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津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
環境の総決算!『ドミナリア』シーズンスタンダードの結論は?
こんにちは! 晴れる屋の津村です。
先々週末にプロツアー『ドミナリア』が、先週末にグランプリ・コペンハーゲン2018(英語カバレージ)が終了し、『ドミナリア』入りのスタンダード環境はひとまずの結論が導き出されることとなりました。
今週はそれらの両大会と、Magic Onlineで開催されたMagic Online Championship Seriesの予選にあたる「MOCSマンスリー」の結果を振り返っていきたいと思います。それでは、まずはプロツアーとグランプリのトップ8をご覧ください。
プロツアー『ドミナリア』 トップ8デッキ(6月1~3日開催)
- 優勝・「赤単」
- 準優勝・「赤黒アグロ」
- 3位・「赤黒アグロ」
- 4位・「赤黒アグロ」
- 5位・「赤黒ミッドレンジ」
- 6位・「赤黒アグロ」
- 7位・「エスパー・コントロール」
- 8位・「赤単」
グランプリ・コペンハーゲン2018 トップ8デッキ(6月9~10日開催)
- 優勝・「赤単」
- 準優勝・「赤黒アグロ」
- 3位・「赤単」
- 4位・「青白コントロール」
- 5位・「赤単・ケルドの炎」
- 6位・「赤黒アグロ」
- 7位・「赤黒アグロ」
- 8位・「青白コントロール」
前回の記事と同様に、「赤黒アグロ」が圧倒的な支配力を見せつける結果になりました。これほどまでに際立った成績を残す背景として、他のデッキに比べて使用者数が多く、それゆえにデッキリストやサイドボードプランの進化のスピードが速いことが理由として挙げられるでしょう。特にサイドボード後の変幻自在に速度を変えられる戦略、そして対応力の高さには目をみはるものがあり、今ではすっかり環境の王者としての風格が漂ってきています。
もはや手が付けられないと言って差し支えないほどの大活躍を果たしている同アーキタイプですが、それに待ったをかけるべく名乗りを挙げたデッキがプロツアーとグランプリの両大会で栄冠を飾った「赤単」です。
明確な「赤黒アグロ」キラー・「赤単」
24 《山》
-土地(24)- 4 《損魂魔道士》 3 《ボーマットの急使》 4 《地揺すりのケンラ》 2 《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》 4 《ゴブリンの鎖回し》 2 《アン一門の壊し屋》 4 《熱烈の神ハゾレト》 3 《再燃するフェニックス》 -クリーチャー(26)- |
3 《ショック》 4 《削剥》 3 《稲妻の一撃》 -呪文(10)- |
3 《栄光をもたらすもの》 3 《チャンドラの敗北》 1 《宝物の地図》 3 《火による戦い》 2 《霊気圏の収集艇》 3 《反逆の先導者、チャンドラ》 -サイドボード(15)- |
「赤単」は「赤黒アグロ」を倒すためのデッキとして白羽の矢が立ったアーキタイプです。「赤黒アグロ」は《熱烈の神ハゾレト》を対処する術を持ち合わせていないため、これを4枚採用しているだけで優位に立つことができます。
全体的に軽い呪文が多く、タップインしてしまうような土地を一切採用していないのも「赤単」の明確な利点であり、それにより生じる手数差、そして淀みのない攻撃は「赤黒アグロ」にはない「赤単」ならではの強みです。
リスト自体は非常にオーソドックスな形に仕上がっていますが、環境の《ゴブリンの鎖回し》の多さを加味してか《ボーマットの急使》が3枚に抑えられていたり、《再燃するフェニックス》がメインから採用されていたりと、赤偏重のメタゲームを意識した構築が目を引きます。
