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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
歴史的な喧嘩 with ちっぽけな助手(ヒストリック・ブロール)
どんな豪勢な料理も……毎日食べると飽きてしまうものだ。
ただの贅沢かもしれないが、人間はそういう風にできている。一定の刺激には慣れてしまうのだ。それでもなおそれを楽しめれば良いのだが、なかなかそこまで達観するのは難しい。
だから、マジックは新しいセットがリリースされる。どれだけカードのパワーバランスが良く、さまざまなデッキが共演する環境であっても、いずれは飽きがやってくる。そのタイミングで新セットが出るのが理想的ではあるのだが、朝から晩までひたすらマジックやっているようなヘビーユーザーにとってはこの飽きの周期がちょっと人より速かったりする。一足お先に次の環境へ、というわけにはいかないので……そんな時は普段遊ばないフォーマットでプレイするのが一番だ。
2022年1月、僕もちょっとスタンダード、アルケミー、ヒストリックと、飽きが来てしまったタイミングがあった。どうしたもんかというところに、毎度おなじみミッドウィーク・マジック。毎回遊んでいるわけではないのだが、何気なくその週のお題を見てみると「ヒストリック・ブロール」だった。
ブロールとはスタンダードの範囲内で行う統率者戦で、伝説のクリーチャーのみならずプレインズウォーカーも統率者に指定することが可能で、統率者込み60枚のデッキを作るというルールで行われる。
これのヒストリック・バージョンはその名の通りカードプールがヒストリックのものに拡張、そして100枚のデッキで遊ぶことが可能だ。あんまりやったことはないフォーマットで、ちょうどアルケミーで新しい伝説のクリーチャーおよびプレインズウォーカーが増えているので……アルケミーやヒストリックでも使ったことがない、それら新たな統率者候補でデッキを作って、実際にどんな動きをするのか確認するのが面白そうだなと。
気分転換にちょうどいいやとやってみたのだが……これが大正解だった。いつもと違うゲーム体験、見慣れぬカードが飛び交う戦場。楽しいじゃないか。
僕がこのフォーマットで統率者に選んだのは……《献身的な助手、オグロール》!
オグロールはイニストラードに住むホムンクルス、すなわち人工生命体。錬金術によって造られるもので、マジックの多元宇宙に生息するものはそのほとんどが一つ目で小さな体躯の生き物だ。主に青のクリーチャーである。
イニストラードの者たちは錬金術を学んだ者の手によって作られているようで、ひとつの眼球を金属やガラスのカバーで固定しているような見た目をしている。より人造感があって、不気味さが増しているのだが愛嬌もある、不思議な魅力を持っている。
オグロールはゲラルフやルーデヴィックなど、屍を蘇生させる錬金術師達の助手を務めていることが、各カードのフレイバーテキストから判明している。時に危険な研究に付き合い、あるいは自分の意思で無謀な実験を敢行し、たびたび死亡しているらしい。その度に蘇生させられているようで、ルーデヴィックはそれに時間を割かれることを嫌っているという発言している……が、わざわざこのホムンクルスを蘇らせているということは、よっぽどお気に入りなんだろうな。
優秀な助手であることも確かなようで、カードとしてもオグロール自身も屍からゾンビを創り出す能力を持っている。《献身的な助手、オグロール》のサイズは1/1とはいえ2マナという軽さ、これは統率者に据えるに際して嬉しいこと。
2ターン目に戦場に出したら、続くターンからアップキープごとにライブラリー操作を行う。2枚見て1枚はそのまま、1枚は墓地に。単純に引きたくないカードを引かずに済むのがありがたい。
そしてさらに、手札 or ライブラリーからクリーチャーが墓地に置かれた場合、そのカードに「これが墓地を離れた時に2/2のゾンビを生成する」という能力を付与する。墓地のカードに能力を与えるというのは、アルケミーのカードならではだな。
このゾンビを生成するために、墓地を離れるというのがポイントになってくる。それってどういうことを指すのだろう。まずシンプルに、墓地から戦場に戻る。リアニメイトと呼ばれるアクションで、これは黒が得意とするところ。オグロールを統率者にすると黒いカードはデッキに入れられないのでこれは諦めるプランである。
ただ、直接戻るわけではなく墓地から唱えられるクリーチャーは青にいるね。降霊能力を持ったスピリットたちのことだ。墓地から唱えられたカードもまた、墓地を離れているのでゾンビが沸く。スピリットやオーラとして、降霊するのと同時にゾンビのオマケが付くのはなかなか強そうだ。降霊と似たような能力だと、永遠や不朽もクリーチャーが墓地から離れるカードになるね。
降霊系ともうひとつ、追放するというのも手だ。墓地からカードを追放する手段は、青単色のデッキでも割といくらでもある。それらでクリーチャーカードを追放し、どんどんとゾンビを展開して戦場を埋め尽くす……
これは面白そうだなと、ワクワクしながらカードを検索し、デッキを作成してみたところ……むちゃくちゃ楽しいプレイ体験ができたので、拙作ながらリストを紹介させていただこう!
