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開発秘話

Making Magic -マジック開発秘話-

「ユニバースビヨンド」を作るにあたっての課題

Mark Rosewater
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2023年10月3日

 

 ようこそ『ドクター・フー』プレビューへ。リード・セットデザイナーのガヴィン・ヴァーヘイ/Gavin Verheyがこのデザイン個別の詳細な話をする記事を書くので、私はユニバースビヨンド製品を作る上での課題を大局的な見方で語ろう。その中で、『ドクター・フー』を例示として用いていく。その後、今日のまとめとして、クールな新カードを2枚お見せしよう。楽しみにしてくれたまえ。

はじめに

 まず、最も広範な疑問から始めよう。どうやって、どの知財をユニバースビヨンドの製品にするかを決めるのか。我々が主に意識することは以下の通りだ。

  • マジックのプレイヤーや潜在的プレイヤーとの重複

 まず、何がビジネスとして成立するのかを考える。既存のマジック・プレイヤーと、マジックのファンであり、新しいゲームに興味があり、その知財への愛を通してマジックを学び、プレイしようとする新しいプレイヤー候補の組み合わせが必要だ。基本的には、その製品に充分な潜在顧客がいるかどうかを問うているのだ。この質問に対する答えがノーなら、他のことは重要ではない。ユニバースビヨンドとしてはふさわしくないのだ。

 「ドクター・フー」はこの点で問題なかった。愛されているサイエンスフィクションのブランドで、ユーザー層は広く複数の世代にまたがっている。また、ゲームのプレイヤーとサイエンスフィクションのファンには高い相関性もある。

  • マジックのカードにうまく翻訳できる要素

 マジックのセットに収めるために、知財はいくつもの条件を満たす必要がある。

第1条件:すべてのカード・タイプに当てはまる要素があること

 キャラクター、生物、品物、場所、出来事などなどで、魅力的なカードを作れるものがあるか。製品を埋めるだけの量が確保できるか。

 また、その知財に関して、マジックのゲームで行われる主要な行動(攻撃、ブロック、防御、クリーチャーへの攻撃、クリーチャーの無力化、クリーチャー除去、クリーチャーの強化、カードを引く、回復、など)に当たるものについても考える必要がある。知財の中には、その要素が非常に集約しているものもある。キャラクターが非常に少なかったり、大きさがすべて均一だったり、そもそも大きな製品を完成させるのに充分な要素がなかったりするかもしれない。

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第2条件:さまざまなマナ総量と大きさでセットを埋められるだけの要素があること

 小さなもの、中くらいのもの、大きなものがあるか。知財の中には、ほとんどが人間のキャラクターで構成されていて、大型のクリーチャーを作る上で問題があるものがある。

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第3条件:その知財に、5色すべてを満たす充分な要素があること

 マジックの環境は、色のバランスが取れるようにデザインされている。他の知財ではそれを意識していないので、ほとんどの場合はそうなっていない。

 『ドクター・フー』の場合、色は青に偏っていた。ドクターは敵よりも深く考え、時空を旅するので、すべてのものが青に偏ることになるのだ。対照的に、本質的に緑なものは少ない。(少しはあったが、これはデザイン・チームの課題の1つだった。)

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第4条件:その知財に、マジックがゲームとして機能するために必要な要素が存在していること

 典型的な例は回避能力である。マジックは通常、戦場が膠着しないようにするための多くを飛行に頼っている。『ドクター・フー』にはマジックの平均的な環境に比べて飛行クリーチャーが多くないので、デザイン・チームは回避能力を導入する他の方法を考えなければならなかった。

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 この条件は、その知財がマジックのいいゲームを作ることにつながる要素を持っているかどうかを問うものである。製品に充分な数の観客がいることと同じように、魅力的なゲームプレイをもたらすものを作れることも保証する必要がある。もしその知財が楽しいマジックのセットにならないのであれば、他のことはあまり重要ではない。

 「ドクター・フー」は問題なかった。そもそも、まず、60年分のコンテンツがあるので、キャラクター、クリーチャー、物品、場所、出来事はたくさんある。すべてのマナ総量と色に広げられるものがある(前述の通り、他の色より合う色があるという注意点はあるが)。充分な回避能力がないという僅かな問題はあったが、デザイン・チームが対処できることだった。

