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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:バント・カンパニー(スタンダード)

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:バント・カンパニー(スタンダード)

by 岩SHOW

 変化を受け入れてこその王者である。マジックは、ある一定の期間内に発売されたセットのカードのみを使ってデッキを構築するスタンダードというフォーマットをその黎明期に確立した。このスタンダードにおける新しいセットの参入は、他のフォーマットとは比較にならないレベルの影響を受ける(モダンとレガシーに多大な影響を与えるセットもあるが)。限られたプールに2、300枚ほど使用可能なカードが増えるのだから、それらを用いて作るデッキが大幅に姿かたちを変えるのも当然といえば当然だ。

 この新セット参入により、新カードでガンガンと強化されていくデッキもあれば......それとは逆に、前環境では有力デッキだったのに新セットの恩恵を受けられず、周りがそれらで強化されたことで相対的にデッキパワーを落とし、静かに去ってゆく......なんてデッキもある。本当に強いデッキというのは、ちょっとやそっとの変化は受け入れ、揺るがないものである。2013~2014年にかけての「黒単信心(※1)」なんてまさしく、王者のデッキであったなぁ。

(※1:《アスフォデルの灰色商人》《死者の神、エレボス》などの信心能力を持ったカードを、信心を稼ぐ上に単体でもカードパワーの高い《群れネズミ》《夜帷の死霊》《地下世界の人脈》等ともに運用する、黒単色ないし緑や白をちょい足しした中速デッキ。1年間を通して勝ち続けた、絶対王者的デッキ。)

 『イニストラードを覆う影』環境での王者といえば、プロツアーで優勝してからシーズンを通して暴れに暴れた「緑白トークン」。そしてもう一つの王者としては、前環境から強力なデッキであり、『イニストラードを覆う影』の参入によりデッキパワーを大幅に上昇させ、グランプリ優勝などの好成績を残し続けた「バント・カンパニー」だ。

 この「バント・カンパニー」、『異界月』の参入によりさらに強化されるのでは?というのが発売前から話題になっていた。そして発売週に早速、それを実証してみせた。変化の波に飲まれるどころか、取り込んでさらに自らを強化した「バント・カンパニー」のお姿が、コチラ。

Devin Koepke - 「バント・カンパニー」
StarCityGames.com Standard Open Columbus 優勝 / スタンダード (2016年7月23~24日)[MO] [ARENA]
3 《
5 《平地
1 《
3 《梢の眺望
4 《大草原の川
3 《ヤヴィマヤの沿岸
2 《伐採地の滝
4 《進化する未開地

-土地(25)-

4 《無私の霊魂
4 《森の代言者
3 《薄暮見の徴募兵
4 《反射魔道士
4 《呪文捕らえ
4 《異端聖戦士、サリア
3 《不屈の追跡者
2 《大天使アヴァシン

-クリーチャー(28)-
4 《ドロモカの命令
4 《集合した中隊

-呪文(8)-
3 《ラムホルトの平和主義者
1 《不屈の追跡者
2 《巨森の予見者、ニッサ
2 《石の宣告
2 《否認
2 《オジュタイの命令
2 《悲劇的な傲慢
1 《次元の激高

-サイドボード(15)-
StarCityGames.com より引用)

 《薄暮見の徴募兵》《反射魔道士》《森の代言者》《不屈の追跡者》《大天使アヴァシン》......いずれも前環境で暴れまわったクリーチャーであり、それらが変わることなく続投。呪文の方も、なんでもこなす驚異の2マナ呪文《ドロモカの命令》とデッキ名にもなっているデッキの軸《集合した中隊》が健在。まず、『異界月』でこれらのカードを明確に弱体化させるようなカードが存在しなかったことは、カンパニーユーザーにとっては朗報だったことだろう。

 そして、新戦力の獲得。このデッキでは実にメインデッキに12枚もの新クリーチャーを採用している。おそらくは、新環境最初のお試し用としてガッツリ採用して様子を見よう!という構築じゃないかなとは思うのだが、そのまま500人超のトーナメントで優勝しちゃったんだからこれが正しい構築だったのかもね。このデッキの基本的な話は既に紹介しているので、今回はそれらの新戦力を見ていこう。

 まずはマナ・コストが最も軽い、2マナの《無私の霊魂》。2マナ2/1飛行というスペックも、《森の代言者》同士の睨み合いなどで盤面が固まりやすい緑白系のデッキに対するアタッカーとしてなかなか。さらにはそれらの戦線を支えるクリーチャーが除去などで狙われたら、これで守ってやればよい。あるいは、そういった睨み合いの状況でも無理やり攻撃してこれの能力をちらつかせれば......対戦相手もブロックはか~な~り、やり辛いことだろう。

 能動的に生け贄に捧げることができるので、《大天使アヴァシン》を《浄化の天使、アヴァシン》に変身させる・またはそのアヴァシンの変身した時に3点ダメージを与える能力から他のクリーチャーを護るなんてことにも使える。

 続いて《異端聖戦士、サリア》。対戦相手のクリーチャーと基本でない土地はタップインという強烈な能力。これにより3~4ターン目に《梢の眺望》などのセットから展開を......というプランを阻害、クリーチャーもブロックに参加するのに1ターンのラグが発生し...なんというかもうめちゃくちゃ。《大天使アヴァシン》や《集合した中隊》などによる瞬速で飛び出すクリーチャーのキャッチなんかも無効化、恐れずにアタックしてしまえるように。3/2先制攻撃というスペックも、現スタンダードにあふれる2/3クリーチャーを乗り越えることができて最高だ。《無私の霊魂》をお供にすれば、なおのことよろしい。

 そして《呪文捕らえ》。その名のとおり、4マナ以下の呪文を捕らえて閉じ込めてしまう能力は、現スタンダードのありとあらゆるカードをカードに対処可能。このデッキに入っている《大天使アヴァシン》以外がそうだし、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》《難題の予見者》《オジュタイの命令》《ゲトの裏切り者、カリタス》......挙げていけばキリがない。それらのパワーカードをサッと優しくキャッチして、2/3飛行が殴りだす!悪夢である。戦場を離れてしまうとその呪文は放たれてしまうが、時すでに遅しだったり、これに撃たれた除去に対して《呪文捕らえ》2号機を差し出したり、またまた《無私の霊魂》が身代わりとなって矢を受けたり......護る手段はいくらでもある。

 いずれも強力な新戦力を3種12枚投入。これらのカードがいずれも......3マナ以下だ。ということは、《集合した中隊》でサーチしてこられるということ。つまり相手の除去や中隊やアヴァシンやプレインズウォーカーなどのアクションに対して中隊を唱えると、これらの解決策を引き込める確率が高い。こんなん...強過ぎやん? 渾身のギデオンを中隊から飛び出した《呪文捕らえ》に受け止められ、《不屈の追跡者》がオマケで出てきてアドバンテージも打点もアップとか、泣いてしまう。おそらくはそういう強さを見せ続けて優勝したのであろう。

 このデッキが優勝したトーナメントでは、これらの新クリーチャーを採用する枚数を調整して《実地研究者、タミヨウ》を採用しているリストも上位入賞を果たしていた。このプレインズウォーカーも、使ってみたくなる魅力に溢れているよね。引き続き王者として君臨しそうな「バント・カンパニー」、その完成形がプロツアーの会場で見られるのか? 乞うご期待!

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