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デュエルの優先事項
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デュエルの優先事項
Zac Hill / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru
2012年6月22日
私は自分の記事を掲載される前の週の木曜日と金曜に書いている。それはつまり私のウェブブラウザにDailyMTG.comを読み込み、それをコピー&ペーストするといったようなちょっとした小技をできるということだ。先週、私は確かに「私たちがどのようにデュエルズ・オブ・ザ・プレインズウォーカーズとそれに連携するセット(基本セット2013のようなもの――私が初めてデベロップ・リーダーを務めたんだ!)をデベロップするのか、ということについて」話すと約束した。
おい!書いていて15秒でもうコラムのネタができた。なんてラッキーなんだ!
だから、私はまさにそれをやろうと思う。また別の二部作になることになる。1番目は、私はデュエルズのデベロップ過程について、あるいは少なくともどうやって最後の3ゲームのその過程に近づいていったかについて話したい。2番目に、デュエルズを念頭に置いた基本セットのデベロップがどのようなものだったかについて話そう。
OK、準備はいいか、ぶっつぶせ!行け!勝て!
ファイト・クラブ
我々には凄い人たちで溢れた完全なウィザーズのデジタル・チームと、凄い人たちで溢れたステンレス・ゲームズのゲームデザインチームがいて、デュエルズのために働いている。その両チームが組み合わされることによって、キャンペーンの構造、展開、特徴、メカニズム、そして物語の進行、さらには、AI、UI、グラフィック、そしてデュエルズを有名にした、ほとんど「アーケードのような」経験を作り上げている。
《炬火のチャンドラ》 アート:D. Alexander Gregory |
徐々にウィザーズのデジタル・チームが取り組んでいるものの、まだ従来のデベロップのままのもの、それは、デッキのデザインとバランスだ。
では、それをどのように行っていくか? デュエルズのデザインは通常のマジックと意味が違うのか? どのようにして通常のメタゲームやリミテッドの環境と異なるデュエルズの対戦のバランスを取るのか?
私が言いたいのは、まず最初のステップは少し離れた視点から見た全体像について話すことだということだ。以前私が述べたように、デュエルズは従来の対戦格闘ゲームの構造にのっとり、そのゲームを動かすメカニズムの一部から発想を得ている。私にとって最も大事な事の一つは独自性だ。面白い格闘ゲームのキャラクターはどれも独特の個性を持っている。その個性はそのキャラクターの様々なイメージを連想させる。必殺技、スーパーコンボ、コスチューム、立ち回り、動き、構え、挑発・・・何でも。それはストリートファイターIIのリュウとケンを見ても明らかだ。最初はほぼ同キャラだったがすぐに波動拳と昇龍拳の性能の違いを軸にして分化されていった。ゲームデザイナーとして考えるに、定義付けることは全体的な経験を広げるとともにプレイヤーのキャラクターへの投資の機会も生み出すものであるから、定義付けは必要なのだ。
それはどのようにデュエルズに適用されるのか?
もし私がスタンダードの赤いデッキのバランスを取る場合、私がもっとも注意することはフォーマットに対して横断的にプレイできるかどうかだ。私はカードがどう働くかに注意を集中させる。デュエルズにおいて、さらに重要なことは、カードがどのように感じられるかだ。チャンドラは赤の魔道士で、炎の呪文を唱える。岩の呪文ではなく、雷の呪文でもなく――炎の呪文だ。彼女の立ち回りからしてどうやら紅蓮術士のようだ。それはカラーパイをまたいだ複数のメカニズムを統合するものではない。それは多くのショットガンの爆風のような火力呪文、勢いはいいが脆いクリーチャー、そして戦術的よりも微妙に戦略的(彼女は何でもかんでも燃やそうとはしない――だが、彼女はきっと何かを燃やそうとする)だ。
対するはこれ、〈群衆の親分、クレンコ〉だ。彼は別のデュエルズの赤いデッキにいる。しかし彼はチャンドラとは全く違った動きをするのだ。奴は自らゴブリンを掘り出し続ける。そして彼が掘り続けるのはただ一つ――多くの、さらに多くのゴブリンども! 彼はチャンドラよりずっとクリーチャー志向で、短気な火力の天才というよりも怪しげな暗黒街の大物のような立ち回りを誇っていた。
したがって、君がデュエルズのためにデッキをデザインするとき、君は特徴と感覚から始めようとするはずだ。私がデュエルズ2012でカーンのデッキをデザインしたとき、彼がほとんど並ぶもののないパワーを持った、銀でできた巨大な伝説のゴーレムであることを知っていた。私がニッサのデッキをデザインしたとき、私は彼女が彼女の側に並んだエルフから最大限の力を引き出すことを知っていた。私がキオーラのデッキをデザインしたとき、私は彼女が祖先と共にある深淵にいる原初の召喚士と想定して、彼女のコントロールするクリーチャーのほとんどを信仰的で献身的なものにした。私はこれらの見通しがこれらのデッキをプレイする上でよい結果を得る方法になったと信じている。そしてその立ち回りはデュエルズの経験において非常に重要な、独自性と魅力を表すものとなるだろう。
