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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
今週のCool Deck:《拷問台》の30年(モダン&過去のフォーマット)
マジックという最高にクールなコンテンツ。このゲームにおけるデッキを、強さや実績よりも「クール」という観点から選定し取り上げる「今週のCool Deck」。『サンダー・ジャンクションの無法者』という悪役がメインのクールなセット、その新情報が飛び交う中、今週も負けじとクールなデッキを皆にご紹介させていただこう。では早速。
4《湿地の干潟》 1《ロークスワイン城》 4《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》 4《ウルザの物語》 2《ミシュラの工廠》 6《沼》 -土地(21)- 4《ダウスィーの虚空歩き》 4《オークの弓使い》 4《悲嘆》 1《黙示録、シェオルドレッド》 -クリーチャー(13)- |
4《思考囲い》 2《コジレックの審問》 1《精神ねじ切り》 3《致命的な一押し》 1《シェオルドレッドの勅令》 4《まだ死んでいない》 1《マラキールの再誕》 1《死せざる邪悪》 1《塵へのしがみつき》 1《真髄の針》 1《影槍》 3《拷問台》 3《ヴェールのリリアナ》 -呪文(26)- |
2《氷砕き》 1《軍団の最期》 1《滅び》 1《呪われたトーテム像》 1《虚空の杯》 3《減衰球》 1《屍呆症》 1《夢を引き裂く者、アショク》 1《虚無の呪文爆弾》 1《魂標ランタン》 1《真髄の針》 1《戦慄の朗詠者、トーラック》 -サイドボード(15)- |
このクールな黒単はモダンの「黒単想起」。キーカードは《まだ死んでいない》などの、クリーチャーが墓地に置かれたら戦場に戻すインスタントたち。《オークの弓使い》《ダウスィーの虚空歩き》らを戻しても強いが、本命は《悲嘆》。このエレメンタルを想起コストで唱える。マナが要らないので1ターン目から出すことができる。想起で唱えられたクリーチャーは、戦場に出た時に生け贄に捧げる能力が誘発する。これの解決前に《まだ死んでいない》などの対象にとることで、生け贄になって死亡したものが即座に戦場に戻ってくる。《悲嘆》は戦場に出た時に対戦相手の手札を見てその中の土地でない1枚を捨てさせる。これを想起経由で2回行い、1ターン目から対戦相手の手札をグズグズにさせる……という凶悪な攻め方をする、中速のデッキだ。
元々は赤を絡めたものが主流だったが、《激情》が使えなくなったことに伴い、ここ半年ほどの期間で様々な新しい構成の想起デッキが模索されている。この黒単もそういったデッキの一つだ。
このリストの特にクールな部分、それは《拷問台》。《拷問台》だぞ《拷問台》、The Rackだぞオイ。2024年にこのアーティファクトを拝めるなんて嬉しい話だ。《拷問台》は対戦相手の手札が少なければ少ないほどダメージを与えてくれる。対戦相手が手札を握りしめている序盤こそあまり機能しないだろうが、その手札をガスガス削って疲弊させれば……毎ターン3点ダメージを与えるなんてこともできてしまう。何も持たない対戦相手がメキメキと音を立てて歪んでいくのを眺めるのは……手札破壊好きにとってはたまらない瞬間だ。
まあこれ1枚では何もしない、ただダメージを与えるだけで大逆転とかを演出してくれるようなカードではない。正直に言って《拷問台》は趣味のカードだ。でも、趣味に走るのも良いじゃないか。いや、趣味に走ってこそのマジックだろう。現代のカードパワーとか気にせず、愛するカードをデッキに採用することこそクールというものだ。
……と、これで終わっても良いのだが。《拷問台》を見るとどうしてもあるデッキを思い出す。僕もリアルタイムで経験したわけではないのだが、過去のデッキをまとめた図鑑などでそのインパクト溢れる名前と、禍々しいまでにクールなリストにずっと心惹かれている。そのデッキは1995年の世界選手権で優勝した、当時のスタンダードのもの。その名は「黒き拷問台/Rack Control」。
3《アダーカー荒原》 1《地底の大河》 1《底無しの縦穴》 4《ミシュラの工廠》 1《露天鉱床》 12《沼》 3《平地》 -土地(25)- 3《惑乱の死霊》 1《凄腕の暗殺者》 2《センギアの吸血鬼》 -クリーチャー(6)- |
