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Savor the Flavor
テーマが動かす世界構築
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Savor the Flavor
テーマが動かす世界構築
Doug Beyer / Translated by Mayuko Wakatsuki / Translation-supervised by Yohei Mori
2012年2月29日
読者ジョージーがくれた電子メールは、私の歯車を本当に回転させた。回り始めたそれらの歯車は、世界構築とマジックの舞台を創造するために我々が行うあらゆる物事について私が永久に喋り続けないようにするために使用している、巨大で重い水門にたまたま取りつけられていた。そういうわけで、もし今日の記事が、非常に特異的で気分の良くない詳細をあまりに多く含んでいると思ったなら、ジョージーと彼女からのお便りが歯車を動かしたせいだからね!
親愛なるダグ・ベイアーへ
私は先日、夫に尋ねました。もしあなたが次のマジックのセットの舞台となる次元を作ることができたなら、それはどんなものになる? 貴方がたウィザーズの皆さんは、創造する世界をどのように決定するのでしょうか? 着想の中からどのようにして全てを決定するのでしょうか? 次元創造における最も重要な面や細部は何だとお考えですか、そしてどれほど前からそれらの着想を元に開発をするのでしょうか?
ジョージーより
ジョージーは私の水門を開いた。そして洪水がやって来る。私はジョージーの質問全てに答えよう、だがその順番はばらばらだ、できる限り最良の答えを提供するために。最後の質問から始めよう。準備はいいかい?
ザザーーッ!
どれほど前からそれらの着想を元に開発をするのでしょうか?
ちょっと長いよ。数年だ。概して、10月発売のセットのブースターパックを君が開く頃、マジックのクリエイティブ・チーム(私はそのライターの一人だ)は既に、発売したセットの「次の」舞台のだいたいの肉付けを終えている。ちょうどその期間、あらゆるスケジュールが進行している。世界構築は、ワールドガイド(スタイルガイドとしても知られる)が完成する前に終わる必要がある。ワールドガイドは、アーティスト達が彼らへと割り当てられたアートの参考資料として使用する前に作り終える必要がある。アートはカードへと配置される前に描かれ、カードは印刷され流通される前に、そして印刷と流通は、君がそのセットのプレリリースでパックをぶちまける前に届ける。もし我々が世界構築をそれまでに終えなかったら、パイプラインは壊れて我々はこのクレイジーな機構のあらゆる可動部分を同時に動かせなくなってしまう。
《未来予知》 アート:Matt Covatta |
そうこうしている間、同じ期間内に、我々は更にその次に来るセットの舞台の準備と下調べも既に始めている。このように、複数の舞台にまたがって立つことは挑戦となりうる。それは永続的な機密保持と日常的に精神的区切りを作る訓練だ。R&Dのメンバーがこのウェブサイトでイニストラードと闇の隆盛について議論している間、我々の脳は既に次の二年の風変わりでクールな舞台についての情報で膨らんでいる。それは「トワイライト・ゾーン」(訳注:アメリカで1959年-64年に放映されたSFドラマシリーズ)の話になってもいいシナリオだ。我々は未来から来たタイムトラベラーとしての強みを全て持っている、知っていることについて何も議論できないということを除いて。それは基本的に、未来からやって来たタイムトラベラーの強みの全てだ。そして我々が公的に話すことができる全て、今や明らかになっているカードと世界は、我々にとっては過去二年の仕事全てだ。クールな戯言だ、とだけ言っておこう! そしてそれについてはまた後で!
次二つの舞台の先にあるものは絶えず進行中で、それよりも更に先にやって来るかもしれないものについては、どういったフレイバーやメカニズム的テーマが基礎として将来計画されているのか、我々は通常少しのかすかな手がかりを掴んでいる。だがその二年が過ぎたなら、物事はとてもあやふやで、変化すべき主題となる。それら遠い未来の計画は徹底的に変わるであろう、もしくはいつでも完全に壊されて捨てられると我々は知っている。だがそれでも、来たるべき時のためにそれらのアイデアを浸透させておくことは有用だ。後から道を歩いて来るかもしれない着想を持っていることは、目下のところ君が行っていることに関して美的な決定をする際に君を助けてくれるかもしれない。それは、ある舞台が他のそれぞれから十分に異なっていると確かに感じさせる手助けとなる。例えば、我々はミラディンの吸血鬼達へと非常に特徴的な外見的特徴(スポイト状の指)を与えた。何故なら我々は、彼らの姿をイニストラードの吸血鬼達の外見(ソリンと同様の、暗い色をした白目)とはっきり識別することがより重要となるだろうと知っていたからだ。
だがそれは我々にタイミングとスケジュールを、世界構築の「いつ」を告げてくれるだけだ。それでは「どのように」と「何故」に移ろう。
貴方がたは、創造する世界をどのように決定するのでしょうか?
