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週刊連載インタビュー「あなたにとってマジックとは?」
「あなたにとってマジックとは?」第13回:ゲームデザイナー編
週刊連載インタビュー「あなたにとってマジックとは?」第13回:ゲームデザイナー編
by 瀬尾亜沙子
世界中で2千万人を超えるプレイヤーとファンを持つ世界最高の戦略トレーディングカードゲーム『マジック:ザ・ギャザリング』。この記事では、5月末開催の記念すべき「モダンマスターズ・ウィークエンド」から、8月末開催の「世界選手権2015」まで、「あなたにとってマジックとは?」というインタビューをまとめた記事を毎週連載していきます。
『マジック・オリジン』、この夏発売の新セットでは、5人のプレインズウォーカーが何故プレインズウォーカーになったのかという理由が明かされます。プレイヤーの象徴でもあるプレインズウォーカーにも、それぞれ違った人生背景が隠されているのです。では、「マジックプレイヤーは何故マジックプレイヤーになったのか?」そこにはどんなストーリーが隠されているのでしょう......この連載記事でその謎を明らかにしてみます。
さまざまな方に「あなたにとってマジックとは?」という質問を投げかけているこの企画。今回は少し趣を変えて、他のゲームの開発に携わるゲームデザイナーのお2人に話を聞きました。アナログとデジタルそれぞれのゲームを生み出すプロセスにおいて、マジックが与えた影響とは?
カナイセイジ
アナログゲームデザイナー。代表作「ラブレター」は国内外のゲーム賞を受賞している。
――あなたにとってマジックとは?
カナイ:「一生付き合い続けるホビー」だと思います。始祖にして至高、マジックの前にマジックなし、マジックのあとにマジックなし、みたいなものなので。あれをさらっと追い抜けるようなTCG(トレーディングカードゲーム)はもうできてこないと思います。
――なるほど。どれくらいマジックをやられていますか?
カナイ:中学生からなので、もう20年です。始めたのは『リバイズド』と『第4版』の間くらい、日本語が出るよりだいぶ前ですね。
――すごいですね。何で知ったんですか?
カナイ:友人がやってたのがきっかけです。それからどっぷりですが、ハマってるとは言ってもトーナメントプレイヤーとかではなかったです。最近になって、マジックにハマってる後輩たちが社会人になって、中にはプロを目指してるやつも出てきて。荒い金のつぎ込み方をし始めたので、僕も一緒にやりたいけどなー、どうしようかなーという感じです(笑)
――今はどれくらいマジックをやっているんですか?
カナイ:後輩たちと、機会があればやってますよ。新しいセットが出たらとにかくドラフトしますし、あとはもっぱら統率者戦ですね。多人数戦って、ボードゲームと似てるところがあるじゃないですか、特に統率者戦では誰かが突出しているとみんなで止めたりとか。
――ボードゲーム寄りなプレイ感覚ですよね。
カナイ:でも単純に統率者戦って、普段見向きもされないような変なカードもいっぱい使えるし、面白いんですよ。カードがそれぞれ1枚だけあればいいからデッキも組みやすいし。
――多人数戦といえば、『コンスピラシー』はやりましたか?
カナイ:あれはすごくいいセットなんですけど、パックから出たレアをわけようってなると、ゲームにそぐわないのだけ残念ですよね。ドラフトやったあと、順位でレア取りしたりするじゃないですか。その順位を決める時に、キングメーカー(自分の行動によって優勝者を決めてしまうプレイヤー)ができちゃうんですよ。順位で賞品が出るようにすると、とたんに殺伐として「なんで俺を先に殺すんだよ、あいつのほうが有利だろうが」みたいな喧嘩になって、ギスギスしちゃいます。『コンスピラシー』自体はとてもおもしろいんですけど、賞品制じゃなくて、カード取りきりでもなくて、カードはゲーム後全回収というのが、『コンスピラシー』を一番楽しめるんじゃないかと思います。
――なるほど、そういう見方はさすがですね。ところでゲームデザイナー人生に、マジックは何かきっかけになりましたか?
