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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
アーティファクトと、そして……大鹿?(パイオニア)
マジックはゲームが始まるまで相手のデッキがわからない、というのが対戦の醍醐味であると考えている。ある種のびっくりドキドキ玉手箱的な……こちらのデッキで対戦相手も驚いてくれたり、何かしらのリアクションをしてくれると嬉しいものでもある。
また、相手が何かわからないからこそマリガンの判断が難しく、そして面白い。「相手がクリーチャーデッキだったらこの除去山盛りハンドは強いけど……」という具合に。
そして最初の1・2ターンで答え合わせ。キープして正解だった! フライデー・ナイト・マジックなどのそういう瞬間がなんだか楽しくってね。
ここ最近の主流であったオンラインでの競技イベントにおいては、公平性の観点からデッキリストはイベント開始と同時に公開されるようになっている。これはこれで懸かっているものの大きい競技マジックにおいては大事なことではあるが、草の根大会と呼ばれるようなローカルコミュニティにおけるトーナメントであれば、相手のデッキがわからないからこそのゲーム体験を味わってほしいところ。「お~そのデッキですか」っていう、あの感じが良いんだよなぁホント。
このデッキ内容が不明というマジックの大前提をほんの少し覆すというか、一種の揺らぎを与えるカードが相棒クリーチャー。全10種類の相棒クリーチャーはいずれもサイドボードに含まれていることがゲーム開始前に明示される。「私の相棒は《獲物貫き、オボシュ》です」と。
この事前情報により、相対するプレイヤーは対戦相手のデッキを推測することが可能となる。オボシュの色、黒か赤はデッキに含まれている。そして相棒にするための条件としてデッキ内には奇数のマナ総量のカードしか存在しない、これだけあればかなりの情報だ。人気が高く、特定のデッキを象徴するような相棒であればデッキがバレているも同然である。
パイオニアおよびエクスプローラー環境では《湧き出る源、ジェガンサ》を相棒としているデッキを目にする機会が少なくない。
これを相棒に据えているデッキの多くは《魔女のかまど》《大釜の使い魔》などの食物&生け贄エンジンを備えたフードデッキ、あるいは軽量のカードで固められた赤単のバーン、そして《ニヴ=ミゼット再誕》5色デッキなど。同フォーマットに慣れていればこれらのデッキのいずれかだろうと考えながら初手のキープかマリガンを考えることになる。
そんな読みを打ち崩すデッキがあれば、これは相手のデッキがわからないからこそのドキドキとはまた別のサプライズをもたらすことになるよね。
3 《島》 3 《平地》 4 《神聖なる泉》 4 《ダークスティールの城塞》 4 《産業の塔》 1 《発明博覧会》 -土地(19)- 4 《羽ばたき飛行機械》 4 《ボーマットの急使》 4 《ジンジャーブルート》 4 《巧妙な鍛冶》 4 《石とぐろの海蛇》 -クリーチャー(20)- |
4 《ポータブル・ホール》 4 《バネ葉の太鼓》 1 《ウォーターディープの黒杖》 4 《アーティファクトの魂込め》 4 《魅知子の真理の支配》 3 《長所食い》 1 《影槍》 -呪文(21)- |
1 《湧き出る源、ジェガンサ》 -相棒(1)- 4 《頑固な否認》 3 《真髄の針》 2 《魂標ランタン》 3 《風化したルーン石》 2 《減衰球》 -サイドボード(14)- |
というわけでパイオニアの「魂込め」デッキをご紹介。その名の通りキーカードは《アーティファクトの魂込め》。
これで軽量のアーティファクトを5/5というジャイアントなサイズのクリーチャーへと変貌させ、一気に殴り勝つのを狙っているアグレッシブなデッキだ。
最近は魂込めに加えて《魅知子の真理の支配》をアーティファクト強化要素として採用。
《巧妙な鍛冶》でアドバンテージを取ったり、《ポータブル・ホール》でパーマネントへの対応力を上げたり、青に白を加えた形が強く柔軟な構成として主流だ。
《羽ばたき飛行機械》《ジンジャーブルート》と軽量コストで回避能力を持ったもの、破壊不能を持つ《ダークスティールの城塞》と、パイオニアには魂の込め甲斐のあるアーティファクトが揃っている。これらを強化して殴る、シンプルなパンチ力が最大の武器である!
で、このデッキ。まさかの相棒ジェガンサ仕様なのだ。
そもそも赤/緑のカードを看板にしておいて青白デッキというのはかーなーり、サプラァイズ。《産業の塔》があるからこそできる強引な裏技だな。
ジェガンサの相棒条件は、デッキ内に同一マナシンボルを複数個持ったコストのカードが存在しないこと。いわゆるダブルシンボルやトリプルシンボルなど、色濃いコストを持ったカードは使えないというわけだ。
そもそも無色のカードが多く、キーカード《アーティファクトの魂込め》も《魅知子の真理の支配》もこの条件を問題なくパスできるので、ジェガンサを相棒にすることができるという寸法だ。
相棒は手札に加えるために3マナ必要、ジェガンサはマナ総量5とトータルで8マナ必要。戦闘に関する能力は持たず、5色のマナを得てもこのデッキではほとんど使い道はない。そんなわけでこの相棒を唱えることは別に重視しておらず、なんならこれを用いる展開にはならないことが望ましい。
だったら何で?と採用理由を問われるかもしれないが、いざという時の保険はあるに越したことはない。お互いにクリーチャーを展開しては除去されを繰り返し、手札も盤面もすっからかんの状況。そこに舞い降りるジェガンサは勝負を分ける要素になり得るってこと。
保険とは言ってもそれを用いるためにデッキ構築を歪ませ、結果としてデッキパワーを下げてしまっては意味がない。魂込めプランはシングルシンボルのみでデッキが組めるという下地があるからこそ、ということをお忘れなく。
ジェガンサを見たら「相手のデッキは……」と思い浮かべる選択肢に「青白魂込め」も含めた方が良いかもしれないな。こういう部分も含めて、マジックはぜひ対戦開始時から楽しんでほしいね。
着席しながら挨拶、スリーブやプレイマットなどの雰囲気から相手のデッキを思い浮かべながらシャッフル、そしてマリガンチェック……この瞬間が一番好きな人、かなり多いと思うんだよなぁ。
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