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木曜マジック・バラエティ
行弘賢の「MOを遊びつくせ!」第8回:Pauper(コモン構築)メタゲーム編
読み物
木曜マジック・バラエティ
2012.08.30
行弘賢の「MOを遊びつくせ!」第8回:Pauper(コモン構築)メタゲーム編
著者紹介:行弘 賢(ゆくひろ・けん)
「deathsnow」の二つ名を持つ、気鋭のプレイヤー・デッキデザイナー。
マジック歴は時のらせんブロックからと短いながら、プロツアー・京都2009での《ミストメドウの魔女》デッキ、プロツアー・アムステルダム2010での「オリスチャント」など、特異なデッキデザイン能力は海外からも注目を集める。
高いレベルで安定した成績を残し続け、主な戦績にプロツアー・アヴァシンの帰還 4位、グランプリ・神戸2012 準優勝、The Finals 2011 トップ8などがある。
また、「ニコニコ生放送」で配信を行うなど、ネットを使った積極的な活動でも知られている。
皆さんPauper!あ、間違えました。こんにちは!
Pauperの発音が世界で一番可愛いと定評のある僕が、今回はPauperをじっくり攻略していきたいと思います。
Pauper(パウパー)って何?
連載第1回目のPauperの記事でも書かせていただきましたが、レアリティがコモンのカードだけで構築するフォーマットがPauperです。
一度でもコモンで収録されたカードなら使えます
詳しく知りたい方は前回の記事にて詳しく説明させていただいていますので、そちらにてお願いいたします。
メタゲーム
どんなデッキが有力なのか、マジック・オンラインのデイリーイベント(DE)の結果を見てみましょう。
What's Happening?(ページの右下)
現在、PauperのDEでよく見かけるアーキタイプは以下になります。
青タッチ赤ポスト、緑単感染、緑単ストンピィ、青赤黒ストーム、青単デルバー、黒単コントロール、青黒コントロール、白単ウィニー、親和、赤単、青白黒ストーム
さらにここから、DEの3-1以上の入賞デッキの割合が大きい方から、「Tier1」「Tier2」と分類していくと以下のようになります。
Tier1
- 緑単感染
- 緑単ストンピィ
- 青赤黒ストーム
- 青単デルバー
- 青タッチ赤ポスト
Tier2
- 黒単コントロール
- 青黒コントロール
- 白単ウィニー
- 赤単
- 青白黒ストーム
- 親和
今回の記事では、Tier1のデッキについて詳しく解説していこうと思います。
『緑単感染』
17 《森》 1 《平穏な茂み》 -土地(18)- 4 《ぎらつかせのエルフ》 4 《荒廃のマンバ》 4 《胆液爪のマイア》 2 《腐敗狼》 -クリーチャー(14)- |
3 《ギタクシア派の調査》 4 《変異原性の成長》 4 《地うねり》 4 《怨恨》 2 《力の印章》 4 《巨森の蔦》 3 《使徒の祝福》 4 《激励》 -呪文(28)- |
3 《死体の野犬》 4 《スズメバチの一刺し》 2 《一瞬の平和》 2 《自然の要求》 3 《砂嵐》 1 《ヴィリジアンの長弓》 -サイドボード(15)- |
アーキタイプ解説
緑単感染は以前からあるアーキタイプですが、最近増加傾向にあります。
というのも、《怨恨》がM13で採録されたおかげで、安値で手に入れることができるようになったためです。
元々緑単感染は《激励》と《変異原性の成長》の2種のピッチジャイグロにより、1ターン目に《ぎらつかせのエルフ》が場に出てしまえば2キルすら可能な高ポテンシャルなデッキです。
特に《激励》は対戦相手に4点回復させるデメリットがほぼ無意味であり、ライフで換算するならば0マナで8点対戦相手に与えていることになる、非常に高パフォーマンスなカードになります。
このようにビートダウンという立場ながらも、さながらコンボデッキのように対戦相手を打ちのめすスピードを持つ緑単感染は、使用者の増加も相まって現在Pauperのトーナメントでは入賞の常連となっています。
各種デッキとの相性
デッキの性質上、妨害手段が乏しい相手には非常に相性が良いです。トップメタである緑単ストンピィ、親和、青赤黒ストーム、にはゲームスピード的にも有利が付くと思います。
