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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

今週のCool Deck:まだまだ、今こそ、あの頃のエルフをもう一度(レガシー)

岩SHOW

 マジックのデッキをクールという観点から紹介する、今週のCool Deck。今回は……筆者がスタッフ参加してきた「BIG MAGIC Open Vol.13」というイベントよりピックアップ。僕はこの大会の第1回から皆勤で参加し続けている。なので逆に言うとこのイベントにプレイヤーとして出たことはない……いつか遊ぶ側で参加してみたいものだ。

 賞金制のトーナメントを含む、競技マジックを遊べる貴重な機会であるBMO。今回のメインのフォーマットはレガシー。誰でも参加できるオープンイベントで、台風で物理的に来れない人も多い中、383名ものプレイヤーが当日集結して「レガシー最強」のタイトルをかけて争った。まずこの時点でクールだね。ヘッドジャッジからも皆さんは台風に打ち勝って0回戦を突破しましたというようなアナウンスがあったようだ。中止とか、嵐の中で開催して事故が……とかがなくて本当に良かった。我々マジックプレイヤーの日頃のクールな行いあってのことだろう。

回転

 

 さて、レガシー。《超能力蛙》《知りたがりの学徒、タミヨウ》《まばゆい肉掻き》、それに《有翼の叡智、ナドゥ》……フィーチャーマッチでは『モダンホライゾン3』のクリーチャーらが盤面を支配していた。これはこれでクールなことではあるが……昔のレガシーとは大きく風景が変わってしまったなという一抹の寂しさもあるのも事実だ。最新のカードが強い、それも良いのだが、僕がレガシーを始めた頃はなんというか……古き良きカードやデッキを懐かしむ場所、というニュアンスが強かったように思う。競技色が強いトーナメントなので強いカードやデッキを使うのはもちろん正しい。でも同時に遊び心に溢れた「こりゃクールだなぁ」と思えるようなデッキが頑張っているところも観たい……というのは年寄り的な考えなのだろうか。

 フィーチャーマッチはどれも面白く、トップ8に残ったデッキのバリエーションも多く、トーナメントは素晴らしいものであった。でもなんだか昔のデッキが躍動してるところも……という複雑な思いで大阪へと帰還。そして参加者の全デッキリストをチェック。すると……やっぱり、なんだかんだいってあるじゃない。昔のレガシーの名残を存分に残した、クールなデッキリストが!

Kouta Tozuka - 「エルフ」
BIG MAGIC Open Vol.13 BMOレガシー 6-3 / レガシー (2024年8月17日)[MO] [ARENA]
2 《霧深い雨林
2 《吹きさらしの荒野
2 《樹木茂る山麓
1 《新緑の地下墓地
3 《Bayou
4 《ガイアの揺籃の地
2 《ドライアドの東屋
1 《耐え抜くもの、母聖樹
3 《
-土地(20)-

4 《樺の知識のレインジャー
4 《遺産のドルイド
4 《イラクサの歩哨
4 《アロサウルス飼い
1 《ヤスペラの歩哨
1 《クウィリーオン・レインジャー
3 《ワイアウッドの共生虫
1 《エルフの幻想家
1 《葉冠の幻想家
3 《コーヴェクダル、エラダムリー
1 《偉大なる統一者、アトラクサ
1 《孔蹄のビヒモス
-クリーチャー(28)-
4 《緑の太陽の頂点
3 《自然の秩序
4 《森の頌歌
1 《飢餓の潮流、グリスト
-呪文(12)-
1 《四肢切断
3 《突然の衰微
1 《暗殺者の戦利品
1 《再利用の賢者
1 《耐え抜くもの、母聖樹
1 《溜め込み屋のアウフ
2 《忍耐
1 《トーモッドの墓所
1 《漁る軟泥
1 《アガサの魂の大釜
1 《フェアリーの忌み者
1 《自然の秩序
-サイドボード(15)-
Melee より引用)

