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津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
最終回:Last Smile
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津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
2012.07.05
最終回:Last Smile
こんにちはー。
いよいよこの連載も今週で最終回を迎えることになりました。今週は先週末に行われたワールド・マジック・カップ予選・名古屋の結果と、今後注目のデッキを中心に見ていきましょう。
まずは名古屋予選のトップ8デッキをご覧ください。
~ワールド・マジック・カップ予選・名古屋 トップ8デッキ~
優勝 | 「青白Delver」 |
準優勝 | 「青白Delver」 |
3位 | 「ナヤ(赤緑白)ビートダウン」 |
4位 | 「青白Delver」 |
5位 | 「青白Delver」 |
6位 | 「青白Delver」 |
7位 | 「青黒《心なき召喚》」 |
8位 | 「青白Delver」 |
ワールド・マジック・カップ2012予選・名古屋 イベント結果・上位デッキリスト
ワールド・マジック・カップ2012予選・名古屋 開催レポート・ショートインタビュー
最早お馴染みの光景と言っても差し支えありませんが、見事なまでに「青白Delver」一色の結果に。しかしながらそれぞれ細部は異なっており、《ルーン唱えの長槍》を搭載したなべ(渡辺 雄也)君型(参考:彼のデッキ構築劇場)が3名、メインに《戦争と平和の剣》を採用したLSV型(参考:第106回)に近いリストが2名、メインに装備品を1枚も取っていないリストが1名といった分布でした。
装備品が入っていないリストは比較的珍しいですし、見事に優勝をはたしたそのリストから見ていきましょう。
「青白Delver」
9 《島》 1 《平地》 4 《氷河の城砦》 4 《金属海の沿岸》 2 《ムーアランドの憑依地》 -土地(20)- 4 《秘密を掘り下げる者》 4 《瞬唱の魔道士》 4 《聖トラフトの霊》 2 《刃の接合者》 4 《修復の天使》 -クリーチャー(18)- |
4 《はらわた撃ち》 3 《ギタクシア派の調査》 3 《蒸気の絡みつき》 4 《思案》 2 《思考掃き》 4 《マナ漏出》 2 《四肢切断》 -呪文(22)- |
3 《幻影の像》 1 《刃の接合者》 3 《精神的つまづき》 2 《変異原性の成長》 3 《天界の粛清》 2 《戦争と平和の剣》 1 《饗宴と飢餓の剣》 -サイドボード(15)- |
日本代表最後の一枠を掴み取ったのは、プロツアー準優勝や国内の構築グランプリ2連覇などの実績を持つ、「あんちゃん」こと高橋 優太でした。決勝戦では森 勝洋の駆る「青白Delver」を下し、155名の頂点にたどり着きました。
あんちゃんのリストで印象的なのは、メインに装備品を取っていないことです。
「青白Delver」と言えば、《ルーン唱えの長槍》や《戦争と平和の剣》を用いてタイトなダメージレースを制することが多いですが、このリストではそれらを採用せず、その枠に《刃の接合者》を搭載しています。
これにより劣勢の状態からの一発逆転は難しくなっているものの、その分序盤から盤面に干渉できる回数は増えています。《刃の接合者》はとりわけ「黒赤/黒青ゾンビ」、「赤緑ビートダウン」、「《出産の殻》」デッキのような前のめりなデッキの攻勢を削ぐのに重宝しますし、《修復の天使》との相性の良さはすでにみなさんご存じの通り非常に強力なものです。
その《刃の接合者》に加え、メインから4枚採用された《はらわた撃ち》からも分かるように、このリストは《極楽鳥》《ラノワールのエルフ》といったマナクリーチャーを多用するデッキをかなり意識していたのではないかと思います。
現在のメタゲームは「青白Delver」の一強状態ではありますが、それに次ぐ勢力は「《出産の殻》」デッキや「赤緑ビートダウン」といったデッキですからね。
《はらわた撃ち》は「青白Delver」のミラーマッチにおいても、《秘密を掘り下げる者》を巡る攻防で有利に立つことができるので重宝します。そして《修復の天使》で《瞬唱の魔道士》や《刃の接合者》を「明滅」されてしまうと簡単にアドバンテージ差がついてしまうので、それを妨害するという意味でも《はらわた撃ち》は役に立ちます。
個人的には《蒸気の絡みつき》を削ってまで《はらわた撃ち》を4枚にするかどうかは疑問が残りますが、《蒸気の絡みつき》は4枚採用が当たり前、と思われている中で、このような戦略を実行して結果を残すのはすばらしいことだと思います。
