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開発秘話

Making Magic -マジック開発秘話-

こぼれ話:『Unfinity』

Mark Rosewater
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2022年10月24日

 

 可能な時に、私は、最新セットについての一問一答記事を書いている。『Unfinity』は各地のゲーム店やAmazonなどのオンラインストアで発売中なので、今回はこの最新のアン・セットについての質問にお答えしよう。

 私のツイートは次の通り。

現在、『Unfinity』の一問一答記事を書いている。この新セットに関する質問があれば、1問1ツイートで送ってくれたまえ。#WotCStaff

 いつもの通り、可能な限り多くの質問に答えようと思うが、以下のような理由によって答えられないこともある。

  • 文章量の都合で、答えられる質問の数には限界がある。
  • すでに同じ質問に答えている場合がある。最初に来た質問に答えるのが通例である。
  • 私が答えを知らない質問もあるし、正しく答える資格がないと思われる質問もある。
  • 将来のセットのプレビューになるなど、様々な理由で回答できない話題もある。

 それでは、質問に入るとしよう。

一番笑ったカードはどれですか?

 デザイン・チームとプレイテスターが一番多く笑っていたカードは、おそらく《Wicker Picker》だと思う。それをボツにする可能性があると考えさせたプレイテストは何度もあったが、いつも全員がくすくす笑っていたので、ボツにするのをやめたのだ。私は自分で、もしこれが笑いを呼ばないプレイテストがあったら、そのときはボツにすることを真剣に検討することにしていたが、そんな日は訪れなかった。

過去のアン・カードを再録してエターナル・フォーマットでプレイできるように非どんぐり化するとしたら、どのカードを選びますか?

 エターナルで使用可能にすることを頼まれたことが一番多いのは、『Unstable』の《Krark's Other Thumb》だ。

 『フォーゴトン・レルム探訪』がサイコロをアン世界の外に持ち出して以来、アン・セットのサイコロ操作をエターナル・フォーマットに持ち込んでほしいという声は多く、《Krark's Other Thumb》はその要望の中心にあるのだ。

Q:同一のカードのさまざまなバージョンや変種に関して、丁合はどうなっていますか?

 マジックのカードを印刷する場合、大量のカードを1枚の大きなシートで印刷する。通常のシートのサイズは、11枚×11枚である。(合計121枚になる。)シートの印刷後、カード1枚1枚に切り分けられる。通例、シートはスロットに分けられる。通常は、そのスロットはレアリティだが(ブースターには各レアリティごとにいくつかのスロットがある)、アトラクションなどの裏面が異なる特別な場合にはそれ専用のスロットが置かれる。ほとんどのシートには121種類のカードはなく、カードはシート上で繰り返されている。アトラクションを作った時にそれはわかっていたので、それを活かして点灯している数字が異なる変種を作ることができると気がついていた。その特定のカードがシート上で何回繰り返されるかによって、バージョンの数が制限される。コモンのアトラクションは10回、アンコモンは6回、レアは2回繰り返される。

 また、点灯している数字の組み合わせが何種類あるかも考える必要があった。1は必ず消灯、6は必ず点灯なので、点灯している数字が2つなら4種類(2-6、3-6、4-6、5-6)になる。点灯している数字が3つなら6種類(2-3-6、2-4-6、2-5-6、3-4-6、3-5-6、4-5-6)になる。点灯している数字が4つなら4種類(2-3-4-6、2-3-5-6、2-4-5-6、3-4-5-6)になる。つまり、コモンやアンコモンは点灯している数字の数に応じて4種類か6種類になるということである。レアはそのアトラクションで点灯している数に関わらず、2種類になる。

過去のアン・セットを見返して、もっとうまく実装し直すことができるアイデアを探しましたか?私は《Just Desserts》や《Pie-roclasm》が好きです。

 アン・セットに限らずあらゆるマジックのデザインにおいて、新カードの着想のために過去にうまくいったものを振り返るものだ。『Unfinity』のカードの多くは人気のアン・カードをもとにしている。(《Pie-roclasm》や《Just Desserts》以外の)例としては以下のようなものがある。

 過去のカードから着想は得ているものの、我々は過去のメカニズムを実装する新しい方法を今も探しており、それによって過去のカードとは違う種類のゲームプレイが生まれることはよくあることである。

『Unfinity』が発案された時点で、『Unstable』よりもマジック内の元ネタを増やすべきだという感想は届いていましたか?『Unstable』で、マジック内のジョークの比率は不充分だったと思ったのですが。

