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コラム

ロン・フォスターの統率者日記

第7回:『テーロス還魂記』でデッキを改造しよう

ロン・フォスター

 読者の皆さん、こんにちは! 『テーロス還魂記』プレリリース、いかがでしたか?

 私は日曜に「Wizard's Keep Games」店舗での大会に息子2人を連れて参加しました。結果は、私が青白で2勝1敗、長男が白緑で1勝2敗、次男が黒赤で1勝2敗と、まあまあでした。《夢さらい》《水底のクラーケン》《変幻の秘術師》のようないいカードもありましたが、3戦目は同じ青白と当たってしまい、思うようなスタートが切れずに負けてしまいました。とはいえ、新しく出たばかりのカードを手にしてマジックを遊ぶのはやはり楽しいものですね。

 『テーロス還魂記』にはかつての『テーロス』ブロックに登場している能力も含まれていますが、「脱出」というまったく新しい、セットの背景ストーリーと関係しているものがあります。これはフラッシュバックなどの今までのものと違って、クリーチャーや呪文を墓地から何度も戻して再利用する方法です。特定の枚数のカードを墓地から追放するという追加コストを支払いさえすれば、「脱出」を持つカードを墓地から唱えることができます。

 プレリリースのように、ライブラリーの枚数が少ないリミテッドだとこの能力はせいぜい1回、試合が長引いても2回しか起動できないでしょう。この能力を使うことを前提に構築戦用にデッキを組めば、2~3回、ひょっとして4回まで使えるかもしれません。

 ですが、デッキが99枚ある統率者戦だと、5回以上使える可能性があります。「発掘」を持つクリーチャーや呪文、《Bazaar of Baghdad》のようなカードをデッキに入れると、墓地の枚数を増やすことが簡単にできます。赤を使って組むと、手札入れ替えの定番《Wheel of Fortune》があるし、《ドラゴン魔道士》や《輪の大魔術師》など何度も手札を捨てさせることのできるカードがあります。

 この「脱出」能力は今後よく見かけることになると思います。なぜなら、「脱出」を持つクリーチャーを統率領域に戻さないで墓地に置かれたままにすると、いわゆる「統率者税」……つまり唱える度に増える追加コストを避けられるからです。それに、そのクリーチャーは統率者であるので、《ボジューカの沼》など墓地対策が使われたらその時点で統率領域に戻せばよいのです。

 もうひとつ、『テーロス還魂記』に入っていて、これから統率者でよく見かけることになりそうなものは《影槍》です。これを装備しているクリーチャーは+1/+1の修整とトランプルと絆魂を得るので、一見《ロクソドンの戦槌》のようにも思えますね。

 それでも充分強いのですが、注目すべきなのは2番目の能力です。これは、今までクリーチャーをあらゆる除去から守ってきた呪禁と破壊不能をたった1マナで完全になくすことができます。しかも、《影槍》が装備されていなくてもこの能力が起動できるので、自分の戦場にクリーチャーがなくても使えます。さらに、無色のアーティファクトですからどのデッキにも入れることができます。今まで一部の色しか対応できなかった手ごわい《希望の天使アヴァシン》デッキでも、まともに相手できます。この1枚はおそらく『テーロス還魂記』に収録されているカードの中で統率者戦にもっとも影響を与えるカードになるでしょう。

 さて、今回の記事では、今まで紹介してきたデッキが『テーロス還魂記』の導入でどう変わっていくのかを取り上げたいと思います。

協約の魂、イマーラ

 オーラが少なく、かつマナ・カーブが低くトークンでアドバンテージを取るように組まれたこのデッキは、『テーロス還魂記』から得るものが意外とありません。新しいダクソスは費用対効果が良く、このデッキに少なく最近ちょっと足りないと感じてきたライフ回復を強化してくれるので、入れてみてもいいと思います。クリーチャーが戦場に出るときも死ぬときもライフをくれるので、クリーチャーが多くいるのを前提にしている《軍勢の整列》と取り換えてもいいでしょう(出番が少ない『ポータル三国志』のカードは捨てがたいけど……)。

