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金属を刻んで生まれた世界
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金属を刻んで生まれた世界
Doug Beyer / Translated by Mayuko Wakatsuki
2011年3月23日
今週はミラディンウィークだ。背景世界担当ライターにとっては、これはセットやブロックの時間的境界を越えて文化、歴史、そしてアートに焦点を当てることを意味する。もちろん、この世界の背景には読み解くべき物事が既に豊富に存在する。例えば、この金属次元について書かれた次に挙げる記事をチェックするのもいいだろう。
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Mirrodin Image(リンク先は英語)...Rei Nakazawaによるミラディンのバックストーリー事始め。そして同ブロックでの続きとなる記事はShedding Light on Darksteel及びThe Breaking Fifth Dawn(共にリンク先は英語)。
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Moreover: Doing Sequels Right(リンク先は英語)...ミラディンという舞台に戻るその理由。
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ミラディン世界の人間文化...傷跡スタイルガイドから、ミラディンに住む人間達についての情報を一気放出。
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ミラディン世界の人外文化...スタイルガイドからもう一度一気投入、今回はホモ・サピエンス・ミランズ以外の人型生物について。
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何故ミラディン人は耐えるのか...いかにして人工次元が「土着の民」を持つに至ったか。
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オリジナルのミラディン・スタイルガイドから抜粋した、ミラディンの土地環境について示した一連のMagic Arcana掲載記事。白、青、黒、赤、緑(全てリンク先は英語)。
だがこれら全てを我々の背後に並べても、スポットライトを当てるべき場所はまだまだある。今日我々はミラディンとミラディンの傷跡を一つの大ブロックとみなして、舞台全てを取り囲むフレーバーについて見ていこう。
《空僻地》 イラストレーション:Lars Grant-West |
金属の中にマジックを見つけ出す
二つのミラディン・ブロックでのクリエイティブ・チームの仕事は、マジックの中核に存在する原理原則をミラディンという金属世界へと調和させることだった。傷跡ブロックとオリジナルのミラディン・ブロックにおける最も大きな挑戦の一つは、マジックとして継ぎ目ないものに保つということだった。宇宙船が飛び交うような未来、スチームパンク、ロボットの世界といった様々なサイエンス・フィクションへとあまりに踏み入りすぎないように。アーティファクトとアーティファクト・クリーチャー満載の舞台。マシーン、装備品、歯車、そして生きた金属で作られたクリーチャー達。確かにマジックはSFのコンセプトとイメージを含む娯楽だ。我々はファンタジーの境界を突っついてその明らかな伸縮性を楽しんだ。マナや魔術師、魔法の呪文に基礎を置く多元宇宙。ファンタジーに深く根を下ろしているもの。ミラディンがファンタジーの境界の外へとはぐれてしまわないように、我々は以下のような基準を定めた。
《創造の標》 イラストレーション:Mark Tedin |
ミラディンの機械は科学ではなく、魔法で動く
両方のブロックに機械が溢れているが、機械装置はそれほどでもない。これらほとんど同じ意味の単語をごまかして使っているのかもしれないが。私が言いたいのは、アーティファクトの中には《研磨時計》や《迫撃鞘》、《回転エンジン》といったような可動部分を持つものがあるが、それらは科学的原理で動いているのではないということだ。それらの部品が互いに連結した機械仕掛けの歯車で動いていたとしても、燃料源、すなわち最初の動力をもたらす原理はほぼ全てが魔法であって、蒸気機関や内燃機関や電力ではない。ばねとポンプは原則不可。電線も。回路基板、バッテリー、その他トランジスタ以後の水準の技術は確実に不可。車輪さえ、魔法力で動いているとかいかれたゴブリンの製作物であるとか明らかになるまでは公式クリエイティブ・チームに嫌な目で見られる。我々はこれらの規則を時折ねじ曲げるが、総合的な意図はそれらをマジックの世界、次元を旅する魔術師達が中心となる世界へと適合させることだった。
《解体》 イラストレーション:D, Alexander Gregory |
金属世界によく適合したファンタジーの象徴に焦点を当てる
