READING

開発秘話

Making Magic -マジック開発秘話-

『機械兵団の進軍』の学び その2

Mark Rosewater
authorpic_markrosewater.jpg

2023年4月3日

 

 先週、『機械兵団の進軍』の先行デザインおよび展望デザイン・チームを紹介し、このセットの作成についての話を始めた。今日は、デイブ・ハンフリーズ/Dave Humpherysがセットデザイン・チームの紹介をし、その後、私が、セットデザインに入る『機械兵団の進軍』のデザインの話をしていこう。クールなプレビュー・カードも2枚お見せする。

『機械』の設計者

 これからセットデザインに入る『機械兵団の進軍』について話す前に、セットデザイン・チームを紹介しよう。いつものとおり、セットデザインのリードにチームを紹介してもらう。『機械兵団の進軍』では、デイブ・ハンフリーズがリードを務めた。私がデイブを紹介し、デイブが他のメンバーを紹介することになる。

クリックしてチームを表示

『機械』製

 話を始めるに当たって、まずは展望デザイン・チームがセットデザインに引き渡したものを見てみよう。

  • 通常のクリーチャーから、ファイレクシア・マナを起動コストに支払ってファイレクシアンに変身する、変身する両面カード(TDFC)
  • ファイレクシアン・アーティファクト・クリーチャーになる両面カード・トークン(展望デザイン中は繭/cocoonと呼ばれていた)
  • ファイレクシアン・法務官のサイクルの新しい形
  • 次元を表す両面カード
  • 召集
  • 賛助(展望デザイン中は応援/boostと呼ばれていた)
  • 伝説の組み合わせ
  • ボーナスシート

 これから、これらのもの1つずつを取り上げ、その後でセットデザイン中にどう変化したかを解説していく。

通常のクリーチャーから、ファイレクシア・マナを起動コストに支払ってファイレクシアンに変身する、変身する両面カード(TDFC)

 先週言った通り、TDFCが採用されたのは多元宇宙のクールなクリーチャー・タイプたちがファイレクシアンになることを描きたかったからである。これは「次元という見方」というテーマを表し、『ファイレクシア:完全なる統一』では扱わなかったファイレクシアンらしさを表現できるのだ。セットデザインにはデザインすべき多くのカードがあったが、基本的な立ち位置からハズレはしなかった。

 ここでの大きな変更は2つあった。1つ目に、ファイレクシア・マナの起動コストはすべて色違いにした。(展望デザインでは、両方存在していた。)これは、第2面を多色枠の多色にするという決定に繋がった。これによってリミテッドにいくらかの深みをもたらし、構築ではさらなる分化を可能にした。我々は、第1面のカラー・パイを破らないで2色目らしいと感じさせるようにしたかったので、第2面を混成カードと同じようにデザインしら。(ファイレクシア・マナはライフで支払うことができるので、その色のマナを支払わないことができるからである。)2つ目に、有名なファイレクシアン・カードを、伝説のファイレクシアンTDFCの一部の第2面で言及するようにして、熱心なプレイヤー向けのイースター・エッグを仕込むことにした。

 今日の1枚目のプレビュー・カードは、ファイレクシアンTDFCである。

クリックして「呪文槍のケンラ」を表示

ファイレクシアン・アーティファクト・クリーチャーになる両面カード・トークン(展望デザイン中は繭/cocoonと呼ばれていた)

 これも、提出されてからあまり変わらなかったメカニズムである。厳密には両面トークンはルールで扱われていなかったので、セットデザイン・チームはルール・マネージャーと協力する必要があった。これは、ルール上問題だからではなく誰も扱うように言わなかっただけの理由でルールが何かを扱えないことがあるといういい例だと指摘しておこう。ルール・マネージャーは、どのルールが適用されるべきかを考え、そうできるようにルールを変更することになるが、それはルールが意図的に禁じていることをするよりもずっと簡単な話である。

