EVENT COVERAGE

2019ミシックチャンピオンシップⅥ(リッチモンド)

戦略記事

2019ミシックチャンピオンシップⅥ(リッチモンド)初日メタゲームブレイクダウン

Frank Karsten
authorpic_FrankKarsten.jpg

2019年11月8日

 

 ハビエル・ドミンゲス/Javier Dominguezが「グルール・アグロ」を駆り優勝を果たした「2019ミシックチャンピオンシップⅤ(MTGアリーナ)」から数週間。このわずかな間にも、スタンダードのメタゲームの様相は大きく変わった。最も特筆すべきは、《死者の原野》禁止後、《王冠泥棒、オーコ》による支配が始まったことだろう。そして「2019ミシックチャンピオンシップⅥ(リッチモンド)」のメタゲームは、以下のようになった。

アーキタイプ 使用者数 使用率
スゥルタイ・食物 183 37.0%
シミック・食物 94 19.0%
バント・食物 35 7.1%
ゴルガリ・出来事 33 6.7%
ジェスカイ・ファイアーズ 21 4.2%
ティムール・荒野の再生 21 4.2%
スゥルタイ・サクリファイス 13 2.6%
アゾリウス・コントロール 12 2.4%
ラクドス・サクリファイス 11 2.2%
グルール・アグロ 8 1.6%
セレズニア・出来事 8 1.6%
エスパー・屋敷の踊り 5 1.0%
4色サクリファイス 5 1.0%
ジャンド・サクリファイス 5 1.0%
ラクドス・騎士 5 1.0%
その他 36 7.3%

王冠泥棒、オーコ》を用いるデッキがメタゲームの69%を占める

 「69%」という信じられないほどの割合のプレイヤーが、《王冠泥棒、オーコ》をメインデッキやサイドボードに搭載したデッキを登録するに至った。過去に前例のないレベルの支配だ。私自身20年ほどプロツアーやミシックチャンピオンシップの舞台を見てきているが、ここまで圧倒的な支配はついぞお目にかかったことがない。前代未聞だ。『ミラディン』ブロック構築で行われたプロツアーにおける「親和」デッキでさえも、使用率は50%を切っていた。今大会は、「ミシックチャンピオンシップ:オーコ」として歴史に残ることだろう。

 圧倒的多数を占めた《王冠泥棒、オーコ》デッキを、ここでは「食物」デッキに分類した。核となる部分は共通しており、《金のガチョウ》、《王冠泥棒、オーコ》、《意地悪な狼》、《楽園のドルイド》、《世界を揺るがす者、ニッサ》、《ハイドロイド混成体》、そして《むかしむかし》で構成されている。この「青緑」の形を中心に、いくつかの色の組み合わせが見受けられる。

サンプルデッキ - 「スゥルタイ・食物」
2019ミシックチャンピオンシップⅥ(リッチモンド) / スタンダード (2019年11月8~10日)[MO] [ARENA]
8 《
4 《繁殖池
4 《草むした墓
4 《湿った墓
2 《
1 《寓話の小道
1 《
-土地(24)-

4 《金のガチョウ
4 《楽園のドルイド
4 《ハイドロイド混成体
4 《意地悪な狼
-クリーチャー(16)-
4 《害悪な掌握
4 《むかしむかし
4 《王冠泥棒、オーコ
2 《ゴルガリの女王、ヴラスカ
4 《世界を揺るがす者、ニッサ
2 《戦争の犠牲
-呪文(20)-

 最適な色の組み合わせや構成についての意見は各々で異なるようだが、現在のスタンダードで成功を掴むためには、『エルドレインの王権』で登場した食物メカニズムを中心に緑のランプ戦略を組み上げることが近道であると、今大会の参加者の大半が結論づけたのだった。

 63%の「食物」デッキに加えて、メインから《王冠泥棒、オーコ》を採用しているデッキが他に5%を占めている。

 最後に、サイドボードに《王冠泥棒、オーコ》を搭載している「シミック・フラッシュ」もいくつか見受けられた。それらをすべて合計すると、《王冠泥棒、オーコ》デッキの使用率は69%となる。見事の一言だ。

王冠泥棒、オーコ》以外のデッキで最も使用者数を集めた「ゴルガリ・出来事」

 《王冠泥棒、オーコ》を使いたくないプレイヤーたちから最も人気を集めたのは、使用率6.7%で「ゴルガリ・出来事」だった。このデッキの原動力は、《エッジウォールの亭主》だ。これが戦場にあれば、《穢れ沼の騎士》や《残忍な騎士》、《恋煩いの野獣》、《真夜中の騎士団》を唱えたときにカードを引けるようになる。メインデッキの残りの枠には《楽園のドルイド》や《悪ふざけの名人、ランクル》、《害悪な掌握》が採用されていることが多い。

 「ゴルガリ・出来事」に次いで人気を集めた《王冠泥棒、オーコ》を使用しないデッキ4つは、以下の通りだ。これら4つを合計すると、メタゲームの13%を占める。

  • 「ティムール・荒野の再生」:このデッキは、《荒野の再生》が生み出す大量のマナを注ぎ込んでゲームエンド級の《発破》を放つことが狙いだ。
  • 「ジェスカイ・ファイアーズ」:創案の火》によってマナ・コストを支払わずに強力な呪文(特にカードを引ける呪文)を連打し、対戦相手を圧倒することを目指す。
  • 「アゾリウス・コントロール」:吸収》で呪文を退け、《時の一掃》でクリーチャーを退け、そして《集団強制》のようなX呪文でゲームを決めるデッキだ。
  • 「ラクドス・サクリファイス」:このデッキの最高の1枚は、《波乱の悪魔》だろう。《魔女のかまど》で《大釜の使い魔》を生け贄に捧げても、墓地の《大釜の使い魔》を戦場に戻しても、《忘れられた神々の僧侶》の能力でクリーチャーを生け贄に捧げても、果ては対戦相手が《寓話の小道》を生け贄に捧げても、1点のダメージを飛ばしてくれる。