金属世界をファンタジーの境界線の中に固く留めておくことはつまり、それら金属世界の要素をとにかくファンタジーの中に収めるよう専念するということだ。事実、ミラディンは装備品のサブタイプを持つアーティファクトを取り入れた最初のセットで、このルールの大部分は簡単に理解できるものだった。ミラディンは剣や斧、兜、笏、杖、全身鎧、そして様々な武器、道具、装置に満ちている。クリーチャーが剣を持ち鎧を着たりするというアイデアそのものは、ミラディン以前にはぎこちなく採用されていただけだった(《Runesword》や《Tawnos's Weaponry》といったカードを参照)。ファンタジーの基本的すぎるアイデアだというのに、このことは衝撃的だった。
ゴーレムはロボットにあらず
装備品以上に、ゴーレムという伝統的なファンタジーのコンセプトはもちろん、それが金属製である限り(肉や粘土、藁で作られたゴーレムはコンセプトから外されている)ミラディンで徹底的に活用されている。それらゴーレムは魔法によって動いていることは明らかだ。しかし「金属のゴーレム」は危険なまでに「ロボット」の領域へと足を踏み入れる。そして我々は彼らの関節の潤滑油を心配し壁のコンセントにプラグを差し込むようなアンドロイドの世界を望みはしなかった。もう一度言うが、マジックの基本単位は魔術師だ。現実世界の工学に触発された外見を持つ世界を構築し始めた時、我々はファンタジーを置き去りにしていることになる。
《鉄のゴーレム、ボッシュ》 イラストレーション:Brom |
他にもファンタジーの象徴を取り入れるが、金属のレンズを通して解釈すること。
装備品以外にも、ミラディンのいたるところに伝統的ファンタジー世界の定番を見つけることができる。騎士、城、ドラゴン、エルフ、ゴブリン、オーガ、ウィザード。だけどそれらは全て金属世界のレンズを通した姿だ。黄金の斑をまとったオーリオック、翼竜に騎乗したレオニンの騎士、金属で強化されてタービンの推力で動くドラゴン、銅の装甲のエルフ、溶鉱炉で働くゴブリン、金属を咀嚼するオーガ、そしてアーティファクト製作に取り憑かれた魔術師。我々が持っているマジック特有のコンセプトもまたある、壮麗な戦天使、ワーム、ヘリオン等。そこにはいつもファンタジー好きの期待に応える接点がある。この次元のほとんどの要素には、よく知られたファンタジーの象徴を思い出させるものがあるのだ。
摩耗と風化
ミラディンのアーティファクトとアーティファクト・クリーチャーはよく使い古され、使い込まれているように見える。輝くメッキや磨かれたガラスといった要素もあるが、それらは戦で痛めつけられていたり、手製のものであったり、ほとんどその世界の自然の形であったりする。きらめく剣もしっかりと組み立てられたマイアも、炉で鍛えられた胸部鎧や錆びて擦り減ったスクラップのゴーレムも。それは、ぴかぴかと輝く未来世界ではない。プラスチックとカーボンファイバーとナノテクで改造された世界ではない。摩耗や傷といった明白なしるしもまた、ミラディンをファンタジーに根付かせている。
まとめると、これらの基準により、魔法が支配する多元宇宙の中での人工的な金属の次元という構想を、ミラディンで試みたといえる。次に、両方のブロックからいくつかのホームラン的アートを見てみよう。それらの作品は金属世界とファンタジーの統合をとても、とても良く表現している。もし我々の経験則にフィットする他のお気に入りが君にあったら、ぜひ教えてくれ。
《融合する武具》 イラストレーション:Alex Horley-Orlandelli |
ミラディンのアートの頂点
オリジナルのミラディン・ブロックのお気に入り:rk postの《ヴァルショクの魔術師》
次点:Kev Walkerの《銀のマイア》
速攻持ちの魔術師がどんな姿をしているか疑問に思ったことはあるかな? こんな感じだ。
《ヴァルショクの魔術師》 イラストレーション:rk Post |
マジックのダイナミックで、激しいアクションのファンタジーの美学を内包しているって? よく見るんだ。稲妻を支配する魔術師というファンタジーの象徴が金属世界に居場所を見つけたって? よく見るんだ。守ってくれる男性を必要とするような悲嘆の少女ではなく、野性的な瞳をした活発な女性を(これは常に我々の目指すところである)讃えろ? よく見るんだ。ミラディンという舞台の要約、金属要素と生命の結合を? よく見るんだ。信じられないほど素晴らしく描かれ、構成され、詳細にわたっているって? よく見るんだ。カードの枠を超えて鉛直方向に密かに長く描かれたのは一体何のためだ? よく見るんだ! この作品は私が求める全てだ、ミラディンに生きる者達のスナップショットだ。そしてそのことを除いても素晴らしい作品だ。
《銀のマイア》 イラストレーション:Kev Walker |
私が次点に選んだ《銀のマイア》は時雨模様の「ブレードランナー」的様式の色彩の、もしくは「ダークナイト」的ポーズのかわいらしいマイアだからというだけではない(訳注:『ダークナイト』...アメリカン・コミックス『バットマン』を原作とした映画の一つ)。型にはまった滑らかな輪郭の、この金属生命がどんな感情を持ちうるかということを語っているからだ。こいつは今、真剣な瞬間にある。この作品は常に私に疑問を抱かせる。彼は何を考えこんでいるのかというだけでなく、マイアの金属の精神とはどのようなものなのかと。完全に人工的に作られた小さな生物で、だけどロボットではない、明らかに魔法で動く手製のアーティファクト。この作品はミラディンという舞台で我々が目指すその道を進んでいる。