 増やしてほしいという感想は特に届いていなかった。常に、我々の第一の目標は楽しく没入できる世界を作ることである。『Unstable』同様、その世界が自己言及的でなくても、我々はマジックを元ネタにする場所を見つけることはできる。幸いにも、世界構築の初期に、我々はこのパークがマジックのIPを使うというアイデアを思いついており、そのためマジックを元ネタにする自由度は非常に高くなっていた。おそらく、アン・セットで作る必要がある量よりも少し多かっただろうが、非常に楽しいものであるのはそのとおりである。

ピンクのトークンを作ることだけが理由でどんぐりになっているカードが2枚あります。エターナルで使えるカードをできるだけ増やす必要があったなら、なぜこれらのトークンの色を変えなかったんですか?

 これは、決定が遅くなったことの副産物であった。その時点で、すでにTeddy Bear トークンの枠とアートは発注されていた。また、《Water Gun Balloon Game》をリリース・プロモにすることも決定しており、そこにはピンクのテディベアが描かれていたのだ。Teddy Bear トークンを使うカードをそれ以外の(できればすでにどんぐりなアトラクションである)カードと入れ替えようとしたが、いい選択肢はなかったのだ。《Gift Shop》に関しては、他の選択肢は、赤の風船に近すぎる1/1か、まったくフレイバー的にふさわしくないもの(飛行する2/2の猫、4/4のタコ・パフォーマー、飛行する1/2の《嵐雲のカラス》など)だった。《Push Your Luck》では、基本が2/2でなければならず、他の2/2のクリーチャー・トークンはゾンビ・従業員しかなく、これはまったく賞品としては筋が通っていなかった。

Q:《Octo Opus》で、通常のマジックのカードの大きさのものを折らなければなりませんか?トークンや宣伝カードでもいいですか?

 専用のContortionistトークンがあるが、宣伝カードやトークン・カードを含むマジックのカードならどれを使ってもよい。

カードをクリックで別の面を表示

(エターナルで)使用可能なカードとそうでないカードを作ったのはなぜですか?

 私は、プレイヤーがカードをプレイしたいところで使えるようにしたかっただけである。ルールで扱えないことをしていたり競技プレイではうまく働かないマジックの一面を扱っていたりしているためどんぐりにせざるを得ないカードがあることはわかっているが、アン・セットのカードでも他のセットで印刷されていたらプレイに使えるカードもあるので、プレイヤーがそれをエターナル・フォーマットで使えないようにする理由はなかった。マジックでは、他のセットでもいつもメカニズム的に奇妙なことはしている。他のセットでもコメディ的なカードは作っている。他のセットでも境界を広げている。ただアン・カードという性質だけの理由でアン・カードが使えないのは、私は、時代遅れの概念だと信じている。これが、エターナルで使用可能なカードがこのセットに含まれている理由である。

カードが「どんぐり」かどうかを判断する上で検討されたものはなんですか?

 私は4人からなるチームを組織した。ルール・マネージャーのジェス・ダンクス/Jess Dunks、プレイデザイン・チームからカルメン・ハンディ/Carmen Handy、このセットのエディターのマット・タバック/Matt Tabak、そして私だ。我々はそれぞれのカードについて、以下の質問をした。

  • ルールの枠内で作用するか? これがいいえなら、どんぐりである。
  • イベント上で問題を起こすか? これがはいなら、どんぐりである。
  • レガシーやヴィンテージで問題を起こすか? これがはいなら、カードを調整した。それでも充分安全だと言えなければ、どんぐりにした。
  • カードに収まる形でテンプレート化できるか?(どんぐりカードは通常のカードで許容されるよりもテンプレート化における自由度が高い。)これがいいえなら、どんぐりである。
  • エターナル・カードとしてふさわしいと感じるか? これは質問の中で最も主観的なものであるが、《Tug of War》のようにここまでの質問では問題なくても大多数がエターナル・カードとしてはふさわしくないと感じるカードが存在する。それらはどんぐりである。

最終的にエターナルで使用可能になったかどうかはさておき、エターナルで使用可能にするために特に尽力したカードはありますか?

 何かをエターナルにするかどうかというものは尽力することではない。私の仕事はどんぐりとエターナルの間に明確な線を引き、そして、妥当な入力を得て、各カードがそのどちら側に位置するかを決めることであった。可能なかぎり多くのカードをプレイヤーが許可を求めることなくプレイできるものにしたいという考えからエターナルでありうるものはエターナルにしたかったが、本質的にそうあるべきでないものをエターナルにしたいとは全く考えなかった。実際、エターナルであるべきかどうか疑問があったら、私はそれをどんぐりにする側に立っていた。

エターナル・フォーマットになったことで一番驚いたカードは何ですか?

