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開発秘話

Making Magic -マジック開発秘話-

こぼれ話:『テーロス還魂記』

Mark Rosewater
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2020年1月27日

 

 各セットごとに、私は1回か2回、セットに関する諸君からの質問に答える一問一答記事を書くことにしている。今回は、『テーロス還魂記』について語ろう。

 私のツイートは次の通り。

 いつもの通り、可能な限り多くの質問に答えようと思うが、以下のような理由によって答えられないこともある。

  • 文章量の都合で、答えられる質問の数には限界がある。
  • すでに同じ質問に答えている場合がある。最初に来た質問に答えるのが通例である。
  • 私が答えを知らない質問もあるし、正しく答える資格がないと思われる質問もある。
  • 将来のセットのプレビューになるなど、さまざまな理由で回答できない話題もある。

 それでは伝統に倣い、もっとも多かった質問から始めることにしよう。

Q: このセットの物語上の状況は新しい標準になりますか?

 この質問はかなり多かったので、物語の長期計画について直接の知識を持つフランチャイズ・チームから誰か呼ぶことにした。よく知らない諸君のために言っておくと、2018年後半に組織再編を行ない、その中で物語の表現やその提供方法について指揮するフランチャイズ・チームが結成されたのだ。フランチャイズ・クリエイティブ・ディレクターのジェレミー・ジャーヴィス/Jeremy Jarvisに、ぜひ答えてもらうことにしよう。

「みなさんが目にするのは、マジックのフランチャイズ・チームが試験して学んだことです。『ドミナリア』の小説から、ファンのみなさんに素晴らしい物語を伝えるための予算と情熱を増加させました。有能なイラストレーターを集めるように有能なライターを集めたらどうでしょうか。マジックの小説を広めるために、どんな新しい発表方法が使えるでしょうか。

 『ドミナリア』から、ライターを増やしていることや、コミックや小説のための新しいライセンス・パートナーシップの導入、公開される物語の数や長さの変化にお気づきのことと思います。私たちはユーザーのみなさん向けの雰囲気や特定の物語表現を最もよく響かせる方法(例えば、短編、コミック、長編)をよく理解したいと考えているのです。そのため、私達は試験して学ぶ機会を作らなければならないのです。

 「Wildered Quest」(『エルドレインの王権』小説)は、私たちの初の新世代電子小説としてPenguin Random Houseから発売されました。予想以上の成功を収め、評判も上々でした。「Forsaken」(『灯争大戦』小説)の不評を受けて、表現の問題だけでなく小説全体について監修戦略を改善する必要があることが明白になりました。そこで、新しい監修工程を組み上げるまで『テーロス還魂記』の小説を延期するという厳しい判断をしたのです。残念なことに、これによって意図していた発表期間を逃すことになりました。私たちは物語の概略を伝えるためにプレビュー計画やマーケティングのサポートを最大限に使い、みなさんがひどく困ることはないようにしましたが、みなさんが失望していることはわかっていますし、私たちも残念です。これが順調な未来のための一時的なコストになるよう、可能な限りのことをしています。

 『イコリア:巨獣の棲処』からは再び電子小説戦略に戻りますし、『テーロス還魂記』の小説も適切な時期・方法で公開していくことになるでしょう。アンソロジーの一部かもしれませんし、Audible(編訳注:オーディオノベルのプラットフォーム)かもしれませんし、グラフィックノベルかもしれません。

 マジックのファンのみなさんに、TCG同様に健全で楽しめる出版プログラムをお届けする、マジックのフランチャイズ・チームはまさにそのために働いています。私たちが新しいことに挑んでいるのを見ても失望しないでください。何かが上手く行っていないと思ったら、ぜひ私たちに教えてください。それよりももっと大事なお願いとして、みなさんが何が大好きなのかをぜひ私たちに伝えてください。それこそが私たちがお届けしたいものなのです。」

――ジェレミー・ジャーヴィス

Q: ブロック1つをセット1つに濃縮するにあたって、どのメカニズムを再録しどのメカニズムを再録しないか、どうやって決めたんですか?