 この懸念をその知財でどう対処するかは、私たちがどんな製品を作れるかに大きな影響を与える。キャラクターが少なすぎるなら、「Secret Lair」のようなものがふさわしい。完全に具体化できる環境なら、大型のドラフト可能セットがいいかもしれない。『ドクター・フー』は、一連の統率者デッキがもっともふさわしいと思われた。上で話した色と回避の問題は、少ないカード枚数で対処できることであり、統率者デッキが最善の選択肢となったのだ。

  • パートナーが我々と一緒に働きたいと思っていること

 さて、マジックのユーザーとよく重なる知財を見つけ、その知財に魅力的な製品を作るために必要な要素があると感じたとしよう。次の壁は、その知財のオーナーが、その知財を使ってマジックのセットを作ることに興味があるかどうかである。

 良いユニバースビヨンド製品を作るためには、ライセンサーと強力なパートナーシップを築くことが重要である。私たちはマジックの専門家だが、彼らはその知財の専門家だ。良いパートナーシップは、マジックのファン、その知財のファン、そして特に両方のファンが楽しめる製品につながる。そしてそれは、ライセンサーと緊密に協力することから生まれるのだ。

 『ドクター・フー』のライセンサーであるBBCは素晴らしいパートナーで、我々にとって幸いなことに「ドクター・フー」を広めることに心を踊らせていた。

 要約すると、こうなる。我々のユーザーとよく重なると思われる知財を見つけ、それを使って魅力的なマジック体験ができるように下準備をし、ライセンサーとパートナーシップを結ぶ。さて、こうしてようやく我々は実際に製品をデザインする段階に入ることになる(調査部分の工程で少し下準備をしたことに注意)。

製品の選定

 ユニバースビヨンド製品には色々な形がある。枚数が少ない「Secret Lair」であることもある。向こうの知財の一部とマジックの一部という2つの形で、ただしカード・テキストは同じで登場する"オーバーレイ"になることがある。本流のセットに封入されることがある。統率者デッキであることがある。小型セットであることがある。大型の、ドラフト可能セットであることがある。さまざまな選択肢があるのだ。

 通常、その製品の設計者は、先行デザインを行なった開発部のチームと協力して、その知財の強みを最大に生かせる製品は何かを決定する。『ドクター・フー』の場合、統率者デッキにするのが最も効果的であると判断された。

 当初の計画ではデッキは2つだったが、最初のユニバースビヨンド『統率者デッキ:ウォーハンマー40,000』の成功を受けて、この製品の仕様はデッキ4つに変更された。デザインを始める前に、どんな製品を作るかについてパートナーと合意するのが通例となっている。

デザイン・チームでの探し者

 最初に我々が開発部内で探すのは、そして時には社内全体から探すのは、SME(Subject-Matter Expert)と呼ばれる専門家である。ある知財をマジックのカードに翻訳するのであれば、その知財の筋金入りのファンが必要となる。

 理想を言えば、(展望デザインとセットデザインの)リード・デザイナーはその知財の専門家であってほしいし、可能なときにはそうしている。それが不可能な場合、つまり、マジックのセットのデザインをリードする人材にその専門知識がない場合、次善の策として、そのリード・デザイナーのデザイン・チームに SME がいるようにして、彼らが適切に知財を再現していることを確認できるようにしているのだ。

 『ドクター・フー』の場合、我々の判断は素晴らしいものだった。ガヴィン・ヴァーヘイは「ドクター・フー」の熱烈なファンなのだ。私は、サンディエゴのコミコンで彼がドクターのコスプレをしているのを何度も見たことがある。ガヴィンは、別の製品のデザインを中断して『ドクター・フー』に携わるほどにこの製品に心を踊らせていた。ガヴィンがずっと製品のデザインをリードしていたので、展望デザインとセットデザインの間に区切りはなかった。開発部/スタジオXにはその他にも数多くの専門家がいて、この製品に関わっていた。

 これに加えてライセンサーがいるので、その知財をどの程度うまく再現できているかについてのフィードバックを求めることができるパートナーがいる。BBCがくれたメモのおかげで、我々はデザインを微調整することができたのだ。

