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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
感動のプロツアー!ランプ系デッキの隆盛(スタンダード)
ゴールデンウィーク、終わったね……当コラムはスケジュールの関係で1週早くお休みをいただいていた。その時間でリフレッシュ、プロツアー『サンダー・ジャンクション』に備えていたのだ。おかげさまで問題なく初日・2日目の実況を終え……決勝まで見届けたいという気持ちはあったのだが、放送開始前に力尽きて11時間ほど寝ていた。起きたら井川良彦選手が優勝していて、ビックリはビックリなのだが初日全勝の時点で「今回はやってくれそうだな」と感じていたので、サプライズというよりは納得の結果だったね。予選ラウンドの時点でプレイも冴えわたり、デッキもそれに応えていたもんなぁ。競技マジック愛に関しては世界でも指折りの選手でありながら、様々な制度の変遷によりモチベーションが揺らぐこともあったというのを耳にしていた。そんな井川選手が報われたことに、マジックは一生かけて向き合っていく価値のあるものだと改めて感じた次第だ。プロツアー復帰戦での優勝は、深く重いマジック愛なしでは成し得ないのだ。
さて、そんな感動をもたらしてくれたプロツアーのデッキを当コラムで取り上げていこう。今回のプロツアーはスケジュール的にはなかなかに厳しいものだった。『サンダー・ジャンクションの無法者』がオンライン上でリリースされたのが4月16日(日本時間17日)、そしてセット発売開始が19日。プロツアーは26日から開催……ということで、スタンダードの調整をする期間は限られたものになってしまっていたのだ。短期間で新カードをふんだんに取り入れた、未知のデッキを調整して持ち込むというのは簡単なことではない。近所のお店のフライデー・ナイト・マジックに、というのであれば気軽に新デッキを携えれば良いが、人生を変えるかもしれない大きな舞台でそれを実行するのはリスクが伴う。サンダー・ジャンクションは全く新しいコンセプトのデッキを組めるようなデザインのカードに満ちているが、今回のトーナメントでは実験的なリストよりも、既存のスタンダードのデッキを持ち込むことを選択したプレイヤーが多い形となった。ごく自然なことである。
トップ8のデッキ分布もそのような形にはなったが、メインの構成はトーナメントを意識したものになり、また特定のデッキに効果覿面なサイドボードとして新カードが姿を見せたり……四の五の言っても始まらないので実際のリストを見ていただこう。
1 《ラフィーンの塔》 4 《ジアトラの試練場》 3 《平地》 4 《魂の洞窟》 4 《スパーラの本部》 1 《島》 3 《森》 4 《ジェトミアの庭》 1 《沼》 1 《耐え抜くもの、母聖樹》 -土地(26)- 3 《偉大なる統一者、アトラクサ》 4 《怒りの大天使》 1 《イモデーンの徴募兵》 4 《装飾庭園を踏み歩くもの》 -クリーチャー(12)- |
4 《群れの渡り》 3 《太陽降下》 1 《地図作りの調査》 3 《集団失踪》 1 《中心核の瞥見》 1 《長い別れ》 4 《力線の束縛》 2 《洞窟探検》 3 《豆の木をのぼれ》 -呪文(22)- |
1 《向上した精霊信者、ニッサ》 2 《温厚な襞背》 2 《金属の徒党の種子鮫》 3 《否認》 3 《長い別れ》 2 《一時的封鎖》 2 《安らかなる眠り》 -サイドボード(15)- |
まずは我らがチャンピオン、井川選手の「ドメイン・ランプ」。ここ1年以上に渡りスタンダードの定番デッキとして君臨し、その基本構造もほとんど変化はしていない。《装飾庭園を踏み歩くもの》などで土地を伸ばし、マナの量が増えたことで《偉大なる統一者、アトラクサ》のような重いパワーカードを叩きつけて逆転。あるいは基本土地タイプを増やすことで《力線の束縛》や《群れの渡り》などの版図(ドメイン)呪文の強さを引き出す。力線や《太陽降下》などの除去に優れ、それらと《豆の木をのぼれ》でゲームを掌握していく、コントロール要素の強いデッキだ。
