2022年3月14日
今日の記事では、ちょっとしたゲームをしようと思う。マジックがした(してきた)こと2つを挙げるので、どちらの要素が先に登場したかを答えてもらいたい。各問ごとに、2つのものを挙げたあとで、答えがわかったらクリックすることで正解を見ることができるようになっている。そして、それが作られるに到った背景について少し語ることにしよう。
第1問
どちらが先か?
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キーワード「速攻」が(5年半)先に登場している。
どちらの能力も、『アルファ版』(《》と《》)から存在していたが、どちらもキーワードになってはいなかった。速攻が初登場したのは1999年4月、『基本セット第6版「クラシック」』の6版ルールの一部としてである。この時まで、開発部ではこの能力をフレイバー的に似た「Vampire: the Eternal Struggle」というトレーディング・カードゲームの能力から取って「迅速/celerity」と呼んでいた。警戒は2004年10月の『神河物語』までキーワード化していなかった。我々はこれらの効果のキーワード化について、実際にキーワード化する何年も前から話し合っていた。
第2問
どちらが先か?
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特殊タイプ「伝説の」が(9年)先に登場している。
伝説のという特殊タイプが初登場したのは、伝説という概念が導入された1994年6月の『レジェンド』である。興味深いことに、最初クリーチャーではクリーチャー・タイプ(レジェンド)であったが、特殊タイプの「伝説の」を持つ土地も登場していたのだ。基本土地が初登場したのは『アルファ版』だが、基本が特殊タイプになったのは2003年6月の『基本セット第8版』が初めてである。
第3問
- カードに印刷されているクリーチャー・タイプ「人間」
- カードに印刷されているクリーチャー・タイプ「ミュータント」
どちらが先か?
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クリーチャー・タイプ「ミュータント」が(1年)先に登場している。
ミュータント(突然変異)という単語は、1995年の『アイスエイジ』の《》のカード名に登場しているが、それがクリーチャー・タイプとして印刷されたのは2002年10月の『オンスロート』の《》が初めてである。クリエイティブ的には人間はマジックの最初期から存在していたが、クリーチャー・タイプとして登場したのは2003年の『ミラディン』で行なわれたクリーチャー・タイプの種族/職業モデルの導入時であった。これにより、クリーチャーは何であるのかと何をするのかを表すクリーチャー・タイプを持ち得るようになったのだ。それまでは、人間はその行ないを指すクリーチャー・タイプだけを持っていた。人間をクリーチャー・タイプとして導入することは当時賛否両論を呼んだが、今ではマジックの通常の一部となっている。開発部では、部族的に取り扱うことを初代『イニストラード』まで意図的に避けていた。
第4問
どちらが先か?
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キーワード「追放」が(2年)先に登場している。
キーワード「追放」は2009年7月の『基本セット2010』で導入された。概念自体は『アルファ版』(《》が一番有名だろう)から存在していたが、当時は「ゲームから取り除く」と呼ばれていた。この用語は、それらのカードと相互作用する効果があり、実際にはゲームから取り除かれるわけではないので混乱を招いた。そのため、『基本セット2010』のルール更新で新しい用語が作られたのだ。キーワード「格闘」が初めて導入されたのは2011年9月の『イニストラード』である。開発部はクリーチャー2体をお互いに戦わせるさまざまな方法を試してきたが、通例としてその方法は戦闘を操作するものだった。キーワード「格闘」はいつでも2体を戦わせることができ、(うまく使うためには大型クリーチャーが必要なので)緑にカラー・パイに則ったクリーチャー対策を提供する重要な道具になっている。
第5問
- 特別枠(通常のマジックのカード枠とかなり違うカードのレイアウト)
- ボーナス・シート(ブースターに1枚入るカードを別に印刷したシート)
どちらが先か?
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特別枠が(6年)先に登場している。
厳密に言えば、特別枠を初めて使ったセットは、1998年の『Unglued』の《》、《》、《》である。しかしそれをメカニズムの道具として本格的に用いた最初のセットとなると、2000年10月の『インベイジョン』で、2つの呪文が1枚のカードになっている(横向きの)分割カードだった。ボーナス・シートを始めて使ったセットは2006年10月の『時のらせん』である。「タイムシフト」シートとして、過去のカードを旧枠で再版した。各ブースターに1枚、タイムシフト・カードが含まれていた。これらの両要素は初期にリークされ、その真偽についてコミュニティでは大論争が巻き起こったと言われている。
第6問
- 忠誠度能力を4つ持つプレインズウォーカー
- 常在型能力を持つプレインズウォーカー
どちらが先か?
