EVENT COVERAGE

The Finals 2018

観戦記事

第1回戦:鈴木 崇仁(栃木) vs. 渡辺 雄也(東京)

村上 裕一

 The Finalsは、日本マジック史における「歴史的」なイベントである。プロツアー、グランプリ、日本選手権……マジックにはさまざまな栄光ある大会が存在するが、中でもThe Finalsは独特の地位を占めている。スタンダードにおけるその年の日本最強を決定する大会として、1995年――平成7年に始まったこの大会は、2011年にいったん途絶したが、2017年に再開した。歴史に刻まれたその覇者たちは実に16名。――複数回の覇者がいるためでもあるが、わずか16名である。戴冠者の名前を少し紐解いてみよう。ジャパニーズ・レジェンドとも言うべき、塚本俊樹、石田格、黒田正城らがいる一方で、近年は実況解説としても姿をよく見る浅原晃、中村修平、津村健志など、まさに日本マジック史を凝縮したような顔ぶれである。今大会は、平成最後のThe Finalsとなる。果たして平成最後の戴冠者は誰になるのか――。

 第1回戦のフィーチャーに登場したのは、マジック・プロリーグへの参加も発表された、今、世界で最もホットなプレイヤーのひとりである渡辺雄也と、栃木を中心に活動する若手プレイヤーの鈴木崇仁。席につくなり粛々と慣れた手付きでシャッフルを始める両者。渡辺にとっては慣れたものであろうが、対する鈴木も冷静なもの。デッキを交換してカットした後、渡辺が「ダイスでいいですか」と聞いてサイコロを振る。渡辺、5。鈴木、7。鈴木の先攻でゲームが始まる。

 
鈴木 崇仁 vs. 渡辺 雄也
ゲーム1

 初手で両者のデッキが明らかになる。渡辺のデッキは、プロツアーから継続して使用してきた「イゼット・ドレイク」。対する鈴木のデッキは「ジェスカイ・コントロール」である。十分な土地が手に入らなかった鈴木は即座にマリガンを選択するが、一方の渡辺は少し悩み始める。《》が2枚の手札だったのである。手札には《溶岩コイル》があり、2ターン目から動ける可能性があり、《奇怪なドレイク》、《航路の作成》があるため、《》を1枚引き込めれば優勢に動けそうだが……。

 悩んだ末、渡辺はキープを選択する。対する鈴木、マリガン後の手札は《ドミナリアの英雄、テフェリー》、《パルン、ニヴ=ミゼット》を含んだ濃いものだが、土地に恵まれており即座にキープを決断、占術は下を選択しつつも、《断崖の避難所》をプレイしてスタートする。

 序盤は土地を並べ合うのみだったが、3ターン目に鈴木が《財力ある船乗り》をプレイしたところで動きが出る。宝物・トークンを1個生み出すクリーチャーである。軽量クリーチャーに対しては堅固な壁となり、除去されたとしても宝物トークンが残る。渡辺からすれば厄介なカードだろう。

 返しのターンで使いどころのなかった《溶岩コイル》が打ち込まれるも、渡辺は土地を引き込めず、《》2枚で止まってしまう。ディスカードを強いられることとなり、2ターン連続で手札の《奇怪なドレイク》が墓地行きとなる。

 ようやく《硫黄の滝》を引き入れた渡辺は、手札にだぶついていた3枚目の《奇怪なドレイク》を戦場に出して再起を狙うも、鈴木が宝物・トークンを生け贄に捧げながら唱えたのは《パルン、ニヴ=ミゼット》。ゲームを決定するクリーチャーの登場に、渡辺は投了を宣言した。

鈴木 1-0 渡辺

 

 渡辺は相手の《パルン、ニヴ=ミゼット》に対処できない《溶岩コイル》などのカードを抜き、《標の稲妻》や《パルン、ニヴ=ミゼット》、《イゼット副長、ラル》を増やしていく。一方の鈴木は《否認》や《発展+発破》など、長期戦を見込んだカードを入れていく。サイドボーディングは、特に言葉などはなく進む。

 
ゲーム2

 「先手もらいます」と述べた渡辺が、2ゲーム目は3枚の土地と《アズカンタの探索》、《パルン、ニヴ=ミゼット》、《イゼット副長、ラル》を含んだ手札をキープし、土地を置いてスタートする。

 2ターン目の《アズカンタの探索》設置に対して、鈴木は返しのターンに《宝物の地図》を置く。ともにライブラリートップを確認することでドローの質を向上させるカードである。戦況は拮抗と言える。

 ここで渡辺、占術で頭を悩ませる。土地を引き込んでハイコストなカードを早急に押し付けたい一方で、もう少しコストが安いクリーチャーを展開して相手にプレッシャーをかけていきたいとも見える。悩んだ末にドローを決断し、《選択》を打つも占術でいったん下に送る。そしてそこに重ねて《航路の作成》でさらに目的のカードを探しに行こうとするのだが、《選択》でトップにカードを残さなかったのを見咎めたのか、鈴木ここで《呪文貫き》。渡辺のドローを妨害していく。鈴木は余ったマナで毎ターン《宝物の地図》を起動し、目印カウンターを2個とする。3個になったら第2面に変身し、マナ的にもカード的にも大幅なりソースを獲得されてしまう。