 再訪の際には、我々はそのセットでその世界に戻ったのだと感じられるようにしたいと考えている。つまり、メカニズム的に、前回その世界にいたときに起こったことと何らかの繋がりを持たせたいのだ。通常、何を引き継ぐかは、展望デザインの初期(場合によっては先行デザイン中)に、これまで訪問時に現れたすべてのメカニズムとテーマを書き出す。前回の訪問がブロックだったセットでは、特に『テーロス』のような3セット・ブロックにおいては、これはかなりの物量になる。

 その後、それらそれぞれについて検討し、3つの分類に分ける。1つ目が、ユーザーの大好きなもので、再訪時に存在が期待されているもの。2つ目が、ユーザーの嫌いなもので、再登場を見て嫌な気分になるであろうもの。そして3つ目が、ユーザーの好きなもので見かけても気にはしないが、存在しなくても大問題にはならないものだ。

 1つ目の箱がいっぱいになったなら、大抵はそれらが採用されることになり、場合によっては削減しなければならないものがある場合すらある。1つ目の箱が不充分なら、3つ目の箱を見て、補助として有用なものを探すことになる。1つ目と3つ目の箱でも不充分なら、「箱の外」のことを考えなければならないことになる。とはいえ、通常、プレイヤーが再訪したいと思うような世界であれば、使い物になるメカニズム要素は充分にあるものである。

 難しい部分は、セットには何か新しいものを入れたい(過去のテーマを新しい方法で掘り下げることが多いが、今回の死の国のようにその次元の完全に新しい側面を扱うこともある)ものなので、過去のものを再登場させる枠は限られているというところである。つまり、何を再登場させるかについて厳しい選択が必要になるということになる。そして、その世界のユーザーが大好きな部分は人それぞれ違っているということも覚えておかなければならない。その世界の切り捨てた部分は、誰かにとってはお気に入りの部分なのだ。鍵となるのは、大局的に考え、可能な限り多くのユーザーを満足させるように選択を最大化するように心がけることである。

 テーロスに関して言えば、我々は最も重要な要素として、神々、信心、「エンチャント関連」(したがってクリーチャー・エンチャントも必要になった)の3つを選んだ。これらが存在しなければテーロスはテーロスたりえないと我々は感じたのだ。「エンチャント関連」のキーワードが星座でなければならないとの確信には踏み込まなかったが、さまざまなものを試した結果、最初に採用したものは正しかったのだという結論に到った。(ただし今回はすべての星座カードがエンチャントというわけではないというひねりが加わった。)

 これは、再訪をデザインするときに最も難しいことの1つである。そこになければならないものを知ることと、単にそこに置きたいものを認識することとの対立は、何時間もの作業と議論を呼び起こすのだ。

Q: エルズペスが死んだままになっていた時期はありましたか?それとも、ヘリオッドが裏切った瞬間から彼女の復活は計画されていましたか?

 エルズペスがいずれ脱出することは、初代『テーロス』ブロックの物語中で彼女を殺すという決定に織り込み済みだった。いかにもギリシャ神話らしい物語にしたかったので、ヘリオッドがエルズペスを殺すのは既定路線だったが、死の国が存在しているので殺したからと言ってエルズペスが二度と登場できなくなるということにはならないのだ。単に、エルズペスはしばらく物語から退場するだけである。エルズペスを死んだままにするということを考えた時期はなかったということになる。テーロスの短編小説では、死の国がどのように作用するのか、そしてエルズペスはテーロスで死んだということの意味をかなりの文章を割いて説明している。(ゼナゴスはニクスで死んでおり、そのため死の国には行っていないのだ。)

Q: どの神を再登場させるかの決定はどのように行なわれましたか?