一方、《破滅の刃》や《鋸刃の矢》等の確定除去や《蒸気の絡みつき》等のバウンスを《怨恨》等のクリーチャー強化呪文に合わせられるとテンポとアドバンテージの両方を失ってしまうという弱い一面もあるため、これらの妨害手段を持つコントロールには若干相性が悪くなります。
白単ウィニーや《貪欲なるネズミ》を擁する黒単コントロール、青黒コントロールとのマッチアップはこれらクリーチャーによる「肉の壁」がきつく、《怨恨》等のトランプル付与がないと主導権を握ることが難しくなってきます。更にこれらのデッキには除去もふんだんに投入されていますので、どうしてもつらいマッチアップとなります。
とはいえ、圧倒的ぶんまわりにより相性差を覆すことも多いので、環境全体のデッキほぼ全てに五分以上で戦えるデッキといっても過言ではありません。
サイドボード解説
《スズメバチの一刺し》は《軍旗の旗手》や《火花鍛冶》等の致命的なシステムクリーチャーを除去するために入っています。他にも緑単感染の同系対決なんかではジャイグロ系の呪文と入れ替えたりします。
《死体の野犬》は同系やコントロール等の消耗戦を強いられるマッチアップのサイドボードになります。
《濃霧》や《一瞬の平和》等のいわゆるフォグ枠は、やはり同系に対して有効です。
《砂嵐》は青赤黒ストームの《巣穴からの総出》+《ゴブリンの奇襲隊》のコンボに対して非常に有効なので、緑を使っているデッキの定番のサイドボードになっています。
《自然の要求》は親和に対して1マナのランデスにもなりますので有効です。
《ヴィリジアンの長弓》は感染の能力により-1/-1カウンターとしてダメージを与えることができ、同系やビートダウン等、除去が薄く膠着しやすい相手にサイドボードすることで致命的なシステムクリーチャーを作り出すことができます。
『緑単ストンピィ』
16 《森》 -土地(16)- 4 《イラクサの歩哨》 4 《クウィリーオン・レインジャー》 4 《スカルガンの穴潜み》 4 《若き狼》 3 《安寧砦の精鋭》 4 《シラナの岩礁渡り》 2 《生命の咆哮の思念》 -クリーチャー(25)- |
4 《かき集める勇気》 4 《吠え群れの飢え》 3 《地うねり》 4 《怨恨》 4 《巨森の蔦》 -呪文(19)- |
2 《隠れたる蜘蛛》 2 《散弾の射手》 1 《大祖始の遺産》 3 《濃霧》 3 《スズメバチの一刺し》 2 《砂嵐》 2 《上機嫌の破壊》 -サイドボード(15)- |
アーキタイプ解説
緑単ストンピィはここ最近急に勢力を伸ばしてきたアーキタイプです。というのも、その魅力は安値で組めることにあります。緑単感染と違い《激励》が入っていないため、手軽に構築できるというのが大きいようですね。
『不死』持ちである《若き狼》、『頑強』持ちである《安寧砦の精鋭》等の粘り強いカードであったり、《怨恨》や《吠え群れの飢え》のベストパートナーともいえる《シラナの岩礁渡り》という緑単感染には無い強力部分も多くあります。
とにかく軽く強力なクリーチャーが多く投入されているので、序盤から重厚な攻めをし続けることができます。
各種デッキとの相性
『不死』や『頑強』、『呪禁』等コントロール泣かせなキーワード能力持ちのクリーチャーが多く投入されているため、黒単や青黒コントロール、青タッチ赤ポスト等のコントロール系のデッキには有利ですね。他にも序盤からの厚い攻勢が苦手な青単デルバーにも有利です。
逆に青赤黒ストームや青白黒ストーム等のコンボデッキには耐性が無く、ほぼスピード勝負になるためキルターンの早いコンボ側に有利が付くので、コンボ全般が苦手なデッキになります。
白単ウィニーや緑単感染等のクリーチャーデッキとのマッチアップは展開によって大きく有利不利が変わってくるので、ほぼ五分と思っていいと思います。
サイドボード解説
基本的に緑単感染で使われてるカードと同じカードは同じ意味合いで投入されているものになりますので、説明を割愛させていただきます。
《上機嫌の破壊》は緑単ならではのサイドボードであり、強烈な親和メタのカードになります。
《散弾の射手》は《戦隊の鷹》や《呪文づまりのスプライト》、《フェアリーの大群》なんかに非常に効果的に働きます。
『青赤黒ストーム』
