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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
サルカン、パワーアップ! その能力にふさわしいドラゴンは?(ヒストリック)
カードに書かれていることを優先するというのがマジックの原則だが、時にそのカードに書かれているテキスト自体が変化することもある。
マジックの歴史は長く、その間に細かなルールの改変が重ねられた。結果、古いものはそれが刷られた時代のテキストのままでは現在のゲーム内にてきちんと処理できない、あるいは何もできないようになってしまう。そこで、カード自体に印刷されているものはそれはそれとして、適切なテキストというものがすべてのカードには用意されており、それを読む文献を「オラクル」という。
先述のようにテキストが変更されたカードというのは、このオラクルに修整を受けることを指す。最近のもので言えば、ルールが変更になった「相棒」能力を持ったカードたちのオラクルにはきちんと現在の相棒のルールが記されている。競技マジックの場においてはこのオラクルをもとにしてゲームを行うので、古いカードを扱うレガシーなどでカードに書かれていることがわからない場合、ジャッジにオラクルを確認してもらうことができる。
さて、カードに印刷されたテキストは再録などされない限りは修整のしようがないのだが、デジタルだと話は変わってくる。テキストに調整を受けたカードはそれがそのまま反映され、最新のテキストがゲーム画面に表示される。このデジタルならではのテキストの再調整が、先日行われたヒストリックのみで使用可能な一部カードの能力変更だ。
コンボの元凶となっていた《ダブリエルの萎縮》が対戦相手のクリーチャーのみを対象とするようになって弱体化。
マジックでは環境を整備するために禁止・制限カードを用いているが、デジタルにのみ存在するカードにはこのように再調整というメスを入れることが可能というわけだ。
これは何もマイナスな側面ばかりではなく、もうちょっと強ければ良いカードになりそうな、残念なポジションのカードを修整して出番を増やしてやるということも可能だ。《シヴの放浪者、サルカン》がそうだ。
リリース当初は[0]能力だった《シヴ山のドラゴン》を創出する能力は、この度[+1]へと変更になった。微差ではあるが、忠誠値が増えないのと増えるのは大きな違いである。6マナ5/5飛行を手札に蓄えながら忠誠値を増やし、[-2]の3点ダメージを複数回起動していくのを狙えるようになった。
というわけで今回はマジックの新しい歴史、テキストの再調整による強化を受けたサルカンを採用したデッキを紹介しよう!
3 《島》 3 《山》 4 《蒸気孔》 4 《硫黄の滝》 4 《尖塔断の運河》 4 《河川滑りの小道》 4 《寓話の小道》 -土地(26)- 2 《砕骨の巨人》 4 《パルン、ニヴ=ミゼット》 -クリーチャー(6)- |
4 《否定の契約》 4 《邪悪な熱気》 1 《墓掘りの檻》 4 《ドラゴンの火》 4 《表現の反復》 4 《大魔導師の魔除け》 2 《焼けつく双陽》 2 《火の血脈、サルカン》 2 《シヴの放浪者、サルカン》 1 《反逆の先導者、チャンドラ》 -呪文(28)- |
2 《厚かましい借り手》 1 《原初の潮流、ネザール》 1 《墓掘りの檻》 4 《霊気の疾風》 2 《否認》 1 《丸焼き》 2 《神々の憤怒》 1 《神秘の論争》 1 《プリズマリの命令》 -サイドボード(15)- |
《シヴの放浪者、サルカン》の[+1]を新しく担う能力は手札のドラゴンのマナ・コストが{1}下がると同時に、不特定マナで支払えるようになるというもの。つまりマナ総量が大きく、また色マナシンボルの濃いドラゴンと組み合わせることでその真価を発揮するということだ。
これに当てはまるヒストリックのドラゴン……いるじゃない、おあつらえ向きの最強格ドラゴンが。《パルン、ニヴ=ミゼット》!
戦場に出ること=ゲームの終わりとさえ言われる、環境屈指のフィニッシャーだ。6マナ5/5飛行で打ち消されず、相手がどれだけ構えていようが堂々とメインで叩きつけることが容易。
そしてプレイヤーがインスタントかソーサリーを唱えると1枚ドロー。このドロー能力の恐ろしいところは、誰が唱えても誘発すること。ニヴに対して対戦相手が《破滅の刃》を唱えると1枚ドロー、それに対してこちらが《否認》で応じても1枚ドロー。手札がザクザクと増えていく。
カードを引けば好きなところに1点ダメージ。戦場のクリーチャーやプレインズウォーカーを焼き払い、プレイヤーのライフをあっという間にすり潰す。
このゲームの支配者を本来のコストより軽く、拘束も薄く唱えられることの恩恵……パッと見、6マナと5マナじゃ変わらないように見えるが、7マナ用意できる時にはニヴを出すと同時に2マナのインスタントを構えられるという、これが非常に大きい。
《シヴの放浪者、サルカン》はニヴのサポートだけでなく、《シヴ山のドラゴン》というもうひとつのフィニッシャーを得たり、3点除去として最低限の働きを見せてくれるのが良いね。
これに同じくサルカンより《火の血脈、サルカン》、そして《反逆の先導者、チャンドラ》とマナを加える能力を持ったプレインズウォーカーを取り揃え、とにかく強いニヴをスムーズに戦場に出すというミッションを達成する、そんな豪華絢爛なデッキの登場だ。
デッキとしてはコントロールに分類される。《ドラゴンの火》などでクリーチャーは除去、《大魔導師の魔除け》で要所を打ち消し、手札はこの魔除けと《表現の反復》で補充して切らさない。
土地を並べ、プレインズウォーカーを出して、いざパルン。明確なゴールに到達するまでに対戦相手に負けないよう生き延びる、分かりやすいコントロールだね。
コントロールの要と言える打ち消しに《否定の契約》が採用されているのは、言うまでもなくニヴをぶっ放すと同時に構えられる打ち消しだからだ。
プレインズウォーカーなどでコストを減らしたりマナを得たりできればいいが、なかなかそうもいかないが現実のマジック。そんな時に6枚の土地を全てタップして、すなわち隙だらけでニヴを唱えなければならないこともあるだろう。
対戦相手もここが最初にして最後のチャンスとばかりに除去や大技を狙ってくる。そこにマナ・コスト{0}の《否定の契約》を突き刺す! この気持ちよさと言ったらないね。次のターンには5マナを要求されるが、それも安く感じる強力ムーブだ。
生き延びれば、あとはやりたい放題の化身であるパルンが悠々とゲームを終わらせる。それを突き詰めた結果、この一見リスキーなカードがチョイスされたってわけだ。くれぐれも使いすぎての自爆には注意。
再調整により以前よりも確実に強くなった《シヴの放浪者、サルカン》。彼の姿を戦場で目にする機会は増えるのだろうか? 僕もこのリストをコピーして回しているが、とにかく楽しいので流行る可能性はある。
制作者はガブリエル・ナシフ/Gabriel Nassif。フランスのプレイヤーたちを支えた、稀代のデッキビルダーならではの逸品である。彼の長いマジックキャリアでも、テキストの再調整でこのような明かな強化というのは初めてのことだっただろう。デジタルならではの変化も受け入れて楽しむ殿堂顕彰者に、改めて敬意を。
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