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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
青黒2色のコントロールでBO3に挑戦しよう(スタンダード)
ようやく春らしい陽気に包まれて……新しいことが始まる季節を実感する。この4月、新年度を迎えた皆。今年度のマジックは何か新しいことに挑戦してみないかい?たとえば……BO3をやる、とかね。BO3とはBest Of Threeの略。これは日本語で言うところの三本勝負。最大で3回のゲームを行い、その内の2本を先取したプレイヤーが勝利する。マジックでは構築及びリミテッドでもっとも一般的なルールであり、そしてこのBO3でこそマジックの本質が味わえるというものだ。
もちろん出たとこ勝負の一本勝負、BO1でもゲームは楽しい。しかしデッキの相性差というものは顕著になりがちだ。これを補えるのがBO3のサイドボードという概念。メインデッキの他に最大15枚のカードを用意し、ゲームとゲームの合間にメインとサイドでカードを入れ替えることができる。これで各仮想敵にあわせて用意したカードをデッキに投入し、単純な相性差を埋める、場合によっては逆転させて戦うことができる。
生放送などのマジック質問コーナーではこのサイドボーディングがどうにもわからない、難しいという声が初心者の方から寄せられがちである。また、サイドが分からないからBO3はやらないという意見さえも目にすることがある。これは勿体ない!サイドは単に色対策やパーマネント除去、打ち消しなど積むだけのものではない。メインデッキから対戦相手が想定していない、予想できない要素を追加することで、対戦相手の裏をかく……読み合いを楽しむものでもある。今回は皆にBO3を遊んでほしい!という思いから、サイドの妙味を体現したリストを紹介させていただこう!
1《ラフィーンの塔》 3《闇滑りの岸》 4《難破船の湿地》 3《不穏な浅瀬》 1《ミレックス》 4《廃墟の地》 1《解体爆破場》 1《天上都市、大田原》 1《見捨てられたぬかるみ、竹沼》 4《島》 3《沼》 -土地(26)- 1《金属の徒党の種子鮫》 -クリーチャー(1)- |
2《切り崩し》 4《喉首狙い》 2《長い別れ》 1《シェオルドレッドの勅令》 2《危難の道》 4《死人に口無し》 2《かき消し》 2《否認》 2《強迫》 4《推理》 1《眼識の収集》 4《記憶の氾濫》 1《セレスタス》 2《完成化した精神、ジェイス》 -呪文(33)- |
2《黙示録、シェオルドレッド》 2《最深の裏切り、アクロゾズ》 2《金属の徒党の種子鮫》 1《完成化した精神、ジェイス》 2《ティシャーナの潮縛り》 1《眼識の収集》 1《強迫》 2《否認》 2《悪意ある覆い隠し》 -サイドボード(15)- |
スタンダードの青黒……ディミーア2色のコントロール。実に伝統的な構成だ。クリーチャーやプレインズウォーカーを除去する黒いカード、青い打ち消し呪文で対戦相手の展開を妨害し続ける。両色の手札の枚数が増える、即ちアドバンテージを獲得できるカードで息切れを防ぎ、ロングゲームに持ち込んで支配する。どっしりと構えて長く戦いたいプレイヤーにはもってこいなリストだ。歴代のデッキの多くがそうであったように、現スタンダードのこのカラーのコントロールも、ゲームに勝つための手段=フィニッシャーの枚数はごく少数に抑えられている。
このリストでは純粋なフィニッシャーとしてだけのカードは0と見ることもできる。《完成化した精神、ジェイス》はパワー3以下のクリーチャーを無害にし、ドローももたらす除去兼アドバンテージ源、それでいて対戦相手を切削してライブラリーアウトを狙えるフィニッシャーでもある優れた1枚。他に土地である《不穏な浅瀬》、ブロック役を供給し続ける《金属の徒党の種子鮫》もそれらの役割とフィニッシャーとを兼業している。《死人に口無し》もその典型的な例で、クリーチャー除去として大変優秀でありながら、証拠収集の追加コストを支払えば、対戦相手の墓地からカードを追放、同名のものを手札やライブラリーからも引っこ抜く。これで対戦相手のデッキの重要なパーツ、フィニッシャーを消し去って、相手の心をへし折る。デッキの中に希望が無くなることで、投了を促す……恐ろしいソーサリーなのである。要約すると、メインデッキはコントロールを遂行するためのカードのみでできている。
さて、本題のサイドボード後のお話。このメインデッキと対戦をして、サイド後もクリーチャー除去をしっかり残そうというプランを選択するプレイヤーはほとんどいないはずだ。1枚挿しの《金属の徒党の種子鮫》を見たり、《不穏な浅瀬》を警戒して少し残すことはあっても、逆に増量するというような戦い方がえらばれることはないと考えて良いだろう。それを逆手にとって、サイド後は除去が減らされたことで活きてくるカードを投入し、優位に立つことを狙うわけだ。
黒いデッキであれば他の除去は抜いて、鮫と浅瀬を対象に取れる《長い別れ》を優先して残すというプランを取ってくるのではないかな。そこに4マナ以上の《黙示録、シェオルドレッド》《最深の裏切り、アクロゾズ》を投入し、フィニッシャーを増量。これらで積極的に勝利をもぎとりにかかる……なんとも良い結果に繋がりそうではないか。シェオルドレッドもアクロゾズもライフの回復ももたらしてくれるので、アグロ系相手に耐える手段、壁役としても優秀だ。対戦相手にそれほど効果的でなかったり十二分に数が揃っているコントロール要素を抜いて、上記のフィニッシャーを投入したり鮫や《眼識の収集》を増やすなど、対戦相手のサイド後のデッキの形も想定しながら、より勝てそうな・より強いデッキに仕上げる……BO3の醍醐味、存分に味わえるサイドボードになっているね。
どんなサイドボードを組んで、どう入れ替えたら良いかわからない。だからBO3はやらない!これは食わず嫌いというか、本当に勿体ない。失敗したって良い、むしろわからないことがあるってゲームとして遊び込める要素があるってことで、最高じゃないか。プロプレイヤーだって答えが出せない、間違えることのあるサイドボーディング。このマジックならではの体験を、たっぷり味わう……そんなチャレンジの新年度にしてくれたらデッキ紹介者として嬉しいぞ!
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