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今年も残りわずか!2016年プレミア・イベントを振り返るテキストカバレージ記事10選
今年も残りわずか!2016年プレミア・イベントを振り返るテキストカバレージ記事10選
by 小山 和志 (WotCコンテンツ・スペシャリスト)
2016年もあと残すところ10日を切ってしまいましたね......。もうやり残したことはありませんか?
さて、マジック界では今年も毎週のように世界各地でプレミア・イベントが行われ、マジック日本公式サイトで更新されたテキストカバレージのイベントは、グランプリが9回、プロツアーが4回、世界選手権とワールド・マジック・カップがそれぞれ1回ずつと、実に合計15回もありました!
テキストカバレージや生中継で観戦された方にとってきっとそれぞれ印象に残ったイベントがあり、心に、記憶に残っていることでしょう。とはいえ、プレミア・イベントはあくまで非日常。日常を過ごしているうちに徐々に思い出が消えてしまうのは避けられません。ぜひ一度、今年のイベントカバレージで2016年を振り返ってみてください!
とはいえ、振り返ろうと思っても「どのテキストカバレージを読んだらいいか分からない」という方も多いかと思います。
そこで、本記事では2016年を振り返る一環として、今年更新されたテキストカバレージ記事の中から、10本の記事を選び出し、裏側からの視点を交えながらご紹介していこうと思います!私の独断と偏見と主観にはなってしまいますが、ご容赦ください。
これまでにテキストカバレージに触れたことのない方も、ぜひ一度この機会にお読みいただければ幸いです。
目次
- プロツアー『カラデシュ』より――決勝:八十岡 翔太(日本) vs. Carlos Romao(ブラジル) by 金子 真実
- プロツアー『ゲートウォッチの誓い』より――初めてのプロツアーへようこそ by Corbin Hosler / Tr. Tetsuya Yabuki
- グランプリ・北京2016より――決勝:Xu Su(中国) vs. 菅谷 裕信(千葉) by 矢吹 哲也
- グランプリ・台北2016より――決勝:Huang, Yung Ming(台湾) vs. 市川 ユウキ(神奈川) by 矢吹 哲也
- グランプリ・シドニー2016より――決勝:Jan Ksandr(チェコ) vs. Scott Lipp(アメリカ) by 伊藤 敦
- プロツアー『異界月』より――第16回戦:Reid Duke(アメリカ) vs. 行弘 賢(日本) by Ray "blisterguy" Walkinshaw / Tr. Tetsuya Yabuki
- グランプリ・広州2016より――決勝:Wu, Kon Fai(香港) vs. Law, Albertus(シンガポール) by 矢吹 哲也
- グランプリ・京都2016より――原根/松本/平見チームにインタビュー! by 大久保 寛
- グランプリ・クアラルンプール2016より――準々決勝:市川 ユウキ(神奈川) vs. 覚前 輝也(東京) by 伊藤 敦
- グランプリ・千葉2016より――決勝:山本 賢太郎(東京) vs. 木原 惇希(東京) by 小山 和志
プロツアー『カラデシュ』より――決勝:八十岡 翔太(日本) vs. Carlos Romao(ブラジル) by 金子 真実
2016年日本マジック界最大のトピックは、なんと言っても八十岡選手のプロツアー『カラデシュ』優勝でしょう!