《戦争と平和の剣》が主流だった中で、なべ君が《ルーン唱えの長槍》を採用したリストでグランプリを制したのもそうですが、人と違うことをやって結果を残すというのは本当にすごいことです。なべ君や今回のあんちゃんのリストは、既存の構築に縛られる必要はないということを教えてくれる結果だったと思いますし、いくら「青白Delver」が強いデッキだとは言え、何の努力も無しに勝てるデッキではないというのはなべ君の記事(前述の構築劇場)を読んでいただければ理解していただけるかと思います。
この連載で過去に王者と銘打ってきた「ジャンド」や「Caw-Blade」にも当てはまることですが、そういった一強とされるデッキですら細部を少し変えるだけで勝率が大きく変わったり、メタゲームに合わせた変更をきっちりと行えるかどうかが勝敗に大きく影響していたと感じています。
環境一強のデッキと言えど、進化が止まってしまえば王座を維持することはできませんし、逆に言えば王座を維持するための努力や変化をし続けているわけです。その他のデッキがそれを超えるためにはそれ以上の努力だったり、それ以上の奇抜な発想が必要となるでしょうが、例えば「ジャンド」時代の《広がりゆく海》のように、たった1枚のカードが環境を変えてしまうということも十分に起こりうると思います。
先週紹介した「Esper Midrange」なんかは「青白Delver」に対してかなり強くできていますし、あのデッキはつい最近登場したばかりです。スタンダード環境にはそのような隠されたデッキテクがまだ他にもあるかもしれませんし、基本セット2013が発売されれば、「青白Delver」の天下にも変化が現れるかもしれませんね。
「ナヤ(赤緑白)ビートダウン」
5 《森》 1 《山》 1 《平地》 4 《銅線の地溝》 1 《根縛りの岩山》 4 《剃刀境の茂み》 2 《陽花弁の木立ち》 2 《魂の洞窟》 3 《ガヴォニーの居住区》 -土地(23)- 4 《極楽鳥》 4 《アヴァシンの巡礼者》 4 《刃の接合者》 3 《夜明けのレインジャー》 2 《国境地帯のレインジャー》 4 《高原の狩りの達人》 4 《修復の天使》 2 《ウルフィーの銀心》 2 《月皇ミケウス》 -クリーチャー(29)- |
4 《緑の太陽の頂点》 4 《忌むべき者のかがり火》 -呪文(8)- |
2 《ウルフィーの銀心》 2 《士気溢れる徴集兵》 2 《天界の粛清》 2 《焼却》 1 《古えの遺恨》 1 《帰化》 1 《押し潰す蔦》 1 《忘却の輪》 2 《天使の運命》 1 《ギデオン・ジュラ》 -サイドボード(15)- |
こちらはMartin Juzaの「4 Spell Naya(赤緑白)」(参考:第107回)によく似た「ナヤ(赤緑白)ビートダウン」。
このカラーリングのデッキが抱える問題として、《忌むべき者のかがり火》に弱いという点が挙げられますが、近頃では《月皇ミケウス》を投入してその改善を図るリストが増えています。
と言いますのも、この手のデッキは《忌むべき者のかがり火》を「普通に」キャストされても戦線が壊滅してしまうことが問題だったのですが、《月皇ミケウス》を早期のターンに設置できれば「奇跡」コスト以外の《忌むべき者のかがり火》で自軍が全滅してしまうような事態は避けられます。
相変わらず「奇跡」された《忌むべき者のかがり火》だけはどうしようもないことが多いですが、「奇跡」された《忌むべき者のかがり火》を効率よく対処できるカードはこのカラーリングにほとんど存在しないですし、通常コストでキャストされる《忌むべき者のかがり火》に耐性が付くだけでもこのデッキにとっては大きな意味を持ちます。
それに《ガヴォニーの居住区》と組み合わさった場合の破壊力は特筆に値しますし、「ナヤビートダウン」以外にも「ナヤ《出産の殻》」なんかでも《月皇ミケウス》はよく見かけるようになりましたね。マナクリーチャーと《ガヴォニーの居住区》の入ったデッキならどんなリストでも概ね戦略に合致する1枚だと思うので、まだ使ったことのない方はぜひお試しください。
名古屋予選の特集は以上になります。最後に、久しぶりに「今週の一押し」デッキを見ていきましょう。
「今週の一押し」~「青白赤《降霊術》」
4 《平地》 3 《島》 1 《山》 4 《金属海の沿岸》 3 《氷河の城砦》 3 《断崖の避難所》 2 《硫黄の滝》 3 《墨蛾の生息地》 2 《進化する未開地》 -土地(25)- 2 《瞬唱の魔道士》 4 《甲冑のスカーブ》 4 《刃の接合者》 1 《研究室の偏執狂》 2 《石角の高官》 1 《鏡狂の幻》 -クリーチャー(14)- |
4 《信仰無き物あさり》 4 《思案》 3 《捨て身の狂乱》 4 《降霊術》 3 《審判の日》 3 《滞留者ヴェンセール》 -呪文(21)- |
1 《瞬唱の魔道士》 2 《石角の高官》 1 《荒廃鋼の巨像》 1 《有毒の蘇生》 2 《漸増爆弾》 3 《新たな造形》 3 《天使への願い》 1 《殴打頭蓋》 1 《滞留者ヴェンセール》 -サイドボード(15)- |
スタンダード・アナライズ最後を飾るデッキは、行弘君の大好きな《降霊術》を使ったデッキです。
