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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

ゴルガリ・ミッドレンジ:腐乱するラクシャーサの活かし方(スタンダード)

岩SHOW
 

 突然だが、僕は《肉裂き怪物》というカードに愛情を抱いている。マジックを初めるきっかけにもなった1枚であり、その唯一無二のビジュアルに一目ぼれしてマジックの構築済みデッキとパックを手に取ったものだ。

 そんな肉裂きはカードとしてもマジックらしさが濃縮されたもので、その魅力はリリースより25年以上経過した今でも色褪せない。2マナ4/4、当時としても現代のカードパワーから見ても破格のスペックを誇るこのホラーは、クリーチャーやプレイヤーに戦闘ダメージを与えた場合、そのコントローラーにも同じ値のダメージを叩き込んでくる。このダメージを《黒の防御円》で防いだり、あるいはそもそも対戦相手のライフを先に0にしてしまえばデメリットもないも同然と割り切ったりしながら、マジックというゲームの魅力を学ばせてもらった。デメリットを持つ危険なクリーチャーは実に魅力的だ。

 

 そして時は流れて2025年。この肉裂きを上回るスペックの怪物が登場した。《腐れ呪いのラクシャーサ》!2マナ5/5トランプル!とんでもないマナ効率を誇る1枚だが、そこに設けられたデメリットはある意味肉裂きよりもずっと重い。腐乱という能力は完全なるデメリットとして設けられており、これを持つクリーチャーはブロックに参加できず、また攻撃すると戦闘終了時に生け贄に捧げられてしまう。たった1度、使い切りの攻撃手段なわけで、そこまで短命ならこのハイスペックっぷりも納得。このラクシャーサは墓地に落ちると相続という能力を起動できるようになり、それにより他のクリーチャーに腐乱を持たせることができる。これで相手のクリーチャーをブロックに参加できないようにして無理やり攻撃を通したり、1回きりの短命な攻撃役に成り下がらせることができるというわけだ。

 面白いデザインが施されたカードであるが、やっぱり腐乱というデメリットが重く、どういったデッキで使えば良いのか一目ではわかりづらい。今回はそんなラクシャーサを有効活用しているデッキを見つけたので、ここで共有させていただこう。

Mahtand7 - 「ゴルガリ・ミッドレンジ」
Rapsolo's Arena Tournament トップ8 / スタンダード (2025年4月8日)[MO] [ARENA]
4 《ラノワールの荒原
4 《ウェイストウッドの境界
2 《地底の遺体安置所
1 《眠らずの小屋
3 《魂石の聖域
7 《
3 《
-土地(24)-

4 《腐れ呪いのラクシャーサ
2 《ドロスの魔神
2 《アクロゾズの放血者
2 《ゴミあさりの執政
2 《破壊の嵐孵り
-クリーチャー(12)-
2 《苛性の吐息
2 《切り崩し
2 《シェオルドレッドの勅令
2 《戦略的裏切り
2 《覆い隠し
2 《羅利骨灰
2 《強迫
4 《重厚な世界踏破車
4 《不浄な別室 // 祭儀室
1 《執念の徳目
1 《ヴェールのリリアナ
-呪文(24)-
2 《苦痛ある選定
1 《大渦の脈動
2 《羅利骨灰
2 《一巻の終わり
1 《執念の徳目
2 《死人に口無し
2 《強迫
2 《除霊用掃除機
1 《グリッサ・サンスレイヤー
-サイドボード(15)-
MTGTop8 より引用)

 

 

 スタンダードの黒緑、所謂「ゴルガリ・ミッドレンジ」。黒と緑はパーマネントの除去に優れた色で、それらで対戦相手の妨害をしながら《ドロスの魔神》などの骨太なクリーチャーで攻撃する、攻撃的なコントロールとも形容できるアーキタイプだ。そこに《腐れ呪いのラクシャーサ》を2マナ域のクリーチャーとして採用しているのがこのリスト。ゴルガリも一口にまとめられてはいるが、カードチョイスはリスト毎に異なり全く別のデッキになっているものも見られる。その中でラクシャーサをチョイスしたこのリストは、これまでの者ともまた異なる雰囲気を漂わせている。

 ラクシャーサはただ単に1回こっきりの攻撃役として採用しているわけではなく、このカードにこそできる仕事が用意されている。まずは1つは《不浄な別室》との組み合わせ。カードを1枚引き2点のライフを失うが、デーモンをコントロールしていればこちらはライフを得て対戦相手が失うという超メリットに化ける能力を持ったデーモン推しのエンチャント。これまでも魔神やら《アクロゾズの放血者》やらといったデーモンと組んで悪いことをしてきたパワーカードだが、ここにきてそのデーモン界にラクシャーサが殴り込んできた。この腐れ呪い、タイプまで優秀なのかッッ。2ターン目ラクシャーサ→3ターン目別室という動きでスムーズにカードを引きつつ相手のライフを攻められる!チャンスと見れば他のデーモンとバトンタッチして攻撃させればOKというわけだな。

 

 ラクシャーサのもう一つの役目は操縦士。体格が良ければ腐乱していてもOK、というわけで《重厚な世界踏破車》の重いアクセルを踏んでもらおう。この機体は3マナで土地分のパワー、戦場に出るか攻撃すれば基本土地を戦場に出すというかなり強力な性能であるが、それ故にクリーチャー化するための搭乗コストが4とこのマナ域の機体にしては重めの設定がなされている。そんなマシンもラクシャーサは一人で悠々と乗りこなすわけだ。腕4本生えてるのは伊達じゃないな!2マナ生物が単体で搭乗してくれるのは有難い限りだね。

 

 このリストにはラクシャーサの他にも『タルキール:龍嵐録』の新カードが投入されている。タイトルにも記された嵐より現れたドラゴン達だ。《ゴミあさりの執政》は4マナ4/4飛行に護法持ち。この護法のコストは手札1枚を捨てるという厳しいものであるため、消耗戦の際に降臨すると手が付けられない航空戦力になってくれるだろう。前兆ソーサリー《にじむ毒素》としても唱えられ、こちらはドラゴン以外への全体除去。軽量クリーチャーを根こそぎ流し去りつつライブラリーへと戻っていくので、気兼ねなく叩きつけて後々引いてきたらドラゴンとして運用しよう。

 《破壊の嵐孵り》はゴルガリというカラーリングのパーマネント除去性能を体現するかのような1枚。どちらも単体で見た場合は少し物足りないものかもしれないが、1枚のカードに2つのモードが道教しているその柔軟さが強み。前兆として序盤のクリーチャー除去に、ドラゴン本体はエンチャントやアーティファクトを粉砕。特に現スタンダードは各種大主などエンチャントに溢れかえっているため、その対象に困ることはないだろう。これらドラゴンと《苛性の吐息》をセットで用いて、その高いコントロール性能で盤面を掌握しよう!

 一見するとデメリットが重すぎる《腐れ呪いのラクシャーサ》。どんなカードでも使い方一つで化けるのがマジックだ。こういうカードの真価を引き出して勝つゲームは楽しいぞ!さあ、腐乱を恐れずにその力を試してみよう!

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