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忠誠度能力を4つ持つプレインズウォーカーが(1年)先に登場している。
4つ能力を持つ最初のプレインズウォーカーは2010年2月の『ワールドウェイク』の《》である。プレインズウォーカーが常在型能力を持つのは、2019年5月の『灯争大戦』で、本体セット内の36枚のプレインズウォーカーすべてが持っていた。興味深いことに、我々が最初にプレインズウォーカーをデザインした時点で、我々はこれらの進化を思いついていたが、時期が来たと思えるまで両方とも温存していた。常在型能力のほうが後になったのは、それによって広いデザイン空間が広がることがわかっていて、まず既存のデザイン空間を掘り下げることを優先したかったからであった。使えるようになったら、もとに戻ることは難しいとわかっていたのだ。
第7問
- クリーチャーでないアーティファクト・トークン
- クリーチャーでないエンチャント・トークン
どちらが先か?
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クリーチャーでないエンチャント・トークンが(3年)先に登場している。
最初のエンチャント・トークンが作られたのは、2007年5月の『未来予知』の《》で、自身のコピーを作った。これは「ミライシフト」カードなので、将来登場するかもしれないものをほのめかしていたのだ。クリーチャーでないアーティファクト・トークンを作れた最初のカードは、2010年10月の『ミラディンの傷跡』の《》である。あらゆるアーティファクトをコピーできたので、そのトークンはアーティファクト・クリーチャー・トークンであることも多かったが、クリーチャーでないアーティファクトをコピーすることもできた。アーティファクト・トークンを大きく扱った最初のセットは2016年4月の『イニストラードを覆う影』で、手がかり・アーティファクト・トークンが導入されている。
第8問
どちらが先か?
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色違いの起動型能力が(10か月)先に登場している。
最初の色違いの起動型能力は、1993年8月の『アルファ版』の《》で、黒の起動コストを持つ赤のカードである。多色カードが初めて登場したのは、1994年6月の『レジェンド』である。
第9問
どちらが先か?
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コレクター番号が(8か月)先に登場している。
コレクター番号が初めて登場したのは、1998年6月の『エクソダス』である。その初出はレアリティを示すエキスパンション・シンボルの色分けが始まったのと同時であった。(黒がコモン、銀がアンコモン、金がレア。神話レアはまだ存在していなかった。)フォイル仕様、あるいは当時の呼び名で言うとプレミアム版カードの初出は、1999年2月の『ウルザズ・レガシー』である。興味深いことに、これらの革新はどちらも同じマジック・ブランド・チームが他のトレーディング・カードゲームにある要素をマジックのカードに適用しようとした結果生まれたものである。
第10問
どちらが先か?
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プレインズウォーカーが(1年)先に登場している。
プレインズウォーカーの初出は2007年10月の『ローウィン』である。最初はその1つ前のセットである『未来予知』の「ミライシフト」カードとして3枚初出させる計画があったが、開発部はこの新カード・タイプのデザインにかける時間を確保するために差し戻したのだ。神話レアを始めて使ったセットは2008年10月の『アラーラの断片』である。
第11問
- 差し替えカード/チェックリスト・カード
- キーワード・カウンター・パンチアウト・カード
どちらが先か?
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差し替えカード/チェックリスト・カードが(5年半)先に登場している。
チェックリスト・カードの初出は2011年9月の初代『イニストラード』で、不透明スリーブを使っていない場合に両面カードがデッキ内のどこにあるのかを示すために使われていた。最初の計画では、両面カードを片面にして、それを唱えるときに両面版を持ってくるようにすることになっていたが、当時の印刷技術ではその2枚が必ず同じブースターに入るようにすることはできなかったので、他の方法を探す必要があったのだ。カウンター・パンチアウト・カードの初出は、2017年4月の『アモンケット』である。-1/-1カウンター、石材カウンター、不朽状態、督励状態を示すトークンが含まれていた。
第12問
- エンチャントを主なテーマにしたセット
- 墓地を主なテーマにしたセット
どちらが先か?
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墓地を主なテーマにしたセットが(1年)先に登場している。
墓地を主なテーマにした最初のセットは、1997年6月の『ウェザーライト』である。エンチャントを主なテーマにした最初のセットは1998年10月の『ウルザズ・サーガ』である。このブロックはストーリー的に「アーティファクト・サイクル」と呼ばれており、強力なアーティファクトが何枚も入っていたので、エンチャント・テーマは見落とされがちである。他のテーマに隠されていないエンチャント・テーマを持つ最初のセットは、2013年9月の『テーロス』である。
第13問
- ブースター・パックに入っている同名絵違いカード
- フルアート土地
どちらが先か?