井川選手が今回用いたこのリスト、定番のドメインと異なる点としては《ゼンディカーへの侵攻》が不採用となっている。その代わりに《地図作りの調査》《中心核の瞥見》《洞窟探検》といったカードが土地を増やすランプ呪文の役割を担っている。特にタップ状態で戦場に出る土地をアンタップにする《洞窟探検》はドメインの隙を緩和してくれる。相手に速度負けしない追いすがる要素を優先したのは、長丁場となるトーナメントを意識してのことだろうか。侵攻を攻撃して変身させるというドメインがよくやる動きが、ハイレベルなゲームにおいては勝利に貢献していない、だったらより軽いマナ加速をバリエーション豊かに……という意図も見られて、興味深いカードチョイスだ。
そしてサイドボードには新カード、というか再録の《安らかなる眠り》。これは不利なマッチアップである「ティムール分析者」に対するお守り。墓地利用デッキは今後、この強烈なアンチカードを突破することを意識してサイド後のゲームを戦わなければならない。
4 《山》 4 《貴顕廊一家の劇場》 6 《島》 6 《森》 3 《舞台座一家の中庭》 4 《斡旋屋一家の潜伏先》 2 《土建組一家の監督所》 1 《残響する深淵》 -土地(30)- 4 《復活した精霊信者、ニッサ》 4 《事件現場の分析者》 1 《樹海の幻想家、しげ樹》 -クリーチャー(9)- |
4 《強靭の徳目》 4 《間の悪い爆発》 3 《世界魂の憤怒》 4 《記憶の氾濫》 3 《勝利の炎》 3 《洞窟探検》 -呪文(21)- |
1 《産業のタイタン》 1 《巨大な空亀》 2 《乱伐者、ボニー・ポール》 1 《ドッペルギャング》 3 《毒を選べ》 2 《吸血鬼の復讐》 3 《否認》 2 《掘り返し》 -サイドボード(15)- |
その苦手である「ティムール世界魂」もしっかりとトーナメントを勝ち上がりTOP8に入賞。ショーン・ゴダード/Sean Goddard選手のリストをご覧いただこう。《事故現場の分析者》で墓地から土地を戦場に戻す、この動きを主軸とした特殊なランプデッキだ。 《復活した精霊信者、ニッサ》とこれを組み合わせ、《貴顕廊一家の劇場》などの土地を使いまわして一気に大量のマナを得る。ニッサの2回目の誘発はエルフを手に入れることができ、運が良ければ分析者の2枚目を手に入れてそのままプレイ、ループを形成して爆発的に土地を増やす!
この溢れるかえるほどのマナを用いて《強靭の徳目》を設置。マナを加える土地はすべて基本土地な構成なので、このエンチャントから尋常ならざる量のマナを供給可能となる。このエンチャントは出来事モード《ギャレンブリグの成長》としても使えるもので、分析者を拾ってループするのを手助けもしてくれる。最終的に3桁のマナを得られるようになる。そこまでいかずとも《世界魂の憤怒》をおもむろにぶっ放して一撃で対戦相手を葬る!
この既存のコンボ要素の強いランプデッキ、サンダー・ジャンクションの新カードはメインデッキには食い込んではこなかったが……サイドには《乱伐者、ボニー・ポール》の姿が。勝ち手段が世界魂のみだと《石の脳》などで封殺される恐れがある。サイド後に別の勝ち手段になるボニー、そしてその相棒ボーは頼もしい存在だ。土地を並べることで強くなるデッキにとって、ボニーのもたらすドロー&土地展開能力は実に嬉しい恩恵。そして土地の枚数分のサイズのボーが対戦相手を踏み潰す。ボニーが到達を持っているのも、飛行クリーチャーの強い現スタンダードにおいては見逃せないセールスポイントだね。
今回のプロツアーより、まずはランプ系のデッキを紹介させていただいた。今週はまだまだこのトーナメントからのデッキを紹介していくので、皆でスタンダードを楽しんでいこう!月末のプレイヤーズコンベンションが楽しみになってきたぞ~。
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