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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
BIG RED(ヒストリック)
昨年のマジック的に良かったこと、僕個人としては黒田さんと久しぶりに会い、そしてともに実況を行ったことが一番かな。
黒田正城、日本人初のプロツアー(今で言うセット・チャンピオンシップ)にて優勝したプレイヤーとして、日本競技マジック史にその名を輝かせる……大阪のおっちゃんである。
黒田さんとも付き合いはそれなりに長くなったもので……ともにさまざまなイベントの実況・解説として日本のあちこちや世界のあちこちを巡ったものだ。オランダから帰国した際に、麻薬捜査犬が反応したとかで2人そろって荷物検査を受け、2人とも荷物の中にどっかり入っているマジックのカードについて質問されたのも良い思い出である。
この世界情勢になって以来、約2年ぶりかなぁ実際に顔を合わせたのは。オンラインのイベントで共演して声は聴いていたが、実際に顔を合わせるのはやはり違うもの。マジック関係の友人知人とは本当に会う機会が失われていたので、あの再会は嬉しかったなぁ。
関西ノリを押し出した2人でのやりとりもやっぱり楽しく面白いもので、おそらくは実況を観てくれたお客さんよりも僕らの方が燃え上がってしまったのではないかな(笑)。
そんな黒田さんのデッキと言えばやっぱりこれ!
16 《山》 4 《ちらつき蛾の生息地》 4 《ダークスティールの城塞》 -土地(24)- 4 《真面目な身代わり》 4 《弧炎撒き》 -クリーチャー(8)- |
4 《静電気の稲妻》 4 《爆片破》 4 《とげの稲妻》 4 《減衰のマトリックス》 4 《溶鉱炉の脈動》 4 《爆破》 4 《火の玉》 -呪文(28)- |
3 《炉のドラゴン》 4 《残響する破滅》 2 《衝動のタリスマン》 2 《耽溺のタリスマン》 4 《溶鉄の雨》 -サイドボード(15)- |
黒田さんがチャンプの座に君臨した時の相棒、「ビッグ・レッド」だ。
BIG RED、デカい赤。良い響きだ。フォーマットは『ミラディン』ブロック構築。アーティファクトであふれたこの次元で、それらを主体としたデッキに対抗するためにアーティファクト破壊およびクリーチャー除去を中心とした構成になっている。
クリーチャー除去はダメージ呪文、いわゆる火力が務め、その多くはプレイヤーにもダメージを与えるもの。なのでこれらをプレイヤーにガンガンぶち込んで一気にゲームを終わらせる攻撃性も併せ持っている。
BIGの名の通り、《弧炎撒き》や《爆破》《火の玉》などマナを注げば大きな効果をもたらす大型呪文が主体となっている点が一般的なバーンデッキとの大きな違い。
それを支えるために《真面目な身代わり》やサイドのタリスマンでマナを伸ばす、ランプ的なアプローチを併せ持っている。
メインデッキはビシッと同名カード4枚採用が並び、リストのビジュアルも非常に美しい。
先日あんちゃん達と飯に行ったとき話題に出て、懐かしい気持ちになったので引っ張り出してきた。
— Masashiro Kuroda (@masashiro41236) November 11, 2021
4×9=36枚+土地24枚のメインと、4443のサイド。今まで使ってきたデッキの中で一番シンプルで美しい。今見ても本当によくできていると思う。 pic.twitter.com/7IchSaVYWI
制作者はローリーさんこと藤田剛史。日本人最初のプロツアー殿堂顕彰者であり、日本の競技シーンを黎明期から引っ張り続けたデッキビルダーだ。ローリーさんともしばらく会っていないなぁ。
黒田さんは当初このリストの《減衰のマトリックス》などのカードがデッキに入っている理由がよくわからず、なんでこんな弱そうなカードが……と思いながらこのデッキでプレイしていたそうだが、使えば使うほどに採用されているカード1枚1枚の意味が分かり、やっぱりローリーさんは凄いなと感動したそうである。
もう20年近く前のエピソードだが、今聴いても色褪せないマジックの熱さが詰まった逸話だな。
この「デカい赤」というデッキの系譜は今日までも続いている。赤はインスタントやソーサリーでの瞬間的なマナ加速を担当する色でもあり、近年でも《アイレンクラッグの妙技》という4マナから一気に7マナにジャンプするパワフルな1枚が登場したのも記憶に新しいところ。
今日はもう1つ、ヒストリックにおける「ビッグ・レッド」の姿を見てもらおう!
