READING
翻訳記事その他
『イニストラード:真夜中の狩り』の恐怖とブースター・ファン
2021年9月2日
恐怖は楽しさになることがあります――少なくとも『イニストラード:真夜中の狩り』のブースター・ファンにおいては。「Summer of Legend」の最後の輝きとして、おぞましきものどもが古代の森の、打ち捨てられた館の、そして孤立した村の深まりゆく影から這い出し始めています。このマジックの最新セットのために、そのアート・チームはあなたのコレクションに出没し対戦相手を苦悩させる悪夢を明らかにするべく暗き深淵を掘り進んだのです!
ブースター・ファンは選ばれたカードにエキサイティングな仕様を施すことによってブースター・パックの中身を引き立てます。カードに施される仕様は拡張アート、ボーダーレス版のアート、テーマに沿った枠、そして元絵と違うアーティストによる独自のビジョンをカードに与える絵違い版アートを通してカードを他のカードよりも目立たせるビジュアル面での強化です。
『イニストラード:真夜中の狩り』は陰鬱で不気味な――そしてこのセットではもふもふで牙のある――イニストラードの地の素晴らしい視点により、マジックのカードの仕様の幅を広げ続けています。セット・ブースター、ドラフト・ブースター、コレクター・ブースターを開封したなら、マジック全体から集まった大勢の創造的な人たちの成果を見つけられるでしょう。
ホラーがマジックに戻ってくる
ホラーはマジックにとって新しいものではなく、マジックの歴史上いたる場所でコズミック・ホラーやサイコロジカル・ホラーやゴシック・ホラーなど、さまざまな形で姿を見せています。イニストラードは熱烈なファンがいて、その世界設定は不気味なものすべてを長年に渡って楽しんできました。愛されていてなじみのある場所に戻る場合、問題が起こる可能性があります。
「ある意味これは難しいことでした」とクリエイティブ・マネージャーのトム・ジェンコット/Tom Jenkotは言いました。「我々はこの世界とその見た目を知っていました。それは常に芳醇なカード仕様を作る助けとなりました」
アート・ディレクターの オヴィディオ・カルタヘナ/Ovidio Cartagenaも、イニストラード再訪に対する期待の大きさを認識していました。「評判が良く有名なセットへの再訪は、ファンを驚かせるのと同時に期待にも応えなければならないため、いつも難問です。我々はイニストラードらしさを失わせたくないとは思っていますが、今までに見せたことのない部分を見せることでお客さんをワクワクさせたいとも思っています」
オヴィディオはホラー映画や小説の大ファンなので、インスピレーションを引っ張ってくることができるクリエイティブ的アイデアの深い井戸を持っています。彼は「私はチャールズ・マチューリン/Charles MaturinからH.P.ラヴクラフト/H.P. Lovecraftまで、手に入れることができたあらゆるホラー小説を読みました」と語っています。「気が付くと私はユニバーサルの古典ホラー映画を見ていて、スリリングな側面やホラーでとても効果的な悲しげな音響構成に夢中になっていました」
「私は70年代の伝説のドラキュラやウェアウルフ・バイ・ナイト、そして『Swamp Thing』『Animal Man』、もっと新しめの『Hellboy』や『Southern Cross』や『retty Deadly』など全てを深く掘り下げました。また、バーニー・ライトソン/Bernie Wrightsonの『Frankenstein』やステファン・キング/Stephen Kingの『Cycle of the Werewolf』のイラストにも心動かされました」とオヴィディオは述べています。
ブースター・ファンの舞台裏の仕事
ブースター・ファンの仕事はトムやシニア・グラフィック・デザイナーのジェームス・アーノルド/James Arnold、UXデザイナーのダニエル・ホルト/Daniel Holtらとシニア・アート・ディレクターのタイラー・イングヴァルソン/Taylor Ingvarssonとの間ですり合わせを行うところから始まります。彼らは一緒に『イニストラード:真夜中の狩り』のアート的ビジョンを探求しました。
