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プロツアー・名古屋11
Round 14: 藤田 剛史(大阪) vs. Yong Han Choo(シンガポール)
By 金 民守
Chooが《エルズペス・ティレル》をキャストして兵士を動員。
藤田は《黒の太陽の頂点》X=1からの《オキシダの屑鉄溶かし》アタックによってこれを除去。
返すターンにChooがキャストするは《解放された者、カーン》。
攻守が逆転した。
藤田は《ボーラスの工作員、テゼレット》を+で起動し《グレムリン地雷》を手に入れ、《粗石の魔道士》で《呪詛の寄生虫》を調達する。Chooの場には3マナが立っている。藤田は《呪詛の寄生虫》をキャストせずにマナを余らせてターンを返した。
ターンが返って次にChooがプレイしたのは《聖別されたスフィンクス》。《解放された者、カーン》で《ボーラスの工作員、テゼレット》を除去して場の有利を固める。
藤田がキャストした《呪詛の寄生虫》は予定調和的に《冷静な反論》される。環境の最強カード2枚を携えたChooの場はまさに圧巻。藤田の苦渋のフルアタックによりカーンの忠誠値は1に下がるも、返しで《太陽破の天使》が現れると藤田の戦場には皆殺しのトランペットが鳴り響く。Chooは《解放された者、カーン》の忠誠値を上げてターンエンド。
満身創痍の藤田は再度《ボーラスの工作員、テゼレット》をキャストし、《グレムリン地雷》を5/5にしてカーンを襲う。
《聖別されたスフィンクス》がこれをブロックする。
Chooのブロックがあまりにスムーズだ。Chooのエクストラドローはすでに4枚。いやな予感はする。が、藤田に選択権はない。諸悪の根源に向かって放たれる《感電破》。
無情にも、そして当然のごとくそれを阻む《冷静な反論》。読んで字のごとく涼しい顔で藤田の提示を却下するChoo。何しろ藤田の手札は残り一枚だ。Chooが盤面を固めた、藤田に可能性はもうない。誰もがそう思っていた。
・・・だが藤田は、藤田だけは諦めていなかった。それは細い、糸のように細く頼りないものだが、まだ藤田の巻き返しのシナリオは残っていたのだ。藤田が残り1枚の手札を場に投下する。諸悪の根源《聖別されたスフィンクス》である。
Chooは動じない。何しろ藤田のハンドは0で、Chooのコントロールする《解放された者、カーン》の忠誠値は5なのだ。「要は6マナ2枚ドローを打たれただけだろう」そうとでもいうようにタップした土地を起こす。
Chooのドロー。藤田の2ドローがスタックに詰まれる。藤田は当然引くことを選択。解決され。Chooがドローの権利を手に入れるがもちろんこれは放棄する。
Chooの手が《解放された者、カーン》に伸びる。そこで藤田がChooの動きを制した!
藤田がたった今手に入れた2枚のカードをキャストする。
「ドローステップに」
そう、絶望的な状況から藤田が構築した、ただ一本の勝ち筋。そのわずかな可能性に、藤田の執念に、再びデッキが応えたのだ! 藤田がキャストしたスペルは《内にいる獣》!! これにより《解放された者、カーン》が除去され、ゲームの趨勢は一気に混迷を極めることになった!
Chooは目を丸くする。無理もない。つい数秒前までは自分の場には《聖別されたスフィンクス》と《解放された者、カーン》。相手の手札はたったの1枚。場は土地のみ。これ以上有利な場は想像するのも難しい、圧倒的な場だったではないか・・・ なんなのだこのゲーム展開は・・・ 険しい表情でターンを返す。
そして繰り広げられる、おびただしいドローの連鎖。まるでマジックとは思えないその光景の果て、お互いが予定調和的に《聖別されたスフィンクス》を除去しあってようやく通常のゲームが再開する。
藤田は三たび《ボーラスの工作員、テゼレット》をキャスト。5/5を生成しライフが一ケタ台に落ち込んだChooにプレッシャーをかけるべく溢れるハンドを場に解き放った。
Chooのターン。「やっと終わるよ」とでも言いたげにカードを眺めて小さく息をつくChooが全てのマナをタップした。《青の太陽の頂点》X=15。熾烈を極めた1ゲーム目をChooが制した。
藤田 剛史 0-1 Yong Han Choo
藤田 剛史、ベスト8入りを決め万感の表情
藤田 剛史 2-1 Yong Han Choo
Game 1
ダイスにより先手はChoo。7枚でキープを宣言する。 対する藤田は1ランドのファーストハンドを見て即座にマリガン。さらに不運なことには新たに引いた6枚にも土地は1枚のみ。 しかしこれを藤田は即座にキープする。後手の2ドローでなんとか土地を引き込み、2枚の《マイコシンスの水源》で場を形成することに賭けたのだろう。 静かにゲームがスタートする。 Chooがセットランドをしてターンを返す。 藤田のドロー。《地平線の呪文爆弾》。 2ターン目もChooの動きはセットランドのみ。 そして藤田のドロー。プロツアートップ8をかけたこの一戦でのワンランドキープ。その判断の是非が問われるその瞬間。 ・・・デッキは主に応えた。 セットランドから《漸増爆弾》をキャスト。藤田のデッキが回り始める。 デッキ内の土地を1枚でも多く保つため、《マイコシンスの水源》はギリギリまで引き付ける。 細かいケアが実り次のドローもまた土地。そしてキャストされる《マイコシンスの水源》。 