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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
今週のCool Deck:リビングデス23’(スタンダード)
今週も金曜の夜がやってきた。フライデー・ナイト・マジックでプロモカードを手に入れつつ、地元のコミュニティで仲間を増やす……これ。最高の過ごし方。クールすぎる週末へと突入!というわけで、マジックの構築フォーマットのデッキを「クール」という尺度を第一に分析・賞賛する「今週のCool Deck」の時間がやって来た。さて今週のお題は……
《生ける屍》!そのソーサリー、クールにつき。『テンペスト』がスタンダードで使用可能だった当時、競技プレイヤーだった方……このカードが幾多の勝利(あるいは敗北)をもたらしたことでしょう。僕のように当時マジックを始めたばかりだったプレイヤーの皆……憧れの1枚だったよね。
《生ける屍》はカード名もイラストもクールすぎる。英名は「Living Death」で、なおのことたまらない。初出の頃はカードテキストも独特なもので味わい深かった。「墓地のクリーチャーカードを脇にどける」という謎のアクションを行うように指示されていたからね。今では各プレイヤーが墓地のクリーチャーカードをすべて追放→その後全てのクリーチャーを生け贄→この方法で追放されたクリーチャーを戦場に戻す、とスッキリとわかりやすいテキストに。これは戦場のクリーチャーを全滅させる《神の怒り》のような全体除去でもあり、全てのクリーチャーをまとめて戻すリアニメイト呪文の超強力バージョンでもある。自身のクリーチャーも生け贄になったり対戦相手の墓地のクリーチャーも戻ったりと、融通の利かない点もある。だが5マナのソーサリーにそんな文句を言うのは野暮というもの。うまく相手を誘導しながら墓地を肥やし、《生ける屍》で一気の収穫。この時期に芋を掘り起こすなど、実りの秋を感じさせる光景を目の当たりにすると、このクールなカードのことを思い出す。中学生の時、なんとか手に入れた1枚を切り札に毎日対戦してたなぁ……秋空を眺めて昔を懐かしむ。
《生ける屍》はスタンダードを経由するには強すぎるようで、統率者デッキなどの特殊なセットには再録されるものの、通常セットにはリメイクなどもなかなか収録されることがない。やっぱり盤面のリセットをかねるのがヤバいんだろうね。そこでこの《生ける屍》から除去要素を除き、1枚で複数体蘇らせるリアニメイト呪文、という形に範囲を狭めたものが時折姿を現す。
『エルドレインの森』では《リッチの騎士の征服》がそのポジションを務めている。リッチとは不死者、アンデッド、ゾンビのこと。ただの死体が蘇ったゾンビと異なり、より高位な魔法の力で不死となった者・知性や理性を残したままの者をこう表現するね。エルドレインの僻境ではリッチの騎士が徘徊しており、危険な存在になっているという。まさしく生ける屍の騎士が墓地からやってくるというわけで、このソーサリーは解決時にアーティファクト・エンチャント・トークンを望む数だけ生け贄に捧げ、その数に等しいだけのクリーチャーを復活させる。生け贄に捧げても痛くない置き物や、カード1枚から複数体のトークンを生成できるものなどと組み合わせて、損失をほとんど受けずに強力なクリーチャーをいただく……望むがままの構築ができれば、かつての《生ける屍》の気分を味わえるかもしれない。
というわけで今回紹介するクールなデッキは、スタンダードの「リビングデス」!