1 《献身的な助手、オグロール》
-統率者(1)- 35 《冠雪の島》 1 《不詳の安息地》 1 《イプヌの細流》 1 《屍肉あさりの地》 -土地(38)- 1 《継ぎ接ぎの槍馬》 1 《発掘された壁》 1 《ランタンを携える者》 1 《食糧庫のゾンビ》 1 《マーフォークの秘守り》 1 《査問長官》 1 《餌鉤の釣り人》 1 《欲深き逃散者》 1 《氷山のカンクリックス》 1 《迷宮の守護者》 1 《心悪しき隠遁者》 1 《マーフォークの物あさり》 1 《悪戯な猫霊》 1 《ナルコメーバ》 1 《這い寄る継ぎ接ぎ》 1 《セルホフの埋葬者》 1 《ヴァントレスのガーゴイル》 1 《迷える思考の壁》 1 《修古師》 1 《拘束の霊》 1 《機知の勇者》 1 《湖に潜む者、エムリー》 1 《玻璃池のミミック》 1 《圧倒される文書管理人》 1 《上流階級の霊》 1 《秘宝のゴーレム》 1 《最後の明日の予見者》 1 《砂時計の侍臣》 1 《エイヴンの修練者》 1 《秘法の管理者》 1 《突風漂い》 1 《排水路に潜むもの》 1 《ホマリッドの探検者》 1 《鏡の間のミミック》 1 《選定の侍臣》 1 《不可思議》 1 《影武者》 1 《空ねじれのスカーブ》 1 《幻影の馬車》 1 《鳴き叫ぶ大群》 1 《縞カワヘビ》 -クリーチャー(41)- |
1 《トーモッドの墓所》 1 《保有の鞄》 1 《考慮》 1 《失われし者のランタン》 1 《異世界の凝視》 1 《大祖始の遺産》 1 《ひっかき爪》 1 《歩哨のトーテム像》 1 《背骨のワンド》 1 《抗えない主張》 1 《水没した秘密》 1 《アズカンタの探索》 1 《巧みな軍略》 1 《精神純化》 1 《冒涜された墓所》 1 《不吉な休息地》 1 《未来の目撃》 1 《悪賢い隠蔽》 1 《記憶の意義》 1 《神秘を操る者、ジェイス》 -呪文(20)- |
全100枚のデッキなので、さすがにカード1枚ずつについて解説していてはキリがないが、それらを大別すると、
- 切削およびライブラリーから墓地にカードを置くためのカード
- 手札からカードを捨てるためのカード
- 自力で墓地から離れることができるクリーチャー
- 自力で墓地から離れることはできないが、墓地と何らかのシナジーを持つクリーチャー
- クリーチャーを墓地から離れさせるためのカード
こんなところか。オグロールがいる状況でライブラリーから墓地にカードを送る、あるいは手札からカードを捨てることで、クリーチャーにゾンビ生成能力を与える。それらを降霊などの能力、あるいは他のカードの助力を得て墓地から離れさせることでゾンビを得て、戦場をじわじわと形成していく中速デッキだ。
このリストで重視しているのは最後に挙げた「クリーチャーを墓地から離れさせるためのカード」。青単色のデッキでこれを行うのであれば、青いカードにこだわらずに無色、すなわちアーティファクトに目をやると良い。《トーモッドの墓所》など、墓地を追放するアーティファクトはいくらでもある。
これらを用いて、オグロールが処置を施した屍をまとめて墓地から離れさせ、大量のゾンビを得て一気の決着を狙う。10体も出せればそれだけで勝てるのだから、立派なコンボだ。オグロールもそれらのアーティファクトもコストが軽いので、早いターンに決めることも容易なのが他のデッキと勝負できるポイントかな。
アーティファクトと言えばもうひとつ、《保有の鞄》はマストパーツだ。
これ、手札からカードを捨てるとそれを自動的に追放してくれる便利な機能が付いている。オグロールが一仕事終えたものが勝手に追放されてゾンビがワラワラと。しかも追放されたカードは鞄で回収もできるので、アドバンテージも得られてしまうという優れモノ。サイクリングなど、鞄以外の方法で捨てたカードにも誘発するのでガンガン捨ててグルグル回そう。
鞄および墓地追放アーティファクトはかなり重要度の高いパーツなので、これらが切削で墓地に落ちてしまった時などのために回収役として《湖に潜む者、エムリー》《修古師》なども必須パーツかなと考えている。
アーティファクトクリーチャーを拾うことでゾンビを生成する手段にもなるしね。もっとアーティファクトに寄せて《知識の渇望》みたいなカードをたっぷり採用してみても良かったかもなぁ。
引いて捨てて削って肥やして、追放して生みだしてゾンビでドン。シンプルに言えばそんなデッキ。《献身的な助手、オグロール》を通じて、ヒストリック・ブロールに少しハマってしまったかも。
皆もデッキを構築してみよう、同名カード1枚で済むし、普段見ないようなカードにもスポットライトを当てられるし、良いフォーマットだよ! 『神河:輝ける世界』までの繋ぎにやり込んでみるべしだ。
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