1 《地熱の割れ目》 1 《島》 2 《泥炭の沼地》 4 《鋭き砂岩》 1 《サプラーツォの岩礁》 4 《硫黄孔》 -土地(13)- -クリーチャー(0)- |
4 《水蓮の花びら》 4 《彩色の星》 2 《彩色の宝球》 4 《ギタクシア派の調査》 4 《炎の儀式》 4 《暗黒の儀式》 4 《陰謀団の儀式》 4 《魔力変》 3 《強迫的な研究》 4 《定業》 4 《血の署名》 2 《留まらぬ発想》 4 《ぶどう弾》 -呪文(47)- |
2 《彩色の宝球》 3 《強迫》 2 《残響する衰微》 1 《残響する真実》 2 《鋭い痛み》 1 《地鳴りの揺るぎ》 3 《綿密な分析》 1 《ディミーアの水路》 -サイドボード(15)- |
アーキタイプ解説
《炎の儀式》や《暗黒の儀式》等のマナ加速から得た大量のマナを、《魔力変》や《彩色の星》等のマナフィルターにより色マナを都合し、ドロースペルを次々に唱え膨れ上がったストームから放たれる《ぶどう弾》か、《巣穴からの総出》+《ゴブリンの奇襲隊》のコンボで勝利を狙う、Pauperを代表するコンボデッキです。
各種デッキとの相性
そのコンボスピードの速さと、ストームという対策するのが難しいシステム上、メインデッキではあらゆるデッキに対してほぼ有利だと思います。
問題はサイド後で、《砂嵐》、《虹色の断片》、《心優しき一角獣》、《強迫》等のハンデスと、あらゆるストームメタのカードがサイドインされるため、サイドボード後相性が悪くなるマッチアップも多くあります。
逆に言えばそこまでのサイドボードをしないと相性差を覆せない程のデッキパワーが高いという証明でもあります。
(お詫び:当初記述されていた《軍旗の旗手》は、誘発型能力であるストームは「唱える」ものでも「起動する」ものでもないため、対策として機能しません。お詫びして訂正いたします。 8/30 23:30 編集)
サイドボード解説
コンボ以外で能動的に使用したい色マナを出すのが苦手なデッキですので、《彩色の宝球》はサイドボードのカードを使うための色マナの供給増加の意味合いで採用されています。
《残響する真実》《残響する衰微》《地鳴りの揺るぎ》は同型やシステムクリーチャー用の除去として採用されています。
《綿密な分析》は黒単コントロール等、ハンデスクリーチャーが多く採用されている相手にサイドインすることで、ディスカードで捨てておいて少ないマナでアドバンテージを得ることができます。
《強迫》はカウンターデッキやコンボデッキ等幅広くサイドインします。
《鋭い痛み》は対ストーム用サイドボードに対するサイドボードでです。《虹色の断片》等の軽減で《ぶどう弾》を防ぐような相手にサイドボードします。
(お詫び:当初記述されていた《心優しき一角獣》は、その能力が「軽減」ではないため《鋭い痛み》では防げません。お詫びして訂正いたします。 8/30 23:30 編集)
『青単デルバー』
16 《島》 -土地(16)- 4 《秘密を掘り下げる者》 4 《幻影の熊》 4 《フェアリーの大群》 4 《呪文づまりのスプライト》 4 《深き刻の忍者》 4 《尖塔のゴーレム》 -クリーチャー(24)- |
3 《ギタクシア派の調査》 4 《思案》 4 《定業》 3 《断絶》 2 《目くらまし》 4 《対抗呪文》 -呪文(20)- |
1 《縫い合わせのドレイク》 3 《海賊の魔除け》 2 《水流破》 2 《無効》 2 《払拭》 1 《剥奪》 1 《鎖の呪い》 3 《残響する真実》 -サイドボード(15)- |
アーキタイプ解説
《秘密を掘り下げる者》はあらゆるフォーマットで活躍していますが、Pauperでも目を見張る目覚ましい活躍をしています。モダンと違い《思案》の《定業》も《渦まく知識》も使えるために裏返り放題な環境なので余計にその強さが際立ちます。
軽い回避能力持ちのクロックで攻め、《呪文づまりのスプライト》や《対抗呪文》で蓋をする典型的なクロックパーミッションです。
《深き刻の忍者》は単純にアドバンテージを取る他に、《呪文づまりのスプライト》や《フェアリーの大群》を手札に戻すことができるというシナジーもあります。
《噴出》を採用し息切れを防止しているリストもよく見かけますね。
各種デッキとの相性
