By Shiro Wakayama
準決勝まで駒を進めてきたDavidとFabian。
David Sharfmanは、2182人と日本では想像がつかないような参加人数の
グランプリ・パリ2011(リンク先は英語)で華々しく優勝を飾り、そのままの勢いで予選ラウンドのドラフトでも5-1、決勝ドラフトでも
青赤のアグレッシブなデッキをピックして、
準々決勝で日本が誇るレジェンド藤田 剛史を下して、準決勝へと進んできている。
対するFabian Thieleは
プロツアー・パリで20位と好成績を収め、名古屋へとやってきた。大きな戦績があるわけではないFabianは、プロツアーサンデーを存分に楽しんでいるように見える。
ビデオマッチの準備が進んでいる間、Fabianはずっと楽しそうにDavidに話しかける。
だが、Davidは曖昧な返事をするだけで、答えない。勝利を見据えて、静かにコンセントレーションを高める。
様々な準備が整い、ライトを浴び、薄っすらと汗をにじませながら準決勝が始まる。
Game 1
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Fabian Thiele |
先手Fabianの《》が開幕のサイン。Davidは1ターン目《》、2ターン目《》、3ターン目《》と素晴らしいロケットスタートを切る。
盤面では非常に対処しずらい《》だが、Fabianは《》で即対処。だが、Davidは《》という相変わらず前のめりなクリーチャーを展開し、攻撃の手を緩めない。
盤面でビハインドのあるFabianだが、《》をプレイするだけに留まる。《》があるDavidは、時計の針を進めるだけで、どんどんリソースが増えていくような状態なので、そのままターンを終了。
《》が居座り、《》があるので無理矢理攻めることもできず、一方でカウンターが増え続けては対処できるカードがないため、Davidは《》で《》のカウンターを0へと戻す。
しかし、ここでDavidがトップデッキしたのは《》。金属術を達成しており、6/6速攻が駆け抜けて、Fabianのライフは一気に14へと落ち込む。
《》、《》を盤面に追加するFabianだが、劣勢は変わらない。《》が《》で飛行を得て、Fabianのライフを蝕む。いつのまにかFabianのライフは8まで落ち込んでしまう。
ここでFabianが《》を引き込んだことで、何とか場が均衡する。
互いにインパクトのあるカードを引けず、お互い2回づつ、ドローゴーを宣言したところで、FabianがDavidのエンド時に《》で《》を除去。さらに自身のターンで《》をプレイ。《》のカウンターが既に4つあり、ジリ貧な展開も見えるが、そうも言っていられない。
《》が、溢れる殺意をとどめることができずにアタックすると、ライフがまだ20のDavidはこれをスルー。そして終了時に《》をプレイ、さらに《》に溜まった6つのカウンターを取り除き、6体のマイア・トークンが、ばらばらとDavidの戦場に湧き出ると、Davidは自らのドローしたカードも満足に見ずにフルアタック。
Fabian 「えーと、死んでるってことだよね? 次行こうか。」
David 1-0 Fabian
Fabianは負けても笑みを絶やさない。真剣さが無いというわけでは全くないが、とにかく楽しそうにプレイをする。
カクテルライトを浴びて、3台ものテレビカメラが自らを追いかけ、天才カメラマン・Creig Gibsonが、自らの一番いい表情を見つけ出そうとカメラを構える。
バックヤードを含めれば、10名以上のスタッフが、彼らのマッチを支えている。そして、おそらく世界で数万人ものプレイヤーがライブ中継を見ているのだろう。
楽しまないのは損だとばかりに、負けたことを引きずらずに、楽しもうとするFabian。
Fabian 「Have fun!!」
Game 2
先手はDavid。
互いに一瞬の逡巡も無く、キープを宣言。2ターン目Fabian《》、3ターン目David《》、3ターン目Fabian《》、4ターン目David《》(対象は《》)、4ターン目Fabian《》という激しいアクションでゲームが始まる。
《》と《》がすれ違い、DavidとFabianのライフは17(毒0):20(毒2)となる。さらに《》がFabianの場に登場するが、これは《》で手札へとお帰り頂き、《》で果敢にアタック。Davidのライフを13まで落とす。
しかし、《》で毒カウンターの数が5個まで増え、《》が着地してしまうと、相手のプレッシャーも大きく、Davidは迂闊には動けず、《》を盤面に追加してターンを終了する。
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David Sharfman | |
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盤面が膠着して数ターンが経過したのち、Davidがドローステップにカードを引いた後、少しため息をついて小考に入る。