ただ、《ボーマットの急使》に関しては個人的には4枚を推奨します。赤いデッキとのマッチアップでタフネス1のクリーチャーが足を引っ張ることは事実ではあるものの、《ゴブリンの鎖回し》を引かれていない場合に除去呪文の使用を強制できるほどのカードですし、他のマッチアップではこのカードの有無が勝敗に大きく影響を及ぼすからです。
今後の展望
大型イベントで立て続けに優勝するという最高の結果を手にした「赤単」ですが、「赤黒アグロ」を含む赤いデッキの勢いが凄まじいことを受け、全体的にかなりマークが厳しくなっている印象です。例えば、件の「赤黒アグロ」は《熱烈の神ハゾレト》に触りやすいように《損魂魔道士》の枚数を増量したり、《栄光の刻》のような直接的な回答を採用したりといった変化が見受けられますし、それに加えて「赤黒アグロ」側も《熱烈の神ハゾレト》を採用してその差を埋めようと試みています。
それでもなお、土地の関係で「赤単」側が少し有利だとは思いますが、もしもデッキ構築の段階で大きく差を付けたいのであれば、このようなアプローチにも注目です。
「赤単・ケルドの炎」
18 《山》 2 《屍肉あさりの地》 -土地(20)- 4 《ボーマットの急使》 4 《狂信的扇動者》 4 《ギトゥの溶岩走り》 4 《損魂魔道士》 4 《地揺すりのケンラ》 3 《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》 2 《アン一門の壊し屋》 -クリーチャー(25)- |
4 《ショック》 4 《稲妻の一撃》 3 《ケルドの炎》 4 《魔術師の稲妻》 -呪文(15)- |
1 《不死身、スクイー》 2 《チャンドラの敗北》 2 《マグマのしぶき》 4 《削剥》 2 《カーリ・ゼヴの巧技》 2 《霊気圏の収集艇》 2 《反逆の先導者、チャンドラ》 -サイドボード(15)- |
「赤単・ケルドの炎」と呼ばれるこちらのアーキタイプは、この度紹介するデッキの中で最も感銘を受けたデッキです。ズラリと並ぶ16枚もの1マナクリーチャーをご覧いただければ分かるように、このデッキはとにかく対戦相手を手数で圧倒することに重きを置いています。
クリーチャーのみならず呪文も軽いもののみで統一されているため、2ターン目までに3アクションを取れる展開も頻発しますし、対戦相手が少しでも序盤にもたつくようであれば即座に押し切ってしまうことができます。
これだけ軽い構成だと息切れが懸念されますが、それを防止してくれるのがデッキ名にもなっているこのカード。
《ケルドの炎》は手札の補充、そして最後のフィニッシュブローの役割を担ってくれます。このカードがキャストされるころにはすでに十分すぎるほど手数差が開いているでしょうし、対戦相手にとってそこで繰り出される《ケルドの炎》は絶望以外のなにものでもありません。
「赤単」や「赤黒アグロ」を筆頭に、対戦相手のデッキよりも少し重い構成で差を付けようとする戦略が一般的な中で、それとは真逆のアプローチで結果を残したのはお見事ですね。
今後の展望
このデッキをお勧めする理由として、動きがスタンダード離れしていてプレイするのが楽しいこと、さらにまだまだ伸びしろが大きなことが挙げられます。無色土地の選択ひとつをとってみても、《屍肉あさりの地》以外に《陽焼けした砂漠》というこのデッキの戦略にうってつけの候補もありますし、それらすべてを取っ払って《ゴブリンの鎖回し》を採用する可能性もあります。
また、このリストではサイドボード後に速度が大きく変化することはありませんが、Magic Onlineにはサイドボードに《熱烈の神ハゾレト》や《再燃するフェニックス》を採用したリストも存在します。「サイドボード後にデッキの速度を変える」場合、メインとの速度に落差があればあるほど効果が大きくなるので、メインが環境最速のこのようなデッキにうってつけの戦略です。