内部用のワールドガイドは。セットのアート的展望への洞察をもたらしてくれます。この各セットごとに作られるクリエイティブ的なビジョンとそれを動かすストーリーが収録された膨大な文書のことをトムは「このワールドガイドはホラー小説のようなものです」と言っています。
もちろん、ビジュアルは新しいセットでイニストラードの次元を見ていくうえで大きな部分を占めています。「タイラーと彼の率いるコンセプト・アーティストのチームはこのセットのビジュアルと我々がこのセットで使用するモチーフを構築する素晴らしい仕事をしてくれました」とオヴィディオは言っています。
タイラーのチームにはサラ・ウィンターズ/Sara Winters、ジェハン・チュー/Jehan Choo、レベッカ・オン/Rebecca On、ニック・サウザン/Nick Southam、ダーケン/Daarken、サム・バーレイ/Sam Burley、ジョナス・デ・ロ/Jonas De Ro、クリス・ラーン/Chris Rahnらの驚異的に優秀なアーティストたちも含まれていました。
「セットのコンセプト・アートを置いておくための4×8フィートのホワイトボードが2つあって、そこにはあらゆる種類の驚異的で恐ろしいものが詰まっていました」とトムは言いました。「その壁を作るために起用されたコンセプト・アートのチームのおかげで、我々は必要なインスピレーションがすべて手に入りました」
ショーケース「秋分」版
狼男と邪術師は『イニストラード:真夜中の狩り』で大きな役割を果たし、ショーケース「秋分」版で特に注目を集めています。
豪華で細部まで曲線を描いている「秋分」枠は完全に実現できておらず、その暗く刺激的な美しさを注入できていませんでした。ブレインストーミングと作業を要したのです。「狼男のカードの仕様を揃えるという目的が最初にありました」とトムは言いました。「我々はそれを大きな物語の動きに合わせたいと思いました」
何が機能するかを視覚的に定義するためにはいくらかの努力を要しました。「我々はほとんどの場合よりも強くこれを推し進めなければならず、そして多くのものがうまくいきませんでした」とトムは言いました。「最終的に、この枠のデザインは驚くほど有能なジャスティン・ジョーンズ/Justine Jonesのスケッチの通りになりました」
ジャスティンの作品は、Secret Lairの「Kaleidoscope Killers」や『フォーゴトン・レルム探訪』のショーケース・ルールブック版など、最近のマジックに多く見られます。
チームがデザインを固めると、シニア・グラフィック・デザイナーのジェームズ・アーノルドが枠に調整と着色を行いました。デジタル・アーティストのブランドン・ベイリー/Brandon Baileyは制作準備を行い、その色合いを暗く悲しげなセットにできるだけ自然な感じのものにしました。
トムはオヴィディオと「秋分」枠にアートを組み合わせる作業を行いました。「オヴィディオは超有能で、ここでの作業をほとんどやってくれました」とトムは言いました。「秋分枠用のアート探しとディレクションも含みます。とても多くのアーティストがここ(と、まだ言えない将来のセット)で素晴らしい仕事をしてくれました」
ホラー漫画のいちファンとして、オヴィディオはこの機会にワクワクしていました。「私はエマ・リオス/Emma Ríosやマイケル・ウォーシュ/Michael Walshといった不気味なものを描く輝かしい仕事をしたアイズナー賞受賞アーティストを起用する機会を得ました」
ショーケース「永遠の夜」、もしくは「白黒カード!?」
太陽はイニストラードの地を引き払いました。昼はどんどん短くなり、長い夜は恐怖を増幅させます。狼男と邪術師はショーケース秋分枠で騒ぐことができますが、ショーケース版の永遠の夜仕様はイニストラードのその他の住人の領域であり、希望を吸い取る終わりなき夜の絶望的な様子を掴んでいます。
「『永遠の夜』カードは、コンセプト決定から完成まで一直線でした」とトムは言います。「一番大変だったのはアイデアを売り込むこと(白黒のカード!?)と、アーティストの発見、そして一緒に仕事をすることでした」
アート・ディレクターのクリスタル・チャン/Crystal Changはアーティストの発見、起用、ディレクションを含む永遠の夜の伝説のカードの監督を行いました。「永遠の夜版の土地とクリーチャーのプロジェクトは、トムと協力するのが楽しく新鮮でした」と彼女は語っています。「私たちは古典的な白黒のホラー映画のポスターに大きく影響されたビジュアルのスタイルを作ることに集中しました。大きなコントラストで、明暗が派手な、そして古典的な銅版画のスタイルが少々の、フランケンシュタインやドラキュラの古くて安っぽいイラストを思い浮かべてください」