製品の詳細を把握する

 デザイン・チームは通常、どの製品をデザインすべきかを与えられるが、その知財をどのように表現するのがベストかを考えるのは彼らに任されている。

 多くの場合、「ドクター・フー」がそうであるように、その素材を表現するカードよりもはるかに多くの素材があるため、デザイン・チームはその知財のどの側面に焦点を当てるべきかを考えなければならない。他のユニバースビヨンド製品と同様、決定したことはすべてパートナーに確認され、その内容について同意がとられる。パートナーは、その知財の専門家であり、我々がその知財のファンに愛される本質を捉えているかどうかについての素晴らしい相談相手なのだ。彼らが我々に教えてくれたことは何でも、次の一連の変更に反映されることになる。

 この工程がどのように機能するのか、『ドクター・フー』を使って具体的に見てみよう。ガヴィン率いるデザイン・チームは、統率者デッキを作ることを前提にデザインを始めた。しかし、どのようにデッキ間で分割するかは彼らに委ねられていた。

 彼らは最初、伝統的な統率者デッキ製品らしく作ることを考えていた。このデッキは、ダーレクのデッキ。これはサイバーマンのデッキ。しかしこのやり方はうまく行かないことがわかった。マジックは陣営を作りがちだが、「ドクター・フー」は陣営中心というわけではないので、異なるコンセプトで充分な数のデッキを揃えるのは難しかったのだ。その一方で、エキサイティングな素材がデッキから取りこぼされていった。

 デザイン・チームがこの分割について考えた結果、「ドクター・フー」の視聴者にはすでに意識している方法、つまり時間による分割があることに気づいた。ファンは文字通り、誰がその時代のドクターであったかを認識することで、その時代について語っている。デッキを時代に寄って分割したらどうだろうか。そして、象徴的な悪役の多くは時代を超越する傾向があるため、悪役に独自のデッキを用意することができると判断した。

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過去からの来襲(緑白青)
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タイミーワイミー(青赤白)
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パラドックスパワー(緑青赤)
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悪の支配者(青黒赤)

ブランドの本質の再現

 もう1つ、ユニバースビヨンド製品をデザインする上で独特な要素が、人々がその知財の何を愛しているかを確実に捉えることである。その具体的な内容は知財によって異なるが、優れたユニバースビヨンドのデザインの重要な部分である。『ドクター・フー』をデザインしているときの状況はこうだった。

 ガヴィン率いるデザイン・チームは、『ドクター・フー』を作るには、ドクターとコンパニオン(ドクターと共に旅をする人々)を再現することが不可欠だと考えていた。彼らの関係はシリーズの核となる部分だ。何よりもまず、そのほとんどをカードのデザインにすることになるが、それ以上に必要なことがあった。ドクターたちとコンパニオンたちの間には、何かメカニズム的な関係が必要だった。

 最初にすることは、既存のマジックのデザインを見て、うまく合うものがすでに存在するかどうかを確認することである。コンパニオンに関しては、(『イコリア:巨獣の棲処』に)文字通り、相棒/Companionというメカニズムがある。コンパニオンが文字通りコンパニオン、相棒メカニズムを使うのはどうだろうか。

 その場合、デッキに入れていないカードを1枚手に入れて、該当するドクターをコントロールしている場合にのみプレイできる、ということになる。しかし、これにはいくつか問題があった。

  • ドクターたちは統率者なので何度も唱えることができるが、コンパニオンは戦場を離れると二度と戻ってこない。
  • トレーディングカードゲームの楽しみのひとつは、様々な組み合わせが可能なモジュール性にある。もちろん、エイミー・ポンドを11代目ドクターと組ませるのも面白いが、4代目ドクターや13代目ドクターと組ませたらクールではないか。
  • 相棒の文章が文章欄の半分を埋め尽くしてしまい、フレイバーに富んだ楽しいコンパニオンをデザインするチームの能力が制限されてしまう。
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 ここから、「~との共闘」変種ルールを使うというアイデアに繋がった。各ドクターが統率者としてコンパニオンと組めればクールだろう。番組ではペアを組んでいるので、フレイバーに富んでいると言える。「~との共闘」は、統率者と組み合わせて3色以上にならないようにするという制限のもとで使っていた。それを実現するために、各ドクターと各コンパニオンをどうフレイバー付けすればいいだろうか。

 その答えは、ドクターはすべて2色、コンパニオンはすべて単色にすることだった。どのドクターもコンパニオン1人としか組になれないとすれば、必ず3色以下になることになる。