 ルール上可能だとジェスが言ったときに一番驚いたのは、《Exchange of Words》だった。私はこのカードは間違いなくどんぐりだと思っていたが、エターナルにできるとわかったときには驚いた。

アトラクションが枚数不足でパウパーで使えないのは意図的ですか、結果的なものですか?

 この質問に答える前に説明しておこう。コモンのアトラクションは10枚あるが、エターナルで使用可能なのは8枚だけである。アトラクションを構築フォーマットで使用するためには、最低10枚からなるシングルトンのアトラクション・デッキを作らなければならない。パウパーではコモンのカードしか使えないので、アトラクション・デッキを作れるだけの適正なアトラクション・カードは存在しないのだ。

 意図的に選んだわけではない。我々は単にカードを作り、それをふさわしいレアリティにし、上述の指針に沿ってどんぐりかエターナルかを判断した。一般則として、我々はセットにおいてふさわしい判断をし、ルールに従ってパウパーで使われる。アトラクションは本当に楽しいので、パウパー・プレイヤーがアトラクションを使ってプレイできないのが残念なのは間違いない。

レガシーやヴィンテージと統率者戦のカード・プールを分けて『Unfinity』から隔離することについて議論しましたか?

 構築統率者戦での使用可否は統率者戦ルール委員会が決めるものであり、ウィザーズによるものではないので、我々が管理することではない。

アン・セットが成功すれば、今後のアン・セットではさらなる新しい元ネタを探すことになりますか、それともバブロヴィアやアストロトリウムへの再訪はありえますか?

 アン・セットはそれほど頻繁に作らないので、過去の世界を再訪するよりも新しい世界を探訪する傾向にあるが、『Unfinity』が示した通り、世界と世界のクロスオーバーは可能である。《Urza, Academy Headmaster》や《Spike, Tournament Grinder》はこのセットに顔を出している。

『Unfinity』では特定のライドや謝肉祭のゲームやショーなど、パークや謝肉祭のさまざまな一面を見せていましたが、カード化しようとしたけれどもテーマにうまく当てはまらなかった一面はありますか?

 謝肉祭、アミューズメント・パーク、サーカスという元ネタのほとんどはうまく再現できていたと思う。先行デザイン中に広範なリストを作り、製品版ではそのほとんどが表現できていた。あまり掘り下げなかった分野を挙げるなら、ある種の謝肉祭のゲームになるだろう。アトラクションでいくつかのゲームはあるが、フレイバーをプレイヤーが実際にプレイするミニゲームに合うものにしたかったので、射的やスマートボールなどの古典的なゲームは無視されることになった。カードの背景として採用できたもの(《Grabby Tabby》のミルクのボール投げなど)もあるが、リストにあって充分扱わなかった唯一の分野である。もう1つ元ネタの掘り下げが足りなかったのは、空想科学の分野である。最初は、基本的な空想科学の元ネタを扱う余裕がもっとあると思っていた。宇宙船とロボットとエイリアンはいるが、空想科学ネタの多くは置いてきたのだ。

デザインするのがもっとも楽しかったカードはどれですか?

 ほとんどどのカードもデザインして楽しかったが、問いに答えて1枚選ぼう。セットに残ったカードの中で最も初期にデザインされたカードは、《Animate Object》だったと思う。アニー・サーデリス/Annie Sardelisが先行デザイン中にこの効果を持つ最初のカード(動く除菌ローション)をデザインし、我々はすぐにそれが特別なものだとわかった。数かぎりないプレイテストでどんどんおかしなものを動かしていった。初期は、「ゲーム外の物品」とだけ描いてあったので、私は開発部員を動かした。その後で、「動かない」と書き足されたのだ。

Goblin Cruciverbalist》には、何か制限がありますか? 辞書で認められた単語でなければなりませんか?

 辞書に載っている単語でなければならない。また、FAQに書かれているとおり、各パーマネントの文字はそれぞれ1回しか使えない。A、B、Nから始まるパーマネントがそれぞれ1つずつあるなら、BANやNABはできるがBANANAはできない。

数字上、Unfinityと無限大はどちらが大きいですか?

