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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

ディミーア・ローグ:マスターがスポットライトを浴びる時(パイオニア)

岩SHOW

 プレイヤー・スポットライト・カードをご存じだろうか。その名の通りプレイヤーにスポットライトを当てる1枚のことで、プレイヤーとは競技プレイヤー、中でもその頂点に君臨する者と呼べる、世界選手権王者のことである。世界チャンピオンになった副賞として、君が現実のカードになる!と、つまりはこういうこと。カードのイラストには王者をモデルとしたキャラクターが描かれ、またそのカードのデザインの一部に王者は関わることになる。

 自分好みのマイカードが作られ、マジックの正式なセットに含まれることになるのだ。これ以上の名誉があるだろうか。これにあたるカードは現状、3種類存在している。過去に作られた2枚はいずれも強力で、スタンダードはもちろんのこと他のフォーマットでも活躍したこともあって、いつまでも記憶に残る1枚となっている。

 そんなプレイヤー・スポットライト・カードの最新作が『機械兵団の進軍』にてデビューを果たした《フェアリーの黒幕》だ!モデルおよびデザインを務めたのは第27回マジック世界選手権王者の高橋優太選手。彼はプロプレイヤーとして15年以上活動しており、そのキャリアの最初期にプロツアー準優勝など輝かしい成績を残している。その名が世界的に知られるようになったのは、やはり2008年のグランプリ連覇。スタンダードとブロック構築と異なるフォーマットながら、両方で「青黒フェアリー」を用いての優勝はまさしく“フェアリーマスター”。《フェアリーの黒幕》の英名にもそのフレーズが含まれている、こだわってデザインされた逸品だ。

 マナ総量が軽くシングルシンボル、青い瞬速持ちのフェアリーということでモダンやエターナル環境などで用いることも視野に入れて作られたこのクールな1枚は、ドローに関する能力持ち。対戦相手が1ターンに2枚目のカードを引いたら能力が誘発、こちらも1枚ドローできるというなんともいやらしいアドバンテージの取り方をしてくる。《鏡割りの寓話》などに合わせて飛び出せば、手札を減らさずに航空戦力を確保できるというスタイリッシュさ。また自身の能力を起動すれば対戦相手に強制的にカードを引かせられるので、相手のターンに起動してこっちは2枚引くという強引な手札補充で気持ち良くなれる。

 この黒幕にはならず者のタイプも与えられていることには要注目。フェアリーもこれを主役にした部族デッキが作られるものではあるが、ならず者はもっと構築のハードルが下がる。パイオニアなんかでたまに見かける「ディミーア(青黒)ローグ(ならず者)」なんかに採用されていたりしないかなと探してみれば……お、いたいた。

Mzfroste - 「ディミーア・ローグ」
Magic Online Pioneer Challenge 5位 / パイオニア (2023年4月29日)[MO] [ARENA]
4 《闇滑りの岸
4 《湿った墓
4 《清水の小道
1 《ロークスワイン城
2 《目玉の暴君の住処
2 《天上都市、大田原
4 《
2 《
-土地(23)-

4 《盗賊ギルドの処罰者
4 《空飛ぶ思考盗み
4 《フェアリーの黒幕
2 《厚かましい借り手
1 《夜鷲のあさり屋
-クリーチャー(15)-
4 《思考囲い
4 《湖での水難
2 《呪文貫き
3 《致命的な一押し
1 《喉首狙い
2 《シェオルドレッドの勅令
2 《物語への没入
1 《アガディームの覚醒
3 《漆月魁渡
-呪文(22)-
2 《神秘の論争
2 《否認
2 《レイ・オヴ・エンフィーブルメント
2 《強迫
2 《未認可霊柩車
2 《夜鷲のあさり屋
1 《シェオルドレッド
2 《アモンケットへの侵攻
-サイドボード(15)-
Magic Online より引用)

 

 Magic Online上のイベントにて上位入賞した《フェアリーの黒幕》入りローグデッキの登場だ。ならず者の特徴として、単純な戦闘用クリーチャーとして見た場合はスペックが高くない。サイズで押す殴り合いは不得意で、飛行などの回避能力でブロックをすり抜けてコツコツとダメージを与えるのが常套手段となる。接死でサイズに勝るクリーチャーに睨みを利かせるのも得意。そして対戦相手に対する嫌がらせもお家芸!特にライブラリーの切削や墓地の枚数に関する能力を持ったものが一時期量産され、それらを組み合わせて対戦相手のライブラリーを切削し、有効なカードを引けないような状況に陥らせつつビートを刻んでいくというデッキが誕生した。ライフだけでなくライブラリーも0枚にして勝つという、2つのリソースを同時進行で攻めるというのがこのアーキタイプの特徴だ。

 ならず者が戦場に出ると切削する《盗賊ギルドの処罰者》、そしてならず者の攻撃で切削を行う《空飛ぶ思考盗み》がこのデッキの主役。これらで効果的にライブラリーを削り取りながら、同時に打点も高めていく。そのためには低コストのならず者が必要であり、《厚かましい借り手》などが用いられた。そしてこの枠に新たに《フェアリーの黒幕》が迎え入れられたわけだ。瞬速で隙なく展開、飛行で地上の状況に関わらず攻撃できるので切削をスムーズに進行していける。さらに対戦相手にカードを引かせる能力も、ライブラリーを0枚にして勝つルートを後押しするものであり噛み合っているということだね。

 対戦相手の墓地が貯まっていくことでボーナスを得るカードはならず者以外にもある。《湖での水難》はゲームが進めばあらゆるクリーチャーを除去し、ほとんどの呪文を打ち消せる最強のコントロール要素に!《物語への没入》は4マナ4ドローとマナ効率抜群の手札補充に!といった具合に相手の墓地の枚数を参照するカードは採用し得というところ。

回転

 このリストの意欲的なところは、サイドボードに《シェオルドレッド》を採用している点。これはアツい、確かに彼女も対戦相手の墓地が8枚以上あることが変身の条件だ。ローグであればこの問題は比較的簡単に解決してくれるので、ゆったり戦うマッチアップでは《真実の経典》を降臨させて多大なるアドバンテージを得てしまおう。切削したクリーチャーが全てこちらの軍勢となる光景は圧巻!

 プレイヤー・スポットライト・カードの新顔、《フェアリーの黒幕》がどれほどの活躍を見せるのか。1年後、2年後、そのまた先が楽しみだ。いつかは君もこのスポットライトを浴びるプレイヤーになれるかもしれない。そういう夢を追いかけて、老いも若きも未来のチャンピオンを目指してほしいね。

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