12 《山》 2 《大瀑布》 2 《爆発域》 2 《廃墟の地》 1 《這い回るやせ地》 1 《光輝の泉》 1 《発明博覧会》 -土地(21)- 4 《真面目な身代わり》 1 《不屈の巡礼者、ゴロス》 2 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》 -クリーチャー(7)- |
4 《棘平原の危険》 3 《大祖始の遺産》 4 《冷鉄の心臓》 4 《精神石》 2 《神々の憤怒》 3 《アイレンクラッグの妙技》 1 《見捨てられた碑》 1 《勝負服纏い、チャンドラ》 2 《反逆の先導者、チャンドラ》 2 《大いなる創造者、カーン》 1 《ウルザの後継、カーン》 2 《人知を超えるもの、ウギン》 1 《目覚めた猛火、チャンドラ》 3 《精霊龍、ウギン》 -呪文(33)- |
1 《ボジューカの沼》 1 《熱烈の神ハゾレト》 1 《隕石ゴーレム》 1 《白金の天使》 1 《トーモッドの墓所》 1 《墓掘りの檻》 1 《大祖始の遺産》 1 《魂標ランタン》 1 《魔術遠眼鏡》 1 《神々の憤怒》 2 《嵐の怒り》 1 《神秘の炉》 1 《王神の立像》 1 《領事の旗艦、スカイソブリン》 -サイドボード(15)- |
『ミラディン』ブロック構築時代にはなかったカードタイプ、プレインズウォーカー。これの到来がBIGな戦術をよりパワーアップさせた。
今日の「ビッグ・レッド」はマナ加速からパワフルなプレインズウォーカーを叩きつけて勝つ、単純なカード1枚の破壊力で押していくデッキである。
赤い重量級プレインズウォーカーといえば《目覚めた猛火、チャンドラ》、そして赤という色にこだわらずに見れば《人知を超えるもの、ウギン》と《精霊龍、ウギン》。
いずれもクリーチャーなどのパーマネントに対する除去能力と、それ1枚でゲームに勝ちにいけるフィニッシャーとしての役目を兼ね備えている。
重いマナだけあって強いカード、それを《アイレンクラッグの妙技》からいち早く唱える!
これら重量級以外にも4マナを中心に他にもプレインズウォーカーをたっぷりと採用しているのがデッキの特徴だ。特に3~4マナのチャンドラはマナを得られる能力持ちなので、ビッグな連中に繋げるにはもってこいな人選である。
そしてプレインズウォーカー以外の決め手として採用されているのが、コスト圧巻の{10}!《絶え間ない飢餓、ウラモグ》だ!
10/10破壊不能という戦闘における最上級のスペック、攻撃時に対戦相手のライブラリーを20枚追放することでブロックで粘ろうが強引に負かしてしまう鬼の如き決定力。
そして、カード自体が打ち消されようとも唱えた際に誘発する、パーマネント2枚追放の威力。これで対戦相手の重要なパーマネントを潰して逆転したり、対コントロールでは土地を吹き飛ばして反撃の芽を摘むなど、膨大なマナを要求するコストも納得のBIGなデッキに相応しい究極の逸品だ。《精霊龍、ウギン》とのリセットコンビネーションは戦場を文字通り殲滅する。
これらのカードを唱えるために《アイレンクラッグの妙技》だけでは心もとないので、当然他のマナ加速も採用している。《冷鉄の心臓》《精神石》の8枚体制に、土地を増やす《真面目な身代わり》と《不屈の巡礼者、ゴロス》。
ゴロスは持ってくる土地に制限がないので、単色なのを活かして採用されている数々の色マナが出ない、されど場面に応じて強力な働きを見せる仕事人的な土地をサーチしてゲームの流れをこちらに手繰り寄せてくれる。
《大瀑布》から5色のマナを得れば、ぶっ壊れの起動型能力もスイッチオン。ここからウラモグとかウギンを叩きつけるのがこのデッキのうっかり勝利パターン。
火力で焼き切る我らが黒田仕様、そしてプレインズウォーカーやエルドラージといった時代がもたらした新要素で叩きのめすヒストリック版。どちらの「ビッグ・レッド」も魅力にあふれているデッキという点では共通しているね。
昔のカードやデッキで最新のものと対戦ができるというのもマジックの魅力の1つ。皆も自分が使っているデッキのご先祖様とか、調べてみると面白い発見があるかもね。
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