「永遠の夜」版カード――非フォイルと伝統的フォイルのどちらも――の枠のラインと基本土地のマナ・シンボルには光沢のある塗装がされていて、これらの部分に繊細で高級感のある輝きを与えています。
ショーケース「永遠の夜」版の伝説のカード
永遠の夜の伝説のカードの仕様は製作過程を通して進化していき、評価の高いコンセプトにたどり着きました。「私たちはキャラクターの緊張と不気味さを組み立てることに集中し、アーティストにそれぞれ独自のスタイルで物語を進めさせつつシリーズ全体で一貫性を持たせるようにしました」とクリスタルは言いました。
「白黒映画は永遠の夜版基本土地に影響を与えました」とトムは言います。「不吉な瞬間がある古いホラー映画はそれを輪郭や劇的な明暗で伝えていました。白黒だとそういったものはより一層劇的に見えます」
「永遠の夜」版のフルアート基本土地
「土地については、見る人がその状況を恐れるようなダイナミックな映画的風景の様子を視覚的に目指しました」とクリスタルは言っています。「私たちはイニストラードがどれだけ壮大であるかを見る人に実際に見て感じてもらいたいと考えました」
「私は全く色がついていない土地というこのアイデアをとても気に入っています」とトムも同意しました。これはこのアイデアの出発点ですが、プレイしやすさも完成形に影響を与えました。「最終的に、プレイヤーがカードをすぐに識別できない場合問題が起こるかもしれないことが分かりました」と彼は言いました。「なので、ほんの少しだけ色が付けられました。これが白黒のアートと微妙なピンラインの両方の世界にとって一番良さそうでした。見返してみると、完全な白黒よりもカードの見た目は素晴らしいものになりました」
「私は各イラストレーターがこのセットで作り出したものをとても誇らしく思います」とクリスタルは言いました。「そしてファンの皆さんが私がこのプロジェクトに取り組んだのと同じぐらい楽しんでくれることを願っています」
伝統的フォイル仕様
マジックには各セットに存在するまばゆいフォイル仕様カードの長い伝統があり、それは『イニストラード:真夜中の狩り』でも続いています。ケビン・イー/Kevin Yee、シルヴィア・コルテセ/Silvia Cortese、 ステフ・チャーン/Steph Cheung、J・ロニー/J. Lonnee、ブランドン・バレー/Brandon Bailey、マーシャ・リベラ/Marsha Riveraらを含む有能なチームのおかげで、霜と蝋燭の明かりを光らせ、太陽と月のエフェクトを表現するプレミアムな技術が可能になりました。
「『イニストラード:真夜中の狩り』のようなセットの仕事は、普通のセットよりも暗いので違ってきます」とマーシャは言いました。「どういうことかと言うと、アートが暗めの色になっているということです……ハイライトと影が互いにフォイルの下地の上でうまく機能するように、このプレミアムな仕様を調整しなければいけません。どれぐらいが多すぎになるのか、どんな場合が単に不十分なのかを把握する微妙なバランスです。」
マーシャはホラー映画からも発想を得ていました。「月光の下で何が光って何がそうでないのか、プレミアムな仕様を施されたアートのフォイル上での見え方で、光と影がどんな重要な役割をするのかについてのアイデアを得るためにに、吸血鬼や狼男の映画を見ました。『イニストラード:真夜中の狩り』のアートはとてもエレガントで、色はとても浸透していて鮮やかでした! 私は『イニストラードを覆う影』に関わっていて、その暗闇や光る眼、血や衣服の豪華な刺繍の光沢を覚えています。『イニストラード:真夜中の狩り』はこの部分で失望させるようなことはありません!」
さらなるブースター・ファン
『イニストラード:真夜中の狩り』にも、他のタイプのブースター・ファンのカードがあります。レアや神話レアの拡張アート版カードは92枚存在し(コレクター・ブースター限定)そしてもちろんボーダーレス版のプレインズウォーカーもあります。
また、素晴らしいアートが描かれた、5枚のレア2色土地のボーダーレス版も存在します!