その実力から「いつかは個人戦プロツアーの優勝を......」と期待されていた八十岡選手。その決勝戦、固唾を呑んで勝敗の行方を見守っていたファンの方は非常に多かったのではないでしょうか。優勝の瞬間は日本中のマジックコミュニティが待ち望んでいたものでした。
コミュニティ担当金子によるカバレージは多くの反響をいただきました。何より、八十岡選手と長い付き合いのある金子の八十岡選手への気持ちが伝わってきた記事でもあると思います。
プロツアー『タルキール龍紀伝』で八十岡選手が自身初の個人戦プロツアートップ8を決めた時、そして今回優勝した時、金子の目元は赤くなっているように見えました(本人は「泣いてないし!」と言っていますが......)。マジックを通じて、涙するほどに友人の晴れ舞台を祝えるというのは心底羨ましいことだな、とこの記事を読んで思ったものです。
プロツアー『ゲートウォッチの誓い』より――初めてのプロツアーへようこそ by Corbin Hosler / Tr. Tetsuya Yabuki
初めてのプロツアーに参加して、最初のドラフトテーブルで殿堂プレイヤーやプラチナ・プロ達に囲まれるなんて......想像するだけでも恐ろしく、うらやましい光景です。この記事では、プロツアー「ルーキー」たちの苦難と喜びを伝えてくれます。
最初は誰だって「ルーキー」で、そこからさらなる成長を遂げ、「常連」になり「プロ」になっていくのです。
メジャーリーグへようこそ。
――該当記事より引用
より多くのプレイヤーがこのプロツアーというメジャーリーグを目指し、経験し、成長し、そしてそれぞれのストーリーが続いていくことを願わずにはいられません。
グランプリ・北京2016より――決勝:Xu Su(中国) vs. 菅谷 裕信(千葉) by 矢吹 哲也
アジアのグランプリへは通常2名の取材班が会場へ足を運び、熱戦の模様をお届けしています。2016年のアジアグランプリは小山に加え、国内グランプリでもテキストカバレージを担当いただいている矢吹哲也さん、日本屈指のマジックライターである「まつがん」こと伊藤敦さんにかわるがわるご担当いただきました。おふたりとも非常に頼りになり、時には叱咤激励してくれる素晴らしい先輩ライターたちです。
そのふたりのうち、矢吹さんとともに取材したグランプリ・北京2016。菅谷裕信選手が自身2度目のグランプリ優勝を果たした決勝戦は感動的なものでした。
トップ8入賞時、菅谷は右手を開いてカメラに向けた。5本の指は、5度目のグランプリ・トップ8。そして大きく開いたその手には今――
8年ぶりのグランプリ優勝トロフィーが収められている。
――以上、該当記事より引用
この写真と一文だけで、菅谷選手のこれまでの長きに渡る活躍とこのグランプリの歓喜の様子が伝わってきます。
個人的に印象に残ったのは、矢吹さんがこの記事を夜を徹して書き上げていたことでした。どれだけ時間がかかっても、妥協せず満足するカバレージを書き上げる彼の姿勢に、身につまされる思いがしたと同時に、もっと自分も頑張らねばと思わされました。
グランプリ・台北2016より――決勝:Huang, Yung Ming(台湾) vs. 市川 ユウキ(神奈川) by 矢吹 哲也
このグランプリでは市川ユウキ選手がみごと自身プレミア・イベント2冠目となるタイトルを手に入れることとなりました。
個人的には準決勝の市川選手対リー・シー・ティエン選手戦のまさかの展開が印象に残っているのですが、このグランプリで記事を1本選べ、と言われたらやはりこの決勝戦の観戦記事になるでしょう。
記事中、結末部分に出てきた「貴似晨星(朝星の如く貴き)」はグランプリ本戦前日の金曜日、ふたりで国立故宮博物院へと出かけた時に見つけた詩でした。当初はこの言葉の美しさに「決勝戦では絶対この詩を使おう!」とひとしきり盛り上がったのですが、私にはこの詩を使うためのいいアイディアが生まれてきませんでした。
だから王者には「王」の言葉を贈ることにしよう――今回の勝利もまた、「朝星の如く貴き」ものである、と。
――該当記事より引用
この矢吹さんのフレーズには痺れさせられました。もちろん、前段からのフリがあってのフレーズで、それを含めてこの記事の締め方には素直に素晴らしいと感じました。そして、この瞬間に私は矢吹さんの大ファンになったのです。
グランプリ・シドニー2016より――決勝:Jan Ksandr(チェコ) vs. Scott Lipp(アメリカ) by 伊藤 敦
ここでは伊藤敦さんによるグランプリ決勝戦をご紹介。