 このトークンを生成するメカニズムの名前は、繭から培養に変更された。これは(ファイレクシアン関連、アーティファクト、変身など)様々なテーマが絡み合うので、セットデザインは正しくバランスをとるためにかなりの時間を費やした。最大の問題は、インスタント速度で返信できるようにするかどうかだった。ほとんどのファイレクシアンTDFCはソーサリー速度で変身するので、培養のトークンもそれに揃えるべきかどうかという議論があったのだ。最終的に、セットデザイン・チームはインスタント速度のほうがプレイ感が良い(ソーサリー速度で変身するとしたときの葛藤が少しばかり強すぎる)と考え、そうできるようにした。

ファイレクシアン・法務官のサイクルの新しい形

 一番最初からの計画として、ファイレクシアの物語を勧めていく中で法務官・カードは時間をかけて登場することになっていた。ヴォリンクレックスは『カルドハイム』で、ジン=ギタクシアスは『神河:輝ける世界』で、ウラブラスクは『ニューカペナの街角』で、シェオルドレッドは『団結のドミナリア』で、エリシュ・ノーンは『ファイレクシア:完全なる統一』で。法務官・カードはそこでだけ登場させるべきだという主張があったが、私を含む大勢はファイレクシアとの最終決戦に再登場させない訳にはいかないと反論した。それらのサイクルはどちらも大人気だったので、何か心躍るようなものを作らなければならないという重圧があった。

 展望デザイン・チームは時間をかけてブレインストーミングをして、何種類かのアイデアを生み出した。そのほとんどはTDFCだった。数週間後に展望デザイン提出文書を公開するとき、我々のお気に入りのアイデアをいくつか見ることになるだろう。セットデザイン・チームのお気に入りは、英雄譚に変身するものだった。新しくて壮大感があり、法務官にふさわしいものだったのだ。セットデザインは、英雄譚の最終章をプレインズウォーカーの奥義のように扱うことにした。使うのにかなりの時間と労力が必要なので、その効果を印象的なものにしたかったのだ。

 セットデザイン・チームはメカニズム的に2つ変更を加えた。1つ目が、英雄譚が完了したら、追放され、変身した状態で法務官として戻ってくる。展望デザイン中のもとのバージョンでは、英雄譚は完了後単純に消えていた。セットデザインは、これほど強烈なカードにおいては期待外れに感じられると考えたのだ。2つ目に、法務官は英雄譚に変身するのではなく、一旦追放されてから変身した状態で戦場に戻ってくる。前者の場合、カウンターが維持されるが、後者の場合はそうはならない。(これは英雄譚を2回誘発させたい場合に重要である。)また、そうすることで、法務官に戻ったターンに攻撃するというプレイデザイン上の懸念も防げる。

次元を表す両面カード

 さて、これが、セットデザイン中の最大の変更点である。先週語った通り、展望デザインは、次元というサブタイプを持つ土地に変身する両面土地を提出した。次元の第1面はタップしてマナを出す能力と、第1面になる起動型能力を持っていた。そして変身すると、効果を持ち、常在型か誘発型か起動型の2つ目の効果を持っていた。

 このバージョンにはいくつもの問題があった。土地のパワーは低くしなければならないので、心躍るカードを作るのは難しい。マナ消費先が多すぎると、デザイン空間に限界がある。構築での安全弁として土地破壊を使うのは危険である。そして、単純に、新奇感が足りなかった。これらを踏まえて、セットデザインは何か新しいものを試すことにした。

 彼らはまず、必要な条件をまとめることから始めた。

  • 各カードが別々の次元を表すこと。
  • 戦争の雰囲気を再現すること。
  • (新しいカード・タイプを導入できるほど)新奇なものであること。

 セットデザイン・チームはさらに独特なものを求めてブレインストーミングをした。彼らは、《激戦の戦域》や《ストリクスヘイヴンの競技場》のような、戦闘に言及したカードを考えた。

 ブレインストーミングの中でほとんどのデザイナーが一番気に入ったのは、コントローラーが攻撃して対戦相手が防御するパーマネントだった。このメカニズムの最初のバージョンでは、パーマネントを対戦相手に渡し、その後それにダメージを1点与えるごとにカウンター1個を得るとなっていた。カードにはそれぞれいくつか、たいてい3個の効果があり、合計が異なっていた。このバージョンの最大の問題は、入場効果がなかったので、攻撃できなければ何の意味も持たず、デッキに入れるほど魅力的ではなくなっていたのだ。

