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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
黒単ネクロ:予選1位抜けはこのデッキ!(モダン)
今回の「プロツアー『モダンホライゾン3』」はその名の通りモダンにて開催された。開催地はオランダ・アムステルダム。時差の関係で、アメリカ開催のプロツアーに比べると随分と観戦しやすい時間帯に中継されていたので、多くの方が熱戦を視聴しながら週末を過ごしたことだろう。
全部見届けたかも入ればそうでもない方もいると思うので、当コラムでもプロツアーのデッキを紹介することでこのトーナメントの記録を残しつつ、モダン環境に興味を持ってもらえるきっかけとなることを目指したい、というわけで今回からはしばらくモダンのデッキ紹介が続くので、どうぞよろしく。
今回のプロツアー、いったい何度《有翼の叡智、ナドゥ》がプレイされたのだろうか?この新カードを核としたナドゥデッキは最大勢力となり、トップ8にも5名が食い込む結果に。決勝もナドゥ同士の戦いと、ナドゥナドゥナドゥ……青と緑の鳥ばかりのイメージが脳裏に焼き付くのも仕方がない。
しかし予選ラウンドを1位抜けした、つまり最初にTOP8入賞を決めたデッキはナドゥではなかった。マ・ノア/Ma Noah選手はドラフト5勝1敗、モダンは圧巻の7勝0敗で1位抜けを果たした。彼が使用したデッキは……黒単!黒好きの皆さま、好きとかじゃなく黒以外選択肢にないというコアな方々、これは吉報でございますね。モダンの最新の黒単デッキを分析してみよう!
1 《汚染された三角州》 1 《血染めのぬかるみ》 1 《大音声の劇場》 1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》 1 《ファイレクシアの塔》 1 《湿地の干潟》 3 《ロークスワイン城》 7 《沼》 1 《新緑の地下墓地》 -土地(17)- 3 《マルコフ家のソリン》 4 《悲嘆》 3 《黙示録、シェオルドレッド》 1 《ボガートの獲物さらい》 4 《オークの弓使い》 2 《ダウスィーの虚空歩き》 -クリーチャー(17)- |
4 《思考囲い》 4 《魂の撃ち込み》 2 《不敬者破り》 1 《塵へのしがみつき》 3 《マラキールの再誕》 4 《致命的な一押し》 3 《不憫な悲哀の行進》 1 《まだ死んでいない》 4 《ネクロドミナンス》 -呪文(26)- |
2 《毒の濁流》 3 《氷砕き》 1 《集団的蛮行》 2 《シェオルドレッドの勅令》 3 《外科的摘出》 2 《減衰球》 2 《真髄の針》 -サイドボード(15)- |
モダンの黒を支えるアクションは《悲嘆》を交えたもの。これを想起で唱えて戦場に出した後、生け贄に捧げる能力を解決する前に《まだ死んでいない》などで対象に取る。これにより生け贄で墓地に落ちた《悲嘆》が即座に戦場に戻り、都合2枚の手札を捨てさせる。このアクションに必要なのはカード3枚と1マナ。1ターン目からこのアクションをかますことで、対戦相手はダブルマリガンのような状態でゲームを開始することになる。一言、極悪!このリストでは黒の特権であるこの《悲嘆》二度撃ちを主に《マラキールの再誕》をもって狙っていく。リストを見てもらえばわかる通り、土地の枚数は17枚とかなり削っている。この再誕のように第2面が土地のカードを複数枚採用することで、実質的な土地は普通のデッキと同じくらい備えつつ、ゲーム終盤で土地を引いてしまって無駄になるという展開になりにくいように工夫が施してある。
黒単を大きく肯定するモダンの新要素、《ネクロドミナンス》!あの《ネクロポーテンス》の調整版がモダンに登場だ。X点のライフを支払い、X枚ドロー!豪快かつ貪欲、危険を顧みない驚異のアドバンテージ源。この比類するもののない3マナエンチャントで手札を補充しつつ戦う、これがモダンにおける黒単の新たな戦術だ。ドロー・ステップを飛ばすというリスクに見合うだけのリターンをもたらしてくれること間違いなし。ライフが減ってしまうとドローが出来なくなるという非常事態……そんなものは《黙示録、シェオルドレッド》で回復すれば良い話だ。むしろ引けば引くほどライフが増える、臆することなくペイライフ!……唯一《オークの弓使い》だけは念頭に置いて、このエンチャントを置くかどうかを決めねばならないけどもね。
この「黒単ネクロ」というアーキタイプは、懐かしすぎる1枚にモダンで活躍するチャンスを与えた。《魂の撃ち込み》!いや~2006年『コールドスナップ』でリリースされてから今日まで、ごく一部のマニアからの支持はあるカードだったが……まさかプロツアーでスポットライトを浴びる日が来るとはね。
4点ダメージを与えて4点回復、除去にもなるし対戦相手本体にも投げつけられる。ライフを得られるのでネクロに供給する燃料を用意してくれる……だけじゃない。このインスタントは手札から黒のカードを2枚追放するという代替コストでも唱えられる。《ネクロドミナンス》の欠点を挙げるなら、それは手札の上限が5枚になってしまうところ。何点ライフを支払って何枚引こうとも、クリンナップ・ステップに入ると5枚になるように手札を捨てねばならない。しかし撃ち込みはその余剰な手札に使い道を提供してくれる。ターン終了時にネクロを解決して手札にたっぷりカードを引き込んだら、今後使う予定のあるものを厳選して残ったカードは撃ち込みのコストにシュート!エキサイティングな4点ダメージに変換して、無駄なくリソースをしゃぶり尽くそう。手札上限が5だからって毎ターン5枚丁度になるように、なんて運用じゃネクロの本領は発揮されないぞ!欲望解放していこう。
ネクロと同時にやって来た黒の神話レア《マルコフ家のソリン》も見事にTOP8入り、プレインズウォーカーに変身する同じサイクルのカードの中でも、プロツアーサンデーに進出したのはこのソリンだけになった。個人的にはアジャニやラルの姿も見られると思っていたのでちょっと意外な結果になったなと。ソリンというカードを振り返ると……2マナでタフネス4あって絆魂と、攻めるデッキ相手にはかなり堅い壁役となってくれるナイススペック。強請能力にマナを払う余裕はあまりないとは思うが、ゲームが長引いた時などに余ったマナを少しでもゲームを動かす要素として運用できるのは偉い。
そして絆魂や強請、あるいは撃ち込みなどでライフを3点以上回復すれば変身!《貪欲なる新生子、ソリン》になれば、得たライフに等しいダメージを与え、相手のクリーチャーを吸血鬼にして奪う、除去兼フィニッシャーとしての動きでゲームを終わらせにかかる。[+2]能力で食物を生成するのは、ソリンが料理しているなどとちょっとシュールなネタにされることもあるが、堅実に3点回復させてくれるという点でネクロデッキにとっては有難いものである。ネクロとソリンの力が合わさって、結果は同等の予選ラウンド1位抜けだ。
黒いデッキが好きなプレイヤーにとっては、否、黒単が好きなプレイヤーにとっては、今のモダンは絶景に映るかもしれない。さあ、闇の力に飲まれてしまおう。つべこべ言わずに黒に染まってしまえば良いのさ。
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