 上述の通り、テーロスを再訪するのであれば神々は必要だとわかっていた。また、15柱の神々というのが多すぎるのもわかっていた。『テーロス』ブロックの最後となる『ニクスへの旅』のデザイン中にかなりの議論が行なわれ、扱いきれない量を扱ったことと、もしブロック全体をもう一度やるとしたら15柱よりも少なくするだろうということになった。3セットに入れるのでも問題があったのに、1セットに入れるならもっと問題になるのは当然だ。では、いったい何柱なら入れられるだろうか。

 物語上、ヘリオッドとエレボスは必要で、死の国が物語上重要なのでエイスリオスも言及することになるのはわかっていた。最終的に、単色の「大神」5柱のサイクルだけを採用することにしたのだ。単色カードはデッキに入れやすく、そして単色の神々は世界観的にも最大の神々だった。エイスリオスをブースターに入れずにセットに入れる方法として、ボックス購入特典にすることに決めた。

 クローティスは、前回の物語で赤緑の神々がいなかったことが大問題になったことから登場することになった。これは、ゼナゴスが神性を得たときに座る枠である。プレイヤーたちがそこに注目していたので、我々はここに望まれたカードを作る可能性があると認識したのだ。クローティスが死の国に囚われているという発想は、テーマ的にこのセットにふさわしく、そして前回のブロックでの不在の説明にもなっていた。これで神々は7柱。これで充分だと感じられることだろう。

Q: なぜテーロスは2セットでなく1セットになったんですか?

 その理由は複数ある。

 1つ目に、3セット連続で単一の次元にとどまってから、まだ1年も経っていない。これは、ブロックから離れて基本的に1年単位で過去のブロック構造と非常に似たものにする、という間違った情報を送ることになる。つまり、次の年のセットの組み合わせは、新しいシステムを強く示しものにするということであり、そのための最善の方法は3セットそれぞれで異なる3つの世界を扱うことだと考えたのだ。これまでしたことがないその方法以上に、新しいシステムについてうまく伝える方法はない。

 2つ目に、再訪するときに扱うことができるメカニズム的空間を測らなければならない。現在、セットはそれぞれ独立でドラフトされるので、各セットがそれだけで成立していなければならないのだ。同じ世界にとどまっていれば重複することもできるが、各セットにそれぞれの独自性が必要であり、テーロスへの再訪に際して2つのうまい選択があるとは思わなかったのだ。気に入ったメカニズムを分配することはできた(そして神々の数を増やすこともできた)が、2つの素晴らしいセットを作れると思えるような方法でその2つを分ける、わかりやすいメカニズム的な焦点はなかったのだ。我々は地上のセットと死の国のセットというアイデアを軽く検討はしたが、その2つを混ぜたもののほうがいいということに気づいたのだった。

Q: 他のタイタン(古の巨人)サイクルのカードはいつ登場しますか?

 まず、この質問で前提となっているいくつかのことについて触れよう。確かに、死の国に囚われているタイタンは2体だけではない。しかし、その数を正確に定めてはいないのだ。タイタンは展望デザイン中、初代『テーロス』ブロックで扱われなかったギリシャ神話要素を扱おうと考えたイーサン・フライシャー/Ethan Fleischerによって追加された。(ただし脱出はセットデザイン中に作られたものなので、タイタンも今とは違っていた。)『基本セット2011』のタイタン・サイクルの人気から、タイタンはマジック内に存在感があり、イーサンはそれらのタイタンのテーロス版を作るのは楽しいだろうと考えたのだ。

 最初は、単色クリーチャーのサイクルとしてデザインされた。物語上重要な役割を果たしているわけではなく、またセットに入れるべきものが他にも多かったので、タイタンは完全なサイクルではなく2枚まで減らされることになったのだ。『基本セット2011』のタイタンとの差別化のため、これらのタイタンは2色になった。色は、主にクールなデザインに基づいて決めたが、条件として重複がないようにした。

 タイタンをサイクルにするというのは意図ではなかったが、多色性が、マジックではサイクルで作りたがるものだという知識と結びついたのである。今後このサイクルを作るかどうかについては、このセットでのこの2体の評価がどうなるかにかかっている。プレイヤーが気に入って、もっと作って欲しいという声が多ければ、それを入れる場所を探すことになるだろう。常々言っている通り、マジックは飢えた怪物である。マジックには新しいデザインの絶え間ない流入が必要なのだ。ユーザーが欲しがるカードは、大抵の場合、いつかその居場所を見つけることになる。

Q: 白は弱すぎて、緑は強すぎます。なぜこうなったんですか?