 次の大改革は、倒すことで得られる利益をそのカードの第2面にするというアイデアから生まれた。『機械兵団の進軍』にはすでにTDFCがあったので、追加するのは簡単だった。これによって、その次元からのものを表せるようになり、非常にフレイバーに富んだ利益が可能になった。カード1枚分のルール文とアートがあることで、魅力的な全体像が可能になったのだ。また、これによって第1面に入場効果を持たせることができ、デッキに入れる価値をもたらすことができるようになった。プレインズウォーカーのように、ダメージを受けた時に取り除かれるカウンターが置かれた状態で戦場に出るようにしたことで、さらに直感的になった。(これは自分の側にあって対戦相手が攻撃するというものではあったが展望デザイン版でもそうなっていた。)我々は、これなら新しいカード・タイプを導入するだけの価値があると感じたのだ。

 このメカニズムが出来上がると、セットデザイン・チームはクリエイティブ・チームと協力して各次元の戦闘を表すカードを最大化していった。第2面の多くは、その次元がファイレクシアンを撃退する助けとなるものを表していた。そのほとんどは、物語の重要な部分だった。(物語上で重要な次元については。)

 第2面をパーマネントでないものにできるようにするため、バトルは倒されたときに追放され、それから変身した状態で唱えるようになっている。デジタル上の懸念を考え、その呪文を唱えることは選択的である。また、プレイデザイン上の懸念を考えて、バトルはダメージで(あるいはカウンターを取り除くことで)しか変身しない。呪文や効果で破壊するだけでは利益は得られないのだ。私はこのバトルの仕上がりに非常に満足している。フレイバーを完璧に再現し、これから掘り下げたくなるような興味深いデザイン空間を拓いてくれたのだ。

召集

 召集は、展望デザイン中に、ファイレクシアの侵攻を止めるために各次元の様々な住人が協力するというフレイバーを再現するために選ばれた。召集は5色全てに存在するが、セットデザインはドラフト・アーキタイプとしてその中心を青と赤に置くことにした。青にはこれまで召集は存在せず(『基本セット2015』にはアーティファクトに召集を与えるカードが1枚存在している)、赤には2枚しかなかったので、掘り下げるべき新しいデザイン空間があったのだ。セットデザインは、伝統的にクリーチャーの割合が低いこの2色がこのメカニズムを活かせるように、トークン生成を少し増やす必要があった。

賛助(展望デザイン中は応援/boostと呼ばれていた)

 賛助は、様々な次元の住人が協力することを表すためのもう1つの方法として(アリ・ニーによって)作られたものである。最終版までこのメカニズムの本質はそのままだったが、メカニズム的に解決すべきいくつもの問題があった。まず最初に、このメカニズムのもとのバージョンではそのクリーチャーの持つすべての能力を賛助で対象にしたクリーチャーに与えることになっていた。つまり、能力を与えたりクローンなどを使ったりすると、賛助クリーチャーが持っていたもの以外の能力を与えることができたのだ。これを解決するため、そのカードに書かれている文章だけを与えるように変更された。

 これは、新しいメカニズムを作る時に常にある課題である。過去のカードと組み合わせて色々できるように自由度を高めるか、適正にバランスが取れるようにきちんと管理するか。通常、自由度を高める側に寄せることが多いが、プレイテストを重ねて問題があるとわかった場合、管理する側に戻すことになる。賛助の場合がそうだった。

伝説の組み合わせ

 様々なメカニズムを使って、クリーチャーがお互いに協力し合うというフレイバーが重要なテーマを表すことができている。これはさらにまた別の方法である。クリーチャーが協力していることを表すために、我々はここ数年何度も使ってきた方法を考えた。複数のキャラクターを1枚のカードに入れた伝説のクリーチャー・カードである。

 これらの組み合わせでは、それぞれが自然なつながりを持ったキャラクターたちだった。協力するのが当然だったのだ。通常は協力しないであろうキャラクターを組み合わせることで、この状況がどれほど絶望的かを示すことができるのではないか。展望デザインはいくつかの例を作ったが、組み合わせを決めたのはセットデザイン・チームに任せられた。