しかしながら、ただデッキにカードを加えて終わりにするなどということができないのは明らかだ。それらを互いに均衡させなければならない。そうしなければ、その選択肢が実際には選択肢ではないということをプレイヤーが気付き、あなたがそれだけ時間を費やしたことが無駄になってしまうだろう。
通常のマジックとデュエルズを比較して異なっていることは、それが閉鎖的な環境であると言うことだ。スタンダードでは、人は彼らの望むように応じてデッキを変更することができる。そう、それは弄れば弄るほどそれが何なのか確信できなくなる、量子系のようなものだ。 代わりに、君が唯一つ絶え間なく手に入れるよう挑み続けるものは変化だ。そのために、パワーレベルを比較的均一にし、有力なデッキ構成に対する様々な対抗手段を投入しているのだ。同様に、リミテッドにおいては、人々は毎回違うパックを開けてドラフトを行なうので、そのシステムそのものから環境の多様性が生まれてくる。
デュエルズでは、どの選択が役に立つかはそれぞれ全てのデッキではっきり分かる。全てのデッキはある程度固定されていて、君が変化と進化を手にするよう挑まなくても同じように楽しくプレイできる相対的に標準化されたパワーレベルにある。メタゲームはカードごとよりもむしろデッキ単位のレベルで発生する。一部の戦略は他のものより自然と好まれている。私はマジック2013のリーダーを努めていたので、以前の2作のようにデュエルズ2013のデッキの開発に没頭するチャンスはなかった。だが、私はカードのあちこちに足跡を残しておいた。
再び歩くために学ぼう
このようにして君はデュエルズに取り組む。しかし、君がデュエルズに関係するマジックのセットに取り組む場合、何が起こるだろうか?
これこそがまさにマジック2013のデザイン・リーダー、ダグ・ベイヤー/Doug Beyerと私がそれぞれのチームと共に責任を負うものだ。およそ2年前、我々はデュエルズと 「紙のマジック」を前例のない製品の基準となる方法で結合させるという進化した経験を作成することになった。我々は別のゲームを始めて、そしてそれを強調させる経験を積んでいく。それは必然的に他の我々のセットと根本的に異なった種類の過程となる。
《プレインズウォーカー、ニコル・ボーラス》 アート:D. Alexander Gregory |
一つのことは私には初めから明らかだった。この業務の目標のために、マジックのセットが持つ整合性を、絶対に損なわせないことだ。デベロップ・リーダーとして、私はこのセットに全身全霊を注いだ。私が今までに手がけた他の何よりもマジック2013に細心の注意を払っている。これは我が子だ。私はこれと共にありたい。そして私はいくつかの種類の販売のタイアップのために作品の美しさを犠牲にしようとはしなかった。
幸運なことに、我々はそうする必要はなかった。古参のDailyMTG.comの読者が今までに何度も何度も聞いてきたとおり、制限は創造性を生み出す。例のごとく、デュエルズとのタイアップはマジック2013に革新的なアイデアとソリューションを生み出し、私の中ではマジック2010以降最もエキサイティングな基本セットになった。しかし、我々はしなければならないことがいくつか個別にあった。
最も大きな調整はこれだ。我々はデュエルズが伝説の5体のボスを中心として構成されるのを知っており、そして君のデュエルズのデッキの中にそれぞれのボスのカードは1枚だけ入れることができる。つまり、このセットには、キャラクター性を感じさせるのに充分なだけのボスに合わせたカードが必要だった。また、それらのボス達自身にも明確に存在感を感じさせるような個性を必要としていた。ただの4/4飛行では、それにふさわしい雰囲気を持つ面白いデッキなんて作れないのは知っての通りだ。
我々の回答は「ティミー中心構築」と呼ばれる、特定の戦略を受け入れた場合に大きな効果をもたらすことでその戦略に誘導するようなキャラクターを作ることだった。これはデュエルズのデッキにはっきりとしたすばらしい効果を多様なリミテッドのアーキタイプの束からもたらした。マジック2013が基本セットであるにもかかわらず、クールなものを組み入れようと挑戦し、エキスパンション・レベルでのリミテッドの特徴がある構築をセットの中に入れた。我々は、一旦セットがリリースされたらそれが成功するか確認するが、それらのアーキタイプはデュエルズのボスデッキの元になっている。
もう一つの重要な構造の変化は、我々はデュエルズ2013の構想が次元から次元への跳躍を中心としているのを知っていたということだ。結局のところ、マジックはプレインズウォーカーの物語だ。また、プレインズウォークを特別に感じさせるために、マジックの宇宙を特徴づけて、非常に魅力的な、全ての広大で可能性に満ちた世界を垣間見えるようにしなければならない。これはマジック2013がトップダウンのファンタジーの雰囲気だった過去の三つの基本セットからわずかに逸れることを意味している。私が今「わずかに」と言ったとおり、ほとんどの部分では、非常に成功した過去数セットと同じく比喩を多用した世界の雰囲気に焦点を当てている。しかし、我々はまたダイナミックなイメージをもつ次元、イニストラード、ラヴニカ、シャンダラー、アラーラ、全ての種を蒔いたセットにしようとしている。マジックでは、探検する世界は一つだけではない。私はそれを素晴らしいことだと思う。マジック2013はそれを示そうと試みているのだ。