このグランプリ・シドニー2016の決勝ラウンド。当たり前のように勝ち残った当時の最強プレイヤー、セス・マンフィールド/Seth Manfield選手(アメリカ)。傍目から見ていても、「強者のオーラ」とでも言うのでしょうか。少なくとも他のプレイヤーには無いような凄みを感じていました。
そのため、私も伊藤さんも「マンフィールドもしくはベンスタ(ベン・スターク選手。アメリカの殿堂プレイヤー)が優勝するだろう」と予想していましたが、ふたりは準決勝で敗退。その知らせを聞いた時、私と伊藤さんは顔を見合わせて「マジか!?」と叫んだのを覚えています。
意外性のある決勝戦、それまで描いていたストーリーが消えた伊藤さんは内心焦っていたことでしょう。少なくとも、私であれば多少の混乱とともにテーブルへと向かったはずです。
そんな中で生まれた決勝戦観戦記事。伊藤さんは私たちに「強さとは何か」と問いかけてきました。そう、数々の強豪を倒してきた彼らは間違いなく強いプレイヤーなのです。ですが、残念ながら英語の壁もあり、彼らから直接言葉を引き出すことはできませんでした。
では、私たちにできることは何でしょう?「彼らの戦いを、生き様を目に焼き付け、その強さを文章にして伝えることだけだ」......と伊藤さんが考えたかどうかは定かではありませんが、間違いなく彼らの、そしてチーム「East West Bowl」の強さが伝わってくる記事だったと思います。
プロツアー『異界月』より――第16回戦:Reid Duke(アメリカ) vs. 行弘 賢(日本) by Ray "blisterguy" Walkinshaw / Tr. Tetsuya Yabuki
シーズン締めくくりとなるプロツアーはいつだってドラマの連続です。行弘賢選手にとって、このプロツアー『異界月』は久々のプロツアー参加であり、勝負の舞台でした。「プロツアー『異界月』でトップ8に残ればゴールド・レベル」。非常に厳しいラインではありましたが、行弘選手は並々ならぬ覚悟をもってこのプロツアーへと挑んだのでした。
ギリギリの試合となった第16回戦のリード・デューク/Reid Duke選手との試合。勝てばトップ8進出が決まるゲームは第3ゲームの延長ターンまでもつれ込みました。
1ゲーム目を先取された劣勢からの逆転劇。延長ターンの攻防は見ていてハラハラドキドキの展開でした。そして、決着の瞬間。行弘選手は成し遂げたのです。
ニコニコ生放送で試合の模様をご覧になっていた方は、きっとあの決着の瞬間を、行弘選手の歓喜の咆哮を覚えていらっしゃることでしょう。あのドラマティックな勝利で行弘選手はゴールド・レベル達成となったのです。
2017年も行弘選手の活躍に期待です!
グランプリ・広州2016より―― 決勝:Wu, Kon Fai(香港) vs. Law, Albertus(シンガポール) by 矢吹 哲也
この記事をお読みになる前にアルバタス・ロウ/Albertus Law選手のことをご存知だった方はどのくらいいらっしゃるでしょうか? 恥ずかしながら私は英語版ライター、シム・チャップマン/Sim, Chapmanに教えてもらうまで、彼のことをまったく知りませんでした。
伝説のカイ・ブッディ/Kai Budde選手とかつてプロツアー決勝ラウンドの舞台で真っ向からぶつかりあったこの往年の名選手を、15年ぶりに知らしめてくれた記事がこの矢吹さんによる決勝戦です。ちなみに、私にとっては間違いなく2016年No.1の記事でもあります。
記憶は、失われていくものだ。
だからこそ私たちは記録する。
――該当記事より引用
この一文を見たとき、私は泣きそうになりました。
プレミア・イベントの結果や内容を知る方法がテキストカバレージしかなかったかつてとは異なり、現在では各種動画サービスに加え、SNSなど選択肢は多岐にわたります。そんな中、私たちカバレージライターは常に存在意義を問われているように感じています。果たして、5年後、10年後もテキストカバレージが存在し、皆さんに記事をお届けできるのだろうかと。
そんな問いに答えてくれるかのようなこの一節。5年後、10年後に振り返ったときに記録となり記憶となる記事を残していかねばと、決意を新たにさせてくれました。
グランプリ・京都2016より――原根/松本/平見チームにインタビュー! by 大久保 寛
