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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

リザード・バーン:紙のトカゲは冬眠しない(スタンダード)

岩SHOW


 私岩SHOWには、マジックと同じくらい日常の一部となっていることがある。それは生き物を飼育し、愛でることだ。昔からありとあらゆる生き物に興味を持ち、それが一体どんな暮らしを送っているのかを想像し楽しんでいる子どもだった。今でもそれは同じで、そして実際に自分の目で確認しようと、家族として迎えるようになった。

 特に好きなのはトカゲだ。幼少期、今よりもまだ地元に草木が茂る野原が多かったころ。そこには少し探せば日本トカゲの姿があった。トカゲは良い、何とも表現できないが、兎に角良い。四肢で歩き回り、尻尾も巧みに使って立体活動。世界中、極地以外のあらゆる地域に生息し、その環境に適応して全く異なる形状に進化している。カラフルなものから落ち着いたシブい色合い、顔つきも様々で食性もバリエーション豊富。図鑑を見て憧れを抱いた種と、今では専門店やイベントで出会うことができる。そうやって幼少時に恋焦がれたトカゲらを連れ帰り、世話をする。これが実に楽しく、日々に彩りを与えてくれるのだ。

 そんなトカゲたちは変温動物だ。自分で体温を作ることが出来ず、環境にそれをゆだねている。そのため、冬場は活動が鈍る。完全に冬眠してしまう子もいるので、夏場あれだけ騒がしかった空間がなんとも静かになってしまい、寂しいものだ。中には↓の子のように、寒さを気にせず元気いっぱいなやつもいるんだけどもね。

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 寂しいと言えば、マジックのトカゲらも最近元気がなくて寂しい限りだ。『ブルームバロウ』リリース直後はスタンダードにおいてラクドス(黒赤)カラーのトカゲデッキをよく目にしたものだ。

 

 対戦相手がダメージを受けることで何らかのボーナスを得るというのがトカゲのテーマで、《鱗の焦熱、ゲヴ》《玉虫色の蔦打ち》のように攻めっ気に溢れたカードで対戦位相手のライフを削り、それにより《炎蓄えのヤモリ》《思考忍びの邪術師》といったカードの真価を発揮させる。前のめりのアグロデッキであり、ブン回った時にはかなり気持ち良いデッキである。トカゲには無法者に該当するタイプを持つものも多いので《笑う者、ジャスパー・フリント》でアドバンテージを取っていく動きも強く、魅力的だ。

 

 トカゲデッキは夏の到来と共に現れてスタンダードという環境を活発にはい回ったのだが、『ダスクモーン:戦慄の館』のリリース以降、その数を大きく減らすことになる。同セットにはトカゲはほぼ関係なく、デッキが得たカードがなかったというのもある。そしてタフネス2以下が並ぶトカゲデッキにとって最悪とも言える《紅蓮地獄》が収録されるのが判明したのもあって、わざわざ2マナのソーサリーで全滅するようなデッキは……と敬遠されたのもあるだろう。トカゲの中でも《雇われ爪》だけは元気で、冷え切ったトカゲ界から飛び出して赤いアグロデッキで文字通り1マナ圏の用心棒として雇われ、活躍している。なんだか我が家の様子に近い気もするな。

 トカゲが元気がないのはつまらないよ、せめてマジックのトカゲはピンピンしていてほしい。そんなわけでトカゲデッキを久しぶりにいじることに。MTGアリーナのリストを久しぶりに開き、トカゲでカードフィルターの検索をかけると……おっ、いるじゃないか新規のトカゲが!

 

 《ヴィーアシーノの紅蓮術師》!ちょっと懐かしい2マナのトカゲだ。元々はトカゲのタイプは持たずにトカゲ型のヒューマノイドであるヴィーアシーノのタイプを与えられていたが、他の獣人と同じように元の生き物のタイプに統一され、ヴィーアシーノはすべてトカゲとなった。そんな紅蓮術師は『ファウンデーションズ』のStarter Collectionにて再録され、スタンダードに帰ってきていたのだ。失念していたなぁ。

 この紅蓮術師は戦場に出た時に対戦相手に2点のダメージを与える。超シンプルだが赤らしい、飛び道具を持った1枚だ。とりあえず2点は確実に刻んでくれて、チャンスがあれば攻撃してそれ以上のダメージも狙える。かなりのやり手として初出の頃のスタンダードでも重宝されたが……現環境であれば、ダメージで得する他のトカゲらとも相性が良いではないか!というわけで今回紹介するのはマイデッキ、紅蓮術師の再録を受けて組んだ「リザード(トカゲ)バーン」だ!

