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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

ジェスカイ・ブリーチ:最強カード議論?(モダン)

岩SHOW

 マジック史上最強のカードとは何だろう。これに関しては「答えは出ない」ものと結論付けるのが健全だというのが僕がマジック人生を通じて出したアンサーだ。

 マジックの歴史30年、むちゃくちゃ強いカードはそりゃあいっぱい作られてきたけども、その中でも選りすぐりのぶっ飛んだやつらは存在する。だけどもマジックの面白いところは、盤面・状況・対戦相手の使用デッキなどなど様々なファクターでカードの持つ力が変化するという点。どんなシチュエーションでも強いカードは存在しないとさえ言い切れるものであり、つまりは最強を決めることは不可能であり意味はない……と思う。

 ただそれはそれとして「あのカードって狂ってたよな」「頭がおかしくなるくらい強くて笑っちゃったよ」と強力無比、極悪なまでに強かったカードたちを振り返りつつワイワイ談笑するのはとても楽しいものだ。

 僕だったら何のカードを挙げるか。それはその時々で多少変化するものの、どんな時でも「ある1枚」を推すことは間違いないと断言できる。そのカードに対する思いは信仰心にも近いものがある。《ヨーグモスの意志》だ。

 このソーサリーはそれ自身が対戦相手にダメージを与えたり、パーマネントを破壊するわけではない。墓地にカードがなければ何もしないし、墓地を追放するなどの対策カードで比較的簡単に封じられてしまう。

 しかしながら十分な量の墓地があり、対策もない状況下であれば……これは正気とは思えない、まさしく狂気の如きアドバンテージをもたらすのだ。《暗黒の儀式》などのマナ加速と組み合わさることで、除去されたクリーチャーを蘇らせ、コントロール用のカードを再利用し、コンボを強引に成立させる……墓地から呪文を唱える、それだけでも強いのにその枚数に制限を設けていない《ヨーグモスの意志》は強すぎた。ヴィジュアル面でも最高に優れているのがまたたまらないのだ。

 過ぎたる強さゆえに《ヨーグモスの意志》をそのまま復活させるわけにはいかないが、これを模したカードは以降も続々と作られて今日に至る。そんな後継カードの中でも、最近注目度が高まっているのが《死の国からの脱出》だ。

 《ヨーグモスの意志》のように好き放題やってしまえというわけではなく、他のカードを3枚追放するというコストを要求してくるが……墓地から複数枚の呪文を唱えられる、大変に優れた再利用系カードである。ヨーグモス同様、たっぷりと墓地が膨れ上がっている状況下でのこのカードがもたらすアドバンテージはゲームをひっくり返すのに十二分となる。

 このエンチャントは特にライブラリーを引き切ったり切削しきったりして、ライブラリーを空にして《タッサの神託者》で勝つコンボデッキを成立させてきた。今回紹介するのも脱出コンボ、と思わせてそうではない。ちょっと変な表現ではあるが、現在このカードは「真面目に墓地を再利用するカード」として注目されている。コンボを狙わなくても十分に強い。わかりきっていたことかもしれないが、正統派の使い方がスポットを浴びているという面白い状況にあるのだ。

 では、2023年1月現在、モダンでその数を増やしている「ジェスカイ(白青赤)ブリーチ(脱出)」デッキを紹介しよう!

Albert Cordobés - 「ジェスカイ・ブリーチ」
Classic Qualifier Trieste 17位 / モダン (2023年1月15日)[MO] [ARENA]
4 《沸騰する小湖
3 《溢れかえる岸辺
1 《乾燥台地
4 《尖塔断の運河
2 《蒸気孔
1 《神聖なる泉
1 《聖なる鋳造所
1 《焦熱島嶼域
1 《
1 《
-土地(19)-

4 《敏捷なこそ泥、ラガバン
4 《ドラゴンの怒りの媒介者
4 《帳簿裂き

-クリーチャー(12)-
4 《ミシュラのガラクタ
4 《考慮
4 《表現の反復
4 《稲妻
3 《邪悪な熱気
1 《虹色の終焉
3 《呪文貫き
4 《死の国からの脱出
2 《時を解す者、テフェリー
-呪文(29)-
2 《激しい叱責
2 《狼狽の嵐
2 《血染めの月
2 《摩耗 // 摩耗
2 《仕組まれた爆薬
2 《虹色の終焉
2 《神聖なる月光
1 《湧き出る源、ジェガンサ》(相棒)
-サイドボード(15)-
Melee より引用)

 

 モダンはスタンダードやパイオニアよりも使用可能なカードの種類が大幅に増える。そのためマナ総量0~2の範囲に強力なカードが多数ひしめいている。クリーチャーには《敏捷なこそ泥、ラガバン》《ドラゴンの怒りの媒介者》《帳簿裂き》と軽くて攻めるのにうってつけなクリーチャー、《邪悪な熱気》《虹色の終焉》《呪文貫き》などの妨害手段、それらを引き込む《考慮》《表現の反復》。これらの優秀な軽いカードを1ターンに複数回唱えて、手数で戦う。

 プレインズウォーカーや巨大なクリーチャーを運用するような、カード単体の質で勝負するデッキと相反するフットワーク重視なこのようなデッキを「テンポデッキ」と分類することがある。上記のものは「ジェスカイ・テンポ」と呼んで差し支えのないリストだ。

 テンポデッキは軽いカードばかりで構成されるというその特性上、長期戦が苦手というのが常である。序盤のゲームをコントロールするのは得意、軽いクリーチャーでラッシュを仕掛けてサクッと勝ってしまう先行逃げ切り型のデッキであるが、ゲームが長引けば3マナ以下のカードと4マナ以上のカードで正面からぶつかり合うことになり、どうしても力負けしてしまう。特にリソース(資源)を稼ぐというのは苦手なジャンルである。

 その不得意な部分を《死の国からの脱出》でカバーする、というシンプルな発想が取り入れられたデッキが絶賛活躍中。除去されたクリーチャーを再出撃させたり、《稲妻》の連打を本体に撃ち込んでライフを削り切ったりと勝利を手繰り寄せる様はまさしく現世に蘇った《ヨーグモスの意志》!何度も言うように墓地が貯まっていなければ働かないカードではあるが、ご安心を!

 テンポデッキは行動回数が多いので自然に墓地が貯まる。モダンなので土地は《沸騰する小湖》らフェッチランドに《焦熱島嶼域》と生け贄に捧げられるものを主体にできる。それに加えて《考慮》《ドラゴンの怒りの媒介者》《帳簿裂き》と、墓地を肥やすカードは自然と揃っている。わざわざ下準備に注力しなくても、脱出をしっかり運用することが可能というわけだね。

 1ターン目に媒介者→2ターン目に帳簿裂きからの《ミシュラのガラクタ》と動いて両者の能力を誘発+フェッチランドを絡めて、2ターン目から昂揚を達成して媒介者が3/3飛行になって攻撃。これが理想的ムーブの最たるもの。他を寄せ付けない猛攻で秒殺して良し、ちょっと長引きそうな展開に陥っても脱出が手数を取り戻してくれるので良しと隙のないデッキが完成だ。

 《死の国からの脱出》もまた先代のように後世に語られるクラスの1枚である。制約を設けることで許された圧倒的アドバンテージ、このカードを堪能するためにモダンをやる。そういう動機でデッキを組むのも良いんじゃないかな。使えるものをなんでも使ってこそのマジック。モダンだからこそのデッキ、体験してみよう!

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