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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

正体不明の人気デッキ、4色レジェンズ!(スタンダード)

岩SHOW

 初見では正体が見切れないデッキがある。マジックとは複雑なカードを組み合わせて戦うゲームだ。ただ単にパッと見てその全貌がわからないデッキがあることは、何もおかしなことじゃない。そういうデッキは自分で実際にプレイしてみると「なるほど」と正体が判明したりするものだ。百聞は1プレイにしかず、自身でプレイすれば何を目的としたデッキかが見えて……こないこともある。一般的なプレイヤーの思考を越えた真に怪奇なでっきというものもあるわけで。まあなんとなく勝てるけども、これで果たして正しかったのか?そんな疑問を抱かせる、謎の強力デッキというものもマジックには存在している。

 そんな時は、プロプレイヤーが使用している姿を観て学ぶのが一番。プロツアーのフィーチャーマッチが存在する意義はそういうところにもある。というわけで今回の「プロツアー『サンダー・ジャンクション』」では、個人的にフィーチャーの場に出てきてほしいデッキがあった。「4色レジェンズ」だ。白以外の4色の伝説のクリーチャーを軸にした(白が足されている場合もある)デッキであるわけだが……このデッキはリストを見ただけでは、クセが強いというか濃度が濃すぎてよくわからない。

スイスラウンド2位:ジャン・レイ/Rei Zhang - 「4色レジェンズ」
プロツアー『サンダー・ジャンクション』 / スタンダード (2024年4月26~28日)[MO] [ARENA]
1 《沈んだ城塞
4 《英雄の公有地
2 《魂の洞窟
4 《ジアトラの試練場
1 《ザンダーの居室
4 《天上都市、大田原
3 《耐え抜くもの、母聖樹
1 《
4 《見捨てられたぬかるみ、竹沼
1 《硫黄泉
3 《闇滑りの岸
1 《眠らずの小屋
-土地(29)-

2 《復活したアーテイ
4 《大スライム、スローグルク
2 《ガイアの声、ティタニア
3 《正直者のラトスタイン
4 《侵攻の伝令、ローナ
4 《太陽の執事長、インティ
2 《ガチョウの母
1 《陽気な擲弾兵、薬瓶砕き
-クリーチャー(22)-
3 《喉首狙い
2 《切り崩し
4 《伝説の秘宝
-呪文(9)-
1 《完成化した精神、ジェイス
2 《ヴェールのリリアナ
1 《最深の裏切り、アクロゾズ
1 《復活したアーテイ
1 《黙示録、シェオルドレッド
2 《ぎらつく氾濫
1 《危難の道
3 《強迫
1 《長い別れ
1 《切り崩し
1 《掘り返し
-サイドボード(15)-

 とりあえず初見でわかることは、土地の多さ。総枚数29、デッキの半分が土地である。こんなに土地が多い理由は……魂力土地にある。マナを払い手札から捨てることで能力を起動し、土地でありながら呪文のように使える魂力能力を持った伝説の土地。そのサイクルの中でも《天上都市、大田原》《見捨てられたぬかるみ、竹沼》《耐え抜くもの、母聖樹》の3つをたっぷりと採用。これらに必要なマナは伝説のクリーチャー1体につき{1}軽減される。採用されているクリーチャーが全て伝説であるこのデッキでは、これらのコストが大きく軽減されることになる。結果、土地が主体のこのリストは打ち消されにくい呪文的なものを、低コストで運用できるものとなっているのである。

 これらの魂力土地と相性がすこぶる良いレジェンドが《大スライム、スローグルク》だ。土地を捨てるとカウンターが乗って強化され、そして戦場を離れると墓地の土地を3枚手札に加えられる。この大スライムはカウンターを3つと除いて手札に戻る能力まで持っており……魂力土地を起動して盤面を捌いたり手札を補充しつつ、巨大化したスローグルクで攻撃したり、土地を《見捨てられたぬかるみ、竹沼》を拾って延々と戦場と墓地を往復したり、攻守両面に渡って非常に有用。そしてスローグルクとはまた別のベクトルで噛み合っているのが《ガイアの声、ティタニア》。土地が墓地に落ちれば2点回復、手札から捨てても誘発するし、拙作でライブラリーから落ちても誘発。これと竹沼の相性は抜群で、どれだけライフがピンチになっても安全圏へと戻すことが可能だ。これらのレジェンド・シナジー(相互作用)でゲームを粘り強く戦うのが青緑を主軸としたレジェンドデッキの特徴だ。

回転

 そしてレジェンド・シナジーと言えば忘れちゃいけないのが《侵攻の伝令、ローナ》×《伝説の秘宝》。ローナは伝説の呪文を唱えるとアンタップになる。秘宝は伝説のクリーチャーをタップして好きな色マナを加えられるので、これにローナを用いる。ローナから加えたマナでレジェンドを唱え、ローナが起きてまたマナを加えて……連鎖反応的に得たマナで、強固な盤面を作り上げるのだ。アンタップするローナはその本来の能力で、カードを引いて捨てる手札入れ替えとして使っても良い。キーカードを手繰り寄せるこの動きを加速させるのが《太陽の執事長、インティ》だ。手札を捨てると能力が誘発、ライブラリートップの1枚を提供してくれるアドバンテージ源だ。この手札を捨てるという点が、スローグルク同様に魂力土地とバッチリ噛み合い……思いもかけない形で尽きない展開力をもたらしている。

 このデッキは伝説のクリーチャーを求めているため、『サンダー・ジャンクションの無法者』のコンセプトは大いにウェルカム。名うての悪党どもが揃ったこのセットから戦力として加入したのは……《正直者のラトスタイン》!除去や打ち消されたものは当然のこと、切削や手札から捨てたレジェンドらを、彼が墓地から拾い上げる。そしてクリーチャーを唱えるコストが{1}軽減と、とてもじゃないがアンコモンとは思えないスーパーカードだ。

 このラトスタインが2枚と、上述のローナ&秘宝エンジンが揃うと……どうなると思う?ラトスタインAとローナをタップして黒緑のマナを加える→ラトスタインBを唱えて戦場へ。レジェンド・ルールでラトスタインAを墓地に→ラトスタインBの能力でAを手札に戻す。これとアンタップしたローナをタップし、Aを唱え……以下、無限ループを形成できる。このループの横に《陽気な擲弾兵、薬瓶砕き》が並ぶと、対戦相手のライフが何点あろうが焼き尽くしてしまう。膠着状態から一瞬で勝てるコンボ要素を得たことで、「4色レジェンズ」は一気にデッキパワーが増したのだ。そのため、通好みのデッキでありながら全参加者中の使用率が4位と、人気を獲得するに至ったのだ。

 フィーチャーでこのデッキが躍動しているところを見て……改めて、このデッキの正体はまだまだわからない!なんだかよくわからないうちにいつの間にかめちゃくちゃ有利な盤面になっていたりするし、土地を引きすぎて力尽きていたり……負けている時は圧敗、勝つときは不思議に勝っている。このデッキ、奥が深いよ。その独特のテンションに魅入られたなら……今すぐ君も実際にプレイし、秘められた多彩なる引き出しを見つけてみよう!

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