さて、これで『イニストラード:真夜中の狩り』で何か手に入るかが分かったので、マイク・チュリアンの記事にジャンプして、どこからこれらブースター・ファンのカードが手に入るのかを学びましょう! また、ガヴィン・ヴァーヘイ/Gavin Verheyの「Good Morning Magic」の動画(英語)では、ブースター・ファンについても説明しています。
RANKING ランキング
-
広報室
年末年始もマジックづくし!「お年玉キャンペーン」&「プレマ&スリーブゲット!年末/年始スタンダード」開催決定|こちらマジック広報室!!
-
コラム
スクウェア・エニックスで「マジック体験会」を開催!?『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』に向けたインタビューも|企画記事
-
戦略記事
ラクドス・サクリファイス:クリーチャーともう一つの生け贄要員(スタンダード)|岩SHOWの「デイリー・デッキ」
-
戦略記事
ジャンド独創力:プランは複数、独創力のみにあらず(パイオニア)|岩SHOWの「デイリー・デッキ」
-
戦略記事
とことん!スタンダー道!まさかまさかの複製術、コピーされ続ける先駆者(スタンダード)|岩SHOWの「デイリー・デッキ」
NEWEST 最新の読み物
-
2024.12.20戦略記事
今週のCool Deck:ロータス・コンボ、遂にアリーナにて始動!(パイオニア)|岩SHOWの「デイリー・デッキ」
-
2024.12.20読み物
第51回:0から始める統率者戦|クロタカの統率者図書館
-
2024.12.19戦略記事
とことん!スタンダー道!まさかまさかの複製術、コピーされ続ける先駆者(スタンダード)|岩SHOWの「デイリー・デッキ」
-
2024.12.19コラム
スクウェア・エニックスで「マジック体験会」を開催!?『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』に向けたインタビューも|企画記事
-
2024.12.18戦略記事
ラクドス・サクリファイス:クリーチャーともう一つの生け贄要員(スタンダード)|岩SHOWの「デイリー・デッキ」
-
2024.12.18広報室
2024年12月18日号|週刊マジックニュース
CATEGORY 読み物カテゴリー
戦略記事
コラム
読み物
BACK NUMBER 連載終了
- Beyond the Basics -上級者への道-
- Latest Developments -デベロップ最先端-
- ReConstructed -デッキ再構築-
- Daily Deck -今日のデッキ-
- Savor the Flavor
- 射場本正巳の「ブロールのススメ」
- 津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
- 浅原晃の「プレミアイベント三大チェックポイント!」
- ガフ提督の「ためになる」今日の1枚
- 射場本正巳の「統率者(2017年版)のススメ」
- かねこの!プロツアー食べ歩き!
- ロン・フォスターの統率者日記
- 射場本正巳の「統率者(2016年版)のススメ」
- マアヤのマジックほのぼの日記
- 金子と塚本の「勝てる!マジック」
- 射場本正巳の「統率者(2015年版)のススメ」
- 週刊連載インタビュー「あなたにとってマジックとは?」
- なかしゅー世界一周
- 中村修平の「デイリー・デッキ」
- 射場本正巳の「統率者(2014年版)のススメ」
- 中村修平の「ドラフトの定石!」
- 浅原晃の「プロツアー観戦ガイド」
- 鍛冶友浩の「プロツアー観戦ガイド」
- ウィザーズプレイネットワーク通信
- Formal Magic Quiz
- 週刊デッキ構築劇場
- 木曜マジック・バラエティ
- 鍛冶友浩の「デジタル・マジック通信」
- 鍛冶友浩の「今週のリプレイ!」
- 渡辺雄也の「リミテッドのススメ」
- 「明日から使える!」渡辺リミテッド・コンボ術
- 高橋優太の「このフォーマットを極めろ!」
- 高橋優太の「このデッキを使え!」
- 黒田正城の「エターナルへの招待」
- 三田村リミテッド研究室
- 新セットめった切り!
- シングルカードストラテジー
- プレインズウォーカーレビュー
- メカニズムレビュー
- その他記事