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『ミラディン包囲戦』メカニズムレビュー:毒

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By 高橋 優太


 ファイレクシアは蘇る。

 《銀のゴーレム、カーン》は玉座と融合し、徐々に正気を奪われていく。ミラディンの世界は徐々にファイレクシアという病に「感染」していく。「ミラディン包囲戦」は、そんなミラディン軍対ファイレクシア軍の戦いを表したエキスパンションだ。

 ウルザブロックの頃にトーナメントマジックを始めた身としては、やはり「ファイレクシア」という言葉には心惹かれるものがある。《ファイレクシアの巨像》《ファイレクシアの処理装置》《ファイレクシアの疫病王》、どれも当時のスタンダードでは良く見かけたカードで、自分も《修繕》デッキで使用していた。イラストがかっこいい、という理由だけで集めた《ファイレクシアの抹殺者》のFoilは、今もファイルの中にコレクションしてある。

 日本には「悪の美学」という言葉がある。自分も正義の熱血主人公より、少し影のあるダークヒーロー、もしくは悪役の方に魅力を感じるタイプだ。ミラディンかファイレクシアかと聞かれたら、間違いなくファイレクシアを選択するだろう。

 今回は、マジックの世界で「悪」であるファイレクシア、そのテーマの一つである「毒」「感染」を紹介しよう。

 ミラディン包囲戦で、「感染」に関するカードは以下の通り。

白:
ノーンの僧侶》《枝モズ

青:
堕落した良心

黒:
解剖妖魔》《肉食いインプ》《ファイレクシア化》《ファイレクシアの十字軍》《ファイレクシアの槽母》《災いの召使い》《敗血のネズミ

緑:
荒廃後家蜘蛛》《ファイレクシアのハイドラ》《腐敗狼》《ヴィリジアンの堕落者

アーティファクト:
荒廃鋼の巨像》《核をうろつくもの》《ファイレクシアの消化者》《ファイレクシアの巨大戦車》《疫病のマイア

土地:
墨蛾の生息地

 全20枚。大型エキスパンションのミラディンの傷跡ですら感染カードが18枚だったことを考えると、小型エキスパンションでこの枚数は多い。

 また《悪性の傷》《ピスタスの一撃》《迫撃鞘》、増殖など、感染を後押しするカードも多い。

 傷跡でのカード割合はファイレクシア:ミラディン=2:8だったが、包囲戦では5:5と比率も上がってきており、ミラディン世界が徐々にファイレクシアに侵食される世界観をよく表している。いくつかカードを挙げていこう。


堕落した良心

 《精神の制御》に、そのまま感染がついたカード。リミテッドでは当然強く、プレリリースでこれ1枚で負けたミラディンプレイヤーも多いだろう。
 スタンダードでも、各種タイタンや《悪斬の天使》《ワームとぐろエンジン》につければ2回の攻撃でKOできる。


ファイレクシアの十字軍

 これまでの感染クリーチャーはどれも貧弱貧弱ゥだったが、こいつは一味違う。
 感染クリーチャーのタフネスの低さを先制攻撃によってカバーしており、実質4/4以上のクリーチャーでしか止まらず、プロテクションのおかげで除去体制もある。黒のクリーチャーでプロテクション(白)を持つものは数多く居たが、黒単色でプロテクション(赤)を持つのはこれが初。

 感染に限らず、赤と白の速攻デッキに対するサイドカードとして頻繁に見かけるようになるだろう。


ファイレクシアの槽母

 ダメージの代わりに毒カウンターを受けるようになった、ファイレクシア版《Juzam Djinn》。

 本家《Juzam Djinn》が4回攻撃を通す必要があるのに対しこちらは3回で済み、再生クリーチャーや「ダークスティール」に阻まれることもない。
 そして傷跡のリミテッドでもそうだったが、感染クリーチャーはブロックされても-1/-1カウンターを残すので、何度も攻撃するためにパワーの高さよりもタフネスの高さが重要だった。
 《ファイレクシアの槽母》はどちらも兼ね備えており、1体でも相手を毒殺するスペックがある。
 個人的には《法務官の手》よりも出番が多いクリーチャーに思える。


ファイレクシアのハイドラ

 《萎縮鱗のワーム》の感染バージョン。ダメージ手段の少ないコントロール相手ならデメリットは気にならないので、特に青白系には強いだろう。
 ミラディンの傷跡ブロック構築では青白コントロールが一大勢力だったが、今回の包囲戦で大量にファイレクシアのカードが追加されたので、対抗馬として感染が出てくるかもしれない。

 このカードに限らず、今回はパワーの大きい感染クリーチャーが複数いる。パワーが5以上ということはつまり、たった2回の攻撃でゲームに勝てるということ。速攻を与えるカードと組み合わせるとなお良い。


荒廃鋼の巨像

 《ダークスティールの巨像》が感染した!

 スタンダードなら《新たな造形》から場に出すもよし。
 レガシーなら《実物提示教育》《騙し討ち》で一撃!
 ヴィンテージなら《修繕》経由で持ってきて一撃!