 続いて、《恭しき重装歩兵》はマナ・コストがちょっと高いけれど、出すだけでトークン・クリーチャーをいっぱい生産するので、メリットありだと思います。入れるとしたら、よく考えてみると統率者のイマーラとあまり相性がよくない《セラの祝福》を抜くと思います。

 あと、最近このデッキを使って気になってきた点が2つあります。ひとつは、フィニッシャーが少ないこと、もうひとつは《Moat》は地上戦を制御してくれますがデッキに入っているほとんどのクリーチャーは飛行を持たないということです。

 《遍歴の騎士、エルズペス》の2番目の能力でチビチビと相手のライフを削る手もあるし、《太陽の勇者、エルズペス》の奥義で圧勝する夢を見ることはできるけど、どちらもあまり現実的ではありません。

 白に、この2つの短所を一石二鳥でうまく解決してくれるカードがあります……そう、《嵐の獣群》です。スペースを作るには、多分《動員》を抜くと思います(あぁ、また『ポータル』のカードが消えていく……)。

キイェルドーの背信者、ヴァーチャイルド

 単色であるこのデッキも、意外と候補が少ないです。わりとマナ・コストが高い呪文や効果があるので、単色ならマナがいっぱい出る新しい睡蓮がありがたいです。対象を取る効果が多いので、呪禁を失わせる《影槍》はやっぱりいいですね。《アクロス戦争》と《嵐の怒り》はどちらも全体除去になりうるので、このデッキの戦略に合います。

 問題は、何を抜くべきかです。最近、引いてもなかなか活用できない1枚が《軍族の雄叫び》ですので、これを抜いて《アクロス戦争》でも入れてみるのもいいかもしれません。《前哨地の包囲》も出してもあまりいい結果につながっていないので、抜いてもいいと思います。マナ生産は結構できているので、《ずる賢いゴブリン》も抜いていい気がしてきました。あとは、単色である上、色安定が必要ないこのデッキなら、やはり《彩色の宝球》は要らないと思います。

冒涜されたもの、ヤロク

 上記の2つのデッキは『テーロス還魂記』からは得るものが多くありませんでしたが、「戦場に出たとき」の能力を倍にしてくれるこのヤロク・デッキにとっては、テーマとなるエネルギーを使う新しいカードこそないものの、注目すべきカードが結構あります。

 デッキに入っているほとんどのクリーチャーは「戦場に出たとき」能力を持っているので、クリーチャーを再利用できるようにしてくれる《死者の神のお告げ》はかなり強いです。(しかも、このエンチャント自体にも「戦場に出たとき」と書いてあるので、ヤロクが出ている状態ならクリーチャー・カードを2枚戻せる!)同じように、普通は白でしか見かけない「ちらつき」能力のある新しいタッサは純粋に価値が高いカードとなります。

 《タッサの神託者》はライブラリーのカードの操作ができる他に、いざとなれば勝利条件にもなってくれます(ただし、このデッキは今のところ緑の方が強いので、青の信心を当てにしない方がいいですね)。《セテッサの勇者》と《二柱に愛されしユートロピア》はカルトーシュと試練サイクルとの相性が抜群です。

 最後に、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》は『テーロス還魂記』の最強カードのひとつですので、青緑が入っていればどのデッキにも入れたいところ。たった3マナでカードドロー、ライフ回復、マナ加速ができるというのはとんでもない効果です。それに6/6のボディーが付いてくるとは……。

 問題は、7枚も新しく投入するのであれば、同じ枚数を抜かなければならないことです。核であるエネルギー関係のカードは残したいし、カルトーシュなどを抜くと勇者とユートロピアを入れる意味が無くなります。《成長の季節》は占術が複数回行えるように入れたけれど、このデッキのカード・ドローは半端じゃないので、抜いてもいい気がします。エネルギーをくれるけれど、主にカード・ドローのために入れた《放埒》も同じ理由で抜きましょう。

