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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
サイ続唱:裏技大集結(モダン)
「裏技」という言葉、すっかりあらゆるジャンルで用いられるようになった。
主にゲームの界隈で用いられるもので、そこから発展して生活の知恵的なものも裏技と呼ばれるようになった。歴史としては1984~85年頃には制作側の意図せぬテクニックを裏技と表記した媒体が出回りはじめていたとのこと。それよりも早く、プロレス業界にて表で出回っていない知られざる裏の技というニュアンスで用いられていたという言い伝えもあるのだが、結局のところこの手の言葉の初出に関する真偽のほどは不明なことが多いね。
いずれにせよ、日常会話において「裏技」というフレーズは頻繁に飛び交うものになった。マジックというゲームにおいても「裏技」や「シークレットテク」というフレーズを使っても何も違和感はなく意図を伝えられるだろう。デザイナー側が意図していないかどうかは別として、意外な組み合わせが想像もしなかった形で火を噴くパターンというのは思わず「裏技」と呼びたくなってしまう。
今回はそんな裏技を搭載したデッキを紹介するわけだが……いきなりその正体を明かすと……《衝撃の足音》コンボだ。
このソーサリーにはマナ・コストが設定されておらず、そのために手札から普通に唱えることが不可能になっている。待機能力で追放して、時間をかければ唱えることは可能だが少々悠長というもの。
そこで使われる裏技が「続唱」。ライブラリーからそれを持つ呪文よりもマナ総量が小さい呪文・カードが公開されるまで捲り続け、それをマナを支払うことなく唱える能力だ。
待機呪文はマナ・コストを持たないため、それのマナ総量は0ということになる。つまり続唱から問題なく唱えられるのだ。そもそもコストが支払えないものを、コストの支払いなく唱えるというのはいかにも裏技チックだ。
3マナの続唱呪文を中心に搭載し、狙いの待機呪文以外はすべて3マナ以上のものでデッキを構成すれば確実に唱えられるデッキとなる。
続唱1枚から《衝撃の足音》に確実にアクセスして3マナで4/4トランプルが2体に+αという、実質1枚コンボであり非常に強力なこのムーブは、現行モダンにおいて有力なデッキとして1つの勢力を築いている。
《断片無き工作員》《暴力的な突発》と優秀な続唱を抱える青赤緑の3色を中心とした構成で組まれるこのデッキは、もう1つの裏技を内包している。
続唱デッキはマナ総量3未満の呪文を搭載できないため、1~2ターン目のアクションに乏しいデッキになってしまう。そこであの手この手の工夫で、最序盤に用いることが可能なカードをねじ込んでいる。
特にクリーチャーをはじめとするパーマネントへの除去はコンボ成立までの時間を生き延びるために無視できない重要なもの。
「軽い呪文」を0枚に抑えつつ「軽い除去」を盛り込む方法とは……実際にリストを眺めつつ解析していこう。
1 《森》 1 《島》 1 《インダサのトライオーム》 1 《ザンダーの居室》 1 《繁殖池》 1 《踏み鳴らされる地》 1 《寺院の庭》 1 《蒸気孔》 4 《霧深い雨林》 4 《樹木茂る山麓》 4 《溢れかえる岸辺》 2 《宝石の洞窟》 1 《焦熱島嶼域》 1 《天上都市、大田原》 -土地(24)- 4 《断片無き工作員》 1 《秘儀の代理者》 4 《激情》 -クリーチャー(9)- |
4 《衝撃の足音》 4 《否定の力》 4 《暴力的な突発》 3 《献身的な嘆願》 4 《力線の束縛》 4 《火 // 氷》 4 《死亡 // 退場》 -呪文(27)- |
1 《宝石の洞窟》 4 《忍耐》 4 《神秘の論争》 2 《血染めの月》 4 《活性の力》 -サイドボード(15)- |
まずは最も分かりやすいアプローチ、マナ・コストを軽減できるカード。本来与えられたマナ総量は3以上だが、条件を満たすことでもっと軽いコストで唱えられるものを用いるという方法だ。
これすなわち《力線の束縛》! 現在、さまざまなフォーマットで輝いている旬の1枚だ。
《インダサのトライオーム》と《ザンダーの居室》や《蒸気孔》の2枚が並べば{W}で唱えられるので、《霧深い雨林》など用いて2ターン目から投げつけることが可能だ。
コスト軽減と同類として《激情》と《否定の力》、サイドの《忍耐》《活性の力》といった呪文は代替コストを支払うことでマナを用いずに早いターンから運用が可能。
これらはアドバンテージの喪失を引き換えにしているが、手札1枚を切った代償は続唱で取り返すことができるし、一部のカードはそもそも22枚以上のカードに対処して損をしない代替コスト呪文として設計されているのが強い。
それから……これは実に裏技チックなのだが《火 // 氷》、そして《死亡 // 退場》。
これらは分割して見ると3マナ未満の呪文のようだが、分割カードの特性として、スタックにある時以外はカードに印刷されている両方の半分のマナ・コストを合計して扱われるため、続唱でめくれたとしてもマナ総量3以上の呪文としてスルーされるのだ。つまりは《衝撃の足音》を阻害せずにデッキ内に2マナ以下の呪文を採用するという、これぞ裏技というわけ。
マナ・コストを持たない呪文を唱える続唱、そしてそれらと共存する実質低コストの呪文群。マジックはデッキ構築時からテクニックを駆使して戦うゲームだ。
裏技を駆使し、カードが持つポテンシャルを最大限に発揮させることこそマジックの醍醐味。君の持っているカードにも、実は思いがけない使い道があるかも?
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