 マジックにおける自明の理の1つが、万物は常に変わり続ける、ということである。ある日良かったことが翌日は悪いことになったり、その逆だったりする。これはデッキ戦略、テーマ、メカニズム、カード、そして色でさえ例外ではない。例えば、『エルドレインの王権』のプレイデザイン時期に、プロツアー『ラヴニカのギルド』が行なわれた。トップ8では8つ中6つのデッキが白メインで、緑のカードは1枚もプレイされていなかった。同時期、マジック:ザ・ギャザリング アリーナでは、白単色や白メインのデッキが高レベルの(BO1の)環境を支配しており、緑はそれほど勢力を見せていなかった。開発部は「振り子を揺らす」(つまりマジックを変化させ続ける)のが好きなので、緑を押し、白を少し引いたのだ。

 確かに、完全に後知恵で言えば、緑を少しばかり押しすぎ、白を少しばかり引きすぎたと言えるだろう。『テーロス還魂記』でも再び振り子を揺らしているが、現在のメタゲームを強化するカードに注目するほうがマジックを新しい場所へと動かすものを見るよりもずっと簡単なのである。

Q: 素晴らしい白単色カードは登場しますか、それとも白は意図的に弱くデザインされているんですか?

 一言で言えば、登場するだろう。むしろ、『テーロス還魂記』には素晴らしい白単色のカードが眠っているかもしれないと主張しておこう。(それらがどのように飛び出すか、観察しなければならない。)とはいえ、振り子は揺れている最中であるが、開発部は白には注意すべき点があることは認識している。まず、白には、統率者戦というフォーマットには白の長所の一部を弱め、白の最大の弱点を強調するという性質があるという問題がある。結果として、白は他の色よりもプレイされる頻度が低くなる。我々は、統率者戦で白を強くするための助けになるようなことが白でできないか、意識して掘り下げているのだ。

 2つ目に、白は最近のリミテッド環境の多くで弱い方に位置し続けているということがある。プレイデザインはどの選択によってそれが起こっているのかの解明に取り組んでいる。3つ目に、白は新フォーマットのパイオニアで存在感を示していない。なぜそうなっているのか、パイオニアについても調査を進めている。興味深いことに、初期調査の結果は、それぞれのフォーマットでの問題は同じ原因から生じたものではないと示している。つまり、フォーマットごとに検討して解決策を見つけなければならないということになるのだ。

 しかし、開発部は、何が起こっているかの解明と、それに合わせた白の調整に全力を尽くしている。いつもの通り、我々は遠い将来のことを手掛けているので、我々が今していることを見るのにはいくらかの時間がかかることになる。(ただし、我々がすでに手掛けたことのいくつかはこの2020年中にも目にすることになるだろう。)

Q: なぜ『エルドレインの王権』で緑が強すぎると知れ渡っているのに、15枚の神話レアのうち6枚が緑なんですか?

 我々が遠い未来のことを手掛けているということを思い出してもらいたい。『テーロス還魂記』に何が入るかを決めるのは、『エルドレインの王権』が発売されるよりも前なのだ。つまり、世の中の『エルドレインの王権』の情報をもとにして『テーロス還魂記』を調整することは不可能だったのである。

時間切れ

 今日の質疑応答はここまでだが、来週もさらなる質問にお答えしよう。いつもの通り、今日の記事や私の回答、あるいは『テーロス還魂記』について、諸君からの感想を楽しみにしている。メール、各ソーシャルメディア(TwitterTumblrInstagram)で(英語で)聞かせてくれたまえ。

 それではまた次回、さらなる回答をする日にお会いしよう。

 その日まで、『テーロス還魂記』が話題にするのと同じように楽しくプレイできますように。

(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)

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