チーム「The Sun」松本友樹選手/市川ユウキ選手/瀧村和幸選手が優勝を遂げ、「チーム戦に大番狂わせなし」を体現した結果となったグランプリ・京都2016。私個人としては初のチーム戦決勝戦を担当させていただき、思い出に残っているグランプリです。優勝が決まった瞬間の歓喜の抱擁を覚えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
そんな本イベントにはとあるチームの物語がありました。
ともにプロツアーへの参加権利を目指して国内外のグランプリをサーキットしていく中で知り合い、友情を深め、在住地域が違えど運命共同体であるチームを組んだ原根健太選手/松本郁弥選手/平見友徳選手。何度もあと一歩のところで道を閉ざされながらも諦めることなく、ひたすら自らを磨き、目標を達成するため走り続けてきた彼らは、みごとこのグランプリで決勝プレイオフへと進出し、プロツアーへの権利を獲得したのでした。
そのチーム「勉強になったでしょ?」の道のりと物語をインタビューを交えながら新進気鋭のエース、大久保さんが見事に仕上げたこの記事は、カバレージをお好きな方であればぜひご一読いただきたい内容となっています。
グランプリ・クアラルンプール2016より――準々決勝:市川 ユウキ(神奈川) vs. 覚前 輝也(東京) by 伊藤 敦
先ほどご紹介したチーム「勉強になったでしょ?」の松本郁弥選手がみごとプレミア・イベント個人戦初のトップ8入賞から初戴冠まで駆け上がったグランプリ・クアラルンプール2016から。以前に取材をさせていただいた縁もあり、松本選手の優勝は心の底から嬉しいものでした。
その優勝を決めた決勝戦ももちろん素晴らしい記事ではありますが、ここでご紹介するのはTeam Cygames同士のぶつかり合いとなった市川ユウキ選手と覚前輝也選手による準々決勝です。
先にご紹介したグランプリ・シドニー2016の決勝戦と同じく「強さ」について投げかける伊藤さん。冒頭で「彼らの強みとは一体何なのか。」と投げかけた問いをみごとに記事内で回収し、きれいな形で構成されているカバレージです。
良いカバレージには何が必要なのでしょうか?読みやすさ、瞬間を捉えた写真、対戦内容の再現性......要素を挙げていけばキリが無いとは思いますが、意外と人によって答えは異なるものです。ライター同士では常に話題となるこの問いを伊藤さんに聞いてみたことがあります。
「文章の構成、だと思う」と、伊藤さんは答えてくれました。記事をしっかり構成し、最後まで一貫した物語......まさにこの観戦記事はその言葉通り、序盤、中盤、終盤隙が無い構成となっています。伊藤さんからはいつも色々なことを学ばせてもらっていますが、最近ではこの記事を読んで伊藤さんの言葉を思い出すようにしています。
グランプリ・千葉2016より――決勝:山本 賢太郎(東京) vs. 木原 惇希(東京) by 小山 和志
自身の記事について書くのは気恥ずかしいものがあるのですが......それでもこの決勝戦、そして山本賢太郎選手の初戴冠は多くの山本選手のファンの方々が待ち望んでいたものであり、2016年を締めくくるのに申し分の無いトピックでしょう。
そして、私にとっても山本選手のプレミア・イベント初制覇は忘れ得ないものになりました。自分語りになってしまい恐縮ですが、初めて私が山本選手とお会いしたのは8年ほど前のプロツアー予選でのことだったと思います。その時は山本選手グランプリ優勝の瞬間を、まさか私がライターとして見届けることになろうとは想像すらできませんでした。
山本選手が勝利を決めた瞬間、それまでの思い出がフラッシュバックしてしまい思わず涙がこぼれてきました。自身では比較的涙もろいとは自覚していたのですが、まさか会場で泣いてしまうとは......(山本選手には「なんで泣いてんの?」とツッコまれてしまいましたが)。
「マジックを続けていればこんなこともあるんだなあ」と自分でも驚く出来事でした。
2017年も国内外のイベントでテキストカバレージをお届けします!
さて、2017年も日本やアジア、そして世界各地でプレミア・イベントが開催予定となっています。来年はより皆さんにお楽しみいただける記事をお届けできればと思います。ぜひ、プレミア・イベントの際にはテキストカバレージの更新をお楽しみくださいね!
また、よろしければぜひ皆さんの今年印象に残ったカバレージ記事をお教えいただければ幸いです!Twitterにハッシュタグ「 #mybestcoverage16 」をつけてツイートしてください!
それでは皆さん、よいお年を!
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