもないし、メインボードにカウンターがあるわけでもない。妨害手段として《》のほかに《》まで採用しているとはいえ、猪野のデッキはメインボードにおける相性が良いとは言えない相手だ。
誤解を恐れずに言うなら、マナ加速4ターンキルのようなパターンに対抗するには無防備な類のアーキタイプである。そんな中、まっすぐにコンボにむかう猪野に対して、どこまで大森が効果的な妨害手段を用意し、ダメージクロックを何とか仕掛けられるかどうか? そんな一戦になりそうだ。
Game 1
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猪野 健太郎 |
先手の猪野は土地5枚に《》と《》という手札を即キープ。対する大森は立ち上がりの遅いハンドをマリガンし、2ターン目に《》から仕掛けられる6枚の手札で開始することを決断した。
《》《》とセットして《》を2ターン目に召喚する猪野。後手の大森も予定通りに《》2枚からの《》。
3ターン目を迎えた先手の猪野は《》で《》を除去。しかし、大森も《》で即応。《》からコンボパーツを探しに行った猪野の4ターン目終了ステップに能力を起動し、デッキの主要エンジンである《》を奪回しにかかった。4ターン目のメインフェイズを迎えた大森はタップインで4枚目の土地を置いただけでターンを渡す。
5ターン目を迎え、猪野は5マナ目となる《》をアンタップインし、手札には《》と《》を抱えてターンエンド。このエンドステップに大森は《》を起動して《》を捨て、次なる《》を手札に迎え入れた。
実は3ターン目の段階からすでに《》を持っている猪野は、とにかく《》を引きたい。が、かなわない。6ターン目にタップインで《》を置き、マナをたててターンを渡すことになる。この猪野のターンのエンドステップにも大森は《》を起動し、《》を捨てて《》を入手した。
後手6ターン目を迎えた大森は《》のセットから《》を召喚。このエルフの「続唱」から導かれた《》が墓地に眠る2枚の《》の復活能力を誘発する。スタック上にいきなり出現した4体のクリーチャーを前に、マナをたてている猪野は考え込む。しかし、ここでは動かなかった。つまり、猪野は4/3速攻、4/3速攻、3/2速攻によるアタック宣言を受け入れたのだ。0/4の《》が3/2エルフをキャッチし、大森の残りライフは12点となる。
7ターン目を迎えた猪野はふたたびの《》でライブラリーを掘り進むも、《》は見つからない。《》をおいてターンをパスし、エンドステップの《》起動を見守ることとなった。大森がここでサーチしてきたのは《》。コストとしてディスカードされたのは《》だった。
もはや《》によって自在にゲーム展開へと関与できることとなった大森は、7ターン目にも《》召喚から動き出す。「続唱」からめくられた《》が猪野のライフを9点にまで削り落とし、大軍でのアタック宣言。当然のように《》が大森のアタッカーたちをタップアウトさせ、さらに新しいカード1枚を供給する。頼む、引かないでくれ。大森は祈るような面持ちで《》をレスポンス起動した。
引くな、と大森。
引いてくれ、と猪野。
危険域までライフを追いつめられながらも、成就まであと一歩の一撃必殺コンボ。
皆が見守る中での猪野のドローは、成就ならず。《》のキャントリップでターンを渡した猪野のゲームプランは、続く大森のターンを2枚目の《》でしのぎ、ライブラリーから《》を引くことに賭けるしかなかった。
後手8ターン目の大森は《》の「続唱」から《》をめくり出す。本来は「フルタップ+ドロー」で《》を使いたかった猪野だが、《》を見過ごすことは出来ず、「カウンター+フルタップ」で使用せざるをえなかった。
おそるべき布陣を作り上げた雄敵を前に、猪野は最後のドローを確認しにかかる。
引くな、と大森。
引いてくれ、と猪野。
大森 1-0 猪野
Sideboarding
不利であるはずのマッチアップで緒戦を奪い取った大森は、なんと一挙13枚ものカードをサイドボードから投入。下記の通り、デッキの中身をがらりと一新して第2ゲームに挑む。
IN
+3《》
+3《》
+3《》
+2《》
+1《》
+1《》
OUT
-4《》
-3《》
-2《》
-1《》
-1《》
-1《》
-1《》
一方その頃。
なんとかここから二本連取するしかない猪野は、戦前にTop 8 Profileで語っていた「《》を使いやすいデザインに苦心した」というコメントの通りの変更をおこなっていた。
IN
+3《》
OUT
-1《》
-1《》
-1《》
Game 2
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大森 健一朗 | |
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サイドボーディングの内容がそのまま勝敗を決する。
まさしくそんな一戦だった。
後手ながら盤面に《》を先行する大森。これが《》を除去するための手段である《》を阻むという序盤の攻防。猪野もなんとか《》からの《》能力起動で手札を整えにかかるが、生き残ってしまった《》がサーチしてくる《》が、たった一撃で青い悪魔を難なくなぎ払う。さらに《》泣かせの《》の二人目を派兵して、大森はターンを返した。
5ターン目を迎えた猪野は《》から《》とドロー加速を連打し、X=0の《》で《》をサーチし、盤面のマナを6マナ域まで到達させてターンエンド。大森は4/3《》と1/1《》でアタックして対戦相手の残りライフを9点まで削り落とし、《》をアンタップさせたままターンを終了。
猪野は《》からX=2で《》を詠唱し、先ほどの試合では喉から手が出るほどほしかった《》を着地させた。タップインで7枚目の土地である《》を置いてターンエンドを宣言し、敵軍参謀《》の次なる指令、はたして何がサーチされてくるかを見守ることとなった。
往年の《》デッキであるかのように、シルバーバレット戦略型の「一枚挿し」クリーチャーが大森のライブラリーから導き出された。かくて往年の「アーニーゲドン」さながらに決まった《》が、猪野のゲームプランを崩壊せしめたのである。
文字通りに敵将の領地を壊滅させ、大森健一朗が大きな勝利を掴み取った一戦となった。
大森 2-0 猪野
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