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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

イゼット・ウィザード:懐かしさこそモダンの味(モダン)

岩SHOW

 モダンというフォーマットは、20年以上前のセットから今日の最新セットまで、連綿と続くマジックの歴史と、そして『モダンホライゾン』『モダンホライゾン2』『指輪物語:中つ国の伝承』と専用セットとが入り混じるフォーマットだ。特に専用セットはスタンダードを経由しないだけあって実験的なメカニズムを導入し、結果として非常に強力なカードが収録されている。それらホライゾン系と、デザインが洗練された最近のカードとが織り成すマリアージュは強固なデッキを生みだしており、モダンも2020年以降のカードが活躍する環境になりつつある。

 しかし、そういうところにこそモダンの魅力を見いだせるのだと思う。最新鋭のパワーカードがぶつかり合う隙間に、懐かしのカードが姿を見せる時……郷愁的な感情が湧いてきて「モダンって良いなぁ」としみじみと噛みしめるのである。デッキリストが、下町の風景やレトロな絵葉書のように映るのである。今回もそんなリストを見ていただきたく、ここに取り上げることにした。

Torsten Anders - 「イゼット・ウィザード」
Tournament #01/24 @ Comic Portal Fantasy 優勝 / モダン (2024年1月14日)[MO] [ARENA]
2《沸騰する小湖
2《霧深い雨林
1《汚染された三角州
3《蒸気孔
3《尖塔断の運河
3《変わり谷
1《天上都市、大田原
5《
-土地(20)-

4《眠り呪いのフェアリー
4《呪文づまりのスプライト
4《瞬唱の魔道士
2《ティシャーナの潮縛り
3《緻密
-クリーチャー(17)-
4《対抗呪文
2《厳しい説教
2《否定の力
2《呪文貫き
1《呪文嵌め
4《稲妻
2《魔術師の稲妻
4《アノールの焔
2《ロリアンの発見
-呪文(23)-
2《狼狽の嵐
2《虚空の杯
1《呪われたトーテム像
1《激しい叱責
1《厳しい説教
1《神々の憤怒
2《仕組まれた爆薬
2《血染めの月
1《高山の月
2《エレヒの石
-サイドボード(15)-
MTGTop8 より引用)

 

 2023年に追加されたカードの中でも、モダンにおいても存在感を放っている《ティシャーナの潮縛り》。マーフォークデッキではもちろんのこと、青系のインスタントタイミングで動くことを主としたデッキ……「カスケード・クラッシュ」などでも活躍している、能力打ち消しクリーチャーだ。モダンでは《沸騰する小湖》などのフェッチランドや《一つの指輪》《創造の座、オムナス》といった面々の能力を打ち消しつつ能力自体も失わせて無効化する、青いデッキの裏技として存在感を発揮。これをケアしないとひどい目にあうことがモダンでは日常風景の一つに。

 そしてこの潮縛りがウィザードであるため、セットで《アノールの焔》を採用するのもホット。このインスタントはウィザードをコントロールしていれば2つのモードを選べる。2枚ドロー・アーティファクト破壊・クリーチャーに5点……どの組み合わせでもカード1枚でカード2枚分の仕事に繋がるもので、対戦相手にとっては苦い一撃になる玄人好みのモード呪文だ。潮縛りを繰り出して打ち消しつつ、さらにカードを引いたりパーマネントを潰したりと…イゼット(青赤)らしいテクニカルなデッキで輝く組み合わせだ。上記のリストはこの組み合わせを搭載しつつ、他にもウィザードを加えた「イゼット・ウィザード」である!

 このデッキの最軽量のウィザードは《眠り呪いのフェアリー》だ。1マナで3/3、さらに飛行と護法{2}と、カタログスペックは歴代ウィザードでもトップクラスの逸品だ。タダでメリットとしてタップ状態で出てきて、かつ麻痺カウンター3つを持って出てくる。呪いだけあってなかなか冷めない眠りについている。1ターン目に出したこのフェアリー、以降はインスタントを構えつつ、相手が動いてくれば《対抗呪文》などで打ち消し、大きな動きがなければフェアリーのアンタップ能力を起動して麻痺カウンターを減らす……という具合にゲームを進めていく。呪いが解ければあとは3点を刻む(クロック)強力な航空戦力として機能するので、あとはこれを守りながら殴り勝つのを目指す。これがクロック・パーミッションと呼ばれるアーキタイプだ。

 古き良きモダン初期にはイゼット・カラーのこのようなデッキが大会結果のページにリストを連ねていたものである。そんな懐かしのアーキタイプに盛り込まれているのが、今回のテーマである郷愁的な感情に浸らせてくれるカード《呪文づまりのスプライト》だ。めちゃくちゃ懐かしいと思ってくれたそこのあなた!長くマジックに興味を持ってくれてありがとう~ッ!このフェアリーは戦場に出た際に、自身のコントロールしているフェアリーの数よりマナ総量が小さい呪文を打ち消す。これ単体であっても1マナの呪文を打ち消せて便利、2体以上並んでいるコスパ抜群の打ち消しであり、かつ飛行クロックが増える凄いヤツ。どんな相手。どのようなケースでも同じように働いてくれるカードではなく、ムラはあるが……ハマればめちゃ強で、ちょっとクセになる1枚だ。

 これを眠り呪いと《アノールの焔》とセットで用いているリストなわけで、フェアリーとウィザードという2種類のタイプを完璧に活かしきる形にすることでカードのポテンシャルを最大限に発揮させるわけである。ながらく見る機会は減っていたが、モダンのデッキリストを探していて再び呪文散らしに出会えるとは……目頭が熱くなるな(大袈裟)。

 ウィザードデッキということで《瞬唱の魔道士》を4枚フル投入しているのも素晴らしい!最近はMTGアリーナのタイムレスで活躍しており、久しぶりにその便利さを実際のゲームで体験し、強いなぁと唸る機会が復活。かつてのモダンでは無双してたなぁ……と、決して過去のことじゃないぞ!今でもこのような熱いリストに採用されて、《対抗呪文》や《稲妻》をフラッシュバックさせて活躍しているんだなぁと実感。かつては《謎めいた命令》をフラッシュバックさせて、瞬唱自身を手札に戻しつつ打ち消したりクリーチャーをタップするなど、テクい動きで相手を翻弄していた。現在は《アノールの焔》と組み合わせるのがより軽くて現実的なアドバンテージ獲得法ではあるが、マニアの方はまた瞬唱×命令の組み合わせでどうか僕らのようなベテランを泣かせていただきたいものだ。

 今回のリストは単に強く楽しいモダンのデッキを紹介するというだけでなく、旬を過ぎたとされるようなカードでもいつまでもプレイして良い!デッキに採用して良いんだぞ!ということを伝えたくてこのようなコラムを書かせていただいた。モダンやレガシーなどのフォーマットはローテーションがない。新しいカードが参入すると、その分他のカードがスポットライトの下から遠ざかることにはなるが……それはいなくなるということじゃない。カードはあなたのそばにいつまでもあり、それをプレイするのは自由だ。自分の好きだった付き合いの長いカードを使って、それと一緒に勝つためのデッキ作り、たまにでいいから挑戦してみて欲しいね!

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