その隙の無い動きから、各種コンボに対して有利に立ち回れる他、豊富な妨害手段を備えているので緑単感染にも有利に立ち回ることができます。
コントロールに対してはクロックパーミッションという性質上基本的には有利な相手が多いですが、青タッチ赤ポストは《微光地》のライフゲインや軽い除去が多いため五分ぐらいの相性です。
こう書くとほとんどのデッキに有利なように見えますが、実際そういっても過言ではありません。ほぼ環境全てのデッキに五分かそれ以上の相性を付けられるデッキパワーを持つ、環境で一つ頭抜けているデッキだと思います。
サイドボード解説
《無効》は親和対策の他にも、青タッチ赤ポストにサイドインすることで《予言のプリズム》や《鋸刃の矢》を打ち消すこともできます。他にも《払拭》や《剥奪》はコンボやコントロールにサイドインします。
《水流破》は赤単に対して《火花鍛冶》を除去したり、クリーチャーを火力から守ったりと絶大な効果を誇ります。
除去が基本的に存在しないデッキですが、《海賊の魔除け》は《火花鍛冶》等の致命的なシステムクリーチャーを除去することができます。
《縫い合わせのドレイク》は同系で突破されないサイズの飛行として活躍します。
『青タッチ赤ポスト』
8 《島》 6 《山》 4 《雲上の座》 4 《微光地》 1 《イゼットの煮沸場》 -土地(23)- 4 《熟考漂い》 1 《記憶の壁》 1 《ウラモグの破壊者》 -クリーチャー(6)- |
2 《探検の地図》 4 《予言のプリズム》 4 《定業》 3 《炎の斬りつけ》 1 《噴出の稲妻》 1 《炎の稲妻》 1 《紅蓮破》 3 《禁制》 1 《残響する真実》 3 《強迫的な研究》 1 《転覆》 1 《幽霊のゆらめき》 1 《よろめきショック》 2 《神秘の指導》 1 《綿密な分析》 1 《鋸刃の矢》 1 《とどろく雷鳴》 -呪文(31)- |
2 《ゴリラのシャーマン》 1 《カミソリひれのハンター》 2 《消灯》 2 《払拭》 3 《水流破》 1 《紅蓮破》 4 《石の雨》 -サイドボード(15)- |
アーキタイプ解説
赤の軽い除去とカウンター呪文で序盤を凌ぎ、《雲上の座》+《微光地》により大量のマナを生み出し、《熟考漂い》や《神秘の指導》によるアドバンテージを取り、最後は《とどろく雷鳴》か《ウラモグの破壊者》でフィニッシュ、というデッキです。
《微光地》によるライフゲインも馬鹿にならないため、ビートダウンには相性が良いと思われます。
アヴァシンの帰還より《幽霊のゆらめき》が採用され、《記憶の壁》+《微光地》や《予言のプリズム》を明滅させることで、マナのある限りドローやライフゲインすることが可能になりました。
各種デッキとの相性
軽い除去が多いため、ビートダウンには有利です。しかし、緑単ストンピィには除去が効きづらいクリーチャーが多いため相性は良いとは言えず、緑単感染も序盤少しもたつくだけで負けてしまいますので、決して相性が良いとは言えません。
青赤黒ストームのようなコンボデッキに対しては基本的になにもできないので不利だと思われます。
サイドボード解説
《石の雨》は同型やストーム相手にサイドインします。《地の裂け目》を採用しているレシピもよく見かけます。
《水流破》は同型のサイド後に上記ランデスをカウンターするために採用されている他、ストームやもちろん赤単にもサイドインします。
《ゴリラのシャーマン》は対親和最強カードといっても過言ではなく、マナの数だけ相手の土地を割ることが可能というぶっ壊れ生物になります。
青タッチ赤ポストはコントロールなので、リストの数だけサイドボードがころころ変わるデッキですので、これ以外にも様々なカードが採用されています。
Pauperをやろう!
現在Pauperのトーナメントの賞品はマジック基本セット2013(M13)のパックになり、M13のドラフトが熱いこの時期にピッタリですね。
オリジナルデッキで参入するもよし、既存のデッキを環境に応じて変化させるもよし。様々な楽しみ方があるPauper、是非一回遊んでみてくださいね!
皆さん最後まで記事を読んでいただきありがとうございました。また次回の記事でお会いしましょう!それでは!
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