最後に、当然、全ての良いゲームには敵役が欠かせない。マジックの宇宙において最も極悪なのは誰か? そう、懐かしのニコル先生だ。我々はデュエルズが悪名高き極悪非道の策士とのクライマックスの戦闘で盛り上がることを知っていた。そして、彼が特に大きく扱われることも。これは史上初めて金色のカードが基本セットに入ることを意味している。そして、プレインズウォーカーは通例の5枚ではなく6枚だ。さらに言うと、ニコルはただ言われるままにおとなしく座り、お飾りになるような存在ではない。ただの広告塔ではないのだ。彼は尊敬を集め、またそれを得ている。そして彼は戦場に現れ顔を叩き潰す事でそれを示すつもりだ。そして、我々はヤツを唱える助けになるカードをいくつかセットに入れておいた。{4}{U}{B}{B}{R}は一見重く見えるが ―― 実際に重いが ―― ひとたび彼がが出てくれば、何もかもがきれいに踏み潰されているだろう。
結局彼はどの程度強いのか? はっきりとしたことは言えないが、プロツアーのトップ8で《プレインズウォーカー、ニコル・ボーラス》をデッキに入れていたのは私一人だった。私は仲間が欲しい。また、彼を呼び出せるようになるまでには何も準備が必要なかったと言えば嘘になるだろう。
君のかけら
他にもデュエルズはマジック2013に微妙な方法で影響を与えている。それぞれのボスはそれ自身を表すカードを持っているし、我々はマジック2013のカードとデュエルズ2013のカードを重ね合わせるために長い時間をかけてきた。もし君にデュエルズから新しくマジックを始めようとする友達がいたら、彼らはマジック2013に非常に親しみを感じるだろう。結果として、私は両方のゲームのプレイヤーの為によい体験になったと信じている。しかし、私が君に言っていることが信じられないのなら‐自身でデュエルズを体験して欲しい!このゲームはありえないぐらいお得な値段で、しかもここでしかもらえないプロモカードももらえる。我々は今年、(おそらく最も熱い)iPadを含めて多くのプラットフォームでリリースしている。だから私は、君にとって都合のよいデバイスでデュエルズをプレイできることを保証しよう。これには価値があると約束する。
マジック2013の発売は来月?(訳注:執筆時点。発売日は7月13日です)
私は待ちきれない。
最後に、禁止/制限リストの変更について手短に話そう。おそらく最大のニュースはスタンダードにおいて禁止が出なかったことだろう。我々は、環境の青白《秘密を掘り下げる者》デッキの割合が非常に多いことを認識しており、非常に念入りにその動向も監視している。なので、我々は君達に、我々が環境に多くの注意を払っており、メタゲームの発展を真剣に受け止めていることを理解して欲しい。しかし過去の突出したデッキと比べてミラーマッチを除いた勝率を比較したとき、カウブレードやフェアリーとはまったく比べものにならない。我々は現実のマジックとマジックオンラインの両方で多くのトーナメントを見た。そして《秘密を掘り下げる者》デッキの勝率はほぼ50%である。さらに特定の、しかも人気のあるデッキは《秘密を掘り下げる者》に対して非常に強く、複数のトーナメントで結果を出している。最も重要なのは、トーナメントの参加者数が減っていないことだ。むしろ現実には史上最高の人数だ! 独立のイベント・サーキットやワールド・マジック・カップ予選などを見ても《秘密を掘り下げる者》デッキは必ずトップ8に送り込まれていて、確かに勝利しているが、他のデッキも勝利している。それら全てを考慮に入れると、今すぐにカードを禁止し、君達が多くの時間と努力を費やしたデッキをプレイできなくすることに意義があるとはいえない。我々はもちろん一部のトッププレイヤーが青白《秘密を掘り下げる者》で多くの勝利を挙げていることを認識しており、非常に優れたプレイヤーが使えばこのデッキの性能は跳ね上がるということに異論はない。単純に、禁止を決定する場合、フォーマット全体を考慮することが我々にとって重要であるということだ。
つまり、我々は監視を続けて《秘密を掘り下げる者》がより深刻に環境を脅かし始める場合、必ず進んで対処する。
二番目の大きなニュースは、《土地税》がレガシーで解禁されたことだ。《土地税》は今までに印刷された中でも最も強力なカードの一つだが、我々はそれが環境の白の多様性に貢献すると考えている。我々は環境のいくつかの強力なカードを監視し続けており、「ライフを支払ってカードを引く」メカニックは近年でも最も強力なものだが、今は我々は《土地税》が取り入れられた環境がどうなるか見たいと思っている。
もちろん感想は仕事の糧になる。フォーラムか、私にメールを送ったり、ツイッターのアカウントをフォローして君の思ってることをどうか聞かせて欲しい!
Zac (@zdch)
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