墨蛾の生息地

 基本的に土地はマナを出すだけのものであり、多く引きすぎると役に立たなくなるものが、能力があると話は別。
 クリーチャー化できる土地は、デッキの呪文枚数を減らすことなく、マナとクリーチャー両方にカウントすることが出来る。マナフラッドを少し緩和することも出来るし、マナだけあって何も出来ないターンもなくなる。

 《墨蛾の生息地》は《疫病のとげ刺し》と同じ性能を持ちながら起動は1マナと軽く、これからの感染デッキの必須パーツになるだろう。


ミラディン包囲戦はファイレクシアの侵攻をテーマにしたエキスパンションであり、感染カードも多い。これだけ数が出揃えば、スタンダードでも毒殺が可能なのでは?そう考え、組んだデッキがこちら。

白黒装備感染・改[MO] [ARENA]
8 《
5 《平地
4 《湿地の干潟
4 《広漠なる変幻地
4 《墨蛾の生息地

-土地(25)-

4 《戦隊の鷹
4 《石鍛冶の神秘家
4 《ファイレクシアの十字軍
4 《ファイレクシアの槽母
2 《皮裂き
4 《荒廃のドラゴン、スキジリクス

-クリーチャー(22)-
4 《コジレックの審問
4 《喉首狙い
1 《骨溜め
2 《肉体と精神の剣
1 《饗宴と飢餓の剣
1 《生体融合外骨格

-呪文(13)-

 ミラディンの傷跡発売直後、組んだ方も多いだろう「感染」デッキ。

 自分も感染クリーチャーを《巨大化》《地うねり》で強化したり、装備品や《突撃のストロボ》を使ったりと様々なアプローチを試みたが、結局のところ感染デッキはTier1どころかTier2にもなれなかった。《胆液爪のマイア》や《疫病のとげ刺し》は打点が低く、スタンダードの王者ヴァラクートの《稲妻》《紅蓮地獄》で簡単に対処されてしまう脆さもあった。

 やはり単体のカードの弱さが問題で、ブン回り以外は脆すぎるデッキ、という印象が拭えなかった。今のスタンダードでは、残念だが2マナ1/1クリーチャーは使用に耐えない。

 しかし包囲戦の感染は一味違う。感染クリーチャーの質が、今までとは段違いに・・・良い!

 《ファイレクシアの槽母》《荒廃のドラゴン、スキジリクス》の2体はパワーが大きく、除去耐性もある。昔の基準で言えば、テキストに「感染」と書いていなくても納得してしまうほどのクリーチャーだ。プレリリースでも、多くのプレイヤーを毒殺してきたことだろう。
 これは自分の経験則なのだが、リミテッドで初手級のカードは構築でもチャンスがあるように思う。そしてこの2つは、どちらも「リミテッド初手級」だ。

 そして《ファイレクシアの十字軍》は3マナとは思えないほどの高スペックのクリーチャーだ。が、装備品によってさらに強化される。例えば《肉体と精神の剣》を装備すれば、4/4感染・先制攻撃・プロテクション(白)(青)(赤)(緑)・攻撃が通ったら狼トークンというすさまじいクリーチャーが出来上がり、あっという間に相手は毒死するだろう。

 最近の装備品はどれも一級品であり、パワーを上げる装備品というシステム自体が感染クリーチャーと相性が良い。
 その装備品を上手く使うためにも、今回は《石鍛冶の神秘家》のために白を足している。《肉体と精神の剣》は《精神を刻む者、ジェイス》のバウンスを防ぎ、《饗宴と飢餓の剣》は黒の除去呪文から感染クリーチャーを守れる。

 2マナ1/1の感染クリーチャーの質が悪いのなら、逆の発想で、質の良いクリーチャーを感染クリーチャーにしてしまえばよい。《生体融合外骨格》がそうで、クリーチャーの頭数を揃えるためにも《戦隊の鷹》を採用。感染にこだわらなくても、鷹+装備品という勝ち筋もある。
 鷹を消耗したら、今度は《骨溜め》の出番だ。除去呪文を打ちつくした相手に、《ルアゴイフ》の力を持った感染が襲い掛かる。

 そしてミラディン包囲戦で、感染デッキを最も強化したのは《墨蛾の生息地》だ。

 スタンダードのデッキを見ればわかるように、《天界の列柱》《忍び寄るタール坑》《怒り狂う山峡》など2色ミシュラランドはほとんどのデッキに投入されている。前述のように、マナを出す「土地」でありながら「クリーチャー」であるのはマナフラッドを緩和できるし、このデッキの場合なら毒カウンターの素にもなる。しかも起動コストが軽く、装備品で簡単に強化することが出来るので、消耗戦のあとに《骨溜め》を装備した《墨蛾の生息地》で一撃毒死、なんてことも見かけることになるだろう。


 「感染」をテーマにミラディン包囲戦を紹介する、メカニズムレビュー「毒」。今回はここまで。

 この記事を最後まで読んだあなたは、すでに《ファイレクシア化》が進んでいることだろろう。

 ではまたどこかで。Go!ファイレクシア!

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