 
鈴木 崇仁

 5ターン目。5枚目の土地を置いた渡辺は意を決して《イゼット副長、ラル》を唱えるが、鈴木これをしっかりと《否認》し、残ったマナを使って《宝物の地図》を起動、狙い通りに変身させる。返しのターン、鈴木も5枚目の土地を置くが、増えた宝物・トークンを利用して《パルン、ニヴ=ミゼット》を唱える。打ち消されないクリーチャー、通さざるを得ない。

 6ターン目、返しのターンで渡辺も《パルン、ニヴ=ミゼット》を唱える。このクリーチャーは、誰かがインスタントかソーサリーを唱えるとカードを1枚引くという能力を持っているため、鈴木はその着地前に《選択》を使い、一方的なアドバンテージを獲得していく。かくして2体の同名レジェンドが睨み合い、スタックに能力が複雑に積まれ合う場が出来上がった。合理的にスタックを処理するため、渡辺が空のスリーブを重ねることで視覚的に管理していたことはここに記しておきたい。

 返しのターン、鈴木長考。土地を置いて7枚にしたところで「コンバット」と宣言し、《パルン、ニヴ=ミゼット》で攻撃していく。渡辺、この意図を探る。クリーチャーの交換を期待されているのだろうか。しかし、もし相手が2枚目の《パルン、ニヴ=ミゼット》を持っていた場合、交換は裏目になる。《潜水》のようなカードで一方的に生き残られるのも望ましくない。考えた末、渡辺は攻撃を通すことを選択する。ライフ13。

 その想定は正しかったと言えるだろう。渡辺は鈴木の《パルン、ニヴ=ミゼット》を、《標の稲妻》とドロー時の誘発による1点ダメージで退場させようとするが、鈴木は《潜水》でこれを守ってきた。嬉しくはないが、想定どおりではあっただろう。《標の稲妻》には再活があるから、もう一度使い回すことができる。このカードを使用した誘発で渡辺は1枚ドロー。《弾けるドレイク》。墓地にはインスタントとソーサリーが合計4枚。渡辺はこのドレイクを戦場に出した。

 土地のほとんどが倒れた渡辺のもとの《パルン、ニヴ=ミゼット》に対して、鈴木が唱えたのは《裁きの一撃》。自身のパワーに等しいダメージを与えるというこのカードで《パルン、ニヴ=ミゼット》がどけられる。

 また、細かく呪文を唱えた誘発で生じたダメージが《弾けるドレイク》に打ち込まれ、そこで鈴木が唱えたのがX=2の《発破》。《弾けるドレイク》を倒しながら、鈴木は2枚ドローする。細かい誘発も積み重なり、鈴木のアドバンテージが膨大になっていく。《パルン、ニヴ=ミゼット》が攻撃し、渡辺のライフは残り5。

 追い詰められた渡辺、《アズカンタの探索》でライブラリートップの《標の稲妻》を墓地に落としながらカードを第2面《水没遺跡、アズカンタ》にする。ドローは値千金に見える《パルン、ニヴ=ミゼット》、自陣の土地は9枚。再活した《標の稲妻》で鈴木の《パルン、ニヴ=ミゼット》を除去し、余ったマナで《パルン、ニヴ=ミゼット》を唱……えない。渡辺、手札は3枚。

 
渡辺 雄也

 一方の鈴木、渡辺の葛藤をよそに、すかさず《パルン、ニヴ=ミゼット》を出していく。渡辺たまらず《選択》。着地されてからでは呪文を唱えていられない。続けて《水没遺跡、アズカンタ》を起動してドローを行う。何があれば状況を打開できるのか。渡辺、長考。対戦相手に問う。

渡辺「ハンドは6枚くらいですか?」

鈴木「7枚です」

 渡辺は《呪文貫き》を手札に入れて優先権を渡すと、鈴木はターンを終了する。そして帰ってきたところで渡辺も《パルン、ニヴ=ミゼット》を唱える。そのスタックで、鈴木は《選択》を唱える。誘発で1点ダメージ。誘発でカードを1枚ドロー。誘発で1点ダメージ。《選択》のドローで1点ダメージ。気づけば残りライフも1。渡辺は再活した《標の稲妻》で鈴木の《パルン、ニヴ=ミゼット》を狙うも、そこに《呪文貫き》が合わせられ、誘発でダメージ1点。ここで渡辺は投了を宣言した。

鈴木 2-0 渡辺

 

 鈴木によれば、彼の駆る「ジェスカイ・コントロール」は、「イゼット・ドレイク」に対しては無駄になるカードが多く、不利だという。そこで彼はゲームの趨勢を《パルン、ニヴ=ミゼット》に見定め、彼を一刻も早く召喚し、いかに守るかを焦点としてデッキ構築したという。果たしてその狙いは見事に的中し、彼は火想者を巡る戦いに勝利したのだった。

  • この記事をシェアする