 Unfinityだ。Unfinityは無限大にπを足したものである。

なぜエターナル・カードは黒枠のままなのに、どんぐりカードは銀枠でないんですか?

 どんぐりカードを銀枠にしてエターナル・カードを黒枠にするには、それぞれを別の印刷シートにしなければならない。そのためには現在とは異なるかたちで2種類の文るに角を組み合わせる必要がある。どんぐり/エターナルの判断は工程の終盤で行なわれたので、その変更が可能な時期はすでに過ぎていたのだ。

Clown Car》に道化師を全部載せることにメリットがないのはなぜですか?

 初期のバージョンではそういうものもあったが、まったくうまく働かなかったので現行のバージョンに変更した。これを唱えたときに道化師・トークンを生成することで、道化師が車から登り出てくることを表せていると考えたのだ。

Cover the Spot》で、『プレインチェイス』や『アーチエネミー』のカードは使えますか、それとも普通のマジックの大きさのカードだけですか?

 『Unfinity』FAQにあるとおり、ゲーム外にあるマジックのカードを使うという場合、通常のマジックのサイズのカードでなければならない。ご理解あれ。

Bar Entry》で、バーの高さはどうやって決めましたか? 人気の定番カードを注意深く測定しましたか? 人気のデッキリストに基づいてシミュレーションしたんですか? 開発部が嫌いなクリーチャーが引っかかるようにしたんですか?

 奈落にあった大量のクリーチャー・カードをすべて測定した。そして、そのクリーチャーのおよそ4分の1が引っかかるように高さを決めた。非常に科学的だ。

Shahrazad》はサブゲームのスーパーサイクルの一部だと考えていますか?

 考えている。

 つまり、次のアン・セットにはおそらく青のサブゲーム・カードが入ることになる。

『Unfinity』であなたのお気に入りの「イースター」はなんですか?

 《Bag Check》か《Prize Wall》だろう。どちらにもアートに大量のイースターエッグが仕込まれている。

Vorthos, Steward of Myth》のキャラクターを選ぶなら、その彫像や、ボーラスで言えば王神についてのカードなど、そのキャラクターについての説明や形容詞は考慮しますか?

注:この回答には古いものではあるが物語についてのネタバレが含まれる。(クリックで回答を表示)

なぜUnique Charmed Pantsステッカーでブラッシュワグが特に選ばれているんですか?

 「ブラッシュワグでない」という表記は《Embiggen》とこのステッカーの両方で使われている。この理由は、単に面白いというだけでなく、この2つの能力が多相を持つクリーチャーを対象にできなくするためである。両方をエターナルで使用可能にしたかったが、多相クリーチャーを対象にできたら強すぎたのだ。「ブラッシュワグでない」は我々の創造的な解決策なのである。

この製品にショックランドが入っている根拠はなんですか?

 長年にわたり、フルアート土地はアン・セット特有のものだった。フルアート土地が他のセットでも見られるようになったので、我々は土地スロットになにか新しいものを追加したいと考えた。そして、宇宙の2色土地というのは無視するにはあまりにもクールだったのだ。私はどの2色土地にできるかを尋ね、ショックランドという答えを得た。私は拒絶するつもりはなかった。

ドラフト・アーキタイプはどうなっていますか?

  • 白青:名前ステッカー関連
  • 青黒:サイコロ操作(特定のサイコロを操作する)、アトラクションと相性良し
  • 黒赤:高い出目関連(高い出目で有利を得る)、アトラクションと相性良し
  • 赤緑:大量のサイコロを振る(1ターン中に大量のサイコロを振ることで有利を得る)、アトラクションと相性良し
  • 緑白:能力ステッカー関連
  • 白黒:帽子関連
  • 青赤:アート・ステッカー関連
  • 黒緑:アトラクション関連(大量のアトラクションを観覧することで有利を得る)
  • 赤白:道化師・ロボット・アグロ
  • 緑青:パワー/タフネス・ステッカー関連

「お手紙は以上です」

 本日の回答はここまで。質問を送ってくれた諸君に感謝しよう。すべての質問には答えられなかったことを申し訳なく思っている。いつもの通り、今日の記事や各回答、『Unfinity』についての諸君の考えを聞かせてほしい。メール、各ソーシャルメディア(TwitterTumblrInstagramTikTok)で(英語で)聞かせてくれたまえ。

 それではまた次回、『兄弟戦争』のプレビューでお会いしよう。

 その日まで、あなたが壮大なるマイラの半宇宙アストロトリウムでお楽しみいただけますように。

(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)

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