ミラディンの傷跡ブロックのお気に入り:Igor Kierylukの《ノーンの僧侶》
次点:Chippyの《先駆のゴーレム》
《ノーンの僧侶》 イラストレーション:Igor Kieryluk |
私は以前の記事ですでにIgor Kierylukの《ノーンの僧侶》にやられてしまったが、それでも私はこれこそが、戦争に傷ついたミラディンと広がりゆくファイレクシアの再誕というこの時代を完璧にとらえたイメージだと考えている。おぞましいが、壮麗だ。厳めしく、そして筋ばっている。この作品でミラディンの金属世界の美学はあまり表現されてはいない、ファイレクシアが示す新たな方向性程には。だがもう一度言おう、これはファンタジーの世界で何かとても人工的な姿を作り出そうと試みたものだ。ファイレクシアは確かにその境界を押し広げている。その結果を見て頂きたい。
傷跡ブロックで私が二番目にお気に入りの作品は、ミラディン初期の歴史を指し示しているものだ。ゴーレムはミラディンの大昔の金属種族だが、メムナークが他の世界から魂と捕らえて次元へと居住させる壮大な実験を開始した時にほとんどが一掃されてしまった。古のゴーレムについては五つの「塔アーティファクト」のフレイバーテキストに見ることができる。
《先駆のゴーレム》 イラストレーション:Chippy |
《先駆のゴーレム》のアートに描かれている三体のゴーレム達は、人工次元アージェンタム(後にミラディンとして知られる)においてカーンによって創造された最初の三体の存在を示している。高解像度で見てくれればわかるだろうが、彼らは創造主のイメージによく似た姿をしている。カーンのいかめしい顔つき、分厚い襟周りの構造、そして私が「ゴーレム顔」と好んで呼んでいる、まさに《銀のゴーレム、カーン》のようなしかめっ面。これら三体の古のゴーレム達は空僻地の高地からミラディンの風景を眺めている。美しい二つ、いや三つの夕陽を背に(青の太陽は沈み白の太陽は沈もうとしている。だけどアートの枠外から赤の太陽のものであろう輝きを見ることができる)。彼らはミラディンの過去への直接のリンクであり、Chippyのファンタスティックなアートであり、そして私にとってはフレーバーの頂点だ。
今週のお便り
親愛なるダグ・ベイアーへ、
「舞台裏の六つの秘密」を読ませて頂きました。
橋をかけて欲しいアートの溝があります。小さな邪魔者が私をジャミングしています(意図的駄洒落です)。最初に《信号の邪魔者》を見た時、私はどこかで見たような姿にショックを受けました。そして私は古いミラディンのカードを探して、そして見つけました! 《熱風の操縦者》!
より小型で、まるで偶然《ダークスティールの溶鉱炉》へと落ちてしまったかのように、そしてそのちょっとした飛行能力を保持していることから考えるに、《信号の邪魔者》は《熱風の操縦者》の原型なのでしょうか。それとも同じ種の違うタイプでしかないのでしょうか?
彼等の類はもっと存在しているのでしょうか? もしそうなら、彼等を捕まえる網はどんなものが良いでしょうか?
前もってお礼を申し上げます。
Graeme
いい目をしているねGraeme! その通り、Mark Zugによって描かれたミラディン包囲戦の喊声野郎《信号の邪魔者》と、Jim Murrayによって描かれたフィフス・ドーンの飛び跳ねる小さな構築物《熱風の操縦者》の間には外見的類似点がある。
背景設定的回答:
《熱風の操縦者》と《信号の邪魔者》は共通の祖先アーティファクトから「進化」したアーティファクト・クリーチャーだ。自意識のある金属生命は、《穴掘り掬い》から《剃刀ヶ原のサイ》、《鋼のヘルカイト》といったものまでミラディンに豊富に存在する。この次元でのアーティファクト・クリーチャーの姿は時とともに変化する。多くのアーティファクト・クリーチャー達は工匠や他の知的生命体によって創造されるが、意識無しに彼ら自身を生み出す自己プロセスもまた稀に存在する。アーティファクト・クリーチャー達はメムナークの時代から残されている自給自足の鋳造所や次元のとある地域に建造されたゴーレムの炉、そして少々存在する進取的なマイアの活動から生み出される。これらのプロセスが変化することによるモデルチェンジの結果、金属デザインの進化的なものとなる。後期モデルは初期モデルの特徴を「受け継ぎ」、そのデザインは環境や目的、遭遇した捕食者に合わせて枝分かれしてゆく。《熱風の操縦者》は剃刀ヶ原を調査するために改造された構築物で、燃料を噴出して一時的に空中へと跳ね上がる。《信号の邪魔者》達は絡み森の銅の梢高くを歩き回り跳び回るべく改造され、他の構築物達を案内すべく単純なメッセージを発射する。
舞台裏的回答:
《信号の邪魔者》のアートを描いてもらう時が来て、我々は群葉の中を動き回る、ミラディンの人工生命にルーツを置く小型の構築物を欲した。そして我々は《熱風の操縦者》のデザイン形状が好きだった。長くて猛禽類的な頭部の構造、ジェット推力の鉄鉤、そして細長い小型の脚。我々は参照元としてMark ZugへJim Murrayのアートを送り、ジェット推進で飛翔するのではなく、より「はい登り、跳ぶ」ように見せてくれとの指示を付け加えた。《信号の邪魔者》の前脚爪は信号装置のようなものとなり、信号標識のような白い光のビームを発することになった。
Graeme、質問をありがとう!
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