キャントリップ込みで起動される《地平線の呪文爆弾》から《オキシダの屑鉄溶かし》につなぎ、自らの《マイコシンスの水源》を破壊して順調にマナが伸びていく。 対するChooもセットランドを繰り返しながら、《マイコシンスの水源》と、それを対象に取った《内にいる獣》で場を整える。 先に攻めたのは藤田だった。2枚目の《漸増爆弾》を0で起動してChooのビーストトークンをどかして、《オキシダの屑鉄溶かし》がビートをはじめる。 Chooは《ヴィリジアンの密使》でのチャンプブロックを2度繰り返しながらさらにマナを伸ばす。 コントロールデッキ同士、お互い隙を作らないことを第一に静かな殴打が何度か繰り返された後、それまでChooのビッグアクションに対して睨みを利かせていた《漸増爆弾》が《忍び寄る腐食》よって除去されると徐々に場が煮詰まっていく。Choo Yong Han |
Game 2
お互いが大量のサイドボーディングを施して始まったGame 2は、まるでさっきまでとは別のデッキかのようなスピーディーな展開だった。 何しろさっきまではカウンターを構えながら7マナのプレインズウォーカーをプレイできるようになるまでひたすら受けに回っていたChooが、4ターン目《最後のトロール、スラーン》からわき目も振らずライフを狙うプレイングに走ったのだ!! 対する藤田もこれ幸いとばかりに《粗石の魔道士》2体によるビートを開始、Chooがフルタップになったターンに《最後のトロール、スラーン》を引いて対消滅が可能になった状況でも、これを拒否し《ボーラスの工作員、テゼレット》によってビートを加速する。 藤田は時計を気にしながら、それでも精度を下げずに状況を詰めていく。 《蔑み》に《冷静な反論》を合わさせて《最後のトロール、スラーン》を相殺する。 《聖別されたスフィンクス》にはサイドから追加した《喉首狙い》で応えた上で《聖別されたスフィンクス》を出し返す。 Chooも即座に《解放された者、カーン》でこれを除去するも、悲しいかなソーサリータイミングの除去ではアドバンテージは大きく藤田に。さらには藤田の場には《呪詛の寄生虫》があるのだ。7マナのプレインズウォーカーが1マナの虫に蹂躙されるのを眺めながらChooの顔がゆがむ。 そしてChooが最後の望みを賭けてプレイした《白の太陽の頂点》を、藤田が冷静に反論して、決着は3本目に持ち越された。 残り時間、7分。 藤田 剛史 1-1 Yong Han ChooGame 3
緊迫のGame 3。 2~3ターン目をお互いが《マイコシンスの水源》と《ヴィリジアンの密使》でマナを整えることに費やして迎えた4ターン目。 Chooが《最後のトロール、スラーン》を、藤田が《ボーラスの工作員、テゼレット》をキャストして一気にゲームが加速する。 後手の藤田が先に先に5点のダメージを積み上げてライフレースを先行。Chooが時計を見る。残り時間は5分を切った。 5ターン目。Chooはここで痛恨のマナトラブルに見舞われる。《最後のトロール、スラーン》を最速着地させるために《マイコシンスの水源》で《森》をサーチしたため、Chooは未だ青マナが出ない状態なのだ。何もできずにターンを返す。 藤田はここで《納墓の総督》をプレイ。Chooのハンドは《冷静な反論》と《聖別されたスフィンクス》。 ここから《冷静な反論》を抜いてターンを返す。Chooは《ファイレクシアの核》で《マイコシンスの水源》をサクリファイスして1枚目の《島》を手に入れる。 その後《最後のトロール、スラーン》が相殺されると、そこからはお互いに《聖別されたスフィンクス》を出し合う展開になった。 しかしここは1ゲーム目と一転してドローを放棄しあう二人。Chooは除去されたその瞬間にゲームが終わることを恐れて、藤田はこの有利な場を維持するために。 残り時間を示す電光掲示板が点滅する。残り時間が1分を切った。 藤田はアタックを繰り返す。5/5になった《マイコシンスの水源》が《聖別されたスフィンクス》にブロックされ、スルーされた生物がChooのライフを詰めていく。 時計を気にしながらも、《太陽破の天使》をケアしてアンタップの生物を残して攻撃を繰り返す藤田。 すでに状況は藤田が隙を作らない限り、固まったかに見えた。だがChooは諦めない。Chooは1ゲーム目の藤田の脅威の巻き返しを見ている。この男にできて、自分ができないはずはない。藤田が隙を、ほんの少しの隙さえ見せてくれれば、そこから状況をひっくり返してみせる! ・・・しかし、藤田のプレイは最後まで完璧だった。Chooのライフが10を割ったターン、藤田のドローは《漸増爆弾》だった。藤田はChooの目をしっかりと見つめながら許可を求める。 Chooが絶望の表情で首を縦に振り、場に《漸増爆弾》が着地する。そう、これでChooに残された《白の太陽の頂点》による唯一の逆転の目が摘み取られた! 満を持して藤田がフルアタックを宣言する。Chooは納得したように手を差し出す。残り試合時間は7秒。この瞬間、黎明期から日本のマジック界を牽引した男、藤田 剛史がプロツアー名古屋2011のベスト8を確定させたのだ!!RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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