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 ところで、色とキャラクターを再現するのは、難しい仕事である。多くの物語に登場するうまく書かれたキャラクターは、多くの色になる可能性があるものだ。たいていの場合、キャラクターの色を何種にするかは、個々のカードのデザインよりも、その製品のニーズに関係している。

 例えば、ドクターは2色でなければならず、そのデッキの固有色に収まるものでなければならなかった。ほとんどの場合、デザイナーはそのキャラクターを最もよく表現している2色に集中させることができた。しかし、時にはそうでない色の組み合わせを正当化する方法を見つけなければならないこともあった。最も一般的な方法は、自分が必要とする色に当てはまるような物語上の特定の場面に焦点を当てることだった。

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 コンパニオンは1色にしなければならないので、さらに厄介だった。最初のアイデアは、コンパニオンと関連するドクターを組み合わせると、そのコンパニオンが登場するデッキの固有色3色を構成するようにしようというものだった。

 これがうまくいくこともあったが、一貫したルールを作るのは難しいとわかった。例えば、10代目ドクターは青赤だ。ローズ・タイラーは白単色なのでうまくいったが、ドナ・ノーブルは白単色よりも赤単色の方がはるかに理にかなっているので、この組み合わせは3色にならない。デザイン・チームは、キャラクターのフレイバーと合わせることを、全体のデザインパターンよりも優先することにした。

何を含み、何を含まないかの選択

 ユニバースビヨンドのデザインでもう1つ重要なのは、その知財のファンが最も見たいと思うものを盛り込むことだ。その知財が大きければ大きいほど、これは厄介なことになる。例えば、「ドクター・フー」は60年の歴史を持つ。「ドクター・フー」のエピソードは非常に多く、850以上にも及ぶ。すべてのエピソードをカードに収めようとしても無理である。この製品のカード数は、エピソードの数よりも少ないのだ。つまり、デザイン・チームは何を入れて何を入れないかを選択しなければならなかった。

 ガヴィン率いるデザイン・チームは、象徴的なエピソード(「まばたきするな」のようなエピソード)をいくつか選び、それぞれにカードを数枚ずつ割り当て、それ以外のエピソードにはカードを複数枚割り当てないことにして、できるだけ多くのエピソードを収録できるようにした。また、それぞれのドクターにとって重要なエピソードを再現した英雄譚を各ドクターに1つずつ用意すると決めた。

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 すべてを含めることができないというこの問題は、キャラクターにも影響を与えた。このセットの伝説のクリーチャー枠は限られている。「ドクター・フー」は、60年の間に膨大な数のキャラクターを登場させてきた。誰もがカード化されるわけではない。ガヴィン率いるチームは、ファンが最も望んでいると予想されるものを優先し、他のキャラクターに言及する方法を可能な限り探した。例えば、ファンがそのキャラクターに触れることができるよう、多くのカードのアートには、カード化されなかったキャラクターが登場している。

アート・リソースの活用

 ユニバースビヨンド製品の特徴の1つは、製品に含まれるすべてのアートがその知財のためのものでなければならないため、新しいものであるということである。ほとんどの製品でアートを再利用する再録でさえ、新しいアートが使われる。

 これがデザインに大きな影響を与えることがある。例えば、通常、統率者デッキでは、デザイン・チームはデッキ1つにつき10枚の新しいカードを使うことができる。しかし、『ドクター・フー』統率者デッキはすべて新しいアートを採用しているため、ガヴィン率いるチームは必要なだけ新しいカードを作ることができた。これにより、通常の統率者デッキでは充分なカードが揃わないため使用できないようなメカニズム的テーマ(「タイミーワイミー」デッキの「時間操作」テーマなど)を掘り下げることができたのだ。

 また、再録に納得のいくマジックのクリーチャーが少ないという問題(ファンタジーに基づかないユニバースビヨンドの知財に共通する問題)を解決することもできた。

色のバランスをとる(できる限り)

 ユニバースビヨンドのデザインにおける難関の1つは、色のバランスである。通常のマジックの製品では、各色が均等に存在するようになるように尽力している。統率者デッキや「Secret Lair」デッキは、すべての色が登場し、1つの色があまりにも多いということがないことが期待されてはいるが、ランダムなブースター製品に比べれば容易である。