4《暗黒の儀式》 4《トーラックへの賛歌》 1《精神錯乱》 1《破裂の王笏》 1《剣を鍬に》 2《恐怖》 1《闇への追放》 1《黒死病》 3《解呪》 1《天秤》 1《魔力消沈》 3《Dance of the Dead》 1《魂の絆》 2《氷の干渉器》 1《土地税》 3《拷問台》 2《ズアーの宝珠》 -呪文(32)- |
2《ストロームガルドの陰謀団》 4《憂鬱》 2《赤の防御円》 1《黒の防御円》 1《秘宝の防御円》 1《虹色の護法印》 1《青霊破》 1《土地税》 1《魔法改竄》 1《臨機応変》 -サイドボード(15)- |
まず一つ覚えておいてほしいのは、当時のスタンダードには制限カードというものが存在した。デッキに1枚しか入れられない、超強力なカード……このリストの中でのそれは《精神錯乱》だ。対戦相手の手札をX枚無作為に捨てさせる。この無作為というのがえげつない、土地などもおかまいなしにランダムで捨てさせるので、デッキが機能不全に陥ることも起こり得る。そもそもマナを注ぎ込めれば無作為もなにもなく手札をすっからかんにしてやることも可能だ。この大振りな《精神錯乱》と共に《トーラックへの賛歌》を採用。これまた無作為に2枚捨てさせる、鬼だ。当時は《思考囲い》のような狙って捨てさせる類の手札破壊は存在しないが、その分土地すらも捨てさせることができるえげつないラインナップが揃っていたのだ。
このランダムな手札破壊の象徴的な存在が《惑乱の死霊》だ。攻撃が通れば能力が誘発。殴れば殴るほど有利になる、クールすぎるスペクターだ。対戦相手がまだ唱えられない重いカードを片っ端から叩き落として、ゲームが後半になれば逆転……という希望を無に帰す。この死霊は早いターンに出ればそれだけ効果的に働いてくれるので、《暗黒の儀式》から1ターン目の降臨を目指す!この動きは当時、日常茶飯事だったようで、日本のコミュニティではありふれたものを意味する「A定食」という愛称をつけられたそうな。A定食とその他ランダム手札破壊でゴリゴリに手札を削り落とし、《拷問台》でライフを詰める。これが「黒き拷問台」だ。黒き、というが黒単ではなく、極悪制限カードの《天秤》や《魔力消沈》など、白と青が足された構成になっている。制限ではないが1枚挿しのカードも多く、それらがどうして採用されているのか?遠い時代に思いをはせるのもクールなものだ。
30年近く前のデッキを見ていて強く思うのは、サイドボードの色対策カード……強すぎるだろ!現スタンダードでも色対策というものはあるにはあるが、この時代からカードの枠のデザインが旧枠と呼ばれる頃までの色対策はちょっとレベルが違う。
たとえば4枚採用されている《憂鬱》。これが置かれると白い呪文は、例え1マナであっても計4マナ必要になる。桁違いのコスト上昇に震えあがってしまうぜ……プロテクションを持ったクリーチャーも当たり前のように存在しているし、そして何より白を採用しているデッキは防御円サイクルが使用可能!たった{1}でそれぞれ指定されている色の発生源から受けるダメージを軽減して0にしてしまう。《赤の防御円》なんてバーンデッキが貼られてしまった日には絶句だ。こんな色対策全盛期のマジックを戦うには《臨機応変》での対処が求められる。色を書き換えることで対策を空ぶらせたり、むしろ自分のデッキを苦しめるような展開に持っていったり……いつ頃からか全く見なくなったが、昔のセットには青にこの手の色指定を変更するカードやカードの色そのものを変更するカードが収録されているのがお約束だったなぁ。
このデイリー・デッキでも長く言い続けてきたことだが、マジックのデッキというものは今と過去とが繋がることがある。30年を越える歴史が重なる時、その時に感じる者こそが「クール」である。まだまだキャリアが短いあなたも、これから続けて行けば必ずその感覚を味わえる。マジックとは長く関わってほしい、忙しい時などは離れたりしても構わない。余裕がある時、熱中できる時、長く続けていればちょっとしたことが感動となるだろう。
それじゃあ今週はここまで。Stay cool! Feel deck’s history!!
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