これはジョージーのお便りの実質的な中身だ。何が我々に「もう一つのもの」ではない特別な舞台を思いつかせてくれるのか? 答えはこうだ。我々はそのブロックのテーマに導かれる。
マジックのセット一ブロックを導くエンジンは、純粋なフレイバーでも純粋なメカニズムでもなく、それ以前に現れて両方を生じさせるもの、テーマだ。「テーマ」、それはその一年間を強調しようとしているあらゆる主題目のことだ。あるテーマは主にメカニズム的となりうる(例として、「今年我々は部族メカニズムを破裂させるよ」)し、もしくは非常にフレイバー的でもあり(「我々はゴシックホラーの物語から思いついたカードを作るよ」)、また何かその中間(「ファイレクシアはアーティファクトでいっぱいの世界で戦争を続けるよ」)となる。そこにはとても多くの異なる種類の、マジックのブロックに花咲く想像の種がある。つまり、テーマというのはブロックの創造を導く、いくらかの大きな着想だということだ。
《種子生まれの詩神》 アート:Adam Rex |
テーマが決定し合意に至った後(デザイン、開発、クリエイティブ、ブランドからの分別ある代表者達からの意見とともに)、デザイナー達はそのテーマに調和したカード製作を始めることができる。そして我々クリエイティブ・チーム内の者達は、テーマを息づかせることのできる世界のアイデアを紡ぎ始めることができる。デザインとクリエイティブはざっと同時期に仕事をする。与えられたブロックについて、他のチームが何をしているかをそれぞれが見守り続ける。そうして彼らは互いに同期していられるし、互いのアイデアから霊感を得ることができる。
あるテーマをどのように世界へと転ずるのか? その道は不安定でつづら折りになっているか、比較的まっすぐかのどちらかになりうる。だがどちらの場合でも、それはとても多くのやるべき事を含んでいる。例えば、イニストラードのテーマは最初からある特定の世界をほのめかしていた。我々はゴシックホラーの物語を基礎としたブロックを求めていると知っていた。よって主要なアイデアは既に固定されていた。だがその世界に人々を居住させるための仕事はそれでもあった。狼男と幽霊と吸血鬼と様々なフレイバーのゾンビの外見を創造し、建築物と兵器と現地の人々の装備品をデザインし、カードのアーティスト達への参考資料とするためにワールドガイドをコンセプト画で満たし、州や村や城や吸血鬼一族や何やかんやにぴったり合う名前を何百と考案し、そして、そのブロックのカードを製作する際に出て来るかもしれないと我々が考えることのできた、膨大なページ数に渡るテキスト描写で全てを締めくくる。ほとんどあらゆることが、そのテーマへと帰ってくる。
とはいえ、テーマから世界を引き出すことは、通常はイニストラードほどにまっすぐではない。ゼンディカーの初期テーマは「土地絡み」、土地を含むメカニズムを基礎とするセットだった。それは直ちにセットの舞台を示唆しなかったが、熟考と議論とかなりの回数のクリエイティブ・チームの会合の後、我々はゼンディカーを大胆な探検家とエキゾチックな場所の、大いなる冒険の世界として考え始めた。その冒険の世界というフレイバーはカードのメカニズムデザインへとフィードバックされ、既に「土地絡み」テーマから生まれていたメカニズムの上に、罠と探究と探検装備を想起させるカードデザインを導いた。
《空の遺跡、エメリア》 アート:Jaime Jones |
テーマとは視野と舞台全体のキャラクターを定義する、駆り立てる力だ。だがそれが個々の詳細にまでなった時、我々は何か他のものに頼る。
着想の中からどのようにして全てを決定するのでしょうか?