カナイ:結局、マジックがあったからこそ「自分でも何か作りたい」って気持ちが生まれたってのはあります。TCGを作ろうとしてもがいてた時期もありましたし。でもやっぱり、どんどん煩雑になっていくばっかりで、おもしろさがちゃんと表現できなくて。そういう意味で、マジックはすごいなって思いますよ。シンプルなルールの中で全部解決してるわけですからね。たまにすごく難しいのもありますけど(笑)。ジャッジ試験の問題なんかだと、どういう順番で効果が適用されていくかをきっちり聞かれるじゃないですか、まず数値変更で足してから引いてそのあとどうこう、みたいな。
――えっ、ジャッジ試験を受けようとしたってことですか?
カナイ:受けようとした友達がいて、興味を持って調べたんです。ちゃんとしたルールを知っておきたかったですし。友達の中にはもうかなりマジック沼にはまりこんでるやつもいるんで。
――そういう友達がいるかぎり、マジックとずっと付き合っていくということですね。どうもありがとうございました。
鶴剛史
デジタルゲームデザイナー。
――あなたにとってマジックとは?
鶴:「最初で最高のカードゲーム」という感じですね。
――最初にTCGに触れたのがマジックということですか。
鶴:『第4版』くらいで初めてカードゲームをやって、そのあともいろいろとTCGを遊んできましたが、やはりこれを超えるものはないなというイメージですね。
――始めたときのきっかけは?
鶴:会社の同僚に「いっしょにやろうぜ」と誘われて。当時は日本語版より英語版のほうがずっと安かったので英語版を買って訳しながら、ルールの読み間違いなんかもしつつ3~4人で友達の家に集まって遊ぶことが多かったですね。新宿のトライソフトさんでカードを買って、デッキを組んで......。レシピとかもあまり出回ってなかったので、好きに組んで好きに遊んでました。
――当時はどんなカードが好きでしたか?
鶴:《墓石の階段》を、使いづらいけどなんとかして使おうとがんばってましたね。弱いカードではないんですけど、情報がなくてうまい使い方も知らなかったし、手持ちのカードリソースも少ない中で、なんとかできないかと。自分の気質として、「このカードどう使うの? 弱くない?」みたいなカードをなんとかして使って勝つのが好きなんです。
――一見使い方がわからないカードを、ほかのカードとかと組み合わせて輝かせるのが楽しいんですね。
鶴:そういうことです。創意工夫が生きるところがマジックの魅力だと思っているので。
――それ以外にも、使いづらくて好きなカードはありますか?
鶴:『ビジョンズ』くらいまでやって間が空いて、そのあと『ローウィン』から復帰するんですが、そのころの《絵描きの召使い》かな。
――ああ、《丸砥石》とのコンボなんかで活躍しているカードですね。
鶴:あれも一見すると、カードに色をつけるだけなんですけど、なんとかして使いたい!と。あと、カードを引くと相手に1点ダメージを与える《火想者ニヴ=ミゼット》で、殴るんじゃなくて、カードを引いて勝つ!とかもやりました。
――普通とは違う勝ち方にチャレンジしていたんですね。
鶴:ロマン派でした(笑)
――『ローウィン』で復帰したということですが、理由はなんですか?
鶴:会社の転職とかで、一緒にやってた仲間と離れたのでやめてたんですが、また別の会社にやってる人たちがいて、また戻った感じですね。大きい会社で人数もいたので、新セットが出るたびにみんなで箱買いして、お昼休みにシールド大会やったりしてたんです。あと、ほかのゲーム会社さんとマジックで交流会をやったりしましたね。みんなで集まって統率者戦をやったり、それぞれの会社で先鋒、次峰、大将って決めてチーム戦をやったり。
――多人数戦だと交流も深まるし、楽しそうですね。
鶴:会社対抗のチーム戦だと負けられないって責任感もあって、もうドキドキですよ。確かそのときは2対1で勝って、自分はその1敗なんですけど、「3勝しちゃうとお互い気分悪いからね? そこは俺ちょっと空気読んだだけだからね?」ってことにしておきます(笑)
――なるほど(笑)。普段はどれくらいのペースでマジックをしていますか?