ビッグアクションを心に決めたのか、《》をレッドゾーンに突入させるDavid。相手が何も持っていないことがほぼありえない状況で、Fabianは深く考え始める。デッキリストが既に公開されているため、よく考えればここで相手が持っているカードは大体想像がつくはずだ。
少し考えて、意を決してブロックを宣言するFabian。ブロック指定は《》1体でのブロック。
《》が1/1まで縮んだ後、Davidはランドを置いてから、すべての土地をタップする。
戦場に現れたのは《》。自身がコントロールする《》を生贄にして、《》と《》が一気に墓地へと送り込まれる。《》の誘発型能力によって、毒カウンターは7個まで増えてしまうが、盤面はDavidが一方的に有利な状況に。
《》を盤面に追加するだけで、ターンを返すFabian。そのままの勢いで《》(-1/-1カウンター2個)と《》をレッドゾーンに送り込むDavidだが、《》を《》でブロックした後、《》をプレイすることで、盤面をまっさらに戻すFabian。そして、増殖によって毒カウンターは8個まで増え、毒死寸前といった状況に。
先にクロックを見つけ出したのはDavid。《》をプレイして、一気に時計の針を動かし始める。
だが、Fabianも直接的な回答では無いものの、《》を見つけ出し、何とか時間稼ぎをしようとする、が・・・
お互いに何も有効牌を引けず、《》がFabianを殴りきった。
David 2-0 Fabian
Fabian 「あー、全然何にも引かない。緊張するし暑いし喉渇いちゃった。ジャッジ、水貰えない?」
David 「あ、2つ下さい。」
プロツアーの準決勝とは思えない、なんだかフランクな雰囲気でゲームは進む。0-2となり、後が無いFabian。緊張と、焦燥を打ち消そうと明るく振る舞っているのか、本当に根っから楽しんでいるのか、その真意はわからない。
だが、Fabianのフランクな態度がDavidを少し軟化させたのか、彼もだんだんと笑顔になる。
Fabian 「Have fun!!」
David 「Of course!」
Game 3

少し悩んで後手を選択するFabian。互いにマリガン無し。
先手のFabianが《》でスタートを切ったのに対し、Davidは《》から《》をプレイして、プレイヤーに《》の能力で1点飛ばすというベストムーブでスタートを切る。
《》によってマナブーストに成功したFabianだったが、4マナのカードは無く、《》を出すにとどまってしまう。
しかも、これは《》によって誘発した《》の能力によって即除去。トークンへとなり代わってしまう。
《》をプレイするものの、《》が止まらず、ちびちびとダメージを削られ、さらに《》によって《》を割られてしまう。
この《》は威嚇持ちの《》がブロッカーをすり抜け、ダメージを通してサクリファイスで能力起動、即墓地へと直行となった。
《》がダメージを刻み続ける中、Fabianは《》から《》をプレイと、反撃の狼煙を上げる。
だが、Davidも為すがままにはされない。《》を《》に打ち込んで、《》の差で有利な場を維持し続ける。Fabianはじわじわとライフを削られ、既に12。
《》をトップデッキして、何とか逆転の芽を見出そうとするFabianだったが、Davidがトップデッキした土地からひねり出された6マナが呼び出したのは、またしても、《》。
虎の子の《》が即2/2ゾンビトークンへ化け、圧倒的な状況に。Fabianも、温存していた《》で《》は対処するのだが、《》と、《》+《》の能力でクロックが一時的に引き上げられる。
Fabianのライフは8まで落ち込んでしまい、さらに《》には既に6つのカウンターが乗っている。
《》を考えると少々厳しい状態ではあるが、《》を引いたFabianはこれを出す。

ターン終了時に、Davidは長考する。
手札にある《》。《》を手札へ戻して、《》を起動してフルアタックすれば、相手のライフは1へと落ち込む。《》は失うものの、トークンの群れが6体という、対処しずらい盤面を作ることができる。これをなんとかできるカードがあるかどうか、Davidは記憶を懸命にひも解く。
意を決して、《》を起動するDavid。
だが、彼のデッキからもたらされたカードは、そんな心配を払拭するカードだった。
《》。
マジックというゲームで勝利するために必要なのは運なのか? 実力なのか? 様々な意見があるだろう。
だが、どちらかだけでは絶対に勝つことができない。今日のDavidは、確かな実力と、それを存分に生かすための運がついてきている。
David 3-0 Fabian
Fabian 「負けちゃったけど凄く楽しかった。ありがとう!ところで、TOP8プレイヤーみんなに、1枚のカードにサインして貰おうと思ってるんだ。良かったらサインして貰えないかな?」
Fabianは負けた。だが、負けて悔しそうではあるものの、笑顔を絶やさなかった。きっと本当にマジックが好きなんだろうし、きっと、フィーチャーエリアでのマジックを心から楽しんだだろう。
緊張からか、少し仏頂面だったDavidも最後はとても笑っていた。
Fabianからもらった、楽しむ気持ちを持って、トーナメントマジック、プロマジック最高峰の舞台へと、David Sharfmanが駒を進める。