岩SHOW - 「リザード・バーン」
スタンダード (2024年12月19日)[MO] [ARENA]
4 《硫黄泉
4 《黒割れの崖
1 《ブレイズマイアの境界
4 《魂の洞窟
2 《岩面村
1 《泥干潟村
1 《
5 《
-土地(22)-

4 《雇われ爪
4 《玉虫色の蔦打ち
4 《鱗の焦熱、ゲヴ
4 《炎貯えのヤモリ
4 《火硝子の導師
4 《ヴィーアシーノの紅蓮術師
2 《渓間の炎呼び
2 《かまど生まれの戦闘家
-クリーチャー(28)-
4 《稲妻波
4 《噴出の稲妻
2 《稲妻の一撃
-呪文(10)-
2 《切り崩し
2 《苦痛ある選定
1 《喉首狙い
1 《シェオルドレッドの勅令
2 《除霊用掃除機
4 《思考忍びの邪術師
3 《叫ぶ宿敵
-サイドボード(15)-

 

 

 「ラクドス・トカゲ」デッキの主流は黒をベースとした2色で、軽量のトカゲを展開して攻撃するのを黒い除去や手札破壊でサポートする。そしてジャスパー・フリントでアドバンテージを稼いで勝負を決める。今回組んでみたトカゲはそれとは全く異なる思想で構築。《ヴィーアシーノの紅蓮術師》を使うことを優先、赤をベースにした、対戦相手に直接ダメージを与えることを最優先するデッキとして組んでいる。なのでジャスパーや《思考忍びの邪術師》といった即座にダメージに貢献するカードは今回はメインデッキには不採用にした。

 それらに代わって取り込んだ3マナのトカゲは……《渓間の炎呼び》と《かまど生まれの戦闘家》だ。炎呼びはトカゲが与えるダメージに+1点してくれる、火力アップ能力の持ち主。こいつがいればヴィーアシーノの能力で3点飛ぶので、なかなかバカに出来ない。相討ち上等で攻撃を仕掛けやすくなるので、最後の数点を詰めにいくのに躊躇もなくなるというものだ。そして戦闘家は、1ターンに2回呪文を唱えると2点ダメージを発生させる。これは自分は勿論、対戦相手も含む。最近のスタンダードは同一ターン内にドロー呪文などを連打することをメイン戦術とするデッキが増えているので、そういった相手に圧をかけられたらと採用してみた。これがなかなかいい仕事をしていたので、今後も使っていきたいレベルで手応えありだ。

 

 最初は黒い除去呪文もメインに入れていたのだが、そんなことよりライフへ投げつけられる火力!直火焼きのカードがほしい!となったので、非クリーチャー呪文は開き直って赤オンリー。プレイヤーにしか飛ばない《稲妻波》まで取り込んで、バーンしていく所存だ。1マナで3点、マナ効率に優れたダメージ源。融通は利かないが、そういうものを取っ払ったことで1マナ3点を実現。これのおかげで《火硝子の導師》とか《炎貯えのヤモリ》の能力も狙いやすくなった。

 そして赤系デッキでお約束の《噴出の稲妻》。これと《稲妻の一撃》を除去兼本体火力として、対戦相手のライフを削り切る。これらがあるおかげで「次のターン○○引いたら勝てる」という望みが繋がる。《喉首狙い》などと比べると確実性は落ちるが、それらにはできないトップして勝利という芸当が出来る。バーンデッキの良いところを久しぶりに感じられて、良い経験になったね。今はこういうスタイルの方が勝ちやすいような、あくまで個人的な感想だけどもしっくりくる構築ができたなと。

 春が来て気温が高まるまでは、活性が下がりぐうぐう寝ているトカゲらを見守りつつ、トカゲデッキをプレイしていくとしよう。熱々のバーン構成で、紙のトカゲらは元気いっぱいだ!

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