このデッキは勝ち手が豊富で、様々な角度から勝利することができますが、その中で最も印象的なものは《研究室の偏執狂》でしょう。
少し回りくどいですが、戦場に《降霊術》、墓地に《鏡狂の幻》と揃えば準備完了で、まずは《降霊術》の能力で《鏡狂の幻》のコピーを出します。
そして《鏡狂の幻》の能力を起動すれば全てのカードがライブラリーから墓地に落ちるので、次のアップキープに《研究室の偏執狂》をコピーすればゲームに勝てるという算段です。《鏡狂の幻》を起動すれば《捨て身の狂乱》も墓地に落ちるので、単体除去1~2枚程度なら乗り越えることも可能です。
ちょうど「闇の隆盛・トップカードレビュー」で行弘君が書いていた通りの勝ち方ですね。
ただし実際に数マッチやってみたところ、この勝ち方をするのは極稀で、大体のゲームは《刃の接合者》or《石角の高官》と《滞留者ヴェンセール》のコンボで勝つことがほとんどでしたが、一度《降霊術》の設置に成功したのであれば、各種ドローサポートや《甲冑のスカーブ》+《滞留者ヴェンセール》の組み合わせでライブラリーを掘り進んで積極的に狙っていきましょう。
サイドボードも非常に面白い構成で、対戦相手が《降霊術》用に墓地対策を入れてくるようであれば《新たな造形》から《荒廃鋼の巨像》を導くシステムを、対戦相手が《滞留者ヴェンセール》対策に《士気溢れる徴集兵》を入れてくるようであれば《天使への願い》をサイドインすることになります。
サイドイン、アウトも含めてかなりテクニカルで難しいデッキになっていますが、その分楽しさは抜群なので、面白いデッキが好きな方はぜひお試しください。
メインデッキに《堀葬の儀式》を1枚入れておくと《降霊術》がなくともライブラリーを掘り進む行為に含みを持たせることができるので、《審判の日》を1枚削って入れておくと役に立つかもしれません。
あとはそれと相性の良い《幻影の像》+《太陽のタイタン》を入れておいても面白いでしょう。
いつもより少なめになってしまいましたが、最後のデッキ特集は以上になります。スタンダードの話ではないですが、最後に僕が練習中に意識していることを書いてお別れにしましょう。
~失敗は成功のもと~
僕は今も昔もミスがとても多くて、特別何かに秀でているわけでもありませんが、練習量だけは誰よりも多い自信がありました。
そんな中で特に重要だと考えていることは、練習中にたくさんミスをすることです。個人的にマジックにおいて「同じミスをしないこと」はとても重要だと考えており、練習はどちらかというとミスをするためにやっているような感じです。
強くなるためには僕は大会に出続けることが大切だと考えていますが、これは大会ほど良い練習はないと思っているからです。
例えば大会中にもしも何かミスをして負けた場合、あなたは次のラウンドまでずっとそのミスについて考え続けるはずです。それは普段の練習では得られない貴重な時間であり、おそらくそれだけひとつのミスについて長い間考え続ければ、同じ類いのミスをすることはほとんどなくなるでしょう。
マジックのカードは数千、数万とあるので、全く同じシチュエーションがくることはほとんどないため、似たような局面で応用が効くかどうかも重要です。近くにいる自分より上手いプレイヤーに正解を聞くのもいいかもしれませんが、自分で考えてミスしてしまう方が長期的には自分のためになると思います。
ミスをするのを恥ずかしいと感じるプレイヤーもいるかもしれませんが、Kai BuddeやJon Finkelですらミスはしますし、大切なのはそこから何を得られるかではないかと思います。
僕は練習をたくさんやって正解にたどり着くというよりは、練習でたくさんミスをして、全てのミスのパターンを知ってるから正解にたどり着きやすいような感じですし、ミスが多いのもそれはそれでひとつの特権なのかもしれません(笑)。
最後なのでもう少し何か気のきいたことが言えると良かったのですが、浮かんでくるのはみなさんへの感謝の気持ちばかりでした。
こんなにも文章力のない僕を使ってくださった編集長にはどれだけ感謝しても足りないくらいですし、不甲斐ない文章や内容でも温かいご声援を送ってくださる読者のみなさまにも同じような気持ちでいっぱいです。
最近はMagic Onlineであたった日本人の方に「いつも記事楽しみにしてます」と声をかけていただけることも多く、そういったみなさまの声援は何よりも励みになりました。僕はこの連載を通じてスタンダードが大好きになりましたし、もしも読者の方がこの記事を読んで以前よりもスタンダードが好きになっていてくれたり、以前よりも環境理解度が深まったと思ってくださっていれば幸いです。
次に記事が書けるのがいつになるかは分かりませんが、もしもまた機会がいただけるようでしたら、少しでも成長した記事をお届けできればと思います。
最後になりますが、今まで本当にありがとうございました。それではまた、どこかのトーナメント会場でお会いしましょう。
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