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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

ディミーアは新カードいらず?(スタンダード)

岩SHOW

 マジックの定番構築フォーマット、スタンダード。最も長い歴史を持つこのフォーマットのルールは、幾度もの偏向を重ねて今の形に至っている。直近リリースされたセットのみを用いる、いつまでも同一セットが使えるのではなくローテーションにより使用可能なカードが入れ替わるという基本的な部分は変わらないのだが、細かい部分での変更が数度行われている。

 中でも特殊なのは、最初期のスタンダードにおいて存在した「使用可能カードセットすべてから、それぞれ最低5枚のカードをデッキに入れる必要がある」というルール。デッキ構築の難易度を上げる要素としては面白いが、プレイヤーの自由度を奪う制約というのはあまり好ましくない。もっと自然な動機で各セットのカードを使う方が健全だものね。というわけでこのルールは早い段階で廃止となった。

 

 ルールでは定められていないので、新セットが出たからといってそこから新カードを必ずしもデッキに採用しなければならない、ということはない。スタンダードには『タルキール:龍嵐録』が導入され、このセットの新カードを取り入れたデッキ・新カードあってこそ成り立つデッキもあるが、それと同時に新カードをほとんど採用しない・全く取り入れていないデッキも見られる。

 その代表格が青黒、ディミーアと呼ばれるカラーのデッキだ。《遠眼鏡のセイレーン》や《フラッドピットの溺れさせ》などの1・2マナと軽いクリーチャーを繰り出し、それらでの攻撃を《切り崩し》などの除去で後押し。そして攻撃が対戦相手本体に通ったら《悪夢滅ぼし、魁渡》と忍術で交代、ダメージを与えつつこのプレインズウォーカーで手札を増やしたり相手のクリーチャーを麻痺させたりと、主導権を握っていく……この完成度の高いデッキは『ダスクモーン:戦慄の館』リリース時に出来上がり、そこからほとんど形は変わっていない。『ファウンデーションズ』『霊気走破』とセットを経てもほんの少し、土地や再録された《呪文貫き》を取り入れるくらいで……何かこう「大物ルーキー」的な新カードを迎え入れてデッキが変化する、ということはなかった。

 

 そして『タルキール:龍嵐録』……このセットもディミーアを変える新カードというものはなかった……と決めるのはまだ早いかもしれない。しかしセットの作り自体がディミーアというデッキからは遠いものになっている。なぜならこのセットには青黒2色のカードがない!最近のセットでは2色の組み合わせ10パターンにそれぞれ多色のカードが設けられているのが恒例だったが、タルキールは3色の氏族が主役であるためこの流れから外れたセットとなった。

 多色の新戦力がないのが確定しているのは、なんだかちょっと寂しい……けども《分派の説教者》《永劫の好奇心》とこのデッキのカードはすでにして強いのだ。これらを押しのけてまでデッキに入るとなると、かなりのスペックが求められる。説教者や好奇心、そして魁渡と合わされば手札を切らさずにゲームを進められる。手札は正義、ディミーアはその戦い方においてすでに完成しているデッキなのだ!(キリッ)

bomberboss - 「ディミーア・ミッドレンジ」
Magic Online Standard Challenge 64 トップ8 / スタンダード (2025年4月20日)[MO] [ARENA]
4 《地底の大河
4 《闇滑りの岸
4 《グルームレイクの境界
2 《不穏な浅瀬
2 《魂石の聖域
1 《噴水港
4 《
4 《
-土地(25)-

4 《遠眼鏡のセイレーン
4 《フラッドピットの溺れさせ
3 《大洞窟のコウモリ
3 《分派の説教者
2 《カルシの帰還者
3 《永劫の好奇心
1 《黙示録、シェオルドレッド
-クリーチャー(20)-
4 《切り崩し
3 《喉首狙い
1 《脅迫戦術
1 《幻影の干渉
2 《呪文貫き
1 《ギックスの命令
3 《悪夢滅ぼし、魁渡
-呪文(15)-
1 《苦痛ある選定
2 《ティシャーナの潮縛り
1 《否認
1 《方程式の改変
1 《軽蔑的な一撃
1 《三歩先
2 《強迫
1 《脅迫戦術
1 《フェアリーの黒幕
1 《除霊用掃除機
1 《ゴミあさりの執政
1 《黙示録、シェオルドレッド
1 《悪夢滅ぼし、魁渡
-サイドボード(15)-
Magic Online より引用)

 

 

 ……とはいえ新カードが全くのゼロってのも寂しいだろう(笑)というわけでタルキールの新カードが採用されたディミーアのリストを見つけたので紹介しよう。3マナ域に追加の飛行戦力であり、接死と絆魂という攻防両方において強い能力持ちの《カルシの帰還者》が参入。単純に戦闘で強いだけでなく、接死でブロックされにくいということは《悪夢滅ぼし、魁渡》の忍術のタネになったり《永劫の好奇心》でドローしたりが期待できる。また墓地に落ちても相続能力でこのキーワード能力を他のクリーチャーに託せる。《黙示録、シェオルドレッド》が突然飛び上がって殴りながら回復するという楽しいことが出来てしまう。

 さらにサイドボードには《ゴミあさりの執政》。タフネスに修正を与えるタイプの全体除去である前兆呪文であり、基本的にはそちらでの運用を狙って対クリーチャーデッキ相手にサイドイン。除去はもういらないという状況下で引いてきたら、ドラゴンとして盤面に投下しよう。この柔軟さが嬉しいね。

 スタンダードにおけるアグレッシブなディミーアは完成度の高いデッキのため、新カードを採用せずとも戦える強力デッキだ。こういうデッキがあっても良いのがスタンダードの自由なところであり、そしてその逆に新カードを中心にした新コンセプトのデッキを組んで戦うのもまた醍醐味。そう、使用可能セット内であれば何をやったって良いのがスタンダード!今回のリストみたいに、強さが確立されたリストに新カードをチョイ足しするオシャレ、皆もやってみようぜ。

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