 

 

 レガシーオープン参加デッキより……「緑単エルフ」。ああ、なんかもう懐かしい。エルフはレガシーでは一時期最強格の存在にまでのし上がったが、最近ではめっきり見ないデッキの一つになっていた。エルフは採用されているが、同族でまとめたデッキという感じではない「これエルフに分類されてるけどほんまか?」なリストがチラホラと見られるくらいに落ち着いてしまっていた。このリストのような純粋なエルフデッキを目にしたのは久しぶりだ。

 《遺産のドルイド》や《樺の知識のレインジャー》でマナを生み出す動きに《イラクサの歩哨》を絡める。歩哨をタップしてマナを得て、緑の呪文を唱えて歩哨が起きて……という動きを繰り返す。これと《ガイアの揺籃の地》が合わさることで爆発的にマナが生産され、その桁違いのマナで《緑の太陽の頂点》で《孔蹄のビヒモス》を持ってきて……という動きは豪快にしてクールなものである。

 

 このエルフが環境から激減することになったのは……《オークの弓使い》が出現したことが大きい。エルフはタフネス1のクリーチャーが非常に多い。上述のマナエルフが矢の的になってしまうのはもちろん、《クウィリーオン・レインジャー》や《ワイアウッドの共生虫》などのシステム部分を担うクリーチャーのことごとくが簡単に潰されてしまうことになる。

 ただ1体やられるだけなら割り切れるものだが……エルフデッキのエンジンとして重要だった《垣間見る自然》との相性が最悪。オークは戦場に出た時、そして対戦相手が毎ターンの通常ドロー以外でカードを引いた時に能力を誘発させる。エルフらを唱えてはイラクサを起こし、《垣間見る自然》でドローして引いてきたエルフを……と動くのがエルフの基本ムーブであり、オークはこれを全否定する天敵中の天敵なのである。これはクールを越えて冷え切ってしまう!

 

 そんなオークであるが、最近の流行デッキ相手にはそれほど効果的に働かなくなってきたため、黒いデッキでの採用も減少傾向にある。タフネス1を環境から駆逐した結果、これを使う強みもなくなってしまった、と。このオークの現象を感じ取って、今こそエルフの時間!とクールに使いどころを読み切ってこのオープンに臨んだのだろう。

 そしてこのエルフは、《垣間見る自然》を採用せずにエルフの連打を実現する方法を搭載することで、もしオークと遭遇してもなんとか戦うことができるように調整しているのがクールだ。新たなアドバンテージ・エンジンは《コーヴェクダル、エラダムリー》!エルフの王、エラダムリーの新たなカードは、ライブラリーの上からクリーチャー呪文を唱えることができる。この能力をもってエルフなどのクリーチャーを連打するのだ。エラダムリー自身もエルフなので色々なカードと噛み合っているのが素晴らしい。

 ただライブラリーの上がクリーチャーではなくなることが度々起こり得る。それを少しでも解決しようと採用されているのが《森の頌歌》。クリーチャーを全体強化するエンチャントで、これには緑のクリーチャーが戦場に出ると占術できるオマケがついている。クリーチャーを出してライブラリーの上を操作し、またクリーチャーを唱えられるようにしたらエルフをタップして……とループが繋がり続けるかもしれない。これで概ね《垣間見る自然》と同様の展開力を確保できて、それでいてオークに矢の雨を射かけられることもない。古き良きエルフを残そうと生み出されたクールなアイディアに拍手!

 懐かしいカードやデッキで遊ぶ、これもまたマジックがクールである要因だ。カードはいつまでも手元に残る。最新のカードに圧倒されることもあるが……それでもあの頃のデッキを存続させようとするプレイヤー達の工夫は何よりもクールだ。個人それぞれの思いを受けた多種多様なデッキが交錯する……マジックのクールさはそこなんだよな。

 それじゃ今週はここまで。Stay cool! Long live the deck!!

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