鶴:一番多く遊んでいるのは、紙じゃなくてデジタル版の『デュエルズ・オブ・ザ・プレインズウォーカーズ』シリーズなんです。あれを「2011」からずっとやってて、今も毎日くらいの頻度でやってます。あとはゲーム会のときに統率者戦をやったり、シールド戦をやるくらいで、月1とかですね。
――『デュエルズ』だと、対人戦も手軽にぱっとできていいですよね。
鶴:コンピュータと戦うよりは、やっぱり対人戦のほうが楽しいですね。それにデジタルならではの良さで何度も何度も繰り返してできるので、慣れてくるとこのデッキでこの盤面だったら相手はこういうカードを使ってくるだろうとか、だんだんわかってくるんですよね。カードプールが限定されているというのもありますし。自分のイメージするように遊べて、プレイングの勉強にもなりますね。
――なるほど。ところで、ゲームデザインのお仕事というのはどんな仕事なんでしょうか?
鶴:プレイヤーにこのゲームをどうやって遊んでほしいか、どう楽しんでほしいかを考える仕事です。誰をターゲットにして、どういう面白さを伝えたいかが最初のコンセプトになるのは、デジタルもアナログも同じだと思います。デジタルがアナログと違うのは、要素が多いので関わる人数が多いこと。ゲームの始まりから終わりまでをイメージして、仕様書とか企画書に落とし込んでいく仕事です。
――最初に作った設計図に従って、たくさんの人が関わってゲームを作り上げるということですね。
鶴:設計図を渡して、できたものを集めてみたらイメージと違うぞってこともよくあるので、それを調整していって、全部合わせて仕上げるという感じですね。
――そういったお仕事の中で、マジックが生きることってありますか?
鶴:デジタルって、ケタが多いんですよ。一般的にいうヒットポイントにしても100とか1000とかある。自分は最初からデジタルだったのでそれが普通だったんですけど、ゲームデザインのベースって、できるだけシンプルに考えなきゃいけないんです。マジックってパワー/タフネスが1ケタじゃないですか。「ああ、これで成り立つんだ」と。皆さんはそれが当たり前かもしれないですけど、自分はマジックで気づかされた感じですね。
――それまで1万とかの世界にいたけれど、2とか3でいいんだと。
鶴:そうですね。あと、100点あるところに10点のダメージを受けるのと、10点あるところに1点のダメージでは、比率は一緒ですけど、受ける気持ちって違うんですよね。
――確かに、100点に10点くらうほうが、たいしたことないような気がしますね。
鶴:そうなんです。数字に意味があるんだと、改めて気づいた感じですね。
――TCGでも数値が1000刻みのゲームが多いですが、あれは子どもは大きい数字が好きだからと聞いたことがあります。
鶴:ええ、TCGのほうがデジタルのイメージに寄った結果だと思いますね。1000とかの下のケタは使わないので、突き詰めると一緒なんですけど。あと、リソース管理の大事さも気づかせてもらいましたね。
――リソース管理ですか?
鶴:限られた手札とマナで勝ちを目指すマジックでは、同じリソースがあったとしても対戦相手や状況が変われば使い方が変わってくるわけで、常に同じことをやればいいわけではない。同じリソースで遊び方が変わるという部分は、ゲームシステムとしては重要なところですね。ゲームデザインにおいても、どんな敵を用意すれば遊び方が変わるかといったことにつながるので。
――なるほど。それでは最後に、マジックと今後どんなふうに付き合っていきたいと考えていますか?
鶴:マジックにどっぷりというほどではないですけど、常にどんなカードが出るかは気にしているんですよね。面白いカードが出るたびに、こんな使い方ができないかなーとかいろいろ夢想するんです。なので、今後も面白いデザインのカード、ワクワクできるカードがどんどん出てきてほしいと思います。
――どうもありがとうございました。
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