ひょっとするとそれらのカードはメインに採用されていて、一般的な「赤単」と「赤単・ケルドの炎」のハイブリッドのような形かもしれませんが、いずれにせよ、まだまだ研究の余地がある素晴らしいデッキですね。
「赤黒アグロ」
14 《山》 1 《沼》 4 《泥濘の峡谷》 4 《竜髑髏の山頂》 1 《霊気拠点》 -土地(24)- 4 《ボーマットの急使》 2 《損魂魔道士》 4 《屑鉄場のたかり屋》 3 《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》 4 《ゴブリンの鎖回し》 2 《ピア・ナラー》 4 《再燃するフェニックス》 1 《熱烈の神ハゾレト》 2 《栄光をもたらすもの》 -クリーチャー(26)- |
4 《削剥》 2 《無許可の分解》 1 《木端 // 微塵》 1 《キランの真意号》 2 《反逆の先導者、チャンドラ》 -呪文(10)- |
1 《栄光をもたらすもの》 3 《チャンドラの敗北》 3 《強迫》 1 《マグマのしぶき》 2 《大災厄》 1 《最古再誕》 2 《ウルザの後継、カーン》 1 《反逆の先導者、チャンドラ》 1 《イフニルの死界》 -サイドボード(15)- |
「赤黒アグロ」には実にさまざまなバリエーションが存在しますが、このリストはメインの《再燃するフェニックス》4枚採用に始まり、ミラーマッチをかなり強く意識した構成です。
その思想はサイドボードの《チャンドラの敗北》や、《ウルザの後継、カーン》の枚数からも垣間見ることができます。前者は言わずと知れた赤いデッキ対決における必殺兵器で、後者は《チャンドラの敗北》が効かないカードとしてミラーマッチで最も輝く1枚です。
前述の《再燃するフェニックス》4枚に加えて《ウルザの後継、カーン》まで採用されたこのリストは、一般的なリストと比較して《チャンドラの敗北》が効きづらくなっているため、赤いデッキ同士におけるサイドボード後を戦いやすくなっています。
他に《チャンドラの敗北》が効きづらいカードとしては、《包囲攻撃の司令官》が挙げられます。
今現在は赤いデッキの5マナ圏と言えば《栄光をもたらすもの》がお馴染みですが、今後さらに《チャンドラの敗北》が数を増やすようであれば、《包囲攻撃の司令官》を見かける機会も増えるでしょう。
「黒緑蛇」
7 《森》 4 《霊気拠点》 4 《花盛りの湿地》 4 《森林の墓地》 3 《沼》 -土地(22)- 4 《ラノワールのエルフ》 4 《光袖会の収集者》 4 《歩行バリスタ》 4 《巻きつき蛇》 2 《マーフォークの枝渡り》 4 《翡翠光のレインジャー》 2 《ピーマの改革派、リシュカー》 4 《貪欲なチュパカブラ》 4 《新緑の機械巨人》 -クリーチャー(32)- |
4 《冒険の衝動》 2 《霊気圏の収集艇》 -呪文(6)- |
4 《強迫》 2 《致命的な一押し》 2 《形成師の聖域》 3 《造命師の動物記》 1 《栄光の刻》 1 《霊気圏の収集艇》 2 《秘宝探究者、ヴラスカ》 -サイドボード(15)- |
最後はカナダの古豪、ジェフ・カニンガム/Jeff Cunningham選手の「黒緑蛇」を。上記リストはMOCSマンスリーで全勝を記録したものですが、カニンガム選手はそれ以外にもMagic Onlineの競技リーグで全勝回数が1位タイ(5月13日時点:19回)と素晴らしい成績を収めています。
同アーキタイプはこれまでにも幾度となく紹介してきましたが、このリストはクリーチャー以外の呪文を極限まで削っているのが特徴です。この構成はただ単に安定性の向上に寄与するだけでなく、赤系のデッキに対しても上手く機能します。赤いデッキに対しては、相手の除去呪文が尽きるまでクリーチャーを連打し続け、クリーチャーが残り始めたら《新緑の機械巨人》で一気に強化、というのが最も簡単な勝ちパターンですからね。