 『ドクター・フー』では、結局、青と黒の2色が問題になった。青はすべてのデッキに入りたかった。上で説明したように、「ドクター・フー」は哲学的に青に偏っている。デザイン・チームは青の入っていないデッキも実験してみたが、青がいないのは大きすぎた。結局、4つのデッキすべてに青が入っていてもいいということになった。

 黒は逆の問題を抱えていた。そのうちの3つのデッキはドクターを統率者としており、どのドクターにも黒を入れるのはしっくりこなかったので、デザイン・チームはデッキ「悪の支配者」1つだけに黒を入れることにした。

 この4つのデッキについてよく知らない人のために、どのように分類したかを説明しよう。

  • 「過去からの来襲」は、リブートされる以前のドクターたち、初代ドクターから8代目ドクターまでを基柱にしている。このデッキは緑白青だ。歴史的メカニズムを中心に据えている。
  • 「タイミーワイミー」は、リブート版の最初の3人のドクター、9代目ドクターから11代目ドクターを基柱にしている。このデッキは青赤白だ。このデッキは、カードに時間カウンターを追加したり削除したりできる新しいタイムトラベル・メカニズムを利用した時間操作デッキだ。
  • 「パラドックスパワー」は、12代目ドクターと13代目ドクターを基柱にしている。このデッキは緑青赤だ。自分の手札以外の場所からカードをプレイすることで利益を得ることができる、パラドックスという新しい能力語を使っている。
  • 「悪の支配者」 は作品の悪役を基柱にしている。このデッキは青黒赤だ。対戦相手に2つの不利益効果のどちらかを選ばせる、最悪の二択という新しいメカニズムを導入している。

通常のマジックの実装と反するものを見つけ出す

 ユニバースビヨンドのデザイン・チームが最後に考えることは、いつ通常のマジックではできないことをする必要があるかである。我々の次元はゲームの必要性に合うように作られているので、我々のルールを放棄しなければならないことはあまりないが、マジックというゲームを最大限に楽しむために作られたものではない知財では問題にぶつかることがある。「ドクター・フー」から良い例を挙げよう。

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 マジックのルールの1つに、アートで翼を見せたら、そのキャラクターは飛行を持つというものがある。これは、翼のある生き物が描かれていた初期の絵で、時には皮肉を込めて飛んでいるように描かれていたが、実際には飛行を持っていなかったことに由来する。プレイヤーはアートに基づいて飛行を持っているかのように扱い、それが問題を引き起こしたのだ。これを解決するために、私たちは「そのクリーチャーに翼があれば飛行を持つ」というルールを作った。飛行を持っていないなら、翼があってはならないのだ。

 ここで、《嘆きの天使》というカードが登場する。嘆きの天使は「ドクター・フー」に登場する人気のある悪役だ。彼らは天使の石像として現れる。翼がある。彼らは原作上、飛ぶことができない。デザイン・チームは念のためBBCに再確認までした。嘆きの天使抜きの『ドクター・フー』にはしたくなかったのだ。とても人気がある。翼がある。飛行はない。

 唯一の答えは、我々自身のルールを破ることだった。これは頻繁にやるつもりではないが、ユニバースビヨンド・セットを作るとなれば、普段はやらないことをやらなければならない状況が時折起こることを理解する必要がある。

完全プレビュー

 今日の記事を終える前に、2枚のカードをプレビューさせてもらおう。

 1枚目は、デッキ3つ(「悪の支配者」、「タイミーワイミー」、「パラドックスパワー」)に登場する土地で、上で述べた《嘆きの天使》を扱っている。

クリックして「不吉な墓地」を表示

 最後に、あなたはすべてのドクターを見たと思うかもしれないが、ここにもう1人いる。下をクリックすると、(タイミーワイミー・デッキからの)《ウォードクター》が登場する。

クリックして「ウォードクター」を表示

 今日の記事はこのプレビューで終わりである。「ユニバースビヨンド」の製品作りに何が費やされているのか、私の考察を楽しんでいただけたなら幸いである。いつもの通り、今日の記事や私が語ったカードや要素、『ドクター・フー』全体についての感想を楽しみにしている。メール、各ソーシャルメディア(TwitterTumblrInstagramTikTok)で(英語で)聞かせてくれたまえ。

 それではまた次回、「得られた教訓」シリーズの新しい記事でお会いしよう。

 その日まで、あなたがドクターとの楽しい旅を楽しめますように。

(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)

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