4 《ラフィーンの塔》 4 《闇滑りの岸》 4 《難破船の湿地》 1 《天上都市、大田原》 1 《見捨てられたぬかるみ、竹沼》 2 《爆発域》 1 《ミレックス》 4 《沼》 3 《島》 -土地(24)- 3 《ファイレクシアの肉体喰らい》 3 《産業のタイタン》 2 《偉大なる統一者、アトラクサ》 1 《発展の暴君、ジン=ギタクシアス》 -クリーチャー(9)- |
2 《切り崩し》 2 《喉首狙い》 2 《シェオルドレッドの勅令》 3 《危難の道》 4 《蒐集家の保管庫》 1 《アイレンクラッグ》 1 《侵略樹、次元壊し》 3 《リッチの騎士の征服》 1 《ギックスの残虐》 2 《多元宇宙の突破》 2 《執念の徳目》 4 《完成化した精神、ジェイス》 -呪文(27)- |
-サイドボード(0)- |
2023年、スタンダードに舞い戻った《生ける屍》で釣り上げるのは勿論!ドでかくてパワフルで、そしてクールなクリーチャー。リアニメイトと言えばこの方、定番の1枚となった《偉大なる統一者、アトラクサ》。圧倒的な戦闘力で、毎ターン攻撃しているだけで対戦相手とこちらのライフ差が離れていく。逆転を可能にする超スペック、呪禁や破壊不能などの除去耐性はないものの、手札を一気にガッポリと稼ぐ能力で二の矢三の矢に繋げる。これで次のクリーチャーを持ってきたり、あるいは《リッチの騎士の征服》をおかわりしたりと、隙のないゲームの支配者だ。
そしてこのリストには《産業のタイタン》がアトラクサよりも優先して採用されている。こちらの巨大エレメンタルも到達とトランプルでブロック役でも攻撃役でも優秀。絆魂のあるアトラクサに比べると継続して回復できるわけではないが、タイムラグなく5点回復できるというのはアグレッシブなデッキに対して大きな強みだ。アーティファクトorエンチャント破壊、盾カウンターを置くなど様々な対戦相手に対応できる柔軟さがクール。4/4のサイを引き連れてくることも可能で、トークンを生成するということはそれを餌に次の《リッチの騎士の征服》の下準備にもなる。リアニメイト系のデッキはこういったしぶとさ・粘り強さ・簡単に対処されないものを優先して採用するように意識すればよりクールなものになる。
他のクリーチャー陣は……《ファイレクシアの肉体喰らい》、これはリアニメイトしても強いし、序盤は試作で3マナで唱えても良い。時間稼ぎができるやり手であり、アーティファクトなので征服のための生け贄にもなってくれる。素出しも狙っていく柔軟な肉体喰らいに比べて、《発展の暴君、ジン=ギタクシアス》は専らリアニメイト先として用いる枠。戦闘面ではそれほど頼りにならないが、対戦相手のインスタント・ソーサリー・アーティファクトに対して強烈な制限をかける。各ターンの最初に唱えられたそれらの呪文は打ち消されるので、アトラクサやタイタンらとまとめて釣って《太陽降下》などを恐れないリッチ騎士団を結成して一気に勝負に出ようではないか。こちらの同タイプの呪文は1ターンに一度コピーされるので、征服で釣ってすかさず《喉首狙い》をコピーするような動きが決まれば最高にクールを感じられることだろう。
リアニメイトデッキの重要なファクター、墓地にカードを落とす手段。このデッキでは《蒐集家の保管庫》《完成化した精神、ジェイス》らを用いる。特に、手札にきた大物を落とす保管庫は宝物も生成するので、征服のための生け贄をこれで複数個用意できるのでうってつけだ。ジェイスは切削しつつドローもできるので手札を減らさずに下準備が可能で、相手クリーチャーのパワーを下げてコンボまでの時間を稼いだり、あるいは対戦相手のライブラリーを切削して勝利に向かったりと、何でもできるクールガイ。今年の初頭に出た時から時を経て、このカードの評価も確実に上昇しているよなぁと感じるよ。
上記のカードで墓地が増えるので、征服以外にも墓地からクリーチャーを釣り上げる手段を用意してリアニメイトを完遂するパターンを増やしてあるのもこのリストの特徴だ。3種類用意されたもの、いずれも対戦相手の墓地からも釣れるのも注目すべき点。この点からもジェイスがいかに重要な役目を担っているかよくわかる。3つのモードどれもが強い《ギックスの残虐》、ギタクシアスでコピーしたりジェイスと絡めてライブラリーアウト勝ちの突破口も切り開く《多元宇宙の突破》、そして出来事除去でもあり長く堪能できる《執念の徳目》……そのどれもがクール。《リッチの騎士の征服》と揃った豪華ラインナップ、君が一番グッとくるのはどれかな?
懐かしの《生ける屍》、そしてその魂を継ぐ《リッチの騎士の征服》。どちらも墓地から複数体のクリーチャーをリアニメイトできる、胸躍るクールな呪文。マジックの思い出、楽しさ、様々な感情……それらはすべて蘇るもの。一時期プレイしていたけども今は離れている、そんな方が当時好きだった《生ける屍》で検索してたまたまヒットしたこのコラムから、今現在のマジックにも興味を持ってくれたりなんかしたら……それが最もクールな瞬間かな。
それじゃあ今週はここまで。Stay cool! Wake up the dead!!
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