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絵違いが(4年)先に登場している。
同名の絵違いカードが初登場したセットは、1994年3月の『アンティキティー』である。《》以外のすべての土地に絵違い版が存在していて、その存在率は異なるものもあった。これは多くのパックで出てくる(『アンティキティー』は85種類しかカードが存在しない)土地に多少の多様性を持たせるためのものであった。フルアート土地が初登場したセットは、1998年8月の『Unglued』である。何年も前にクリストファー・ラッシュ/Chris Rushが提案したものだが、プレイヤーが興味を示すとは他の誰も思わなかった。そのアイデアを気に入ったので、私の「奇妙な]セットに入れた。誰も何も言わなかった。この土地は大人気になり、やがて、2009年10月の初代『ゼンディカー』で本流のセットにも入ることになった。
第14問
- ルール文中でまだ印刷されていないカードに言及したカード
- マナ・コストを持たない呪文カード
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ルール文中でまだ印刷されていないカードに言及したカードが(10か月)先に登場している。
まだ印刷されていないカードの名前に言及している最初のカードは、2004年2月の『ダークスティール』の《》である。これはカルドラに関連する3枚組のアーティファクトで、3枚を戦場に揃えると効果が発生する。将来の製品について曖昧なヒントを出すことはあったが、将来のカードの実際の名前を出したのはこれが初めてである。マナ・コストを持たない最初の呪文は、2005年6月の『神河救済』の《》である。このカードは、唱えることなく使えるようにする能力である連繋(秘儀)を持っていた。
第15問
どちらが先か?
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4色カードが(5年半)先に登場している。
2006年2月の『ギルドパクト』にあるネフィリム・サイクルがマジック史上初の4色カードである。ギルドというテーマが気に入らないプレイヤーのためのサイクルであった。4色カードはつねづね求められていたものであり、『ギルドパクト』は多色セットだった。色指標が導入されたのは2011年9月の初代『イニストラード』で、両面カードの第2面を特性定義能力を使わずに定義するためのものであった。
第16問
- マナ・コストに色を含むアーティファクト
- マナ・コストに色を含まないエンチャント
どちらが先か?
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マナ・コストに色を含むアーティファクトが(3年)先に登場している。
マナ・コストに色を含むアーティファクトの初出は、2007年5月の『未来予知』のミライシフト・カード《》である。色マナを持たないエンチャントの初出は、2010年4月の『エルドラージ覚醒』の《》である。
第17問
どちらが先か?
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キーワード「防衛」が(1年半)先に登場している。
キーワード「防衛」の初出は、2005年2月の『神河謀叛』である。キーワード「瞬速」の初出は、2006年10月の『時のらせん』である。どちらも、キーワード化する何年も前から存在していた能力である。防衛の能力自体は『アルファ版』に存在しており、壁のクリーチャー・タイプに内包されていた。瞬速の能力自体は『ミラージュ』のクリーチャー用オーラのサイクルが持っていた。
第18問
- マナ・コスト内の無色マナ・シンボル
- マナ・コスト内の氷雪マナ・シンボル
どちらが先か?
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マナ・コスト内の無色マナ・シンボルが(3年半)先に登場している。
無色マナ・シンボルの初出は、マナ・コストでもルール文中でも同じく2016年1月の『ゲートウォッチの誓い』である。無色マナという概念は『アルファ版』から存在したが、不特定マナと同じシンボルを用いていた。『ゲートウォッチの誓い』で無色マナをマナ・コストに使い始めることになり、専用のシンボルを作る必要があった。その後、常盤木になったのだ。氷雪マナをマナ・コストに使い始めたのは2019年6月の、最初の『モダンホライゾン』である。氷雪マナの初出は2006年6月の『コールドスナップ』だが、当時はマナ・コストには使われず、起動コストに含まれるだけだった。
第19問
どちらが先か?
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「戦場に出た」という表記が(2年)先に登場している。
「戦場に出た」という表記は、2009年6月の『基本セット2010』ルール変更により導入された。1997年6月の『ポータル』に由来する、それまでの「場に出た」を置き換えるものであった。「死亡した」が導入されたのは、2011年6月の『基本セット2012』からである。
第20問
どちらが先か?
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10以上のマナ総量が(6か月)先に登場している。
マナ総量が10以上である最初のカードは、1993年12月の『アラビアン・ナイト』の《》である。当時、10を不特定マナ・シンボル内に収めることができなかったので、カード上では{10}を1個ではなく{5}を2個書く形で表記されている。マナ・コスト内の{X}{X}の初出は、1994年6月の『レジェンド』の《》と《》の2枚である。
第一印象
本日はここまで。このゲームを楽しんでもらえたなら幸いである。いつもの通り、今日の記事についての諸君の感想を聞かせてほしい。a href="mailto:making.magic@Hotmail.com">メール、各ソーシャルメディア(Twitter、Tumblr、Instagram、TikTok)で(英語で)聞かせてくれたまえ。
それではまた次回、『Unstable』の数々のジョークについて解説する日にお会いしよう。
その日まで、我々が長年の間にマジックに加えてきたものをあなたが楽しめますように。
(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)