 マナ加速はそれなりにあるので、《ゼンディカーの復興者》は要らないかも? 《育殻組のヴォレル》には期待していましたが、出しても増やすカウンターはあまりないので、使ってみたい『テーロス還魂記』の新しいカードと取り換えてもいいと思います。

 最後に、リストを眺めていたら《悪意の大梟》と《熟考漂い》は似たような役割を果たしているクリーチャーで、大梟の方が軽くて接死を持っているので、あえて《熟考漂い》を切ることにしました。で、《鎖を解かれしもの、ポルクラノス》と《タッサの神託者》は今はスルーします。神託者は上で述べたように青の信心が比較的低いので発揮できなさそうだし、ポルクラノスは強いけれど他に大きなクリーチャーが十分いる上に回避能力もないので、コストパフォーマンスが良いとはいえ正直要らないと思います。

マルチェッサ女王

 欧州の貴族と、おとぎ話をもとにデザインされたエルドレインのテーマデッキとして設計されたこのデッキには、ギリシア神話をもとにデザインされた『テーロス還魂記』のカードがなかなか合いません。騎士というクリーチャー・タイプは存在しませんし、できあがったデッキにはエンチャントはあるものの、少ないです。何かを使うなら、やはりどのクリーチャーでも装備できる《影槍》ですね。《先祖の刃》の替わりにでも入れてみるか。

フェイに呪われた王、コルヴォルド

 パーマネントを生け贄に捧げることによるシナジーを考えて組まれたこのデッキも、『テーロス還魂記』から使えるカードが結構あります。《荒涼とした心のエレボス》はもうひとつの生け贄能力持ち……いわゆる「サクリ台」でありながらカード・ドローを強化してくれます。

 《死の夜番のランパード》も同じようなサクリ台+αのカードです。《青銅血のパーフォロス》はデッキのクリーチャーに速攻を与えるタイプのデッキのパワーを上げながら、生け贄とのシナジーもアップしてくれます。《終わりなき巣網のアラスタ》は飛行対策でありながら生け贄に捧げられるクリーチャーも増やします。《狼のまとい身》はクリーチャーを強化して、さらに生け贄に捧げられるクリーチャーを生み出します。カードをいっぱい生け贄に捧げているこのデッキの墓地は常にいっぱいなので、《運命の神、クローティス》の餌がたくさんあって、受動的なダメージ発生源&ライフ回復になります。

 最後に、《死の飢えのタイタン、クロクサ》は単にでかいクリーチャーで墓地が山積みなので何度も脱出できるでしょう。もともと入っている《活力》は《鎖を解かれしもの、ポルクラノス》と同時に戦場に出ていれば、後者は決してダメージで死ぬことは無く相手のクリーチャーをドンドン潰していくので、ぜひ入れたいです。

 『テーロス還魂記』からクリーチャー・トークンが生み出せるカードを何枚か入れるなら、《往時軍の覚醒》と《戦慄衆の侵略》は無くていい気がします。同じ役目を果たしている《苛性イモムシ》と《打ち壊すブロントドン》の両方は要らないと思うので、マナ・コストが高い後者を抜きます。

 古いカードとあまり使われていないカードを使うのが個人的には趣味だけれど、これだけクリーチャーを投入していればデッキはもっとアグレッシブに転向しているので、《ドラゴン鎮め》と《Xira Arien》はカットせねばと思います。被覆の効果は軽視できないけれど、《稲妻のすね当て》を入れていた主な理由はコルヴォルドをはじめとしてクリーチャーに速攻をつけるためだったので、《青銅血のパーフォロス》と取り換えます。同じ原理で《野生の律動》も抜けます。《終わりなき巣網のアラスタ》が飛行対策となるので《サンドワームの収斂》を抜きます。同じコストで効果としては《疫病造り師》は《肉袋の匪賊》にまさっているので、後者は抜いていいでしょう。


 今回は、ここまでとします。これから『テーロス還魂記』のパックをバンバン開けて、デッキに入れたいカードを探していきたいと思います。次回まで、読者の皆さんも新しいカードをエンジョイしてください!

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