 《王冠泥棒、オーコ》が今大会を支配することは誰もが予想していただろう。その中で多くのプレイヤーがこういったデッキを選択したということは、「食物」デッキに対してやや有利だと見たのだろう。

 彼らの構築思想は理に適っている。例えば、「ティムール・荒野の再生」はゲーム後半に逆転できる手を持っているし、「ラクドス・サクリファイス」は比較的除去の少ない「食物」デッキに対してアドバンテージを得られるだろう。その試みが功を奏するかどうか、見届けよう。

7.3%の「その他」には刺激的なデッキも

 上記の表で「その他」に分類されたデッキは、以下の通りさまざまなものが混ざっている。

  • 4色食物:3人
  • グルール・出来事:3人
  • イゼット・フラッシュ:3人
  • シミック・フラッシュ:3人
  • スゥルタイ・エレメンタル:3人
  • バント・ランプ:2人
  • エスパー・コントロール:2人
  • 赤単アグロ:2人
  • ティムール・プレインズウォーカーズ:2人
  • ボロス・アグロ:アンドレアス・ホフワルベリ/Andreas Hofverberg
  • ボロス・騎士:エリック・グレイ/Eric Gray
  • 水没した秘密・ケシス:ジェイク・ダーシマー/Jake Durshimer
  • 4色ファイアーズ:ダン・ウォード/Dan Ward
  • ゴルガリ・サクリファイス:ライアン・リーク/Ryan Leek
  • グリクシス・動員:ジェン・ユー=ジャン/Jheng Yu Jhang
  • グリクシス・ミッドレンジ:アレックス・カーニン/Alex Khanin
  • マルドゥ・騎士:ウィリアム・アラウホ/William Araujo
  • 黒単アグロ:ゲイリー・アベル/Gary Abel
  • オルゾフ・コントロール:ジョディ・ケイス/Jody Keith
  • シミック・出来事:ペーター・ストラウチ/Peter Strauch
  • シミック・模写:マイケル・アンソニー・キルベリー/Michael Anthony Kilberry
  • ティムール・ミッドレンジ:ルイ=ジャア・イエ/Ruey-Jer Yeh

 全体的に応援したくなる刺激的なデッキばかりだ。全参加者のデッキリスト(現時点ではサイドボードの枚数を伏せてある)は、こちらだ。(編訳注:リンク先は英語。デッキリストの翻訳は後日掲載いたします。)

》と《平地》と《》を合わせた数より多くの《繁殖池

(メインとサイドを合わせて)全デッキから集計した、最も多く採用されているカードの上位は以下の通りだ。

カード名 総採用枚数 メイン・デッキ採用枚数 サイドボード採用枚
1895 1894 1
繁殖池 1472 1472 0
むかしむかし 1397 1397 0
金のガチョウ 1382 1379 3
王冠泥棒、オーコ 1373 1357 16
意地悪な狼 1339 1307 32
楽園のドルイド 1338 1338 0
世界を揺るがす者、ニッサ 1282 1276 6
ハイドロイド混成体 1233 1227 6
夏の帳 1224 90 1134
1152 1151 1
害悪な掌握 1041 909 132
草むした墓 989 989 0
寓話の小道 912 912 0
湿った墓 841 841 0
霊気の疾風 787 514 273
打ち壊すブロントドン 717 0 717
707 707 0
否認 633 43 590
強迫 544 2 542
神秘の論争 453 142 311
厚かましい借り手 446 431 15
虐殺少女 424 90 334
大食のハイドラ 386 5 381
軽蔑的な一撃 382 15 367
ゴルガリの女王、ヴラスカ 364 337 27
恋煩いの野獣 358 166 192
神秘の神殿 333 333 0
神聖なる泉 315 315 0
時を解す者、テフェリー 292 215 77
ヴァントレス城 287 286 1
286 286 0
軍団の最期 252 13 239
探索する獣 248 140 108
残忍な騎士 221 216 5
蒸気孔 202 202 0
戦慄衆の将軍、リリアナ 200 132 68
寺院の庭 197 197 0
踏み鳴らされる地 181 181 0
エッジウォールの亭主 180 180 0
クロールの銛撃ち 179 97 82
戦争の犠牲 178 142 36
平地 174 172 2
ロークスワイン城 171 171 0
砕骨の巨人 168 142 26

 戦端は開かれた。残る疑問は2つだ――最強の《王冠泥棒、オーコ》デッキはどれか? そして食物の脅威を打ち倒すデッキは現れるのか? 世界最高のプレイヤーたちによる10回戦にわたるスタンダードの戦いを見守り、その分析をお送りする。

 2日目進出デッキの分析は明日お届けするのでお楽しみに。そしてもちろん、twitch.tv/Magicでの生放送もお見逃しなく!

 

(Tr. Tetsuya Yabuki)

  • この記事をシェアする

RESULTS

対戦結果 順位
16 16
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

RANKING

NEWEST

サイト内検索