言及したように、次元を構築することについて上層部が決定し、我々はそのブロックのテーマを当てにする。我々は、イニストラードは多義のヨーロッパ的に見えるべきであると決定した。例えば、切り裂きジャックが徘徊する敷石のロンドンの要素、典型的なトランシルヴァニアの邸宅と墓石が点在する荒れ野、漠然とドイツ的で漠然とスラヴ的でもしかしたらかすかにスカンジナヴィア的に響く言語構造、そして1790年代の肌寒い秋に相応しく見える人間の農民の衣装。これら全ては、ゴシックホラーというテーマの導きの星によってもたらされた。イニストラードはそのように、ゴシックホラーの物語の一貫した資料に導かれた、堅固な筆致とともに具体化した。
《月桂樹の古老》 アート:Terese Nielsen |
だがより低いレベルでの決定については? 君が堅固な筆致の先へ進んだ時、ここの吸血鬼達何体かとそこの身の毛もよだつような城いくつかに何が起こる? そのテーマにとってあまりに具体的な決定については、我々自身の興奮した感覚によって決定するというのが答えだ。我々は個々のケッシグの村名の音声的特質で、もしくはアヴァシンのシンボルデザインで遊び回る。そして何がクールに感じるかという我々自身のセンスとともに進む。ブロックの高レベルテーマは、狼男の親指の解剖学的構造がどんなものかを裁定するほど十分に具体的ではない、もしくは、それはどんな形でもありうるかもしれない。我々はただそれらのコンセプトスケッチの束を作り、それらを見る。その道を決定するために君がかみ砕くことのできる数学的問題はない、そして狼男達が掌から伸びる人間のものに似た親指を持とうと、手首から伸びる狼のものに似た長い親指を持とうと、概略的なブロックテーマは満足する。ゴシックホラーのテーマが管理するのは、そこに狼男が存在するというその事だけだ。それら日々の判断は、昔ながらの明白な美的感覚を呼び起こす。
我々はこれら詳細レベルの決定を行う、君が行うどんな創造的努力とも同じやり方で。
- 一つの特別な目的へと心を定める。
- その目的を取り扱う中で、君の頭に蓄えられたとてつもない量の影響、観察、経験を何か喜ばしく新しいものへと君の脳に組み換えさせる。
- 正しい答えを思いついた時、君の陽気なフィーリングが君へと語る声に耳を傾ける。
- できる限りクールなやり方で、その答えを記録する。
- 思いついたものを後からよく見る。そして先程君を興奮させたものが日中の冷たい光を生き残ったなら確かめる。もしそうでなければ......
- それが動き出すまでひねり、改善する。
《来世への旅》 アート:Vance Kovacs |
クリエイティブ・チームの面々は芸術、報道、哲学、映画、歴史、科学、はたまた経営といった様々な経歴からやって来ている。我々はその次元で得たもの、学問や経験や振るい起こすことのできる霊感のはぐれた残骸まで全て、そういったあらゆるものを投げつけて、細部を蓄積させる。我々はクレイジーな事柄の山をたっぷり使い、その後それを全て振るって、ばらばらになった小片を落ちるままにさせる。一度我々が考えることのできる着想全てを建てすぎてしまったら、それを攻撃して攻撃して攻撃する。残ったものが、まるで世界のように豊かで生きていて奇妙に感じられるまで。ケースバイケースの微小な評価が必要になった時は、君自身が持つ細部への渇望と美への飢えが蹴り入れられ、君が自身を導く星となる。
次元創造における最も重要な面や細部は何だとお考えですか?
君の目的を知るんだ。ジョージー、テーマありきの過程は君の予想とは異なって響くかもしれない。私は、クリエイティブ・チームはその時間を次元生成へと思索的に費やし、カードデザイナーは後からついて来てカードセットをその周囲にデザインすると想定している何人かのマジックプレイヤーと話してきた。我々は斬新なアイデアと戯れるが、実のところマジックの世界構築のほとんどは心の中のはっきりとした目的をもって行われる。カードセットの舞台はただ蹴るためにそこにあるのではない。それには果たすべき仕事がある。到達しようと努力するゴールがある。
多元宇宙に果てはなく、魔法を振るうプレインズウォーカー達の無数の可能性によってたきつけられている。君の創造の大砲で狙いをつけ、標的として選ぶ必要のあるとても多くの可能性が存在する。だから風変わりな前提とともに、可能性を制限することができて君の決定を導く「たられば」とともに始めよう。もし君が好むなら地図とともに、君の世界の原則を導く基礎となるクールな地理学とともに始めよう。何ならマジックの次元の通常の基本的仮定を《否認》し、もしくはいくらかの背景的要素を多数の要因で刺激する。お気に入りのフィクションのジャンルや地球の文化の何か変わった要素を取りこんで、堅く掴んで、180度のきついひねりを加えて、それをその次元の出発点として使用する。もしくは君が探究したいと思うメカニズム的主題、呼び物とするためのルールの新たな見地もしくはマジック初期のメカニズムの新たなひねりを考案し、カードセットの舞台の中でそれら自身が演じるテーマが含むものを調査する。重要なのは、そこに道標を置くことだ。君の放浪の中で君が道を保つのを助けてくれる、頑丈な塔や北極星を。
その目的は君に二つ、良いことをしてくれる。一つ、それは君がその仕事について成功しているのか失敗しているのかを測るものさしとして使用することのできるテーマをくれる。二つ、それは次の時、君に新たな目的地を選ばせる。だから君はそれを何度も何度も行うことができて、そしていつも最初の時と同じくらいに興奮を感じさせてくれる。
質問に心から感謝するよー、ジョージー! 皆、また来週。
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