 デイブ率いるチームはクリエイティブ・チームと話し合い、物語上の必然を考えた。デザイン・チームは、プレイヤーの人気と組み合わせて成立するメカニズム的特徴に基づいてキャラクターのリストを作った。最終的に、彼らはレアで2色の組み合わせ10種すべてと、神話レアで楔3色のサイクルを作ることにした。この15枚はそれぞれ別々の次元を舞台にしている。今日の2枚目のプレビュー・カードは、その中の1枚である。

クリックして「デジェルとハゾレト」を表示

ボーナスシート

 展望デザイン・チームは、展望デザイン提出文書でボーナスシートの可能性を提案している。その次元の象徴的な、可能なら名前のあるカードに焦点を当てることを提案したのだ。この戦争に関わっているキャラクターの広さを見せるクールな方法だと考えたのである。このセット自身の伝説のクリーチャー・カードの枚数には限りがあり、組み合わせているとはいえ、まだセットに入り切らないものが多い。最終的なボーナスシートは、ファイレクシア戦争に関わった伝説のクリーチャーが戦うところを描いた新しいアートという我々が提案したものと近いものになった。

 伝説のクリーチャーがボーナスシートのテーマに相応しいのは、他のテーマの多くにはそぐわないからである。ボーナスシートはその舞台となっている次元のテーマにあったものにしたいので、明らかにその次元出身ではないキャラクターを扱うのは難しい。多言宇宙全体においてさえ、この対立を選ぶことで選択肢は狭まっているのだ。古いカードの多くは、もう生きていないであろうキャラクターである。物語上はっきりと死んだ者もいる。その結果、我々がもともと想定していたよりもテーマは広いものになったが、クールなボーナス・シートができたのだ。

油の効いた『機械』

 さて、メカニズムを一通り見てきたところで、ドラフト・アーキタイプを見て今日の記事を閉めることにしよう。

白青(騎士)

 このアーキタイプはクリーチャー・タイプ要素2つのうち1つである。騎士のクリーチャー・タイプを扱った、戦闘中心のデッキだ。

青黒(墓地)

 このデッキは全員を切削し、その後で墓地が肥えていることの利益を得る。

黒赤(生け贄)

 このコントロール・デッキは後に生け贄に捧げるアーティファクトなどのリソースを生み出す。

赤緑(バトル)

 このアーキタイプは新しいバトル・カードやそれと相互作用するカードを活用する。

緑白(+1/+1カウンター)

 +1/+1カウンターを使って自軍を強化する、広く並べるアーキタイプである。

白黒(ファイレクシアン)

 メカニズム的にファイレクシアンのクリーチャー・タイプを参照し、培養を大量に使うアーキタイプである。

青赤(召集)

 このアーキタイプには召集呪文が最も多く、クリーチャーを使って大量に唱える。

黒緑(培養)

 このアーキタイプでは大型クリーチャーをプレイし、大型の培養トークンを用いる。

赤白(賛助)

 このアーキタイプは新しい賛助メカニズムを最も多く使っており、自軍のクリーチャーが協力してファイレクシアンを倒せるようにしている。

緑青(変身)

 このアーキタイプではセット内のTDFC(ファイレクシアンTDFCも培養もバトルも)を活用し、変身することによってメカニズム的な利益を得る。

『機械』整備

 本日はここまで。『機械兵団の進軍』のセットデザインについての学びを楽しんでもらえたなら幸いである。いつもの通り、今日の記事や私が語ったメカニズム、『機械兵団の進軍』そのものについての感想を楽しみにしている。メール、各ソーシャルメディア(TwitterTumblrInstagramTikTok)で(英語で)聞かせてくれたまえ。

 それではまた次回、『機械兵団の進軍』のカード個別の話を始める日にお会いしよう。

 その日まで、あなたがファイレクシアンとうまく戦えますように。

(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)

  • この記事をシェアする

RANKING

NEWEST

CATEGORY

BACK NUMBER

サイト内検索