除去が満載のデッキに対しては《造命師の動物記》に加えて《形成師の聖域》までもが控えていますし、苦手なデッキが少なく、現実世界での露出が少ないのが不思議に思えるほどに素晴らしい仕上がりになっています。
今のリストで唯一にして最大の弱点は《スカラベの神》なので、《スカラベの神》の入ったデッキが数を増やすようであれば《栄光の刻》の増量、または《ヴラスカの侮辱》の採用を検討しましょう。
なお、少し前のリストではありますがカニンガム選手ご自身によるサイドボードガイドが掲載されておりますので、お時間のある方はそちらもぜひご覧になってみてください。(リンク先は英語です。)
今週の一押し:「ミラーリ予想・コントロール」
6 《沼》 5 《島》 4 《異臭の池》 4 《水没した地下墓地》 1 《森林の墓地》 2 《天才の記念像》 2 《廃墟の地》 1 《オラーズカの拱門》 -土地(25)- -クリーチャー(0)- |
3 《致命的な一押し》 3 《選択》 2 《強迫》 2 《喪心》 1 《一瞬》 1 《アズカンタの探索》 4 《黄金都市の秘密》 1 《予言》 2 《大災厄》 4 《ヴラスカの侮辱》 3 《ヤヘンニの巧技》 2 《首謀者の収得》 4 《ミラーリ予想》 2 《徙家 // 忘妻》 1 《不帰 // 回帰》 -呪文(35)- |
1 《スカラベの神》 1 《殺戮の暴君》 2 《強迫》 3 《否認》 1 《橋上の戦い》 1 《バントゥ最後の算段》 1 《大災厄》 1 《失われた遺産》 1 《霰炎の責め苦》 1 《ファイレクシア教典》 1 《機械医学的召喚》 1 《秘宝探究者、ヴラスカ》 -サイドボード(15)- |
今週の一押しは、《ミラーリ予想》を使ったコントロールデッキです。
デッキの動きはいたって簡単で、序盤を除去でいなして《ミラーリ予想》を設置できるまでの時間を稼ぎます。一度《ミラーリ予想》が設置できれば、あとはそれを《一瞬》《徙家 // 忘妻》または《首謀者の収得》で延々と使いまわすことでゲームに勝利します。
《一瞬》と《徙家 // 忘妻》は、《ミラーリ予想》のⅢ章能力がスタックに置かれたところで唱えることができます。そうすると《ミラーリ予想》のⅢ章能力の恩恵を受けつつ《ミラーリ予想》を再利用することができるようになるというわけですね。
《首謀者の収得》の場合は追加の《ミラーリ予想》、さらに状況に合わせた1枚をサーチできるので、こちらもほぼゲームエンドと言って差し支えありません。この組み合わせは在りし日の《ミラーリ》と《魔性の教示者》を彷彿とさせるコンボですね。
《首謀者の収得》を採用している関係で、フィニッシュ手段は何でもござれと言ったところですが、最も気分爽快な勝ちパターンは《ミラーリ予想》の能力でコピーされた《霰炎の責め苦》です。
「青白コントロール」がクリーチャーカードを一切採用せず、対戦相手の除去呪文を無駄カードに変えてしまう戦略は今では広く知られていますが、プレインズウォーカーすら採用していないこのリストはその長所により一層の磨きをかけたようなデッキです。コントロールデッキの宿命としてサイドボード後は苦戦を強いられますが、メインデッキの圧倒的なまでの強さと変幻自在の動きが魅力的なデッキとなっております。
おわりに
今週の『津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ』は以上です。前回に引き続き、またはそれ以上の赤いデッキの勢いに気圧されてしまいましたが、そんな中で独自路線を行く「赤単・ケルドの炎」の登場には大変驚かされました。
同じ「赤単」でも従来のものとは動きが大きく異なるデッキ、かつ最高に楽しいデッキですので、みなさんもぜひ一度手に取ってみてください。
それでは、また次回の連載でお会いしましょう!
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